青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ

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師匠と弟子

怒ってます

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「リュリュ…リュー君っ正直に教えてっ!私、大丈夫だった!?リュー君に変なモノを浴びせちゃった!?」

リュー君は益々ニヤニヤする。

「いやぁ~?変なものなんて貰ってないよ?」

怪しい…

妙にヘラヘラしているし、リバース系じゃないとしたら、見られて恥ずかしいものって言えば残りは裸踊りしかないじゃない!

昔のミランジェはお酒を浴びるように飲んでいたのに、日本人の記憶が戻った途端、記憶無くなる酔い方しか出来ないなんて…

「大丈夫だって、別におかしくなかったよ?」

リュー君が追い打ちをかけるように言ってくる言葉が、全然慰めになってないぃぃ。

私はしょんぼりしながら、朝食を作った。ベーコンっぽい干し肉と目玉焼きを焼き、数種類の野菜のサラダ、ドレッシングは果実と油と香辛料を混ぜた。

ブリオッシュを軽く焼いて籠に盛り、ミルクティーと自分用にフレンチトーストを作った。

「簡単なものでごめんなさい。はい、どうぞ」

私は裸踊りを見られたかもしれないと、まだ落ち込んだままフレンチトーストとミルクティ-をモソモソ食べていた。

「ミランジェ…」

「ん~?」

「これ…今作ったの?」

「ブリオッシュは買って来たわよ」

「あ、うん。パンは昨日一緒に買った…ていうかさ!美味い!びっくりした…後はどんな料理が出来るの?」

「え…煮込み料理も唐揚げも、それこそ和洋中なんでも出来るわよ…」

リュー君が首を捻ってワヨウチュー?とか言っている。今更悩んでいても仕方ないか…どうやら裸踊りを見たらしいリュー君は至って普通だ。そうだ、お地蔵は悟りを開いているんだった。

まあ興味の無い女の裸なんて見たって嬉しくはないでしょうしね…

私はモソモソと朝食を食べ終わると、クートというビールによく似た飲み物に鳥肉…だろう?それを漬け込んだ。夜はもう少し手の込んだものを食べたい。

「昆布と鰹があればなぁ~」

まあこればかりは仕方ない。お肉を包丁でミンチ状にしてハンバーグのタネを作った。そうだ、マースト(トマト)を裏ごししておいて、トマトペーストを作っておこう。

「ミランジェ、そろそろベイフィート城に行ってみようか?」

キッチンに顔出したリュー君に頷き返して、身支度を整えてリュックサックを背負う。そういえば…

「リュー君、簡単にお城には入れないわよ?」

「ああ、それは大丈夫だよ。魔法防御して隠れて入るから」

んん?今なんて?私が怪訝な顔をしているとリュー君はニヤーッと笑ってから、見てろよ!と言って何か術を発動した。

目の前にいたリュー君の姿が一瞬で消えた。でも…私には魔力の流れが見える…目の前で大量に魔力が使われている。もしかして…。

「見えなくする魔法なの?」

「そう、当たり!」

何も無い空間からリュー君の声が聞こえてギョッとする。そしてリュー君は姿を現した。

「この魔法に消音と臭いを消す魔法を使えば、完璧だろう?これは諜報の仕事をしている術師なら必須な魔法だな」

成程、諜報活動…つまりは忍者の隠遁の術みたいなものか…いや実際の忍者なんて見たことないけどさ…

私はリュー君に隠遁の術をかけてもらい…ベイフィート城に向かった。

「一つ気を付けて欲しいのが、あくまで姿と音、匂いを消しているだけだ。そこに存在していることに間違いはない。不用意に人に当たったり、物の当たったりしないように気を付けて」

「う、うん」

リュー君の説明に何度も頷く。因みに同じ術師の魔法を使っているからか、私の目にはリュー君の姿は見えている。はぁぁ~緊張する…本物の?諜報活動みたいね。

「しかしベイフィート城も手薄だよな…俺じゃなくても城内に侵入し放題だよ」

とリュー君は目の前のベイフィート城を見上げている。城門前に来るまで問題はなかった。

「城の周りに障壁…無いよな…変な城」

「ね?珍しいでしょう?私もどこの国の城も術師が障壁を張って、城を防御しているのが当たり前だと思ってた。でもね、私が嫁いで来た時は弱いけど、障壁あったのよ?それが気が付いたら障壁消えちゃっててね…これは危ないと思って私が暫く張っていたのよ」

「ミ、ミランジェが!?」

「そうよ、でも数か月で張るのをやめたの。だって私が張っていることに?城の術師に指摘もされなかったし…ましてや陛下にも聞かれたりしなかったわ。ああ、そういえばマジアリート様には言われたかな?1人で守っているのが馬鹿馬鹿しくなってきて、障壁を解除した後だったかな~」

「マジアリート何て言ってたの?」

「う~ん、『何故、術を解除しているのですか?早く張り直して下さい。』って…今考えるとマジアリート様は私が陛下に頼まれて張っていたと思っていたのかもね~。私がその時に正直にマジアリート様に話していれば良かったんでしょうけど…言い訳するのも面倒で無視していたわ」

リュー君が私を睨む。

「ミランジェは一人で何でも決断しすぎだよ。もっと周りに相談したりしなきゃ…」

確かにその通りだけれど、今の私ならそうするだろうけど前のミランジェなら王女様でプライドもそこそこ高いし、人間不信っぽい感じだったような気がするのよね。

「まあいいか、今更言ってもな…とにかく城内に入ろう」

私達はゆっくりと城門の中に入った。やっぱり魔力の抵抗は感じない。衛兵も全く私達に気が付かない。

「俺が聞いた情報だとそろそろナフテラージャ王女殿下が到着する頃だと思うんだ」

「謁見するなら、こちらの広間だと思うわ」

私が道案内をしながら謁見室に行った。やはり誰も私達に気が付かない。これってリュー君の術がすごいのか、ベイフィート城の守りが手薄なのか…どっちなんだろう?

