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師匠と弟子
同居なんて聞いてないし?
「お待たせしました」
そう言ってリュー君はギルドの奥の部屋から出て来た。
「本部長も、依頼を受けたという前提でSランクの依頼として全ギルドに通達を出してくれます。スカウザー全員が集まらなくても俺だけで討伐は問題ないと思うので」
リュー君の説明にカッシーラ伯は安堵したように微笑まれた。
「ミランジェには悪いけど、悪い知らせ。トキワステラーテ王国から第一王女殿下がこちらに向かわれたそうだ」
お、お姉様が…。ああ、とうとう怒られて国に帰されるんだわ…
カッシーラ伯とマジアリート様はお帰りになられた。2人を見えなくなるまでお見送りしていると、リュー君が横に来て私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「さて、必要な家財道具を買いに行くか?費用は気にするな、俺も使うしな」
……あれ?今、変なことを言わなかったっけ?
「ちょっと今…ん~?聞き間違いかな?俺も使うって聞こえたんだけど?」
リュー君はキョトンとした顔できっぱりはっきり言い切った。
「だって俺、トキワステラーテ国王陛下から正式にミランジェの護衛、依頼されてるもん」
依頼されてるもん…依頼されてるもん…依頼…何だってぇぇ!?
「リュー君はお父様の依頼でここに来ているの…ね?ってそうじゃないでしょ!?なんでリュー君もうちの家電を使うのよ?」
リュー君はコクコクと頷いた後、シレッとこう言った。
「カデンって何?え~と護衛だからミランジェの近くにいて常に守らなきゃだろ?そのための護衛だし」
「やっぱりそうなんだー!…ってなる訳ないでしょ!!何故にリュー君と同じ屋根の下に住まなきゃいけないのよっ!お風呂でいや~んな間違いがあったらどうするのよ!」
と、リュー君に言ったら笑いながら否定された。
「何かある前に俺がいるんでしょ?これも俺の仕事だし」
間違い…云々のくだりはお地蔵様に華麗にスルーされたよ。そ、そっか…仕事ね…何だかモヤッとしたけれど、まあいいか。お地蔵様にエロイ気持ちは皆無と…流石地蔵は悟りを開いておりますね。あ~あ、それにしてもやっぱりお父様には私の放逐計画なんてお見通しだったんだ。
そして、リュー君と一緒に魔道具屋さんに行き、魔力コンロと冷保管庫を買ってもらった。代金は立替て貰っただけだ!必ず代金は返す!と言ったけど、笑ってあしらわれたので多分、お金を渡しても受け取ってもらえないと思う。
次は家具屋さんに行って食器棚と衣装タンス2つとベッド2台とダイニングテーブルを購入した。
「送らせて頂きますのでご住所を…」
「持って帰りますので」
「え?」
「持って帰ります」
こう言う店員さんとのやり取りは、先に入った魔道具屋さんでも散々している。
実は先に行った魔道具屋で、このリュックサックを使用する際の魔術の発動を店員が目撃し、騒いだので奥にいた技術者のおじさん達に取り囲まれてしまって、魔力構築の原理や魔術式などの説明を求められてしまったのだ。
「だから先ほどから言っておりますように『魔法の使い方』と言う本の通りに針に魔力を落としながら、布を縫っていただけです!ホラここに書いてありますでしょう?それで後で付加したい魔法を定着させただけです。」
技術者のおじさん2人とこの店の店主さんや事務方だろうか総勢5人のおじさん達が私のリュックサックを見て、あ~でもないこ~でもないと、やり始めたので「急ぎますから!」と振り切って店を出たのだった。
家具屋でも同じ事をされたら堪らないので、話しかけられる前に全部の家具をリュックサックの中に仕舞うと急いで店を出た。
「や~便利だな。俺にも絶対作ってよ?」
「はい、分かってますよ~。次は雑貨屋さんね」
雑貨屋で石鹸と風呂用の大判タオルとフェイスタオルと髪につける香油など女子の身だしなみグッズを買い漁った。
「取り敢えずこんなものかな?」
「これ全部いるの?」
「いるの!」
リュー君が雑貨屋の支払いも出しそうだったので、慌てて制止し、私の宝石を売ったお金で雑貨類を購入した。
そして布地を買いに行った。リュー君はウエストポーチ型の鞄が好みだそうで、リュー君と相談しながら布地と糸を選んでいく。
「本当にこんな布であの魔道具出来るの?」
こんな布…とリュー君が言ったので、お店のオジサンがジロッと睨んできた。もう~オジサマぁ怒らないで!ホラこの布とこの布も買うから~
お店のオジサンの前に大量の布地を置いてニッコリ微笑んだ。
オジサンと…引いて押してを繰り返して、店頭価格より2割負けてもらった。そうして購入した大量の布地もリュックサックに押し込む。
「さて最後は…食材かな!」
「あのさ、ずっと気になっていたんだけど…ミランジェもしかして自分で食事の支度とか出来るの?」
「え…?あ~ええ、まあね!」
これは不審すぎるな…元国王妃がいきなり卓越した包丁捌きを見せるのは怪しすぎるな。カモフラージュに鍋でも焦がしてみるか?
