219 / 361
月の砂漠のかぐや姫 第217話
しおりを挟む
「では、決めさせていただきます。王柔殿、奥の洞窟の方に入っていきましょう」
もともと、「奥の洞窟に入るのが良いと思う」と、自分の意見を王柔に話そうとしていた羽磋でしたが、それが最終的な判断になると思うと、緊張せずにはいられませんでした。
王柔は羽磋の判断に異論は唱えませんでした。自分では判断ができないからそれを任せたのですから、それは当然でした。ただ、羽磋が手前の洞窟でなくて奥の洞窟に入ると決めた理由については知りたいと思ったので、異論を唱えていると誤解されないように言葉を選びながら羽磋に確認をしました。
「わかりました、羽磋殿。おっしゃるように奥の洞窟に入りましょう。ただ、すみません、良かったらなのですが、羽磋殿が奥の洞窟を選んだ理由を教えていただいてもよろしいでしょうか。いえ、文句があるわけではないんです。自分ではどちらの洞窟も同じように思えていたので、どうして羽磋殿が奥の方を選ばれたのか、知りたいだけなんです」
「ええ、どうして僕が奥の方を選んだのかと王柔殿が思われるのは当然です。お気になさらないでください。もちろん、奥の方を選んだのには理由があります。こうして見ると二つの洞窟の間にはほとんど違いが無いように見えますが、実は昨日兎の面をつけて見比べたときに、はっきりとした違いがあることがわかったんです。それは、奥の洞窟の方が手前の洞窟よりも精霊の力が遥かに強く働いているということなんです」
「なるほど、精霊の力の違いですか」
羽磋に言われてみると、昨日この辺りでそのような話をしたような気もしてきました。王柔は目を凝らしながら二つの洞窟を見比べてみました。すると、兎の面を付けない状態でも、それらに違いがあることに気が付きました。それは、水が放つほのかな青い光の違いで、手前の洞窟よりも奥の洞窟の方が流れ込んでいる水が放つ青い光が強いのでした。
「羽磋殿の言葉を聞いた後で見比べると、青い光の強さの度合いが二つの洞窟で違うように思えますね。たしか、この青い光は精霊の力の現れでしたっけ」
「ええ、そうなんです。野営した場所で周囲と・・・・・・」
羽磋は一瞬、話し続けるのを躊躇しました。そして、素早く王柔に身体を寄せるとその袖を引いて、そっと理亜から離れました。この後に話すことは彼女には聞かせない方がいいと思ったからでした。
「・・・・・・理亜を兎の面を付けて見たときに、青い光が精霊の力の現れであることが分かったのです」
「理亜も、ですか」
ぐっと声の大きさを小さくして話を再開した羽磋にあわせて、王柔の声の大きさも小さくなりました。
「はい。青い光こそ放ちませんが、理亜の身体にも精霊の力が働いていることがはっきりとわかりました。もともと、僕たちがヤルダンにやってきたのは、動く砂岩の像と理亜の身体の不思議、その二つには精霊の力が働いているかもしれないと考えたからです」
「そうでしたね。母を待つ少女の奇岩が特に怪しいので、それが立つ場所を目指しているんですよね。まぁ、あれに精霊の力が働いていることは、怪しいどころか、はっきりしていますけど」
自分たちを何度も襲ってきた母を待つ少女の奇岩とサバクオオカミの奇岩を思い出しながら、王柔は苦々しい顔をしました。
「ええ、だからです。正直に申し上げて、どちらの洞窟が外につながっている可能性が高いかは、僕にはわかりません。ただ、今ヤルダンで起こっている不思議、理亜の身体に起こっている不思議に関連しているだろう精霊の力が強いのは、間違いなく奥の洞窟の方です。そうであれば、奥の洞窟に入った方が良いと思ったのです」
「ははぁ、よくわかりました。精霊の力が問題なのですから、その力が強い方に進めば、何らかの進展があるかもしれませんね。さすがは羽磋殿です」
羽磋の言葉に納得できたので、王柔の顔はぱっと明るくなりました。でも、何かに思い当たったのか、その顔に心配そうな表情が浮かび上がってきました。
「でも、羽磋殿。精霊の力が強い方に入っていって、その、例えば、怖い悪霊のようなものに出会ったりはしないですか・・・・・・」
そもそも彼らが今ここにいるのは、精霊の力で動き出した母を待つ少女の奇岩やサバクオオカミの奇岩に襲われたためです。そのことを思い出した心配性の王柔は、精霊の力が強い方の洞窟に入っていって、その力を放出している何かに襲われたりすることはないかと不安になったのでした。
このように王柔が先のことに不安を訴えると、頭からそれを否定する人も多くいましたし、彼のことを臆病者だと言って馬鹿にする人さえもいました。でも、王柔と一緒に母を待つ少女の奇岩に襲われた経験があるからか、羽磋は彼の言葉をもっともなものだと受け止めて、大きく頷いたのでした。
