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第十二話 説教
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テロドアの侯爵領からわざわざ馬車が迎えにやってきた。
手紙ではなく、強制連行な手段ということで、父親がどれほど怒り心頭なのかと思うと会うのが怖い。
かといって顔を出さないわけにもいかないが、ともたもたしていたら取るものもとりあえず、馬車に押し込まれた。
その後はテロドア邸の書斎までほとんど連行されるように連れ出され。久しぶりの父親の顔をそこで見た。
「よくもまぁ、ぬけぬけとわしの前に顔を出せたなトーマス」
呼び出したのは貴方だろうというツッコミをするほど、こちらも精神的に余裕はない。
杖を握りしめている父の手は怒りのせいかブルブルと震えている。
「ヴェノヴァ伯爵領がローデリアに乗っ取られたという話は本当なのか!?」
話を平たくすると確かにそういうことにもなる。
元々ヴェノヴァ伯爵領は成人した折にこの父親から譲られたものだから、所有し管理していた人間からしたら愛着がある場所だろう。
それが外から来た嫁とはいえ、第三者に奪われたことというのが彼からしたら悔しくてならないはずだ。
「本当です。父上、お願いです。どうか父上のお力で……」
「このバカ者が!! それくらい自分で解決しないでどうする! いつまで親のわしに頼るつもりだ! 大体お前がちゃんと管理しておけばいいものを、なんでこんなことになっておるのだ。ありえない話だろうが!」
頭ごなしに罵声を浴びせかけられ、カッとなる。
「父上だって、ローデリアに離婚しろなどと余計なことを言ったでしょう!? でなかったらこんな面倒なことになってなかったのですからね!」
「そ、それは、お前たちにはっぱをかけるために」
「息子とはいえ、他所の家の夫婦の話に口を出さないでください!!」
「なんだと! もとはといえば、家を顧みずにフラフラ遊び歩いているお前が悪いではないか!」
「それとこれは別の話です!」
二年経っても子供ができなかったら離婚。
そんな条件さえなかったら、自分たち二人の間に子供ができなくても、財産を取り上げられて危うい状態だとしても、自分はこのまま幸せに暮らしていられたかもしれないのに。
そう思って爪を噛みしめるが、父はどん!と杖で床を突いた。
「そんなことよりも、ヴェノヴァ伯爵領の領地と家屋と財産の話だ! こうなったら、ローデリアの靴を舐めるでもなんでもして、許しを乞え!」
やはり、この人も噂話の『ローデリアが夫を懲らしめるために実権をにぎった』というのを信じているらしい。
その方が理解しやすいのはわかるし、当事者からしてもそれで話がすむならばどれほどよかったことか。
「父上……ローデリアは怒ってしているわけではないようです。私を立派な貴族とするために、信念を持ってあのような行動をしているだけで」
伯爵家の跡継ぎを作ることが貴族である自分たちにとっての最優先事項。そのためにすぐにでも離婚しなくてはいけない。貴族として。それが今のローデリアの行動規範のようなのだから。
「どういうことだ? ローデリアがしていることが、どうして立派な貴族に繋がるのだ?」
「……さぁ」
財産などを奪われたのは、貴族の仕事をさぼる上で自分が彼女へ施していた貴族教育の結果だとは言えずに、そこは空とぼけた。
そんな自分をじろりと一瞥してから、父は大きく頷いた。
「そうか。ローデリアにはなんらかの考えがあるのだな。それでは、後はお前たちで決めなさい。わしはあの伯爵領を分与した時にお前に言ったな? ちゃんと次の世代にわしがお前に渡した分くらいは渡せ、と。先祖から受け継いだものを次の世代に受け継ぐことが貴族の務めだと。その務めさえお前がきちんと果たすのなら、途中経過がどうあれ、わしに文句はない」
結局はよくわからなくなっての丸投げするつもりなのだろうか。それとも単なる思考放棄なのだろうか。
中途半端に首を突っ込んでかき回しておいて、自分はさっさと逃げる気か、と父を睨む。
その恨めし気な感情に気づいているだろうに父は、ふっと目をそらした。
「夫婦の話に口を挟まない方がよいのだろう?」
「父上!」
「話は終わった、さっさと帰れ」
唐突に拉致のようにされてきたと思えば、今度は犬の仔でも追い払うかのように追い出されようとする。
「あまりことを大きくする前になんとかしろ。王宮まで話が飛んだら面倒なことになるからな。この件に関しては、わしはお前たちになにも関与しない」
