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第75話 越田の真の力
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越田がキャッチャーミットを持って祐輝の球を捕っている。
祐輝のストレートを破裂音にすら聞こえる快音で捕球する越田はミズキすらも驚かせる。
「プロみたいに上手に捕るねー。」
「祐輝の彼女はそんな事わかるのか?」
越田は不思議そうにミズキを見ていると得意げに「野球を一生懸命勉強したのー!」と話している。
驚く越田は目を細めて「祐輝にはもったいないな。」と皮肉を込めてニヤけると祐輝は鼻で笑った。
しばらくキャッチボールをすると越田はしゃがみ込んで「さあ来い。」とミットを構えた。
ゆったりとした柔らかい投球フォームからストレートを全力で投げ込んだ。
シュー!!っと風を切るストレートは物凄い回転数で越田のミットへ吸い込まれていった。
祐輝は自分でも目を見開くほど驚いていた。
「今のストレートは140ぐらい出てたかもな。」
「そ、そうだね…自分でも驚いたよ。」
「いいぞ桜木よりずっと速い! もっと投げろよ祐輝。」
どれだけナインズの状況が悪くても祐輝は必ず走り込みをして努力だけは怠らなかった。
それもこれも越田という怪童を倒したい一心で支えてくれるミズキのおかげだった。
中学生活も残り少ないが今日まで頑張れたのはこの2人のおかげだ。
祐輝の感謝の気持ちは140キロのストレートとなり形となった。
さすがに越田も唸る快速は高校生でもなかなか出す事のできない世界だった。
「なあ越田。 このストレートとカーブとフォーク投げれば全国でも戦えると思わない?」
「フォーク投げれるのか!?」
「実はそのフォークを投げるために越田に付き合ってほしい。」
祐輝はわかっていた。
例えフォークを投げられたとしても越田じゃないと捕れないと。
実際に選考会で桜木のフォークを捕っていたキャッチャーは捕球というよりは身体に何とかぶつけて受け止めていた。
何度も投げられるフォークを身体で受け止め続けたせいか打席ではヒットを打つ事すらできなかった。
しかし越田は打者として全国レベルなだけでなくキャッチャーとしても全国レベルだった。
祐輝は越田とのバッテリーの時だけ投げる必殺の変化球を習得しようとしていた。
「いいぜ祐輝。 投げろよフォーク。」
越田がどっしりと構えると祐輝はゆったりとした投球フォームから2本の指だけで投げたがユラユラと弱いストレートが越田のミットに入った。
すると越田は立ち上がり祐輝の顔を見た。
凛々しい表情で少し近づいてくると「何処に行くかわからなくてもいいから全力で腕振れ。」と強い口調で言うと祐輝は頷いてもう一度二本指でボールを挟んだ。
心配そうに見つめるミズキに微笑むと祐輝は真剣な眼差しで越田のミットだけを見つめた。
そして民家にまでボールが吹き飛ぶ事を覚悟してとにかく全力で腕を振った。
すると。
「おお!」
「祐輝君凄いよ! めっちゃ落ちたよー!」
あまりに落差のあるフォークに越田ですら声を上げてしまうほどだった。
祐輝の手元から離れたボールは一瞬はストレートの様に素早く投げられたが越田が捕球する直前にすとんっと落ちた。
しかし喜ぶどころか祐輝は不思議そうにしていた。
そして「ストレートもう一回投げさせて。」と言うと越田は頷いた。
投げ込んだストレートはやはり140キロ近い快速となり次にフォークを投げるとこれもまた凄まじい落差で落ちた。
「俺じゃない。 凄いのは越田だ。」
祐輝はその時思っていた。
自分の限界以上の投球ができていると。
天才キャッチャー越田はピッチャーに最大限以上の力を引き出させる才能があると感じていた。
強気な姿勢と落ち着いた表情。
分厚い大きな身体は毎日投げ続けた壁当ての壁の様に頑丈で投げやすかった。
生まれながらにしてキャッチャーの才能に恵まれた越田だから投げられると祐輝は確信していた。
「やっぱすげえなあ越田。」
「祐輝どんどん投げろよ! 全国行くぞ!」
