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第54話 禁断の手
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ゴミの様な週末を乗り越えると学校生活が始まる。
ミズキが笑顔で走ってくる。
「おはよう!!」
「おはよう。」
「練習どうだった?」
「疲れた・・・しかも母ちゃんが勝手にチームの総監督に話してしまった・・・」
「でもそれで状況が変わればいいんじゃない?」
「変わらないよ・・・」
祐輝とミズキはもはや恋人の様だった。
下駄箱の上履きを祐輝が取ってミズキの前に出すと脱いだ靴を何も言わずに下駄箱に入れて会話をしながら教室に入っていく。
男子生徒よりもミズキといる時間が長かった。
休み時間になるとナインズの現状を話していた。
「それにしても大変だねえ。 最近問題になっているパワハラだ。」
「最近ニュースになってるね。」
「社会に出てあんな風にされたら嫌だなあ。」
現代ではパワハラに対してかなり厳しくされているが祐輝達が中学生の頃はまだパワハラという言葉が今ほど認識されていなかった。
祐輝達が受けているのは言うまでもなく過度なパワハラであって指導ではない。
エルドが受けている仕打ちは理解に苦しむ。
「へえ。 エルド君って隣のクラスの?」
「そうそう。 あのやる気なさそうな顔のやつ。」
「ふふ。 それもパワハラ!」
「ああ・・・やってもうた。」
「ふふふ!」
実際問題深刻なナインズ事情。
真美が大間総監督に対応を求めているがそれ次第で祐輝達の未来は変わってしまう。
真面目に練習をしたいのにさせてもらえない。
だが祐輝はどこかで諦めていた。
「まあもう越田には勝てないよ。 ただでさえ力の差はあるのに練習できてないし。 こうしている今もあいつは上手くなっているからね。」
「今日もランニングして壁当て行こうよお。」
「そうだね。 今となってはそれが一番練習になってる。」
そして祐輝は禁断の技術を手にしてしまう。
学校が終わりミズキとランニングをしていつもの公園に行くと壁当てを始めた。
ストレートをしっかり投げると祐輝は跳ね返ってきたボールを見つめる。
「カーブかあ。」
「カーブ? なにそれ?」
「変化球。 カーブ投げれば越田を抑えられるかな。」
体が未発達なまま祐輝は負担の大きい変化球に手を出そうとしていた。
成長が止まり、筋肉がしっかりつくまでは手を出すべきではない。
怪我のリスクが大幅に上がるからだ。
だがこれ以上の成長を期待できない現状で越田と戦うには変化球が必要だった。
どうせ内野ゴロに打ち取ってもエラー癖のついている後輩達ではアウトにできない。
越田に勝つには三振を取るしかなかった。
だが越田はストレートは確実に当ててくる。
祐輝はボールの握り方を変えてカーブの握り方にしてみた。
そして壁に向かってボールを投げると一瞬すっぽ抜けた様にボールが外れたが軌道を変化させて真ん中にすとんっと入った。
「おお!!」
「えー凄い! なに今のー!?」
「カーブだよこれが。」
「凄いじゃん!!」
一球にして投げられた祐輝の才能は確かに本物だった。
だが非常に危険な事に手を出してしまった。
祐輝はその後もカーブを何球も投げた。
「あーあ。 めっちゃ良い変化する。 佐藤コーチに怒られるなあ。」
「どうして怒られるの?」
「怪我しやすくなるんだってさ。」
「ええ!? じゃあ止めなよ!!」
「いや。 どうせ鈴木監督には何も教えてもらえないし。 ちゃんとケアすれば大丈夫だよ。 今投げても全然痛くないし。」
「いいのかな・・・」
祐輝はカーブを習得した。
その変化量はなかなかで相手バッターの顔の近くから真ん中へ入る。
かなり打ちにくい球だった。
今週末には練習試合がある。
祐輝はカーブを投げるのが楽しみだった。
