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新世代
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チェバンの本拠地はラインハウゼンに接する小さな隣国、ドルムントにある。
その施設はマフィアというより軍隊、建物は基地と言った方がふさわしい、基地の中に町がある。
ドルトムントとは実質チェバン一族の軍事政権国家だ。
国家の収入源は外貨によるところが大きい、武器、麻薬、人身売買……そしてテロの請負。
独立してから周辺の国家との関係は悪くない、商売でも政治的にも、そして血も濃く入り込んでいる、輸出品の一つは女、チェバンの女たちは美しい、商品として世代を超えて選抜され創られた商品なのだ。
奴隷ではない、その美しさを武器に嫁ぐ先は貴族であり政治家、国の中枢を担う男たちをターゲットにする。
血の鎖は切れることはない。
軋轢があるのはマフィアたち犯罪組織の方だ、国の上層部からすればどっちもどっち、潰しあってくれる越したことは無い。
チェバンを弾圧してきたのは常に宗教、国を追われて逃げる先には必ず違う神がいる、神は寛容ではない、異物の混入を許してはくれなかった。
国を担いで逃げ回り、生きるために男も女も、子供から老人まで剣と銃を持ち戦った、チェバンは同胞の血と屍の上に築かれている。
一代や二代のマフィアとは経験と覚悟に天地の差がある、安易な金儲けのための犯罪とは違うのだ。
そんなチェバンにもドルムント建国を境に改革が訪れた、戦争は犯罪へと形を変えたのだ。
「少佐、ボルツがムートンの西に現れました」
「ハイマウント・コミッションの一角、リヒト・ファミリーを皆殺しです」
「リヒト・ファミリー?敵対組織だったか」
「いいえ、辺境の田舎マフィア、取るに足らない連中ですがノーマン領の一部を縄張りにしていたようです、タイミングが良くありません」
「今、ラインハウゼン王家の注目を引いてはせっかく立ち上げた流通販路が露呈しかねません、今までの投資とこれからの利益を失う事になれば大損害です」
「まったく!……旧世代の遺物め、何を考えている!?」
「諜報部に属してはいるが組織の範疇に収まらぬでは使い勝手が悪すぎる、何処へでも噛みついていい時代ではないというのに、僕らとて誰かと手を結び、腰を折らねばならぬ時もある、余計なところへ喧嘩を売って僕達の努力を無に帰されてはかなわない」
少佐と呼ばれた男は若く美形だ、濃い茶色の短髪に刈り上げ櫛が入れられオイルで整髪されている、着ている服はどれも清潔で折り目が付いた新品だ。
一見しただけでは貴族の嫡男、しかしその小さく絞られた黒目は抜け目のなさを表している、若くして成り上がったのには理由がある。
「いくら独立戦争時代の英雄だとしても勝手に暴れまわられてはかなわない、そろそろ退場頂きたいものだ」
「諜報部の誰かに後を追わせますか」
「むう……」
少佐は暫く顎に拳を当てて考えていた、その薄い唇が口角を不敵に上げる。
「いえ、新しい作戦を彼に与えることにしましょう」
「作戦ですか?」
「そうです、無理難題で達成不能な命令……神獣暗殺なんていかがでしょう」
「神獣様の寝所はアンドス山脈のアコンガ山の何処かにあると言われていますが生身の人が行ける場所ではありません、神出鬼没の神獣に会う事が出来るのは神獣神官のみ、いくら狼といえども完遂は困難でしょう」
「アコンガ山の薄い空気の中で弱ったところをこの際始末してしまいましょう」
「チェバンとは幾つもの頭を持つヒュドラ、腐った頭は自ら嚙み千切る、そして再び代わりの頭が生えてくる、滅びることのない怪物」
「次世代の実践的訓練といたしましょう」
「もはや剣など狼同様に遺物、最新の銃を持って英霊を天に葬送してください」
「神獣の足元に葬られるとは栄誉ですね」
