【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒

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2章

第31話

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私達はあえて校舎裏へ向かった。目的はライラの計画を潰す為ね。


「君……手紙を渡してきた子だよな。」
「あ…は、はいっ。」


ドーフェンが、待っていた女子生徒に声をかけた。彼女は急に現れたドーフェンに驚きつつも、しきりに彼の後方を見ているわね。ライラが来ないか確認しているのでしょう。
私とメリーア様はライラの背中越しにドーフェン達の様子を窺っていた。
ライラは背後にいる私達に気付いていない。それほど前方に注意を向けているようね。
ライラとメリーア様を会わせない方が良いと判断した私は、見えない場所で待っていて頂くことにしたわ。


「ライラ。」
「お、お義姉様!?何故ここに…?」
「ドーフェンが呼び出しを受けたと聞いたから、告白かもしれないと思って来たのよ。あなたも彼女から聞いたの?」
「えぇっと……そうなのですっ。同じクラスの女の子で、相談を受けていて…。今日告白すると言っていたので、様子を見に……。」


大嘘ね。目が泳いでいるもの。
それに手には魔道具らしきものを握りしめている。綺麗な髪飾りに見えるけれど、闇魔法の魔力が見えるわね。
分かっていてあえて聞きましょうか。


「あら?手に持っているのは何かしら。」
「これは…ただの髪飾りですよ。」
「本当ね。綺麗だわ。」
「……あ!そうよ!良いことを思い付いたわ。」


急に豹変するライラ。1人で愚痴をこぼしている時の彼女…、本来のライラの態度に変わったわ。
近付いてくるライラに嫌な予感がしたので、離れようと思った。しかし軽く走って来た彼女を、あからさまに避けることなど出来なかった…。


「──ふふっ、これでいいわ。よく似合っていますよ、お義姉様?」
「……ありがとう。ライラから付けてくれるなんて嬉しいわ。」
「私からの贈り物ですよ。」


髪飾りを付けられてしまったわ…。全身を一瞬寒気が襲ったけれど、問題なく自我ははっきりしている。これからは演技しなければならないわね……。
この魔道具は、たとえ外したとしても効果は持続し続けるようになっているようね。つまり所有者であるライラが取り上げない限りは、魅了が解けない仕組みということ。
クレスディア殿下に付けたものより魅了効果は少し弱いけれど、持続効果が高められているわね。


「ねぇお義姉様。頼み事を聞いて欲しいのです。」
「ライラの頼みなら何でも聞くわよ。」
「では遠慮なく。このブレスレットを、ドーフェンに付けて欲しいの。勿論、私の名前は出してはいけませんよ。」
「分かったわ。」


私はライラからブレスレットを受け取り、ドーフェンと女子生徒が居る方へと向かっていく。
メリーア様は私が魅了されていると思い、どう動くべきか迷われているようね。ドーフェンに一歩ずつ近付いて行く私を止めに来てしまえば、ライラの標的はすぐにメリーア様に変わるでしょう。それを避ける為に、何とかしなければ…。


「……たとえ私がライラに陥れられようとも、ドーフェンまで魅了されるのは止めないと!…っ?!」


こちらに向かってこようとするメリーア様の足元を、闇魔法にて固定する。影を利用した魔法だけれど、かけられた本人は何故動けないのか分からないわ。
自己犠牲を覚悟してでも、他人を助けようとするメリーア様には申し訳ないけれど、これ以上状況が悪化するのは阻止しなければならない。


「ふふふっ……これでドーフェンも手中に収まるわね。義姉のへレアを利用することで、攻略対象彼らの警戒心も薄くなる…。へレアを魅了するだけで一石二鳥……いいえ、それ以上ね。」


後ろで喜ぶ声が聞こえてくるが、ライラの思い通りには絶対にさせない。
私は受け取ったブレスレットへ少しずつ魔力を注いでいく。ドーフェンの元へ着く前に、魅了魔法の術式を無効化することに成功したわ。
次は完全に魔道具を破壊し、魅了魔法を無効化させたことを隠蔽しなければ。


「ドーフェン。」
「あっ、へレア。」
「少し腕を貸してくれるかしら。私からのプレゼントよ。」


私の様子に違和感を感じているドーフェンは、手を出し渋る。しかし彼の腕を掴み、強引に引き寄せた。
より強い力で私の手を振りほどこうとする彼に、少し睨んで視線で訴えたわ。


(黙って従って。大丈夫だから。)
(嘘だろ。魅了されてるんじゃないか?)


疑いの眼差しを向けてくる。だがこちらも目を真っ直ぐに見て、ドーフェンに伝える。
『大丈夫』…と。
すると『信じる』という意思を伝えてきたわ。彼を裏切ってはいけない。
私はドーフェンの手首にブレスレットを付けたけれど、手に通ったと同時に闇魔法を使った。


「わっ!?」
「どうして!?」


闇魔法を使用した瞬間に、ブレスレットが砕け散った。
驚くふりをしつつ、ライラを見る。彼女は驚いていたけれど、数秒後には歯を食いしばっていたわ。きっとかなり苛ついているでしょうね。
さて、計画を潰された彼女は次にどう動くのかしら…。
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