ミズキは心配そうにしているが気にしていない。
壁当てを終えるとゆっくりとストレッチをして家に帰った。
ミズキが笑顔で走ってくる。
「おはよう!!」
「おはよう。」
「練習どうだった?」
「疲れた・・・しかも母ちゃんが勝手にチームの総監督に話してしまった・・・」
「でもそれで状況が変わればいいんじゃない?」
「変わらないよ・・・」
祐輝とミズキはもはや恋人の様だった。
下駄箱の上履きを祐輝が取ってミズキの前に出すと脱いだ靴を何も言わずに下駄箱に入れて会話をしながら教室に入っていく。
男子生徒よりもミズキといる時間が長かった。
休み時間になるとナインズの現状を話していた。
「それにしても大変だねえ。 最近問題になっているパワハラだ。」
「最近ニュースになってるね。」
「社会に出てあんな風にされたら嫌だなあ。」
現代ではパワハラに対してかなり厳しくされているが祐輝達が中学生の頃はまだパワハラという言葉が今ほど認識されていなかった。
祐輝達が受けているのは言うまでもなく過度なパワハラであって指導ではない。
エルドが受けている仕打ちは理解に苦しむ。
「へえ。 エルド君って隣のクラスの?」
「そうそう。 あのやる気なさそうな顔のやつ。」
「ふふ。 それもパワハラ!」
「ああ・・・やってもうた。」
「ふふふ!」
実際問題深刻なナインズ事情。
真美が大間総監督に対応を求めているがそれ次第で祐輝達の未来は変わってしまう。
真面目に練習をしたいのにさせてもらえない。
だが祐輝はどこかで諦めていた。
「まあもう越田には勝てないよ。 ただでさえ力の差はあるのに練習できてないし。 こうしている今もあいつは上手くなっているからね。」
「今日もランニングして壁当て行こうよお。」
「そうだね。 今となってはそれが一番練習になってる。」
そして祐輝は禁断の技術を手にしてしまう。
学校が終わりミズキとランニングをしていつもの公園に行くと壁当てを始めた。
ストレートをしっかり投げると祐輝は跳ね返ってきたボールを見つめる。
「カーブかあ。」
「カーブ? なにそれ?」
「変化球。 カーブ投げれば越田を抑えられるかな。」
体が未発達なまま祐輝は負担の大きい変化球に手を出そうとしていた。
成長が止まり、筋肉がしっかりつくまでは手を出すべきではない。
怪我のリスクが大幅に上がるからだ。
だがこれ以上の成長を期待できない現状で越田と戦うには変化球が必要だった。
どうせ内野ゴロに打ち取ってもエラー癖のついている後輩達ではアウトにできない。
越田に勝つには三振を取るしかなかった。
だが越田はストレートは確実に当ててくる。
祐輝はボールの握り方を変えてカーブの握り方にしてみた。
そして壁に向かってボールを投げると一瞬すっぽ抜けた様にボールが外れたが軌道を変化させて真ん中にすとんっと入った。
「おお!!」
「えー凄い! なに今のー!?」
「カーブだよこれが。」
「凄いじゃん!!」
一球にして投げられた祐輝の才能は確かに本物だった。
だが非常に危険な事に手を出してしまった。
祐輝はその後もカーブを何球も投げた。
「あーあ。 めっちゃ良い変化する。 佐藤コーチに怒られるなあ。」
「どうして怒られるの?」
「怪我しやすくなるんだってさ。」
「ええ!? じゃあ止めなよ!!」
「いや。 どうせ鈴木監督には何も教えてもらえないし。 ちゃんとケアすれば大丈夫だよ。 今投げても全然痛くないし。」
「いいのかな・・・」
祐輝はカーブを習得した。
その変化量はなかなかで相手バッターの顔の近くから真ん中へ入る。
かなり打ちにくい球だった。
今週末には練習試合がある。
祐輝はカーブを投げるのが楽しみだった。
ミズキは心配そうにしているが気にしていない。
壁当てを終えるとゆっくりとストレッチをして家に帰った。
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