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本編
34.城内見学〜模擬戦〜
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「ラフィリア国騎士団副長のアーロンだ!」
「ラフィリア国竜王、リュカ・ラフィリア」
5メートルほど間を開けて立つフィルと、指導者……アーロン。ここ修練エリアには闘技場も入っており、フィルは今そこに移動していた。
竜王と騎士団副長が模擬戦を行う。その情報はあっという間に城内へ、そして城下町へと伝わった。おかげで軽く千人は入る客席は満席、立ち見も溢れかえり、魔道具を使ってテレビ中継のようなものまでなされた。
「なんかもうお祭りと化してない?」
「だね。フィルってやっぱり人気なんだ」
「というか普通に考えても国王と騎士団副長が模擬戦ってだけでそそられるだろ」
「「確かに」」
そう話す咲夜達がいるのはもちろん最前列中央の特等席。と、咲夜のすぐ隣に座っていた小学5年生ぐらいの少女がおもむろに立ち上がった。
「それでは五体満足を原則として、私……魔法魔術教団長アビーの審判の元、模擬戦を執り行います」
幼さが残る、だが凛と響く声。一瞬会場が静まり、次いで熱をはらんだ歓声がビリビリと空気を震わせる。それと同時、安全対策と防音を兼ねた結界がアビーによって張られた。
結界が客席の喧騒を消し去ったその瞬間、初めに切り込んだのはアーロンの方だった。
視点:フィル
アビーの結界で遠ざかっていく喧騒を聞きながら、指先でそっと愛剣の柄に触れる。サクヤに会ってからは1度も使っていないから、1年ぶりぐらいか。
俺の剣の銘は、白銀龍。代々竜王がたまわる最強だが扱いが非常に難しい剣だ。少し細身な刀身を持つ不思議な片手剣……いや、咲夜が刀と言っていたな。
水属性と相性が良い。白銀の、鏡のような刀身に鱗を象った、こちらは白金の柄。ただし全てを跳ね返す輝きではなく白の内にある僅かな色合い。
「せあっ!」
あれこれ考えている間にアーロンが突っ込んできた。大上段に構えられた大剣が俺の頭を割ろうと意気込むかのように、ギラリと醜悪にかがやく。
アーロンの剣は馬鹿正直で、見極めるのは容易い。しかし一撃が重く、下手な防御など簡単に破られる。そして今、上からの攻撃を受けることは愚か、流すことすらできない。
「避けるなよ」
「嫌だな」
初撃をバックステップを踏んで避け、切り返してきた剣を今度は受ける。受けられるとは思っていなかったのか、少しばかり重心がズレたのを見て反撃にでる。
まずは受けた剣を弾くイメージで押し返す。そのうえで1歩詰め寄り、横に薙ぐ。……まずは一撃。続いて仰け反った体に素早く切り返して二撃目。
さらにもう一歩詰め寄って三撃目。だがそこで弾いたアーロンの剣が向かってくるのを感じて大きく後ろに跳ぶ。
「ったく。相変わらず速いな」
「お前こそちょっとはマシになったな?今までだったらあと二撃は余裕だった。……でもやっぱり軽いな」
俺の剣は、とにかく速い。だが、それゆえ一撃が軽いのだ。実際、今の三撃でアーロンに負わせた傷は表面だけ。鎧の下に三本赤い線が走っているだけなのだ。
「おい、リグア山で採れた最高純度を誇る黒曜石をドワーフの頭領に鍛えてもらった鎧を、紙の如く斬って、軽いだと?」
「それ、修繕不可能になるまで壊されたくなかったらさっさと脱げ」
「あぁそうだな。少しはって期待したが、やっぱ無理か」
苦々しくそう言って、いそいそと鎧を脱ぐアーロンを暫く無言で見る。そしてティーシャツにジーパンというシンプルな出で立ちの俺と同じくらい薄着になってからやっと、再開の合図を出した。
「次は俺から行くぞ?」
「おう」
