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第二話 再会
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その日は天気も良くて、風も気持ちがいい季節だったから、庭先の木陰で本を読むことにした。
誰かが近くに来ていることにも気づかず、夢中になって本を読んでいたが、声を掛けられてようやく意識をこの世界に引き戻された。
「カリン……?」
声がした方は太陽があって、こちらからは逆光でお顔がよく見えない。
慌てて立ち上がれば、それでも自分よりずいぶんと高い位置に相手の顔があった。
「デューク……」
6年ぶりに会ったデュークは、過去の面影がないくらい、大人びていた。
それはそうだろう。彼はもう14歳。8歳の少年ではないのだ。
背がずいぶんと伸びて、面差しは彼のお父様のリントン辺境伯に似て、少しいかつくなってきただろうか。しかし彼の顔立ちの良さが損なわれているわけではない。
知らないうちに幼さが抜けて、男らしくなっている彼の姿に、少々戸惑ってしまった。
相手が歳を重ねたのと同じで、自分ももう子供ではないのだから。
相手のことが苦手だからといって、大嫌い、あっちいって、と追い払うことはできない。
しかも相手は力のある貴族の後継者となる方なのだから。
「場所をお間違えでは?」
兄のところに用事だろうか。
しかし、こちらには私とお姉さましかいない。
兄が父の跡を継ぐのに際し結婚するため、本館の方を改修するため、私と姉が離れに移されているのだ。
この家に来る機会のあるデュークなら、その事を教わっていて、兄か父のいる本館の方に直行するはずなのだが。
「あ……ヨーランダに、挨拶を、」
「お姉さまとお約束ですか? こちらにいらしてくださいませ」
彼と自分は会っていなかったが、家族ぐるみの付き合いで、姉と彼はそれなりに親交があったはずだ。
その縁で訪ねてきたのだろうか。
「メアリー、お客様にお茶をお出しして」
彼を離れの応接間に通す前に出会った使用人に言いつけて、彼のもてなしを命じ、自分は姉を呼びに彼女の部屋へと急ぐ。
「お姉さま、デュークがいらしてるわ」
「デュークが? どうしたのかしら」
「お姉さまとお約束があったのでは?」
「そんなはずはないのだけれど」
どちらにしろ、私には関係がない。
そう思って、そのまま姉に対応を任せ、自分は部屋に戻って、先ほど読んでいた本の続きでも読もうと思っていた。
だからその後、彼と姉がどのような話をし、彼がどのように帰っていったかも知らなかった。
「貴方がデュークと会うなんて、とても久しぶりじゃないかしら?」
夕食を食べながら、朗らかにお姉さまが言う。久々に訪ねてきてくれた人がいて嬉しかったのか、姉はいつも以上に饒舌だ。
「貴方が案内してきたみたいだけれど、デュークってすぐにわかったの?」
「ええ」
必要最低限のことしか話さないというのは同じだったし。
「デュークもすぐに貴方ってわかったみたいよ。あんなに昔に会ったきりで、貴方はいつも挨拶もそこそこに避けていたのにね。ここ数年は会ってなかったでしょう? デュークはすぐに貴方ってわかったって言ってたわ」
そういえば、先に彼に名前を呼ばれたから気づけたのだと思う。
これが集団の中ですれ違うだけだったりしたら、デュークがいたことに自分は気づけなかっただろう。
それを言うと、お姉さまは納得したようにうなずいた。
「よくカリンってわかったわよね。貴方、昔と相当イメージ変わったのに」
「……昔の私を知るほど、デュークと私は関係が深くなかったからでは? お姉さまでない貴族風の娘が庭先にいれば、消去法でそこにいるのはカリンでしかないわけだし」
「まぁ、そうなのだけれどね」
私は長ずるにつれ、家にこもることが多くなった。
幼い時は外をいつも走り回っている活発なお転婆娘と言われていたけれど、歳を重ねていくうちに、本を読み、家で静かに過ごすことが多くなっていった。
「お転婆だった昔はカエルがダメだったのに、今はカエルも平気になってしまったのだけど……」
そこも昔と今で変わった部分だ。今ならカエルを投げつけられても、投げ返すことくらいできそうなのに、きっともうあのデュークではしないだろう。
