【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒

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プロローグ

第2話

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翌日。
お父様と義妹ライラは朝から王城へと向かった。お母様もお茶会の誘いがあったそうなので、この伯爵家には使用人と私しかいない。
その内に私はライラの部屋へと入り、何かを書いていた手帳を探す。


「…ここ……かしら。──あったわ。」


他人の手帳を盗み見るなどしてはいけないことだけれど、今回ばかりは許してもらいたいわ。やむを得ない理由というものだから。


「これは……異国の文字ね…。」


ライラが書いていたのは、『ニホン語』と呼ばれる異国の文字だった。伯爵家の書庫にも幾つかこの字の本があるので、私は読むことが出来た。
何故ライラが知っているのかは分からないが、実の両親がニホン語を書く国の出身だったのかもしれない。
そして手帳に書かれていたのは……


《乙女ゲーム【癒しの華へ】
ヒロインのライラ・セルティラスが、攻略対象の4人と恋に落ちるように対象達の好感度を上げ、学園卒業後のパーティーにてプロポーズされれば攻略成功となるゲーム。

『攻略対象』
王道系王子様、クレスディア・ファシア
魔法系真面目公爵令息、ゼルヴィーサ・ベレンア
騎士家系の侯爵令息、カイル・ケイテース
大商人の長子、ドーフェン・シルド

ライバルキャラ、悪役令嬢メリーア・シェルラート

──》


1ページ目には、このような人物紹介らしき事が書かれていた。どれもライラが昨日、私に質問してきた方達ばかりね。
次頁では私が教えたことを含め、この5名について詳しく書かれている。
気になったのはメリーア様についての部分だ。


《メリーア・シェルラート
悪役令嬢でありヒロインの邪魔をするキャラ。
平民を穢らわしい生き物として見ているはずだが、何故か人々から好かれ王太子との関係も良好らしい…。転生者の可能性あり。
要注意人物──》


やはり昨日のライラの言葉は聞き間違いではなかった。
未だ『ヒロイン』の意味はよく分からないけれど、『乙女ゲーム』と『悪役令嬢』については何となく理解出来た。
しかし分からないことの方が多いのは事実。書かれていることから私なりに解釈しただけだから、理解したことが間違いかもしれない。

とりあえずライラが手帳に書いた内容を、私が持ってきていた紙に写しておく。
未来に起こる出来事らしきものもあったので、本当に起こるのか確かめる意味もあった。

今は学園が2ヶ月間の冬季休暇中であり、それが明ければ2月から新年度として再開する。
私は王太子殿下やメリーア様と同じ学年で、共に生徒会として活動している。来年度は2年生であり、ライラが新入生として入ってくる予定だ。
もしも手帳に書かれていた通りの事が起こった場合は、冬季休暇が明ける前にメリーア様のシェルラート公爵家を訪ね、話を聞いておくべきでしょう。


「《伯爵家の養子となった2日後に国王に呼び出され、光魔法の使い手だと認められる。》…ね。その次は《街での買い物中に視察に来ていたクレスディアと初めて会う、出会いイベント!》……。」


ライラが買い物に行きたいと言い出した場合、私もついて行ってみようと思った。
視察ならば、忙しく街などにあまり行かないというクレスディア殿下と出会ってもおかしくはない。
それにきっとライラは殿下と会う場所を知っている。ついて行けば何か知ることが出来るかもしれない──


「へレア様、伯爵様がお呼びです。」
「分かったわ。」


夕食後、侍女のレイナからそう言われ、私はお父様の書斎へと向かった。
中に入ると、お父様は一枚の紙を渡してきた。買い物のリストのようね。


「……これは…?」
「明日、ライラと一緒にそこに書いてある物を買ってきてくれ。」
「…ドレスや学園で使う道具ですか。」
「ライラは元平民だからな。必要な物が揃っていないんだ。既に学園へ通っているへレアが居る方が良いだろう。使用人も連れて行くといい。」
「分かりました。」


またしても好機だわ。
手帳に書かれていた『出会いイベント』とやらに、ライラと私が一緒だったのかもしれない。しかしそうではない可能性もあるので、今の私にとっては行動を共にできる口実が出来たのは丁度良かったわ。
明日はしっかりとライラを注視しておくとしましょうか。
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