刀を中段に構えた俺は、澄んだトパーズ色のアーロンの瞳をしっかりと見据えて駆け出した。
「ラフィリア国竜王、リュカ・ラフィリア」
5メートルほど間を開けて立つフィルと、指導者……アーロン。ここ修練エリアには闘技場も入っており、フィルは今そこに移動していた。
竜王と騎士団副長が模擬戦を行う。その情報はあっという間に城内へ、そして城下町へと伝わった。おかげで軽く千人は入る客席は満席、立ち見も溢れかえり、魔道具を使ってテレビ中継のようなものまでなされた。
「なんかもうお祭りと化してない?」
「だね。フィルってやっぱり人気なんだ」
「というか普通に考えても国王と騎士団副長が模擬戦ってだけでそそられるだろ」
「「確かに」」
そう話す咲夜達がいるのはもちろん最前列中央の特等席。と、咲夜のすぐ隣に座っていた小学5年生ぐらいの少女がおもむろに立ち上がった。
「それでは五体満足を原則として、私……魔法魔術教団長アビーの審判の元、模擬戦を執り行います」
幼さが残る、だが凛と響く声。一瞬会場が静まり、次いで熱をはらんだ歓声がビリビリと空気を震わせる。それと同時、安全対策と防音を兼ねた結界がアビーによって張られた。
結界が客席の喧騒を消し去ったその瞬間、初めに切り込んだのはアーロンの方だった。
視点:フィル
アビーの結界で遠ざかっていく喧騒を聞きながら、指先でそっと愛剣の柄に触れる。サクヤに会ってからは1度も使っていないから、1年ぶりぐらいか。
俺の剣の銘は、白銀龍。代々竜王がたまわる最強だが扱いが非常に難しい剣だ。少し細身な刀身を持つ不思議な片手剣……いや、咲夜が刀と言っていたな。
水属性と相性が良い。白銀の、鏡のような刀身に鱗を象った、こちらは白金の柄。ただし全てを跳ね返す輝きではなく白の内にある僅かな色合い。
「せあっ!」
あれこれ考えている間にアーロンが突っ込んできた。大上段に構えられた大剣が俺の頭を割ろうと意気込むかのように、ギラリと醜悪にかがやく。
アーロンの剣は馬鹿正直で、見極めるのは容易い。しかし一撃が重く、下手な防御など簡単に破られる。そして今、上からの攻撃を受けることは愚か、流すことすらできない。
「避けるなよ」
「嫌だな」
初撃をバックステップを踏んで避け、切り返してきた剣を今度は受ける。受けられるとは思っていなかったのか、少しばかり重心がズレたのを見て反撃にでる。
まずは受けた剣を弾くイメージで押し返す。そのうえで1歩詰め寄り、横に薙ぐ。……まずは一撃。続いて仰け反った体に素早く切り返して二撃目。
さらにもう一歩詰め寄って三撃目。だがそこで弾いたアーロンの剣が向かってくるのを感じて大きく後ろに跳ぶ。
「ったく。相変わらず速いな」
「お前こそちょっとはマシになったな?今までだったらあと二撃は余裕だった。……でもやっぱり軽いな」
俺の剣は、とにかく速い。だが、それゆえ一撃が軽いのだ。実際、今の三撃でアーロンに負わせた傷は表面だけ。鎧の下に三本赤い線が走っているだけなのだ。
「おい、リグア山で採れた最高純度を誇る黒曜石をドワーフの頭領に鍛えてもらった鎧を、紙の如く斬って、軽いだと?」
「それ、修繕不可能になるまで壊されたくなかったらさっさと脱げ」
「あぁそうだな。少しはって期待したが、やっぱ無理か」
苦々しくそう言って、いそいそと鎧を脱ぐアーロンを暫く無言で見る。そしてティーシャツにジーパンというシンプルな出で立ちの俺と同じくらい薄着になってからやっと、再開の合図を出した。
「次は俺から行くぞ?」
「おう」
刀を中段に構えた俺は、澄んだトパーズ色のアーロンの瞳をしっかりと見据えて駆け出した。
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