その様を想像してしまい、ちょっとおかしくなった。
誰かが近くに来ていることにも気づかず、夢中になって本を読んでいたが、声を掛けられてようやく意識をこの世界に引き戻された。
「カリン……?」
声がした方は太陽があって、こちらからは逆光でお顔がよく見えない。
慌てて立ち上がれば、それでも自分よりずいぶんと高い位置に相手の顔があった。
「デューク……」
6年ぶりに会ったデュークは、過去の面影がないくらい、大人びていた。
それはそうだろう。彼はもう14歳。8歳の少年ではないのだ。
背がずいぶんと伸びて、面差しは彼のお父様のリントン辺境伯に似て、少しいかつくなってきただろうか。しかし彼の顔立ちの良さが損なわれているわけではない。
知らないうちに幼さが抜けて、男らしくなっている彼の姿に、少々戸惑ってしまった。
相手が歳を重ねたのと同じで、自分ももう子供ではないのだから。
相手のことが苦手だからといって、大嫌い、あっちいって、と追い払うことはできない。
しかも相手は力のある貴族の後継者となる方なのだから。
「場所をお間違えでは?」
兄のところに用事だろうか。
しかし、こちらには私とお姉さましかいない。
兄が父の跡を継ぐのに際し結婚するため、本館の方を改修するため、私と姉が離れに移されているのだ。
この家に来る機会のあるデュークなら、その事を教わっていて、兄か父のいる本館の方に直行するはずなのだが。
「あ……ヨーランダに、挨拶を、」
「お姉さまとお約束ですか? こちらにいらしてくださいませ」
彼と自分は会っていなかったが、家族ぐるみの付き合いで、姉と彼はそれなりに親交があったはずだ。
その縁で訪ねてきたのだろうか。
「メアリー、お客様にお茶をお出しして」
彼を離れの応接間に通す前に出会った使用人に言いつけて、彼のもてなしを命じ、自分は姉を呼びに彼女の部屋へと急ぐ。
「お姉さま、デュークがいらしてるわ」
「デュークが? どうしたのかしら」
「お姉さまとお約束があったのでは?」
「そんなはずはないのだけれど」
どちらにしろ、私には関係がない。
そう思って、そのまま姉に対応を任せ、自分は部屋に戻って、先ほど読んでいた本の続きでも読もうと思っていた。
だからその後、彼と姉がどのような話をし、彼がどのように帰っていったかも知らなかった。
「貴方がデュークと会うなんて、とても久しぶりじゃないかしら?」
夕食を食べながら、朗らかにお姉さまが言う。久々に訪ねてきてくれた人がいて嬉しかったのか、姉はいつも以上に饒舌だ。
「貴方が案内してきたみたいだけれど、デュークってすぐにわかったの?」
「ええ」
必要最低限のことしか話さないというのは同じだったし。
「デュークもすぐに貴方ってわかったみたいよ。あんなに昔に会ったきりで、貴方はいつも挨拶もそこそこに避けていたのにね。ここ数年は会ってなかったでしょう? デュークはすぐに貴方ってわかったって言ってたわ」
そういえば、先に彼に名前を呼ばれたから気づけたのだと思う。
これが集団の中ですれ違うだけだったりしたら、デュークがいたことに自分は気づけなかっただろう。
それを言うと、お姉さまは納得したようにうなずいた。
「よくカリンってわかったわよね。貴方、昔と相当イメージ変わったのに」
「……昔の私を知るほど、デュークと私は関係が深くなかったからでは? お姉さまでない貴族風の娘が庭先にいれば、消去法でそこにいるのはカリンでしかないわけだし」
「まぁ、そうなのだけれどね」
私は長ずるにつれ、家にこもることが多くなった。
幼い時は外をいつも走り回っている活発なお転婆娘と言われていたけれど、歳を重ねていくうちに、本を読み、家で静かに過ごすことが多くなっていった。
「お転婆だった昔はカエルがダメだったのに、今はカエルも平気になってしまったのだけど……」
そこも昔と今で変わった部分だ。今ならカエルを投げつけられても、投げ返すことくらいできそうなのに、きっともうあのデュークではしないだろう。
その様を想像してしまい、ちょっとおかしくなった。
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