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9話
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「エギュアス殿。」
「急に……ってもういいや。今回は気付けなかったぜ。」
「そう。私もまた一段階、強くなれた気がするわね。」
「それ以上強くなったら、お前を止められるもんはいねぇだろうな。」
「世界は広いから分からないわよ?」
「よく言うぜ。それで、何用だ?」
「勇者ゼイス一行が、魔族領に入ったわ。それを伝えに来たの。」
「ほう?俺でも気付いていないのだが?」
「お粗末な不可視化の魔法を使って、『三軍』の監視をすり抜けたようね。というより、防壁を飛び越えた様子。」
「中々やるようだな。それで、今はどこにいるんだ?」
「真っ直ぐに魔王城へと向かってきているわ。でも正面の入口ではなく、窓を割って侵入しようというつもりかしら。私からアレーユに伝えておきましょう。」
「頼んだ。そういえば、シェルアは勇者パーティーとは因縁があるんだったな。」
「ええ……。」
「お前が戦って構わん。生かすも殺すも、お前の自由としよう。」
「ありがとう……良いのかしら?」
「無論だ。俺はまだ、勇者と会ったことすらないからな。攻撃してくるなら用事はしないが、今は何もされていない。奴らが侵入してきた時は、相手してやれ。」
「……感謝するわ。でも私は貴方と一緒で争いを望まない。実力差を分からせたら、友好を取るように働きかけるつもりよ。」
「それはありがたいな。だが勇者がお前を恨むようにならないか?」
「その時はその時よ。だけど師匠から復讐はするなと言われているし、殺すことはしない。」
「分かったぜ。だが俺と戦闘になったならば……。」
「そうなったら、私は目を瞑るわ。それに、私が手を下すわけじゃないから問題ないわよ。」
「了解した。今回の対応については、頼んでおく。」
「ええ。ではまた後で。」
私は瞬間移動にて、アレーユの近くに移動した。
驚きの声が聞こえたが、気にせずアレーユの元へ向かう。
王城内を巡回しているようだ。
「アレーユ。」
「こっ、これはシェルア総軍団長様!」
「いきなり来てごめんなさいね。少し頼みがあるの。」
「何でしょうか。」
「実は、もうすぐ西側から侵入者が来るわ。この場所で待機していれば、不可視化の魔法をかけた5人組と鉢合わせするはずよ。」
「不可視化…ですか。」
「私を基準にしないで。奴らの魔法はお粗末なものよ。貴女でも簡単に見破れるわ。けれど部下達には見えないでしょうね。」
「分かりました。侵入者は、私が軍団長として相手をしましょう。」
「頼んだわ。もしもの時は、私も参戦させてもらうわね。」
「承知致しました。」
そう短くやり取りをした後、私は自室へと戻り探知系の魔法にて、勇者パーティーの動向を確認する。
まさに今、窓から侵入した瞬間だった。
そして入口の方へ向かったかと思うと、攻撃魔法を撃ち、足止めをした。
「なるほど……考えたわね。確かにこれで増援は難しくなる。でもその通路を進めば、軍団長の一人、アレーユがいるわよ。ふふっ、ようやくね。ようやく、お前と戦える……。」
もしシェルアの周りに誰かいたならば、背筋が凍る思いをしただろう。
それほどまでに低い声と睨みつけるような眼光で、勇者ゼイスを魔法越しに見ていた。
そしてついに……
「アレーユが負けたわね…。いい勝負になると思っていたのだけれど、以前よりかなり実力を上げた様子。とはいえ、私やエギュアス殿の相手には欠けるわね。」
私は瞬間移動でアレーユの後ろに移動する。
歩いていき、影で隠れている私の姿が見えてくると同時に、勇者の顔が引き攣っていった。
「アレーユ。負けてしまったのね。回復魔法をかけるわ。」
「ありがとうございます。申し訳ありません。私の不覚にございます……。」
「下がって良いわよ。部下達を連れて、警戒にあたりなさい。これは命令よ。」
「承知致しました。総軍団長シェルア様。」
アレーユは部下を連れて走り去っていった。
この場には、私と勇者パーティーの6人のみとなる。
アレーユの部下に抑えられていた4人も、何事も無かったかのように立ち上がる。
メーシアが回復魔法をかけたようだ。
「シェルア……貴様っ!」
「お久しぶりですね、勇者様?」
「総軍団長だと?!」
「もう貴方には、敬語も敬称も必要ないわね。私は既にあの国の者ではないし、お前に楯突いたとしても家族すらこの世にいない私には、奪われるものはもうないのだから。」
「何だと?」
「魔王エギュアス殿は私の実力を認めてくれたのよ。お馬鹿な誰かさんと違ってね。」
「言わせておけば次々と……。」
「今の私は、魔族領『総軍団長』シェルア。お前とはそもそも敵対している。立ち向かって来ると良い。それとも逃げるか?」
「はあ?手前如きに、俺が逃げるとでも?初級魔法しか使えないカス魔法使い相手に、背を向けるとでも思っているのか!?はあぁぁぁ!!」
剣を振り上げながらこちらに向かってくるゼイスに対し、私は瞬間移動で他のパーティーメンバー達の前に立つ。
そして拘束魔法で動きを封じた。
「その魔法は動くと痛いわよ。茨だもの。棘が刺さってしまうから、極力動かない方が身のためね。」
「貴様……今どうやって俺の前から移動した…!?」
「瞬間移動だけれど、分からなかったのかしら?」
「なっ……瞬間移動だと!?何故貴様如きが、上級魔法を扱える!?」
「あら?いつ私が『初級魔法しか使えない』、なんてことを言ったのかしら。」
「何だと……?」
「Aランク程度、私は初級魔法で倒せるの。お前に花を持たせてやるためだけに、私はわざわざ動きを止める攻撃のみを使っていた。私の攻撃魔法を見たことは一度もないわね。見せてあげる。『炎弾』。」
「舐められたもんだな。初級魔法の『炎弾』くらい、防御出来……うわあぁぁ!!」
私の魔法により、ゼイスは吹っ飛んだ。
ゼイスの後ろで拘束していたパーティーメンバー達には、結界を張っていたので被害はない。
そして起き上がれずに苦痛に顔を歪ませている。
「貴様ぁっ!」
「惨めね。自信満々だったくせに。実力差は身をもって分かったでしょう。お前達全員を、瞬間移動で隣国まで送ってあげるわ。命までは取らないでおくとしましょう。」
「くっ…!」
「それと、一つ教えてあげるわ。私は魔王エギュアス殿と一対一で戦えるの。自分達の弱さを、然と覚えておくことね。ではまたいつか。」
私は勇者パーティー全員を転移させた。
否、2人だけ残していた……。
「急に……ってもういいや。今回は気付けなかったぜ。」
「そう。私もまた一段階、強くなれた気がするわね。」
「それ以上強くなったら、お前を止められるもんはいねぇだろうな。」
「世界は広いから分からないわよ?」
「よく言うぜ。それで、何用だ?」
「勇者ゼイス一行が、魔族領に入ったわ。それを伝えに来たの。」
「ほう?俺でも気付いていないのだが?」
「お粗末な不可視化の魔法を使って、『三軍』の監視をすり抜けたようね。というより、防壁を飛び越えた様子。」
「中々やるようだな。それで、今はどこにいるんだ?」
「真っ直ぐに魔王城へと向かってきているわ。でも正面の入口ではなく、窓を割って侵入しようというつもりかしら。私からアレーユに伝えておきましょう。」
「頼んだ。そういえば、シェルアは勇者パーティーとは因縁があるんだったな。」
「ええ……。」
「お前が戦って構わん。生かすも殺すも、お前の自由としよう。」
「ありがとう……良いのかしら?」
「無論だ。俺はまだ、勇者と会ったことすらないからな。攻撃してくるなら用事はしないが、今は何もされていない。奴らが侵入してきた時は、相手してやれ。」
「……感謝するわ。でも私は貴方と一緒で争いを望まない。実力差を分からせたら、友好を取るように働きかけるつもりよ。」
「それはありがたいな。だが勇者がお前を恨むようにならないか?」
「その時はその時よ。だけど師匠から復讐はするなと言われているし、殺すことはしない。」
「分かったぜ。だが俺と戦闘になったならば……。」
「そうなったら、私は目を瞑るわ。それに、私が手を下すわけじゃないから問題ないわよ。」
「了解した。今回の対応については、頼んでおく。」
「ええ。ではまた後で。」
私は瞬間移動にて、アレーユの近くに移動した。
驚きの声が聞こえたが、気にせずアレーユの元へ向かう。
王城内を巡回しているようだ。
「アレーユ。」
「こっ、これはシェルア総軍団長様!」
「いきなり来てごめんなさいね。少し頼みがあるの。」
「何でしょうか。」
「実は、もうすぐ西側から侵入者が来るわ。この場所で待機していれば、不可視化の魔法をかけた5人組と鉢合わせするはずよ。」
「不可視化…ですか。」
「私を基準にしないで。奴らの魔法はお粗末なものよ。貴女でも簡単に見破れるわ。けれど部下達には見えないでしょうね。」
「分かりました。侵入者は、私が軍団長として相手をしましょう。」
「頼んだわ。もしもの時は、私も参戦させてもらうわね。」
「承知致しました。」
そう短くやり取りをした後、私は自室へと戻り探知系の魔法にて、勇者パーティーの動向を確認する。
まさに今、窓から侵入した瞬間だった。
そして入口の方へ向かったかと思うと、攻撃魔法を撃ち、足止めをした。
「なるほど……考えたわね。確かにこれで増援は難しくなる。でもその通路を進めば、軍団長の一人、アレーユがいるわよ。ふふっ、ようやくね。ようやく、お前と戦える……。」
もしシェルアの周りに誰かいたならば、背筋が凍る思いをしただろう。
それほどまでに低い声と睨みつけるような眼光で、勇者ゼイスを魔法越しに見ていた。
そしてついに……
「アレーユが負けたわね…。いい勝負になると思っていたのだけれど、以前よりかなり実力を上げた様子。とはいえ、私やエギュアス殿の相手には欠けるわね。」
私は瞬間移動でアレーユの後ろに移動する。
歩いていき、影で隠れている私の姿が見えてくると同時に、勇者の顔が引き攣っていった。
「アレーユ。負けてしまったのね。回復魔法をかけるわ。」
「ありがとうございます。申し訳ありません。私の不覚にございます……。」
「下がって良いわよ。部下達を連れて、警戒にあたりなさい。これは命令よ。」
「承知致しました。総軍団長シェルア様。」
アレーユは部下を連れて走り去っていった。
この場には、私と勇者パーティーの6人のみとなる。
アレーユの部下に抑えられていた4人も、何事も無かったかのように立ち上がる。
メーシアが回復魔法をかけたようだ。
「シェルア……貴様っ!」
「お久しぶりですね、勇者様?」
「総軍団長だと?!」
「もう貴方には、敬語も敬称も必要ないわね。私は既にあの国の者ではないし、お前に楯突いたとしても家族すらこの世にいない私には、奪われるものはもうないのだから。」
「何だと?」
「魔王エギュアス殿は私の実力を認めてくれたのよ。お馬鹿な誰かさんと違ってね。」
「言わせておけば次々と……。」
「今の私は、魔族領『総軍団長』シェルア。お前とはそもそも敵対している。立ち向かって来ると良い。それとも逃げるか?」
「はあ?手前如きに、俺が逃げるとでも?初級魔法しか使えないカス魔法使い相手に、背を向けるとでも思っているのか!?はあぁぁぁ!!」
剣を振り上げながらこちらに向かってくるゼイスに対し、私は瞬間移動で他のパーティーメンバー達の前に立つ。
そして拘束魔法で動きを封じた。
「その魔法は動くと痛いわよ。茨だもの。棘が刺さってしまうから、極力動かない方が身のためね。」
「貴様……今どうやって俺の前から移動した…!?」
「瞬間移動だけれど、分からなかったのかしら?」
「なっ……瞬間移動だと!?何故貴様如きが、上級魔法を扱える!?」
「あら?いつ私が『初級魔法しか使えない』、なんてことを言ったのかしら。」
「何だと……?」
「Aランク程度、私は初級魔法で倒せるの。お前に花を持たせてやるためだけに、私はわざわざ動きを止める攻撃のみを使っていた。私の攻撃魔法を見たことは一度もないわね。見せてあげる。『炎弾』。」
「舐められたもんだな。初級魔法の『炎弾』くらい、防御出来……うわあぁぁ!!」
私の魔法により、ゼイスは吹っ飛んだ。
ゼイスの後ろで拘束していたパーティーメンバー達には、結界を張っていたので被害はない。
そして起き上がれずに苦痛に顔を歪ませている。
「貴様ぁっ!」
「惨めね。自信満々だったくせに。実力差は身をもって分かったでしょう。お前達全員を、瞬間移動で隣国まで送ってあげるわ。命までは取らないでおくとしましょう。」
「くっ…!」
「それと、一つ教えてあげるわ。私は魔王エギュアス殿と一対一で戦えるの。自分達の弱さを、然と覚えておくことね。ではまたいつか。」
私は勇者パーティー全員を転移させた。
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