婚約破棄された公爵令嬢のお嬢様がいい人すぎて悪女になれないようなので異世界から来た私が代わりにざまぁしていいですか?

すだもみぢ

文字の大きさ
16 / 48
第一章 ここは私の知らない世界

第16話 小金稼ぎ

しおりを挟む
「なんだろう、あの小屋みたいなの……」

 それに気づいたのはリリアンヌの中に入ってからしばらくしてからだった。
 西向きの二階のシシリーの部屋からは見えるのに、庭園から行こうとしてもなかなか見つからない場所がある。
 何度も庭園を歩き回って、ようやくそこへの入り口を発見した。
 背が高い木が目隠しのようになっていて、その裏側に道があるなんて、普通は気づかないだろう。

 外壁がボロボロで、見た目は廃屋なのだけれど、作りはしっかりしているようだ。なんだろうと思って、扉を引っ張ろうとしたが、ドアが開かなかった。

「ホセおじさーん」
 
 誰か教えてくれないかと探したら園丁のおじさんを見つけて呼び寄せる。
 庭をフラフラ歩いている間にも庭師の人達とも仲良くなり、植物について話していたら知り合った人だ。
 若い女の子と話す機会が少ないのか、庭師のおっさん集団は年齢層も高いが、娘のように可愛がってくれて話すのが楽しい。

「ここ、何が入っているんですか?」

 ホセおじさんを呼び寄せて小屋に案内すると、ああ、と頷いていた。

「ここねー、裏で馬とか牛とか飼ってるだろ。そこの荷物の置き場だったんだよ。でも、薔薇園ができて行き来しづらくなって、もっと大規模な庭園になったから、新しい小屋を作ってそっちを利用するようになったんだ」
「へえ、じゃあ、ここの小屋って今、使ってないんですか?」
「そうだよ。こんなとこあったの忘れてたくらいだしね」
「じゃあ、下働きのメイドの物置小屋にしていいですかね。洗濯かごとか古いたらいとか置くための。かさばるのにあまり使わないものって置く場所困ってるんですよねえ……」

 そう上目遣いでお願いしたら、別にいいよ、と頷いてくれた。

「ああ、奥様の許可を貰ってきたらいいよ」
「もちろん、そうします」

 もちろん貰いに行ったりしないけどね!
 これがメイドたちなら私の行動を疑うだろうけれど、呑気なホセおじさんたち園丁は、私と奥様の関係とかを知らないようだからね、ちょろい。
 絶対あの奥様じゃ勝手に使ってても気づかないだろうし。
 ということで、後で許可を取るということでホセおじさんから鍵も渡してもらった。

  それからは、仕事の合間に中を掃除して、色々と私物を持ち込んだり、使い込んで薄くなった古いリネンを貰ってきたりして、それは完成した。

「ミレディ」

 前はミレディが私を呼び出したけれど、今度は私の番。私が呼んだらミレディはどこかびくびくしているようだ。
 着いてきて、と、命令して彼女を連れて庭に回る。高い木が目隠しになっているあの場を通り、そして小屋を指さした。

「あそこの小屋を使う権利を持ってるのよ、私」

 そんな権利知らないけどね。でもその使用権を持っている庭師の承諾済みだ。

「この公爵邸の中で、彼氏と二人きりで【安心して】会う場所なんてなかなかないでしょ?」

 安心して、を強調してしまう。だって私にばれてるくらいだからね。

 鍵を開けて中を見せると、中は小じゃれた感じのワンルーム風になっている。いや、私がそうした。
 中に保存されていた干し草はまだ十分使えたので、それをベッドに作り替えて。ハイジの世界のようだなと思ったけれど、これが意外と寝心地がいい。ただし結構重い。中はお嬢様手作りのカードを借りて飾ったりもしている。

