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月の砂漠のかぐや姫 第240話
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羽磋と王柔は相手が自分と同じ考えであると知って、この地下の空間で目を覚ましてからもっとも嬉しそうな笑顔を浮かべました。そうです、お互いに言い合った通り、その震動は馬の足音、それも、多くの馬が一斉に走っている音でした。
では、その音はどこから聞こえてきているのでしょうか。
羽磋はパッと立ち上がると洞窟の壁に走り寄り、そこに耳をくっつけました。間違いありません。地面から伝わっていたのと同じ振動が、壁からも伝わってきました。そして、その壁から伝わる振動は地面から伝わるそれよりも、より強くハッキリとしたものでした。
「ああっ、冒頓殿たちが来てくれているんだっ」
羽磋は感激のあまり大声で叫びながら天井を見上げました。
羽磋と王柔が聞き取った馬の足音は、洞窟の前からでも後ろからでもなく、天井のさらに上の方から伝わってきていたのでした。ヤルダンを通り抜けようとする交易隊が奇岩たちに襲われるようになってから、王花の盗賊団はヤルダンの案内を行っていません。今、この洞窟の上部に広がっているであろうヤルダンを馬に乗って駆けている一隊は、母を待つ少女の奇岩が立つ場所を目指している冒頓の護衛隊であるとしか考えられませんでした。
交易路から川の中へと落下しこの地下の空間で目覚めてから、羽磋たちは精霊の力が強く働いている方を選んで進んできました。それは、冒頓たちが目指している母を待つ少女の奇岩が立つ場所は奇岩が動き出すという不思議の始まりの場所であり、精霊の力が強く働いているであろうと考えられるので、羽磋たちが地下の空間の中でその力が強く働いている方を選んで進んでいけば、彼らと合流できる可能性が高くなると考えたからでした。
その様に筋道を立てて考えてはみたものの、幾ら洞窟を進んでもこれまでのところは冒頓たちに近づいているという実感は得られていませんでした。食料が尽き飲み水も少なくなる中で、羽磋も王柔も不安と焦りがどんどんと心の上に積み重なって来て、それに押しつぶされるような気持ちがしてきていました。でも、この馬の足音が、彼らの心に圧し掛かっていた重しを一度に蹴り飛ばしてくれたのでした。これまでギュッと縮められていた心は、その反動で大きく広がり弾んでいました。
この馬の足音は、羽磋たちが考えるように、冒頓の護衛隊のものでした。
朝一番に母を待つ少女の奇岩が立つ広場へ突入できるようにと、そこへ続く道の手前で一夜を過ごした冒頓の護衛隊は、日が昇るのを待ちかねたようにして、周囲が明るくなるのと同時に一斉に馬を走らせて広場へと進入しました。この時に生じた多くの馬が大地を蹴る振動が、羽磋たちが閉じ込められている地中の洞窟にまで届いていたのでした。
「どうしたの、オージュ?」
理亜が怪訝そうな表情を浮かべて、王柔を見上げました。
無理もありません。理亜には心配を掛けないようにと、王柔も羽磋もできるだけ平静を装って彼女に接してはいましたが、それは「心配をしないでいいよ」という態度でしかありませんでした。その二人が、突然に何かとんでもなく嬉しい出来事があったかのように騒ぎだし、心の底からの喜びで顔を輝かせるようになったのですから。
「理亜、理亜っ。冒頓殿がね、冒頓殿が、そこまで来てくれているんだ。僕たちは・・・・・・。いや、うん。そうだ、もうすぐ、外へ出て、みんなに会えるよ。お腹いっぱい食べられるよ。だから、もう少し頑張ろうね、理亜」
王柔は状況が良くわかっていなさそうな理亜に、喜びで浮ついた勢いそのままにまくしたて始めました。でも、「僕たちは助かるよ、きっと」と口にしそうになったところで、慌ててて口を塞ぎ、言葉を変えました。「助かるよ」などと言ってはいけないと思ったのです。自分たちが「助からないかもしれない」状況にあるなんて理亜に思わさせまいと、これまで気を配ってきたのですから。
「うん、良かったネ、オージュッ」
理亜は嬉しそうに王柔に答えました。でも、冒頓たちと合流できそうだということよりも、むしろ王柔が嬉しそうにしているということに対して、その言葉と表情は向けられているようでした。
「羽磋殿、進みましょうっ。きっとこの先に出口があって、そこで冒頓殿たちと合流出来ますよっ」
嬉しさですっかりと舞い上がってしまっている王柔は、単純に理亜も自分と同じように喜んでいてくれるのだと思いました。そこでそれ以上理亜と話を続けるのではなく、羽磋に対して出発しようと勢いよく呼びかけました。
洞窟の所々で外の光が差し込むようになってきましたし、外部には心強い仲間がいることもわかりました。そうなると今度は、早く出発しないとその嬉しい出来事が逃げて行ってしまうような気がしてきたのでした。
「そうですね、進みましょう。でも、油断しないように行きましょうね」
羽磋にも王柔の気持ちがよくわかりましたので、すぐに出発の合図を出しました。片付けるほどの設営もなければ、出発の支度をしなければならないほどの荷物や家畜などもないのです。それに、如何に喜ばしいことがあったと言っても、前へ進むしかない状況には変わりはないのです。この場所で天井を見上げても細い線状の太陽光が差し込んでいる小さな亀裂しか見つかりませんし、それはとても高いところにあります。ここから外へ出ることができないのは、試すまでもなく明かなことだったのですから。