二人はショットグラスにホワイトウォッカを満たすとアコンガに向けて献杯した。
その施設はマフィアというより軍隊、建物は基地と言った方がふさわしい、基地の中に町がある。
ドルトムントとは実質チェバン一族の軍事政権国家だ。
国家の収入源は外貨によるところが大きい、武器、麻薬、人身売買……そしてテロの請負。
独立してから周辺の国家との関係は悪くない、商売でも政治的にも、そして血も濃く入り込んでいる、輸出品の一つは女、チェバンの女たちは美しい、商品として世代を超えて選抜され創られた商品なのだ。
奴隷ではない、その美しさを武器に嫁ぐ先は貴族であり政治家、国の中枢を担う男たちをターゲットにする。
血の鎖は切れることはない。
軋轢があるのはマフィアたち犯罪組織の方だ、国の上層部からすればどっちもどっち、潰しあってくれる越したことは無い。
チェバンを弾圧してきたのは常に宗教、国を追われて逃げる先には必ず違う神がいる、神は寛容ではない、異物の混入を許してはくれなかった。
国を担いで逃げ回り、生きるために男も女も、子供から老人まで剣と銃を持ち戦った、チェバンは同胞の血と屍の上に築かれている。
一代や二代のマフィアとは経験と覚悟に天地の差がある、安易な金儲けのための犯罪とは違うのだ。
そんなチェバンにもドルムント建国を境に改革が訪れた、戦争は犯罪へと形を変えたのだ。
「少佐、ボルツがムートンの西に現れました」
「ハイマウント・コミッションの一角、リヒト・ファミリーを皆殺しです」
「リヒト・ファミリー?敵対組織だったか」
「いいえ、辺境の田舎マフィア、取るに足らない連中ですがノーマン領の一部を縄張りにしていたようです、タイミングが良くありません」
「今、ラインハウゼン王家の注目を引いてはせっかく立ち上げた流通販路が露呈しかねません、今までの投資とこれからの利益を失う事になれば大損害です」
「まったく!……旧世代の遺物め、何を考えている!?」
「諜報部に属してはいるが組織の範疇に収まらぬでは使い勝手が悪すぎる、何処へでも噛みついていい時代ではないというのに、僕らとて誰かと手を結び、腰を折らねばならぬ時もある、余計なところへ喧嘩を売って僕達の努力を無に帰されてはかなわない」
少佐と呼ばれた男は若く美形だ、濃い茶色の短髪に刈り上げ櫛が入れられオイルで整髪されている、着ている服はどれも清潔で折り目が付いた新品だ。
一見しただけでは貴族の嫡男、しかしその小さく絞られた黒目は抜け目のなさを表している、若くして成り上がったのには理由がある。
「いくら独立戦争時代の英雄だとしても勝手に暴れまわられてはかなわない、そろそろ退場頂きたいものだ」
「諜報部の誰かに後を追わせますか」
「むう……」
少佐は暫く顎に拳を当てて考えていた、その薄い唇が口角を不敵に上げる。
「いえ、新しい作戦を彼に与えることにしましょう」
「作戦ですか?」
「そうです、無理難題で達成不能な命令……神獣暗殺なんていかがでしょう」
「神獣様の寝所はアンドス山脈のアコンガ山の何処かにあると言われていますが生身の人が行ける場所ではありません、神出鬼没の神獣に会う事が出来るのは神獣神官のみ、いくら狼といえども完遂は困難でしょう」
「アコンガ山の薄い空気の中で弱ったところをこの際始末してしまいましょう」
「チェバンとは幾つもの頭を持つヒュドラ、腐った頭は自ら嚙み千切る、そして再び代わりの頭が生えてくる、滅びることのない怪物」
「次世代の実践的訓練といたしましょう」
「もはや剣など狼同様に遺物、最新の銃を持って英霊を天に葬送してください」
「神獣の足元に葬られるとは栄誉ですね」
二人はショットグラスにホワイトウォッカを満たすとアコンガに向けて献杯した。
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