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閑話2
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閑話2
私の母親は不明だ。
居るとはされているが、お父様が教えてくれる事は無かった。
勿論秘書の人達や私のお世話をしてくれる人達に聞いてもいまだに明確な回答は得られずにいる。
誰だか忘れたけれど、私の事を「試験管ベイビーだろ!」と言った人が居た気がするけれど、翌日以降その人は居なくなっていた。
誰に聞いてもその人の存在を否定され、そんな人間は初めから居なかった様に言われてしまったような気がする。
私自身も朧気に覚えている程度なので、今となってはどうでもいい。
私が普通の学校に通学している事と、母親が不明な事
は比較的早い段階で公にされていた。
そのせいか七菱のネタを探るジャーナリストや週刊誌の記者はガードが甘いと思ったのか私を標的にしていた。
そしてその度比較的頻繁にその人々が行方不明になっていた。
その後は決まって定期的に怪死、不審死がニュースとなって報道されていた。
毎回事件性が全く無いとされて、警察も禄に捜査していない様だった。
確かに異様に数が多い様な気もするけれど、
「朝起きてこないと思ったら死んでいた」なんて外傷も無く、薬物反応も無かったなら自然死、突然死とせざるをえない。
これを面白おかしくセンセーショナルに報道している報道機関もいたけれど、いつの間にか七菱グループに吸収合併されていた。
当然それ以降報道もパッタリ無くなった。
確かその報道機関が七菱グループに吸収合併される事が決まった時にお父様の執務室へ呼ばれた。
その時初めてその部屋に入る事を許された。
少し嬉しかった反面、緊張したのも覚えている。
部屋に入ると如何にも不機嫌な表情のお父様が睨み付ける様に私を見ていた。
「お前も七菱の一員ならあの程度の小バエ自分でどうにか出来なかったのか?」
「・・・!申し訳ありません!」
今まで完全に放任されていたと思っていたので、こんなに直接怒られた事なんて無かった。
だから初めて味わう恐怖の反面、嬉しさもあった。
「だが完全に無駄とは言えないな。お前のお陰で良い拾いモノも出来たからな」
一体何の事だろうか?
あの報道機関が手には入ったのがそんなに嬉しかったのだろうか?
その為に一体何人が命を落としたのだろう・・・。
「…お前は本当に記者達が死んでいると思っているのか?」
まるで私の心を読んだような発言で動揺を隠すことが出来なかったの。
「そ、そんな事は決して・・・」
「私なりに敬意を払ってニュースにしてやっているつもりなんだがな。」
ああ、この人は完全に報道を使う側の人間なのだと再確認した。
「もう一度聞くが本当に記者達は死んでいると思っているのか?これは質問だ。」
お父様の雰囲気が先程からガラッと変わり、部屋の温度が下がり、重力が増したかのような重苦しい雰囲気になった。
「・・・!?」
いきなりそんな事言われても分かるわけ無い!
でも多分ここで正しい答えを出すことが出来ないと取り返しが付かない"何か"が起こる気がしてならない。
多分これはお父様から私への抜き打ち試験なんだと思う。
よく考えないと・・・。
でもだからこそ分かった事もある。
これは報道はいつも出身地、名前、年齢が必ずどの報道機関でも報道されていた。
出身地も年齢もバラバラ共通点は無かった。
分からない・・・。
恐怖と極度の緊張から普段使った事のない部分が活性化された気がする。
与えられたヒントを線で結んでいかないと。
嫌な汗が幾つも背中を伝う。
お父様はジッと私を見つめているだけなのに更に威圧感で押しつぶされそうになってくる。
まるで内側から物理的に内臓が押しつぶされそうな感じが強くなっている。
私が生きられる残り時間があまり無いことが本能的に理解出来る。
その間も私の中で何かが蠢き解を勝手に導いていく。
決して気持ちの良い感触では無いが、今はそんな贅沢を言っている余裕はない。
その時世界の全てがスローモーションになり、自分の時間が何百倍にも引き延ばされ、自分の思考が何重にも分裂したような感覚。
どれ位その感覚だったか分からないけれど、いつの間にか勝手に言葉を呟いていた。
「もしかして、諜報員の採用試験・・・?」
「ほぅ?何故そう思った?」
「ニュースにする事で表社会から消して裏で仕事をするのには都合が良い・・・。採用した人が諜報活動をする為に覚悟をさせるためだから・・・です。」
「なるほど?」
「国家権力を牛耳るお父様なら警察に圧力を掛けるなんて呼吸をする事くらい当たり前みたいなので・・・。死体なんてどうにでも都合出来るはず・・・です」
「ほぅ・・・」
お父様はゆっくりとした歩みで私に近付いてくる。
そして唐突に汗でじっとり濡れた私の頭を撫でてくれた。
「合格だ。今の感覚を忘れるなよ?いつもお前も見ているからな」
そう言うとまるで少年の様にニヤッとし、お父様は足早に部屋を後にした。
その笑顔にもドキッとしたけれど、
ドアの外に待機していた特殊清掃でもするかの如く装備を整えた作業員が一緒に去っていったのを見て嫌な意味でドキドキした。
もしあの回答に間違っていたら私はここで処分されていたのだろうか・・・?