「やだぁ~あなたぁ焦げちゃったぁ!」
「ミランジェはダメだな~こいつっ☆彡」
……これでは新婚のご家庭でのよくあるベタなパターンではないか。
「そっか…放逐された後の事考えて色々準備していたのか、偉いなあ~」
「いや~あはは!」
んなわけあるかーい!なーんも考えてなかったよ。元々はおバカのミランジェの計画だもの。放逐後どうするか?どこに逃げるか?どうやって生活していくのか…ミランジェはなーにもなーーにも考えてなかったよ?
記憶戻ってて良かった…。うっかりミランジェのまま放逐されてたら、悪い奴にすぐつかまって娼館に売られたり、奴隷として売られたりされていたかも…危なかった。
私はリュー君の食べ物の好みなどを聞きつつ、昨日は買えなかった食材を片っ端から買って行った。だってねリュー君が食費は俺が持つから~と言ってくれたのよ~ぐふふ。
ちょっと迷ったけど、家賃は私が出しているしね。うん、買うわよぉぉ、但し値切るからね。
私は野菜屋さんで色々な野菜を近づいて舐めるように見詰めた。そして値切りを開始した。
そして数分後…
「あら?ちょっとお兄さん!葉っぱの辺りが痛んでやしませんかね?こことか?」
「うはぁ~お姉さん良く見てんなぁ…仕方ないどうだ負けとくよ!石貨一枚と木貨三枚だ!」
う~む大体200円弱か…今、私が値切っているのはキャベツに似ている葉物野菜二玉分だ。
「よしっそれで買った!」
お兄さんと私の攻防は終わった…と見せかけて!
「あら?このトマ…じゃないマーストだったかしら?良く熟れて美味しそうね!二つ頂くから、全部まとめて石貨一枚と木貨3枚にして下さる?」
私がマーストを指差して微笑むとお兄さんは降参した。
「いや~すげぇな!旦那もこんなしっかりした美人の嫁さんがいて良かったな!」
私は手早く料金を払いながら、野菜屋さんのお兄さんに叫び返した。
「リュ…?リュー君は幼…」
と私が言い終わる前に、被せるようにリュー君が満面の笑顔で答えた。
「ありがとうございまーす」
んなっ?!リュー君ってば何を肯定してるのよ、こらっ!