「一回、1刻が5セルラーでお使いいただけますけど、いかがでしょう?」

 これはいわゆる逢引用の場所……日本で言うならラブホテルのつもりだ。
 日本円で言えば700円くらいの価値だろうか。
 この後で値上げをするか、値下げをするかはわからないが、相手の財布具合を考えるとそんなに高く値段設定しても使ってくれないと思うから、これぐらいが適当かなぁ、と思う。
 自分の給料から換算したけれど、ミレディは私より給料高そうな気もするけどね。奥様付き侍従だから。
 ちなみに1刻というのは2時間くらい。
 私がこの場所を提供した目的にすぐに気づいたのか、周囲をくまなく見つめている。
 ドアや窓を見て、気密性というか防音性を意識しているようなのがさすがだと思った。

「なるほど、いいわね。明日、貸してくれる?」
「さっそくだね、何刻?」
「2刻分買っておくわ。昼過ぎから」
「了解。明日の昼前になったら鍵を渡すから、その時にお金と引き換えね。ただし汚したりしたら二度と使わせないからね」
「ありがとう。大丈夫よ」

 うわあ、ミレディ、肉食獣のような目になってるよ。
 中にはタオルとかも置いてあるから、万が一汚すようなことになっても、自分で掃除してくれるだろう。一応後で確認には来るけど。

「もし他にも貴方のような立場の人がいたら、貴方を通して私に声をかけるようにしてほしいわ。恋人たちの場所だから、恋人と使いたいという人以外に言わないでね。私の名前は決して出さないでよ? もしそうしてくれたら、ここをこれから貴方が使う時に割引するから」

 そう保身をしながらもちゃっかりと宣伝を頼んでおこう。
 こういうのって、同じことしている人なら感じる嗅覚みたいなのがあるだろうから、案外お互い恋愛悩み相談とかしてんじゃないかな、とも思うんだよね、知らんけど。
 邸内恋愛してそうな人いるのは気づいているけど、誰か確定はしてないし、知られたくないだろうから気づかないふりをしておこうと思っている。
 利用者がミレディ達しかなくて、あまりにも利用率が悪いようなら、他の手を考えればいいだけだし。

「私は恋する人の味方なのよ」

 そう嘯いて。手の中の鍵をちゃりん、と回した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

何でも欲しがる妹が、私が愛している人を奪うと言い出しました。でもその方を愛しているのは、私ではなく怖い侯爵令嬢様ですよ?

柚木ゆず
ファンタジー
「ふ~ん。レナエルはオーガスティン様を愛していて、しかもわたくし達に内緒で交際をしていましたのね」  姉レナエルのものを何でも欲しがる、ニーザリア子爵家の次女ザラ。彼女はレナエルのとある寝言を聞いたことによりそう確信し、今まで興味がなかったテデファリゼ侯爵家の嫡男オーガスティンに好意を抱くようになりました。 「ふふ。貴方が好きな人は、もらいますわ」  そのためザラは自身を溺愛する両親に頼み、レナエルを自室に軟禁した上でアプローチを始めるのですが――。そういった事実はなく、それは大きな勘違いでした。  オーガスティンを愛しているのは姉レナエルではなく、恐ろしい性質を持った侯爵令嬢マリーで――。 ※全体で見た場合恋愛シーンよりもその他のシーンが多いため、2月11日に恋愛ジャンルからファンタジージャンルへの変更を行わせていただきました(内容に変更はございません)。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

聖水が「無味無臭」というだけで能無しと追放された聖女ですが、前世が化学研究者だったので、相棒のスライムと辺境でポーション醸造所を始めます

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
聖女エリアーナの生み出す聖水は、万物を浄化する力を持つものの「無味無臭」で効果が分かりにくいため、「能無し」の烙印を押され王都から追放されてしまう。 絶望の淵で彼女は思い出す。前世が、物質の配合を極めた化学研究者だったことを。 「この完璧な純水……これ以上の溶媒はないじゃない!」 辺境の地で助けたスライムを相棒に、エリアーナは前世の知識と「能無し」の聖水を組み合わせ、常識を覆す高品質なポーション作りを始める。やがて彼女の作るポーションは国を揺るがす大ヒット商品となり、彼女を追放した者たちが手のひらを返して戻ってくるよう懇願するが――もう遅い。

処理中です...