そして私達は謁見室に入った。謁見室は誰もまだいない。

「陛下はまだ謁見室には来ていないな…」

「多分、プリエレアンナ様と元、私の部屋…今第一妃になられたプリエレアンナ様の部屋にいるんじゃない?」

私が嫌味たっぷりにそう言うとリュー君は眉根を寄せた。

「妃の部屋に?まさか日中は陛下は普通は公務に出てるだろ?」

いや、そのまさかなのだ。私はリュー君を手招きして廊下を移動した。そして私の部屋に向かう。

「あっ!あの難癖付けてた近衛達じゃないか!」

ホントだ、私の部屋の前の廊下に四人近衛が立っているっていうかダラダラしているっていうか…あの文句言って来たアイツらがそこにいる。

リュー君は間近まで近づいてオラオラ睨みつけている…が、やはり近衛でもリュー君や私に気が付いていないみたいだ。

「本当に誰にも気付かれないね」

「それだけ俺の術式がすごいってことだろ!」

うん、本当にすごいね。これは益々リュー君に弟子入りして教えを乞わねばならないね!

「じゃあ部屋の中に転移してみようか」

とリュー君が私の手を掴んだ。一瞬暗くなって、魔力圧を感じた。

「本当に部屋にいるよ…」

というリュー君の声に目を向けると、いつの間にか元、私の部屋の中に転移してきていて、部屋の真ん中のソファにクラシスとプリエレアンナ様がひっついて座っているのが視界に入った。

私はプリエレアンナ様をジッと見た。これは…

「ミランジェ、あの奥の部屋が宝石を保管してた部屋?」

リュー君はイチャイチャしている2人に見向きもしないで、部屋の奥に移動していた。私も急いでリュー君の元へ行った。

リュー君は部屋の前でポカンと口を開けていた。

「いや~俺さ魔質が見えることは見えるんだよ、それでまあ人並み以上の魔術も使えるし、解術も出来る自信もあるわけよ」

うん、それで?リュー君は目を見開いたまま、私を見下ろした。あれ?耳が赤いね?

「これ何?初めて見る…何ぃこの術式!嘘だろ!?すごいぜっ!これがミランジェの『復活の御手』の封印!?」

あ、リュー君、興奮しているのか。

「正確には違うけど…私の独自魔法なのよ。万が一解術しようとしても、また重ね掛けで封印がされるようにしてるの」

だってはっきり言っちゃうと『日本語で作ってるんだもんね』日本語ででかでかと『結界』『防御』『自動修復』て書いてあるのだ。

「でもこんなに厳重に見せかけて、中身は空っぽなんだろ?」

「そうよ、全部持って出てるもの。私が居ない間にも何度も解術しようとしているわね。5回自動修復がかかって封印がやり直されてる」

リュー君は満面の笑顔で私の手を取った。な、何?眩しい…地蔵から後光が射しているわ。

「ミランジェ!すごいよっ、俺に教えてよ、その術式!」

「いいけど、難しいと思うけど?…あっ!じゃあ教えてあげる代わりに、リュー君!私に戦闘術教えて下さい!私、冒険者の依頼受けてみたいの!」

「ええっ!?ミランジェが?…出来るの?動き、ゆっくりっぽいけど?」

「ゆ、ゆっくりとか妙な所で気を使わなくていいの!そりゃあ大型の魔獣とかの退治は無理かもだけど、せめて薬草集めとか小型の魔獣討伐の依頼は受けれるようになりたい…」

そう…自分の身を自分で守れるくらいにはなりたい。1人で生きていく為には…

「そう?ミランジェには魔道具の鞄作りに集中して欲しいけどなぁ~、まあいいか。俺が居ない時に心配だもんな。よしっ今日から教えてやるよ」

「本当!やった!」

やった!嬉しくてリュー君にぴょんと抱きついた。リュー君は優しく抱き留めてくれる。

「陛下、失礼します。トキワステラーテ王国のナフテラージャ王女殿下がお越しになられました」

廊下から響く侍従の声に、リュー君と抱き合ったまま見詰め合った。

「来たな…行くか」

「うん」

部屋から出たクラシスを追う。部屋に残ったプリエレアンナ様を一度顧みた。

どういうことだろう?自分の目が信じられないけれど…

廊下にリュー君と転移で出て、廊下に立つ近衛を見て嫌な気分になる。

リュー君がクラシスの後をついて歩きながら私を振り返った。

「ミランジェさっきからどうしたの?ため息ついたり、首を捻ったり…」

「う~ん深い所まで魔質が見えるのだけど…う~ん、自分の見たものが信じられないというか…」

「なんだそりゃ…まあいいか、行くぞ」

クラシスと一緒に謁見室に飛び込んで、部屋の端に移動する。

「トキワステラーテ王国、ナフテラージャ王女殿下入られます」

静かに…そして上質な魔質を湛えて…ナフテラージャ王女殿下こと私のお姉様が口元に笑みを浮かべて室内に入ってこられた。

「これ…怒ってるね?」

「うん、怒ってるね…」

笑ってるのに魔質は肌で感じるくらいにびりびり発せられている。

お姉様は怒ってます…

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