リュー君はお兄さんから野菜を受けとるとさっさと歩きだして行ってしまう。
「ちょっとリュー君!どうして否定しないのよ?」
先を歩くリュー君の背中に怒鳴るとリュー君が私を顧みた。
「何言ってるんだ、未婚の女性の一人住まいに男が転がり込んでいるなんて不自然だろう?夫婦だってことにしておけば自然じゃないか。護衛もやりやすいしな」
うぐぅ…地蔵の言う通りね。確かに夫婦なら同居している理由としては自然よね。
「それにさ、さっきみたいに近衛のあいつらがまた来たらどうするの?ミランジェが1人で追い払えるの?」
うぐぅ…また地蔵の言う通りね。攻撃魔法が使える訳ではなく、防御一辺倒になるのは目に見えてるよ…。攻撃を防げたって相手は近衛の手練れ…隙が出来て逃げ出せる保証はない。
「っくぅ…お願いします…」
「了解した」
私達は商店街の外れの家に戻ると、リュックサックの中からベッドと衣装棚を各部屋に出した。この店舗(仮)は二階が住居になっていて部屋が三部屋ある。その内二部屋を私とリュー君で使うことにした。もう一つの部屋は物置にしておこう。
そして階下に降りて、魔力コンロや冷保管庫を設置して取説を読みながら、コンロやコンロの下に設置されたオーブンの使い方を確認する。
「へえ~っ!魔石がコンロの動力源なんだ~ふんふん、但し、魔石の魔力が切れて使えない時は魔石に魔力を補充して下さい。へえ~!ねえ、リュー君魔石ってどうやって魔力を入れるの?」
リュー君は何だかすごく笑いながら私に近づいてくると、コンロの点火スイッチがある辺りにある赤い魔石に手を置いた。赤い魔石が真っ赤になる。
「石に力を入れるように意識すると、出来る」
なるほど…。冷保管庫の扉についている紺色の魔石は冷気魔法が作動しているということか…じゃあ水道の蛇口の根元についている水色の魔石は水魔法か。
面白いな~電気が無い世界だものね。代わりに魔法がその役目を担っているんだね。
「よしっ。じゃあ夕食作るわよ」
「え?もう今日は外で食べればいいじゃないか?」
と、リュー君に言われて…確かにと思い直した。流石に今からじゃ手の込んだ料理は作れない。
「おすすめの店があるんだぜ?そこ行こうよ」
リュー君がニッコリと微笑んでいる。わ~冒険者様のオススメ?楽しみ!
どんなお店かな~とワクワクしながらリュー君と商店街を歩いて行く。暫く歩いて突然リュー君が言った。
「ミランジェ、明日さベイフィート城に行ってみない?」
びっくりして思わず足を止めた私をリュー君は黙って見下ろしている。
「わ…私に戻れっていう…の?」
リュー君は慌てたように手を大きく振った。
「あ~違う違う!えっと…明日、トキワステラーテ王国、第一王女のナフテラージャ殿下が来訪されるだろう?ミランジェの姉上の対応を見てみたいと思わない?」
あっ!そうか、お姉様は一応正式な訪問だものね。まずはクラシスに会いに行くよね。お姉様怖いんだよなぁ…あのひょろっこいクラシスで太刀打ち出来るのだろうか?
考え込んでいる間に、リュー君オススメのお店にやって来ていた。武器屋さんが多く立ち並ぶ界隈の路地を入った隠れ家みたいな料理屋さんだった。
「ミランジェは絶対好きだと思う」
その自信満々のリュー君の意味はすぐに分かった。お店の看板に『ホワンテーシッタ料理の店』と書いてある。
どこかで聞いたことのある国名ね?
店内に入って料理の乗っているテーブルを見て私は気が付いた。
「魚!」
「そうそう、魚料理店。さっき市場で魚が欲しかったのに、売ってないのよね~とか言ってただろ?」
リュー君っ…落ち込む乙女の気持ちを察してくれるあたり、さすがお地蔵様は違うわね!
私は感激して泣きながら魚料理をお腹いっぱい頬張った。アクアパッツァっぽい料理最高!白ワイン煮込みも最高!魚のマースト(トマト)風味の煮込みスープ最高!
白ワインも飲んだから酔っぱらってご機嫌で帰宅した。楽しくってホワホワしていて…朝、リュー君に起こされて仰天した。
食事を終えて家に帰ってからの記憶がすっぽり抜けている…?冷や汗をかいた。
いつの間に着替えているのだ?自力でお風呂に入ったのか?メイク…はほぼスッピンだからいいとして…もしかして粗相してリュー君に私の宇宙(内臓)の隕石(〇ロ)をぶつけたりしていないだろうか?
朝から鍛錬でもしたのだろうか…汗をふきふき冷保管庫から、果実水を取り出して飲んでいる美形の幼馴染さん。朝からキラキラしていますね。おおっ首にかけたタオルの隙間から見事なシックスパックが覗いていますね。
「リュ…リュー君…昨日私、その…」
リュー君はニヤニヤしている。
なんでニヤニヤしているのよ?もしかして裸踊りとかしたの?それとも本当に隕石(胃の内容物)をぶつけたの?