では、その音はどこから聞こえてきているのでしょうか。
羽磋はパッと立ち上がると洞窟の壁に走り寄り、そこに耳をくっつけました。間違いありません。地面から伝わっていたのと同じ振動が、壁からも伝わってきました。そして、その壁から伝わる振動は地面から伝わるそれよりも、より強くハッキリとしたものでした。
「ああっ、冒頓殿たちが来てくれているんだっ」
羽磋は感激のあまり大声で叫びながら天井を見上げました。
羽磋と王柔が聞き取った馬の足音は、洞窟の前からでも後ろからでもなく、天井のさらに上の方から伝わってきていたのでした。ヤルダンを通り抜けようとする交易隊が奇岩たちに襲われるようになってから、王花の盗賊団はヤルダンの案内を行っていません。今、この洞窟の上部に広がっているであろうヤルダンを馬に乗って駆けている一隊は、母を待つ少女の奇岩が立つ場所を目指している冒頓の護衛隊であるとしか考えられませんでした。
交易路から川の中へと落下しこの地下の空間で目覚めてから、羽磋たちは精霊の力が強く働いている方を選んで進んできました。それは、冒頓たちが目指している母を待つ少女の奇岩が立つ場所は奇岩が動き出すという不思議の始まりの場所であり、精霊の力が強く働いているであろうと考えられるので、羽磋たちが地下の空間の中でその力が強く働いている方を選んで進んでいけば、彼らと合流できる可能性が高くなると考えたからでした。
その様に筋道を立てて考えてはみたものの、幾ら洞窟を進んでもこれまでのところは冒頓たちに近づいているという実感は得られていませんでした。食料が尽き飲み水も少なくなる中で、羽磋も王柔も不安と焦りがどんどんと心の上に積み重なって来て、それに押しつぶされるような気持ちがしてきていました。でも、この馬の足音が、彼らの心に圧し掛かっていた重しを一度に蹴り飛ばしてくれたのでした。これまでギュッと縮められていた心は、その反動で大きく広がり弾んでいました。
この馬の足音は、羽磋たちが考えるように、冒頓の護衛隊のものでした。
朝一番に母を待つ少女の奇岩が立つ広場へ突入できるようにと、そこへ続く道の手前で一夜を過ごした冒頓の護衛隊は、日が昇るのを待ちかねたようにして、周囲が明るくなるのと同時に一斉に馬を走らせて広場へと進入しました。この時に生じた多くの馬が大地を蹴る振動が、羽磋たちが閉じ込められている地中の洞窟にまで届いていたのでした。
「どうしたの、オージュ?」
理亜が怪訝そうな表情を浮かべて、王柔を見上げました。
無理もありません。理亜には心配を掛けないようにと、王柔も羽磋もできるだけ平静を装って彼女に接してはいましたが、それは「心配をしないでいいよ」という態度でしかありませんでした。その二人が、突然に何かとんでもなく嬉しい出来事があったかのように騒ぎだし、心の底からの喜びで顔を輝かせるようになったのですから。
「理亜、理亜っ。冒頓殿がね、冒頓殿が、そこまで来てくれているんだ。僕たちは・・・・・・。いや、うん。そうだ、もうすぐ、外へ出て、みんなに会えるよ。お腹いっぱい食べられるよ。だから、もう少し頑張ろうね、理亜」
王柔は状況が良くわかっていなさそうな理亜に、喜びで浮ついた勢いそのままにまくしたて始めました。でも、「僕たちは助かるよ、きっと」と口にしそうになったところで、慌ててて口を塞ぎ、言葉を変えました。「助かるよ」などと言ってはいけないと思ったのです。自分たちが「助からないかもしれない」状況にあるなんて理亜に思わさせまいと、これまで気を配ってきたのですから。
「うん、良かったネ、オージュッ」
理亜は嬉しそうに王柔に答えました。でも、冒頓たちと合流できそうだということよりも、むしろ王柔が嬉しそうにしているということに対して、その言葉と表情は向けられているようでした。
「羽磋殿、進みましょうっ。きっとこの先に出口があって、そこで冒頓殿たちと合流出来ますよっ」
嬉しさですっかりと舞い上がってしまっている王柔は、単純に理亜も自分と同じように喜んでいてくれるのだと思いました。そこでそれ以上理亜と話を続けるのではなく、羽磋に対して出発しようと勢いよく呼びかけました。
洞窟の所々で外の光が差し込むようになってきましたし、外部には心強い仲間がいることもわかりました。そうなると今度は、早く出発しないとその嬉しい出来事が逃げて行ってしまうような気がしてきたのでした。
「そうですね、進みましょう。でも、油断しないように行きましょうね」
羽磋にも王柔の気持ちがよくわかりましたので、すぐに出発の合図を出しました。片付けるほどの設営もなければ、出発の支度をしなければならないほどの荷物や家畜などもないのです。それに、如何に喜ばしいことがあったと言っても、前へ進むしかない状況には変わりはないのです。この場所で天井を見上げても細い線状の太陽光が差し込んでいる小さな亀裂しか見つかりませんし、それはとても高いところにあります。ここから外へ出ることができないのは、試すまでもなく明かなことだったのですから。
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