私は膝から崩れ落ちるとそのまま意識を失い、
数日寝込んだらしい。
あの時以来のあの感覚だったけれど、白ちゃん計画は絶対に成功させたいな♪
私の母親は不明だ。
居るとはされているが、お父様が教えてくれる事は無かった。
勿論秘書の人達や私のお世話をしてくれる人達に聞いてもいまだに明確な回答は得られずにいる。
誰だか忘れたけれど、私の事を「試験管ベイビーだろ!」と言った人が居た気がするけれど、翌日以降その人は居なくなっていた。
誰に聞いてもその人の存在を否定され、そんな人間は初めから居なかった様に言われてしまったような気がする。
私自身も朧気に覚えている程度なので、今となってはどうでもいい。
私が普通の学校に通学している事と、母親が不明な事
は比較的早い段階で公にされていた。
そのせいか七菱のネタを探るジャーナリストや週刊誌の記者はガードが甘いと思ったのか私を標的にしていた。
そしてその度比較的頻繁にその人々が行方不明になっていた。
その後は決まって定期的に怪死、不審死がニュースとなって報道されていた。
毎回事件性が全く無いとされて、警察も禄に捜査していない様だった。
確かに異様に数が多い様な気もするけれど、
「朝起きてこないと思ったら死んでいた」なんて外傷も無く、薬物反応も無かったなら自然死、突然死とせざるをえない。
これを面白おかしくセンセーショナルに報道している報道機関もいたけれど、いつの間にか七菱グループに吸収合併されていた。
当然それ以降報道もパッタリ無くなった。
確かその報道機関が七菱グループに吸収合併される事が決まった時にお父様の執務室へ呼ばれた。
その時初めてその部屋に入る事を許された。
少し嬉しかった反面、緊張したのも覚えている。
部屋に入ると如何にも不機嫌な表情のお父様が睨み付ける様に私を見ていた。
「お前も七菱の一員ならあの程度の小バエ自分でどうにか出来なかったのか?」
「・・・!申し訳ありません!」
今まで完全に放任されていたと思っていたので、こんなに直接怒られた事なんて無かった。
だから初めて味わう恐怖の反面、嬉しさもあった。
「だが完全に無駄とは言えないな。お前のお陰で良い拾いモノも出来たからな」
一体何の事だろうか?
あの報道機関が手には入ったのがそんなに嬉しかったのだろうか?
その為に一体何人が命を落としたのだろう・・・。
「…お前は本当に記者達が死んでいると思っているのか?」
まるで私の心を読んだような発言で動揺を隠すことが出来なかったの。
「そ、そんな事は決して・・・」
「私なりに敬意を払ってニュースにしてやっているつもりなんだがな。」
ああ、この人は完全に報道を使う側の人間なのだと再確認した。
「もう一度聞くが本当に記者達は死んでいると思っているのか?これは質問だ。」
お父様の雰囲気が先程からガラッと変わり、部屋の温度が下がり、重力が増したかのような重苦しい雰囲気になった。
「・・・!?」
いきなりそんな事言われても分かるわけ無い!
でも多分ここで正しい答えを出すことが出来ないと取り返しが付かない"何か"が起こる気がしてならない。
多分これはお父様から私への抜き打ち試験なんだと思う。
よく考えないと・・・。
でもだからこそ分かった事もある。
これは報道はいつも出身地、名前、年齢が必ずどの報道機関でも報道されていた。
出身地も年齢もバラバラ共通点は無かった。
分からない・・・。
恐怖と極度の緊張から普段使った事のない部分が活性化された気がする。
与えられたヒントを線で結んでいかないと。
嫌な汗が幾つも背中を伝う。
お父様はジッと私を見つめているだけなのに更に威圧感で押しつぶされそうになってくる。
まるで内側から物理的に内臓が押しつぶされそうな感じが強くなっている。
私が生きられる残り時間があまり無いことが本能的に理解出来る。
その間も私の中で何かが蠢き解を勝手に導いていく。
決して気持ちの良い感触では無いが、今はそんな贅沢を言っている余裕はない。
その時世界の全てがスローモーションになり、自分の時間が何百倍にも引き延ばされ、自分の思考が何重にも分裂したような感覚。
どれ位その感覚だったか分からないけれど、いつの間にか勝手に言葉を呟いていた。
「もしかして、諜報員の採用試験・・・?」
「ほぅ?何故そう思った?」
「ニュースにする事で表社会から消して裏で仕事をするのには都合が良い・・・。採用した人が諜報活動をする為に覚悟をさせるためだから・・・です。」
「なるほど?」
「国家権力を牛耳るお父様なら警察に圧力を掛けるなんて呼吸をする事くらい当たり前みたいなので・・・。死体なんてどうにでも都合出来るはず・・・です」
「ほぅ・・・」
お父様はゆっくりとした歩みで私に近付いてくる。
そして唐突に汗でじっとり濡れた私の頭を撫でてくれた。
「合格だ。今の感覚を忘れるなよ?いつもお前も見ているからな」
そう言うとまるで少年の様にニヤッとし、お父様は足早に部屋を後にした。
その笑顔にもドキッとしたけれど、
ドアの外に待機していた特殊清掃でもするかの如く装備を整えた作業員が一緒に去っていったのを見て嫌な意味でドキドキした。
もしあの回答に間違っていたら私はここで処分されていたのだろうか・・・?
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