青年になりかけの少年達は己の実力を確かめつつ、日本の頂点を目指して投げ込み続けた。
祐輝のストレートを破裂音にすら聞こえる快音で捕球する越田はミズキすらも驚かせる。
「プロみたいに上手に捕るねー。」
「祐輝の彼女はそんな事わかるのか?」
越田は不思議そうにミズキを見ていると得意げに「野球を一生懸命勉強したのー!」と話している。
驚く越田は目を細めて「祐輝にはもったいないな。」と皮肉を込めてニヤけると祐輝は鼻で笑った。
しばらくキャッチボールをすると越田はしゃがみ込んで「さあ来い。」とミットを構えた。
ゆったりとした柔らかい投球フォームからストレートを全力で投げ込んだ。
シュー!!っと風を切るストレートは物凄い回転数で越田のミットへ吸い込まれていった。
祐輝は自分でも目を見開くほど驚いていた。
「今のストレートは140ぐらい出てたかもな。」
「そ、そうだね…自分でも驚いたよ。」
「いいぞ桜木よりずっと速い! もっと投げろよ祐輝。」
どれだけナインズの状況が悪くても祐輝は必ず走り込みをして努力だけは怠らなかった。
それもこれも越田という怪童を倒したい一心で支えてくれるミズキのおかげだった。
中学生活も残り少ないが今日まで頑張れたのはこの2人のおかげだ。
祐輝の感謝の気持ちは140キロのストレートとなり形となった。
さすがに越田も唸る快速は高校生でもなかなか出す事のできない世界だった。
「なあ越田。 このストレートとカーブとフォーク投げれば全国でも戦えると思わない?」
「フォーク投げれるのか!?」
「実はそのフォークを投げるために越田に付き合ってほしい。」
祐輝はわかっていた。
例えフォークを投げられたとしても越田じゃないと捕れないと。
実際に選考会で桜木のフォークを捕っていたキャッチャーは捕球というよりは身体に何とかぶつけて受け止めていた。
何度も投げられるフォークを身体で受け止め続けたせいか打席ではヒットを打つ事すらできなかった。
しかし越田は打者として全国レベルなだけでなくキャッチャーとしても全国レベルだった。
祐輝は越田とのバッテリーの時だけ投げる必殺の変化球を習得しようとしていた。
「いいぜ祐輝。 投げろよフォーク。」
越田がどっしりと構えると祐輝はゆったりとした投球フォームから2本の指だけで投げたがユラユラと弱いストレートが越田のミットに入った。
すると越田は立ち上がり祐輝の顔を見た。
凛々しい表情で少し近づいてくると「何処に行くかわからなくてもいいから全力で腕振れ。」と強い口調で言うと祐輝は頷いてもう一度二本指でボールを挟んだ。
心配そうに見つめるミズキに微笑むと祐輝は真剣な眼差しで越田のミットだけを見つめた。
そして民家にまでボールが吹き飛ぶ事を覚悟してとにかく全力で腕を振った。
すると。
「おお!」
「祐輝君凄いよ! めっちゃ落ちたよー!」
あまりに落差のあるフォークに越田ですら声を上げてしまうほどだった。
祐輝の手元から離れたボールは一瞬はストレートの様に素早く投げられたが越田が捕球する直前にすとんっと落ちた。
しかし喜ぶどころか祐輝は不思議そうにしていた。
そして「ストレートもう一回投げさせて。」と言うと越田は頷いた。
投げ込んだストレートはやはり140キロ近い快速となり次にフォークを投げるとこれもまた凄まじい落差で落ちた。
「俺じゃない。 凄いのは越田だ。」
祐輝はその時思っていた。
自分の限界以上の投球ができていると。
天才キャッチャー越田はピッチャーに最大限以上の力を引き出させる才能があると感じていた。
強気な姿勢と落ち着いた表情。
分厚い大きな身体は毎日投げ続けた壁当ての壁の様に頑丈で投げやすかった。
生まれながらにしてキャッチャーの才能に恵まれた越田だから投げられると祐輝は確信していた。
「やっぱすげえなあ越田。」
「祐輝どんどん投げろよ! 全国行くぞ!」
青年になりかけの少年達は己の実力を確かめつつ、日本の頂点を目指して投げ込み続けた。
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