もともと、「奥の洞窟に入るのが良いと思う」と、自分の意見を王柔に話そうとしていた羽磋でしたが、それが最終的な判断になると思うと、緊張せずにはいられませんでした。
王柔は羽磋の判断に異論は唱えませんでした。自分では判断ができないからそれを任せたのですから、それは当然でした。ただ、羽磋が手前の洞窟でなくて奥の洞窟に入ると決めた理由については知りたいと思ったので、異論を唱えていると誤解されないように言葉を選びながら羽磋に確認をしました。
「わかりました、羽磋殿。おっしゃるように奥の洞窟に入りましょう。ただ、すみません、良かったらなのですが、羽磋殿が奥の洞窟を選んだ理由を教えていただいてもよろしいでしょうか。いえ、文句があるわけではないんです。自分ではどちらの洞窟も同じように思えていたので、どうして羽磋殿が奥の方を選ばれたのか、知りたいだけなんです」
「ええ、どうして僕が奥の方を選んだのかと王柔殿が思われるのは当然です。お気になさらないでください。もちろん、奥の方を選んだのには理由があります。こうして見ると二つの洞窟の間にはほとんど違いが無いように見えますが、実は昨日兎の面をつけて見比べたときに、はっきりとした違いがあることがわかったんです。それは、奥の洞窟の方が手前の洞窟よりも精霊の力が遥かに強く働いているということなんです」
「なるほど、精霊の力の違いですか」
羽磋に言われてみると、昨日この辺りでそのような話をしたような気もしてきました。王柔は目を凝らしながら二つの洞窟を見比べてみました。すると、兎の面を付けない状態でも、それらに違いがあることに気が付きました。それは、水が放つほのかな青い光の違いで、手前の洞窟よりも奥の洞窟の方が流れ込んでいる水が放つ青い光が強いのでした。
「羽磋殿の言葉を聞いた後で見比べると、青い光の強さの度合いが二つの洞窟で違うように思えますね。たしか、この青い光は精霊の力の現れでしたっけ」
「ええ、そうなんです。野営した場所で周囲と・・・・・・」
羽磋は一瞬、話し続けるのを躊躇しました。そして、素早く王柔に身体を寄せるとその袖を引いて、そっと理亜から離れました。この後に話すことは彼女には聞かせない方がいいと思ったからでした。
「・・・・・・理亜を兎の面を付けて見たときに、青い光が精霊の力の現れであることが分かったのです」
「理亜も、ですか」
ぐっと声の大きさを小さくして話を再開した羽磋にあわせて、王柔の声の大きさも小さくなりました。
「はい。青い光こそ放ちませんが、理亜の身体にも精霊の力が働いていることがはっきりとわかりました。もともと、僕たちがヤルダンにやってきたのは、動く砂岩の像と理亜の身体の不思議、その二つには精霊の力が働いているかもしれないと考えたからです」
「そうでしたね。母を待つ少女の奇岩が特に怪しいので、それが立つ場所を目指しているんですよね。まぁ、あれに精霊の力が働いていることは、怪しいどころか、はっきりしていますけど」
自分たちを何度も襲ってきた母を待つ少女の奇岩とサバクオオカミの奇岩を思い出しながら、王柔は苦々しい顔をしました。
「ええ、だからです。正直に申し上げて、どちらの洞窟が外につながっている可能性が高いかは、僕にはわかりません。ただ、今ヤルダンで起こっている不思議、理亜の身体に起こっている不思議に関連しているだろう精霊の力が強いのは、間違いなく奥の洞窟の方です。そうであれば、奥の洞窟に入った方が良いと思ったのです」
「ははぁ、よくわかりました。精霊の力が問題なのですから、その力が強い方に進めば、何らかの進展があるかもしれませんね。さすがは羽磋殿です」
羽磋の言葉に納得できたので、王柔の顔はぱっと明るくなりました。でも、何かに思い当たったのか、その顔に心配そうな表情が浮かび上がってきました。
「でも、羽磋殿。精霊の力が強い方に入っていって、その、例えば、怖い悪霊のようなものに出会ったりはしないですか・・・・・・」
そもそも彼らが今ここにいるのは、精霊の力で動き出した母を待つ少女の奇岩やサバクオオカミの奇岩に襲われたためです。そのことを思い出した心配性の王柔は、精霊の力が強い方の洞窟に入っていって、その力を放出している何かに襲われたりすることはないかと不安になったのでした。
このように王柔が先のことに不安を訴えると、頭からそれを否定する人も多くいましたし、彼のことを臆病者だと言って馬鹿にする人さえもいました。でも、王柔と一緒に母を待つ少女の奇岩に襲われた経験があるからか、羽磋は彼の言葉をもっともなものだと受け止めて、大きく頷いたのでした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる