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本編
第1話
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「──姉様!今日もお誘いくださり、感謝致しますっ。」
「いいのよ。私だって会いたかったもの。こちらこそ来てくれてありがとう。」
2人の子供がお茶会をしている。1人は9歳、もう1人は7歳の女の子だ。楽しげな雰囲気で、7歳の方は『姉様』と呼んでとても慕い、互いに家族のように接している様子。
だがその光景は一瞬にして切り替わる……。
それは数年後、ある日のパーティー会場での光景だった。
「お前が行ってきた悪事の数々を、今ここで明かすッ。」
「あ、悪事など私は行っておりません…!」
「嘘を吐くな!」
「兄上!お話は後ほどお伺いします。ここは私に免じて、どうか!」
「エイルス、いくら婚約者とはいえ罪人を庇うのか?ここで断罪するからこそ意味があるのではないか!」
そう言う1人の男。男の瞳を見ると、その心の内が透けて見えた。エイルスと呼ばれた彼は、優秀だと噂されている人物だ。玉座を確実に手に入れたい男にとって、優秀な弟は邪魔な存在だった。だがエイルスは弱みすら見せない為、彼を陥れるために男が考えた策が、婚約者を犯罪者に仕立て上げることだったのだ。
ありもしない罪を、男は周囲にも聞こえるような声量で言い放つ。だが何も知らない貴族達は疑いの眼差しを罪人と呼ばれた女性に向けた。そしてその後、男が用意していた衛兵によって女性は捕らえられた。完全なる冤罪だ。
「待って…!姉様は……姉様はそんな事をするような人じゃないっ!」
そんな声も虚しく、『姉様』は連行されてしまった……。
──ゆっくり目を開くと、眩しい陽光が窓から差し込んでいた。天気はとても良いが、気分は最悪だった。
(またあの時の夢……か。けれどもう少しで私の望み通りの結果になる。ふふっ、楽しみね。国王陛下も彼の素質には疑念を抱き始めているようだし…。)
窓の外を見ながら薄く笑みを浮かべ、未来に胸を躍らせる。
私は彼の婚約者になる為に計画的に行動してきた。その甲斐あってか、3年間の学園生活終了と同時に、15歳で婚約者になれた。──私ことレイシア・ユシェナートは、王太子ヴィアルス・ディア・セイランの婚約者になったのだ。
それから早1年半。私は17歳に、ヴィアルスはもうすぐ21歳になろうとしていた。現在、計画通りとはいえ面白い事が起きている。
昼過ぎ。私は王太子の婚約者として、王城にて仕事をしていた。既に慣れているのだが仕事量が多く、とても忙しい。理由は単純明快で、ヴィアルスが私に全ての仕事をやらせているからだ。
だがこんなところで時間を無駄にしては勿体ない。そう考えている私は、3時頃には仕事を終わらせてユシェナート侯爵家へと帰ってきていた。
「レイシア様。本日も王太子殿下がお越しになられていますが…。」
「私は会わなくて良いわ。お目当ては彼女なのだから。」
「承知致しました。」
私は自室にて本を読む。しかしそんなひと時を邪魔してくる声が聞こえた。本人達は邪魔をしているつもりはないのだろうが、普通に声が大きくて煩かった。
部屋の窓から見えるのは、ユシェナート侯爵家内にある広い庭だ。そこには2人の人影があった。1人はヴィアルスだ。私付きの侍女メアが、王太子が来ていると言っていたので気にならない。
そしてもう1人はと言うと、1歳下の妹ミフェラだ。数ヶ月前から、ヴィアルスは私ではなくミフェラに会いに来るようになっていた。元から私目当てに侯爵家を尋ねたことなど、一度もなかったのだが。
2人が親密になったきっかけは王族並びに貴族が集う成人パーティーの時だ。この王国では15歳で成人となる。故に、1年の終わりに15歳となった貴族令嬢・令息を祝うパーティーが開かれるのだが、その時にミフェラから話しかけたのが始まりだった。
ヴィアルスは彼女の美しさに一目惚れし、婚約者だけでなく仕事すら放って恋に盲目になっている。残念な人だ。私としてはありがたいのだが……まぁそれはおいておこう。
「……煩いわね。ここから注意でもしようかしら。」
「失礼ながら、それはお止めになった方がよろしいかと。」
「分かっているわよ……。言ってみただけ。それにしても、婚約者の前で堂々と浮気とは。素晴らしい精神をお持ちよね。」
「褒めているのか貶しているのか……。」
「何か言ったかしら?」
「いいえ、何も。」
メアは私が7歳の時からずっと、私付きの侍女をしている。信頼厚き側近というような関係だ。何でも言い合える仲とは、こういうことを言うのだろうと感じている。
しかし本当に外の2人が煩い…。特にヴィアルスの声だ。節度もとい行儀や礼儀作法を守れないとは、「自分は無能です」と言っているのと同義だろう。こんな男に、未来の王国を任せることなど出来やしない。
「話を聞きましょうか。」
「…と仰いますと?」
「メア、静かに。」
「……盗み聞きですか…。」
「その言い方は外聞が悪いわよ。静かにしていたら偶然、聞こえただけ。良い?」
「畏まりました。」
さて、何が聞こえてくるのだろうか──
「いいのよ。私だって会いたかったもの。こちらこそ来てくれてありがとう。」
2人の子供がお茶会をしている。1人は9歳、もう1人は7歳の女の子だ。楽しげな雰囲気で、7歳の方は『姉様』と呼んでとても慕い、互いに家族のように接している様子。
だがその光景は一瞬にして切り替わる……。
それは数年後、ある日のパーティー会場での光景だった。
「お前が行ってきた悪事の数々を、今ここで明かすッ。」
「あ、悪事など私は行っておりません…!」
「嘘を吐くな!」
「兄上!お話は後ほどお伺いします。ここは私に免じて、どうか!」
「エイルス、いくら婚約者とはいえ罪人を庇うのか?ここで断罪するからこそ意味があるのではないか!」
そう言う1人の男。男の瞳を見ると、その心の内が透けて見えた。エイルスと呼ばれた彼は、優秀だと噂されている人物だ。玉座を確実に手に入れたい男にとって、優秀な弟は邪魔な存在だった。だがエイルスは弱みすら見せない為、彼を陥れるために男が考えた策が、婚約者を犯罪者に仕立て上げることだったのだ。
ありもしない罪を、男は周囲にも聞こえるような声量で言い放つ。だが何も知らない貴族達は疑いの眼差しを罪人と呼ばれた女性に向けた。そしてその後、男が用意していた衛兵によって女性は捕らえられた。完全なる冤罪だ。
「待って…!姉様は……姉様はそんな事をするような人じゃないっ!」
そんな声も虚しく、『姉様』は連行されてしまった……。
──ゆっくり目を開くと、眩しい陽光が窓から差し込んでいた。天気はとても良いが、気分は最悪だった。
(またあの時の夢……か。けれどもう少しで私の望み通りの結果になる。ふふっ、楽しみね。国王陛下も彼の素質には疑念を抱き始めているようだし…。)
窓の外を見ながら薄く笑みを浮かべ、未来に胸を躍らせる。
私は彼の婚約者になる為に計画的に行動してきた。その甲斐あってか、3年間の学園生活終了と同時に、15歳で婚約者になれた。──私ことレイシア・ユシェナートは、王太子ヴィアルス・ディア・セイランの婚約者になったのだ。
それから早1年半。私は17歳に、ヴィアルスはもうすぐ21歳になろうとしていた。現在、計画通りとはいえ面白い事が起きている。
昼過ぎ。私は王太子の婚約者として、王城にて仕事をしていた。既に慣れているのだが仕事量が多く、とても忙しい。理由は単純明快で、ヴィアルスが私に全ての仕事をやらせているからだ。
だがこんなところで時間を無駄にしては勿体ない。そう考えている私は、3時頃には仕事を終わらせてユシェナート侯爵家へと帰ってきていた。
「レイシア様。本日も王太子殿下がお越しになられていますが…。」
「私は会わなくて良いわ。お目当ては彼女なのだから。」
「承知致しました。」
私は自室にて本を読む。しかしそんなひと時を邪魔してくる声が聞こえた。本人達は邪魔をしているつもりはないのだろうが、普通に声が大きくて煩かった。
部屋の窓から見えるのは、ユシェナート侯爵家内にある広い庭だ。そこには2人の人影があった。1人はヴィアルスだ。私付きの侍女メアが、王太子が来ていると言っていたので気にならない。
そしてもう1人はと言うと、1歳下の妹ミフェラだ。数ヶ月前から、ヴィアルスは私ではなくミフェラに会いに来るようになっていた。元から私目当てに侯爵家を尋ねたことなど、一度もなかったのだが。
2人が親密になったきっかけは王族並びに貴族が集う成人パーティーの時だ。この王国では15歳で成人となる。故に、1年の終わりに15歳となった貴族令嬢・令息を祝うパーティーが開かれるのだが、その時にミフェラから話しかけたのが始まりだった。
ヴィアルスは彼女の美しさに一目惚れし、婚約者だけでなく仕事すら放って恋に盲目になっている。残念な人だ。私としてはありがたいのだが……まぁそれはおいておこう。
「……煩いわね。ここから注意でもしようかしら。」
「失礼ながら、それはお止めになった方がよろしいかと。」
「分かっているわよ……。言ってみただけ。それにしても、婚約者の前で堂々と浮気とは。素晴らしい精神をお持ちよね。」
「褒めているのか貶しているのか……。」
「何か言ったかしら?」
「いいえ、何も。」
メアは私が7歳の時からずっと、私付きの侍女をしている。信頼厚き側近というような関係だ。何でも言い合える仲とは、こういうことを言うのだろうと感じている。
しかし本当に外の2人が煩い…。特にヴィアルスの声だ。節度もとい行儀や礼儀作法を守れないとは、「自分は無能です」と言っているのと同義だろう。こんな男に、未来の王国を任せることなど出来やしない。
「話を聞きましょうか。」
「…と仰いますと?」
「メア、静かに。」
「……盗み聞きですか…。」
「その言い方は外聞が悪いわよ。静かにしていたら偶然、聞こえただけ。良い?」
「畏まりました。」
さて、何が聞こえてくるのだろうか──
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