そう言ってリュー君はギルドの奥の部屋から出て来た。
「本部長も、依頼を受けたという前提でSランクの依頼として全ギルドに通達を出してくれます。スカウザー全員が集まらなくても俺だけで討伐は問題ないと思うので」
リュー君の説明にカッシーラ伯は安堵したように微笑まれた。
「ミランジェには悪いけど、悪い知らせ。トキワステラーテ王国から第一王女殿下がこちらに向かわれたそうだ」
お、お姉様が…。ああ、とうとう怒られて国に帰されるんだわ…
カッシーラ伯とマジアリート様はお帰りになられた。2人を見えなくなるまでお見送りしていると、リュー君が横に来て私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「さて、必要な家財道具を買いに行くか?費用は気にするな、俺も使うしな」
……あれ?今、変なことを言わなかったっけ?
「ちょっと今…ん~?聞き間違いかな?俺も使うって聞こえたんだけど?」
リュー君はキョトンとした顔できっぱりはっきり言い切った。
「だって俺、トキワステラーテ国王陛下から正式にミランジェの護衛、依頼されてるもん」
依頼されてるもん…依頼されてるもん…依頼…何だってぇぇ!?
「リュー君はお父様の依頼でここに来ているの…ね?ってそうじゃないでしょ!?なんでリュー君もうちの家電を使うのよ?」
リュー君はコクコクと頷いた後、シレッとこう言った。
「カデンって何?え~と護衛だからミランジェの近くにいて常に守らなきゃだろ?そのための護衛だし」
「やっぱりそうなんだー!…ってなる訳ないでしょ!!何故にリュー君と同じ屋根の下に住まなきゃいけないのよっ!お風呂でいや~んな間違いがあったらどうするのよ!」
と、リュー君に言ったら笑いながら否定された。
「何かある前に俺がいるんでしょ?これも俺の仕事だし」
間違い…云々のくだりはお地蔵様に華麗にスルーされたよ。そ、そっか…仕事ね…何だかモヤッとしたけれど、まあいいか。お地蔵様にエロイ気持ちは皆無と…流石地蔵は悟りを開いておりますね。あ~あ、それにしてもやっぱりお父様には私の放逐計画なんてお見通しだったんだ。
そして、リュー君と一緒に魔道具屋さんに行き、魔力コンロと冷保管庫を買ってもらった。代金は立替て貰っただけだ!必ず代金は返す!と言ったけど、笑ってあしらわれたので多分、お金を渡しても受け取ってもらえないと思う。
次は家具屋さんに行って食器棚と衣装タンス2つとベッド2台とダイニングテーブルを購入した。
「送らせて頂きますのでご住所を…」
「持って帰りますので」
「え?」
「持って帰ります」
こう言う店員さんとのやり取りは、先に入った魔道具屋さんでも散々している。
実は先に行った魔道具屋で、このリュックサックを使用する際の魔術の発動を店員が目撃し、騒いだので奥にいた技術者のおじさん達に取り囲まれてしまって、魔力構築の原理や魔術式などの説明を求められてしまったのだ。
「だから先ほどから言っておりますように『魔法の使い方』と言う本の通りに針に魔力を落としながら、布を縫っていただけです!ホラここに書いてありますでしょう?それで後で付加したい魔法を定着させただけです。」
技術者のおじさん2人とこの店の店主さんや事務方だろうか総勢5人のおじさん達が私のリュックサックを見て、あ~でもないこ~でもないと、やり始めたので「急ぎますから!」と振り切って店を出たのだった。
家具屋でも同じ事をされたら堪らないので、話しかけられる前に全部の家具をリュックサックの中に仕舞うと急いで店を出た。
「や~便利だな。俺にも絶対作ってよ?」
「はい、分かってますよ~。次は雑貨屋さんね」
雑貨屋で石鹸と風呂用の大判タオルとフェイスタオルと髪につける香油など女子の身だしなみグッズを買い漁った。
「取り敢えずこんなものかな?」
「これ全部いるの?」
「いるの!」
リュー君が雑貨屋の支払いも出しそうだったので、慌てて制止し、私の宝石を売ったお金で雑貨類を購入した。
そして布地を買いに行った。リュー君はウエストポーチ型の鞄が好みだそうで、リュー君と相談しながら布地と糸を選んでいく。
「本当にこんな布であの魔道具出来るの?」
こんな布…とリュー君が言ったので、お店のオジサンがジロッと睨んできた。もう~オジサマぁ怒らないで!ホラこの布とこの布も買うから~
お店のオジサンの前に大量の布地を置いてニッコリ微笑んだ。
オジサンと…引いて押してを繰り返して、店頭価格より2割負けてもらった。そうして購入した大量の布地もリュックサックに押し込む。
「さて最後は…食材かな!」
「あのさ、ずっと気になっていたんだけど…ミランジェもしかして自分で食事の支度とか出来るの?」
「え…?あ~ええ、まあね!」
これは不審すぎるな…元国王妃がいきなり卓越した包丁捌きを見せるのは怪しすぎるな。カモフラージュに鍋でも焦がしてみるか?
「やだぁ~あなたぁ焦げちゃったぁ!」
「ミランジェはダメだな~こいつっ☆彡」
……これでは新婚のご家庭でのよくあるベタなパターンではないか。
「そっか…放逐された後の事考えて色々準備していたのか、偉いなあ~」
「いや~あはは!」
んなわけあるかーい!なーんも考えてなかったよ。元々はおバカのミランジェの計画だもの。放逐後どうするか?どこに逃げるか?どうやって生活していくのか…ミランジェはなーにもなーーにも考えてなかったよ?
記憶戻ってて良かった…。うっかりミランジェのまま放逐されてたら、悪い奴にすぐつかまって娼館に売られたり、奴隷として売られたりされていたかも…危なかった。
私はリュー君の食べ物の好みなどを聞きつつ、昨日は買えなかった食材を片っ端から買って行った。だってねリュー君が食費は俺が持つから~と言ってくれたのよ~ぐふふ。
ちょっと迷ったけど、家賃は私が出しているしね。うん、買うわよぉぉ、但し値切るからね。
私は野菜屋さんで色々な野菜を近づいて舐めるように見詰めた。そして値切りを開始した。
そして数分後…
「あら?ちょっとお兄さん!葉っぱの辺りが痛んでやしませんかね?こことか?」
「うはぁ~お姉さん良く見てんなぁ…仕方ないどうだ負けとくよ!石貨一枚と木貨三枚だ!」
う~む大体200円弱か…今、私が値切っているのはキャベツに似ている葉物野菜二玉分だ。
「よしっそれで買った!」
お兄さんと私の攻防は終わった…と見せかけて!
「あら?このトマ…じゃないマーストだったかしら?良く熟れて美味しそうね!二つ頂くから、全部まとめて石貨一枚と木貨3枚にして下さる?」
私がマーストを指差して微笑むとお兄さんは降参した。
「いや~すげぇな!旦那もこんなしっかりした美人の嫁さんがいて良かったな!」
私は手早く料金を払いながら、野菜屋さんのお兄さんに叫び返した。
「リュ…?リュー君は幼…」
と私が言い終わる前に、被せるようにリュー君が満面の笑顔で答えた。
「ありがとうございまーす」
んなっ?!リュー君ってば何を肯定してるのよ、こらっ!
リュー君はお兄さんから野菜を受けとるとさっさと歩きだして行ってしまう。
「ちょっとリュー君!どうして否定しないのよ?」
先を歩くリュー君の背中に怒鳴るとリュー君が私を顧みた。
「何言ってるんだ、未婚の女性の一人住まいに男が転がり込んでいるなんて不自然だろう?夫婦だってことにしておけば自然じゃないか。護衛もやりやすいしな」
うぐぅ…地蔵の言う通りね。確かに夫婦なら同居している理由としては自然よね。
「それにさ、さっきみたいに近衛のあいつらがまた来たらどうするの?ミランジェが1人で追い払えるの?」
うぐぅ…また地蔵の言う通りね。攻撃魔法が使える訳ではなく、防御一辺倒になるのは目に見えてるよ…。攻撃を防げたって相手は近衛の手練れ…隙が出来て逃げ出せる保証はない。
「っくぅ…お願いします…」
「了解した」
私達は商店街の外れの家に戻ると、リュックサックの中からベッドと衣装棚を各部屋に出した。この店舗(仮)は二階が住居になっていて部屋が三部屋ある。その内二部屋を私とリュー君で使うことにした。もう一つの部屋は物置にしておこう。
そして階下に降りて、魔力コンロや冷保管庫を設置して取説を読みながら、コンロやコンロの下に設置されたオーブンの使い方を確認する。
「へえ~っ!魔石がコンロの動力源なんだ~ふんふん、但し、魔石の魔力が切れて使えない時は魔石に魔力を補充して下さい。へえ~!ねえ、リュー君魔石ってどうやって魔力を入れるの?」
リュー君は何だかすごく笑いながら私に近づいてくると、コンロの点火スイッチがある辺りにある赤い魔石に手を置いた。赤い魔石が真っ赤になる。
「石に力を入れるように意識すると、出来る」
なるほど…。冷保管庫の扉についている紺色の魔石は冷気魔法が作動しているということか…じゃあ水道の蛇口の根元についている水色の魔石は水魔法か。
面白いな~電気が無い世界だものね。代わりに魔法がその役目を担っているんだね。
「よしっ。じゃあ夕食作るわよ」
「え?もう今日は外で食べればいいじゃないか?」
と、リュー君に言われて…確かにと思い直した。流石に今からじゃ手の込んだ料理は作れない。
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リュー君がニッコリと微笑んでいる。わ~冒険者様のオススメ?楽しみ!
どんなお店かな~とワクワクしながらリュー君と商店街を歩いて行く。暫く歩いて突然リュー君が言った。
「ミランジェ、明日さベイフィート城に行ってみない?」
びっくりして思わず足を止めた私をリュー君は黙って見下ろしている。
「わ…私に戻れっていう…の?」
リュー君は慌てたように手を大きく振った。
「あ~違う違う!えっと…明日、トキワステラーテ王国、第一王女のナフテラージャ殿下が来訪されるだろう?ミランジェの姉上の対応を見てみたいと思わない?」
あっ!そうか、お姉様は一応正式な訪問だものね。まずはクラシスに会いに行くよね。お姉様怖いんだよなぁ…あのひょろっこいクラシスで太刀打ち出来るのだろうか?
考え込んでいる間に、リュー君オススメのお店にやって来ていた。武器屋さんが多く立ち並ぶ界隈の路地を入った隠れ家みたいな料理屋さんだった。
「ミランジェは絶対好きだと思う」
その自信満々のリュー君の意味はすぐに分かった。お店の看板に『ホワンテーシッタ料理の店』と書いてある。
どこかで聞いたことのある国名ね?
店内に入って料理の乗っているテーブルを見て私は気が付いた。
「魚!」
「そうそう、魚料理店。さっき市場で魚が欲しかったのに、売ってないのよね~とか言ってただろ?」
リュー君っ…落ち込む乙女の気持ちを察してくれるあたり、さすがお地蔵様は違うわね!
私は感激して泣きながら魚料理をお腹いっぱい頬張った。アクアパッツァっぽい料理最高!白ワイン煮込みも最高!魚のマースト(トマト)風味の煮込みスープ最高!
白ワインも飲んだから酔っぱらってご機嫌で帰宅した。楽しくってホワホワしていて…朝、リュー君に起こされて仰天した。
食事を終えて家に帰ってからの記憶がすっぽり抜けている…?冷や汗をかいた。
いつの間に着替えているのだ?自力でお風呂に入ったのか?メイク…はほぼスッピンだからいいとして…もしかして粗相してリュー君に私の宇宙(内臓)の隕石(〇ロ)をぶつけたりしていないだろうか?
朝から鍛錬でもしたのだろうか…汗をふきふき冷保管庫から、果実水を取り出して飲んでいる美形の幼馴染さん。朝からキラキラしていますね。おおっ首にかけたタオルの隙間から見事なシックスパックが覗いていますね。
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