頼みの綱だった父にも見捨てられ、途方にくれてテロドアの家を後にするしかなかった。
手紙ではなく、強制連行な手段ということで、父親がどれほど怒り心頭なのかと思うと会うのが怖い。
かといって顔を出さないわけにもいかないが、ともたもたしていたら取るものもとりあえず、馬車に押し込まれた。
その後はテロドア邸の書斎までほとんど連行されるように連れ出され。久しぶりの父親の顔をそこで見た。
「よくもまぁ、ぬけぬけとわしの前に顔を出せたなトーマス」
呼び出したのは貴方だろうというツッコミをするほど、こちらも精神的に余裕はない。
杖を握りしめている父の手は怒りのせいかブルブルと震えている。
「ヴェノヴァ伯爵領がローデリアに乗っ取られたという話は本当なのか!?」
話を平たくすると確かにそういうことにもなる。
元々ヴェノヴァ伯爵領は成人した折にこの父親から譲られたものだから、所有し管理していた人間からしたら愛着がある場所だろう。
それが外から来た嫁とはいえ、第三者に奪われたことというのが彼からしたら悔しくてならないはずだ。
「本当です。父上、お願いです。どうか父上のお力で……」
「このバカ者が!! それくらい自分で解決しないでどうする! いつまで親のわしに頼るつもりだ! 大体お前がちゃんと管理しておけばいいものを、なんでこんなことになっておるのだ。ありえない話だろうが!」
頭ごなしに罵声を浴びせかけられ、カッとなる。
「父上だって、ローデリアに離婚しろなどと余計なことを言ったでしょう!? でなかったらこんな面倒なことになってなかったのですからね!」
「そ、それは、お前たちにはっぱをかけるために」
「息子とはいえ、他所の家の夫婦の話に口を出さないでください!!」
「なんだと! もとはといえば、家を顧みずにフラフラ遊び歩いているお前が悪いではないか!」
「それとこれは別の話です!」
二年経っても子供ができなかったら離婚。
そんな条件さえなかったら、自分たち二人の間に子供ができなくても、財産を取り上げられて危うい状態だとしても、自分はこのまま幸せに暮らしていられたかもしれないのに。
そう思って爪を噛みしめるが、父はどん!と杖で床を突いた。
「そんなことよりも、ヴェノヴァ伯爵領の領地と家屋と財産の話だ! こうなったら、ローデリアの靴を舐めるでもなんでもして、許しを乞え!」
やはり、この人も噂話の『ローデリアが夫を懲らしめるために実権をにぎった』というのを信じているらしい。
その方が理解しやすいのはわかるし、当事者からしてもそれで話がすむならばどれほどよかったことか。
「父上……ローデリアは怒ってしているわけではないようです。私を立派な貴族とするために、信念を持ってあのような行動をしているだけで」
伯爵家の跡継ぎを作ることが貴族である自分たちにとっての最優先事項。そのためにすぐにでも離婚しなくてはいけない。貴族として。それが今のローデリアの行動規範のようなのだから。
「どういうことだ? ローデリアがしていることが、どうして立派な貴族に繋がるのだ?」
「……さぁ」
財産などを奪われたのは、貴族の仕事をさぼる上で自分が彼女へ施していた貴族教育の結果だとは言えずに、そこは空とぼけた。
そんな自分をじろりと一瞥してから、父は大きく頷いた。
「そうか。ローデリアにはなんらかの考えがあるのだな。それでは、後はお前たちで決めなさい。わしはあの伯爵領を分与した時にお前に言ったな? ちゃんと次の世代にわしがお前に渡した分くらいは渡せ、と。先祖から受け継いだものを次の世代に受け継ぐことが貴族の務めだと。その務めさえお前がきちんと果たすのなら、途中経過がどうあれ、わしに文句はない」
結局はよくわからなくなっての丸投げするつもりなのだろうか。それとも単なる思考放棄なのだろうか。
中途半端に首を突っ込んでかき回しておいて、自分はさっさと逃げる気か、と父を睨む。
その恨めし気な感情に気づいているだろうに父は、ふっと目をそらした。
「夫婦の話に口を挟まない方がよいのだろう?」
「父上!」
「話は終わった、さっさと帰れ」
唐突に拉致のようにされてきたと思えば、今度は犬の仔でも追い払うかのように追い出されようとする。
「あまりことを大きくする前になんとかしろ。王宮まで話が飛んだら面倒なことになるからな。この件に関しては、わしはお前たちになにも関与しない」
頼みの綱だった父にも見捨てられ、途方にくれてテロドアの家を後にするしかなかった。
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