青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ

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師匠と弟子

弟子の前に後ろ盾にされました

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リュー君とゆっくりと声がした方を向くと、綺麗な金髪を短く刈り上げた髪に垂れ目気味の優しい目元の…

義兄の鬼神(今日は優男)のダーシュ=タウメントス大佐が腰に手を当てて立っていた。

ぎゃあっお義兄様?お姉様と一緒にベイフィートに来ていたの!?

私は隣に立つリュー君の服の袖を引っ張った。

「リュー君、気のせい…だよね?こっちは見えてない…のよね?」

「う…うん、多分見えてない…んだけど…見てるな?」

リュー君とコソコソ喋っている間も義兄はこっちを見て、顎に手を当てて…小さく頷いている。

「中々…すごい術を使っているけど、ミランジェの魔力が駄々洩れだ…俺とナフテラージャくらいしか気が付いてないとは思うけどね。ちょっとついておいで」

そう言って義兄は歩き出してしまう。

「仕方ない…完全にバレてるみたいだし、ついていこっか…」

私とリュー君は仕方なくお義兄様の後をついて行った。

ダーシュ=タウメントスお義兄様は貴賓室の一室に入った。その室内には2人男性がいて…

2人共私の従兄弟だった…

しかも双子の…ものすごく性格のひん曲がった…根性悪の特務隊の隊員の…ムカつくけど濃紺色の髪色で黒目の…認めたくないけど、アイドルみたいな容姿をしている。

何度も言うが、性格はひん曲がって根性悪だけど…アイドルみたいな双子の従兄弟がいた。

「隊長、お疲れっす」

「あれ?なんか隊長の後ろで…すんごい術の…あっれ?あれ~?」

最初の挨拶をした方が弟のデシバラ=ハッテーガウンレンテ、17歳。

後の方が兄のダンカレ=ハッテーガウンレンテ、17歳。

2人の見分け方は無い。あえて2人で容姿、性格、話し方等を似せようとしているので、まったくの一緒と言っても過言ではない。特務隊の性質上潜入などの仕事もあり、二人一役という特殊な任務用に敢えて…と思われる。

因みに私は完璧に見分けられる。当たり前だが魔質は千差万別。2人は魔質だけは別質だ。

「ホラ、もういいだろう。術を解けよ」

一瞬、鬼神の鬼圧?を私に向けてきた義兄に私は悲鳴を上げてしまった。リュー君は舌打ちしながら術を解いた。

「あれー?ミランジェ何やってるの?」

「あれれ?リュージエンス殿下じゃね?」

双子は2人でクルクルと私とリュー君の周りを回った。

「お久しぶりでございます、タウメントス大佐、ガウンレンテ大尉」

私がそう言って淑女の礼を取ると双子はピタッと動きを止めて、ジィーッと私を見詰めてきた。

「これ、本当にミランジェ?」

「なんかおかしい?」

アイドル2人に至近距離から見詰められる。どうしよう…中身がおばさんの日本人だってバレた?いや、それでもミランジェの記憶はあるし、ややこしい…。彼らにミランジェではない…と疑われているのならば、どこか遠くへ逃げてしまえばいい。

と、色々と思考をしていた時に双子から同時に抱きつかれた。

「ぎゃあ!」

「ははっ!俺、このミランジェの方がいいな!」

「俺も俺もッ!前のミランジェはツーンとしてて感じ悪かった!」

一つ年下とはいえ、相手は体も大きい男の子だ。両サイドからぎゅうぎゅう抱きつかれて息も出来ないっ!骨が折れる!

「ぐえぇ…」

「いい加減にして下さい!ガウンレンテ大尉」

リュー君が双子2人を私から引き剥がしてくれた。死ぬかと思った…

「でさ…うちの密偵からの報告じゃ、一人で市井に逃げていたみたいだし…リュージエンス殿下に無事保護されたって聞いてたのに、なんでまた城に戻って来てるの?」

ダーシュお義兄様が、まあ座んなよ~と言いながらソファに私とリュー君を促した。

私はこちらを見たリュー君に一度頷いてみせてからお義兄様に向き直った。

「今日こちらに、ナフテラージャ王女殿下がいらっしゃるとお聞きして…リュージエンス殿下の術なら人に見つかる心配は無い…とのことでしたので、城に侵入しました」

私がそう答えるとダーシュお義兄様は、苦笑しながらリュー君を見た。

「わざわざナフィに怒られに来るなんて、ミランジェ面白いな!」

お義兄様!言うに事を欠いてなんて言い草…。別に怒られに来ている訳じゃなくって…

「ナフテラージャ王女殿下に直接お会いして、今後の方針も確認したかったのです」

今後の方針?隣に座るリュー君の突然の発言に顔を向けると、リュー君が困ったような笑顔を私に向けながら

「ごめんね、ミランジェ。黙ってたことがあるんだ」

と、謝られた。ちょっと嫌な予感がするんだけど…。お義兄様と双子が妙にニヤニヤしているのも気になる。

すると部屋の扉の向こうからナフテラージャ王女殿下、お姉様の魔質が近づいて来た。

あ、戻って来ちゃった…

静かに扉が開けられてお姉様が部屋に入って来られて、ストンとお義兄様の隣に座られた。

「世も末ね」

「どうした?」

お姉様は私の方を見た。お姉様の魔質を見る限り、それほど怒ってはいないようだ。

お姉様はどうした?と聞かれたご自分の旦那様を一度見てから再び私の方を見た。

「ミランジェも見えたわね?あの第二王妃のお腹の子」

「はい」

私がそう答えるとお姉様は大きく溜め息をついた。

「も~ミランジェのことだけですから、さっさと済ませて帰ろうと思っておりましたのにね。このままで行くと、ベイフィートは直系の世継ぎはいなくなりますね。今の所は…ですが」

「それは…プリエレアンナ様のお腹のお子が陛下の子供ではない…ということで間違いないと?」

リュー君がそう聞くと、ダーシュお義兄様と双子が揃って、ええっ!と叫び声をあげた。

「この国の術師は何をしているのでしょうかね…もしや実子ではないと分かっていても黙認しているのかしら?」

「でもお姉様、一部の方を誤魔化せても他に魔質が見える方は沢山おられます。それでも隠し通せるものなのでしょうか?」

お姉様は私から顔を逸らせると目を細めて扉の向こう…恐らくプリエレアンナ様とクラシスを見ている。

「あの愚鈍な国王陛下では…気が付かないわね。さあ、これはお父様の読み通りになりそうね」

お父様の読み?何かしら?お姉様は私とリュー君を交互に見た。

「さてミランジェ、先ほど正式にあなたとベイフィート国王陛下の離縁が決定したわ。それでね、急で申し訳ないけれど今度は隣の…リュージエンス殿下と婚姻してね」

今…お姉様なんて言った?

リュージエンス殿下と婚姻してね?コンイン…こ…結婚!?リュー君と結婚!?

私は驚きでしどろもどろになってしまった。

「で…な…今、私…一人暮らしで…店を借りてて…」

「ああ、婚姻はしてもらうけど、後は自由に生活してていいわよ?リュージエンス殿下の後見人にトキワステラーテ王国が付いたっていうのを知らしめる為の婚姻だから、気楽にね」

お姉様?き…気楽も何も…後見人…?

つまりはリュー君が後ろ盾を得る為に私と婚姻するっていうわけなのね。

「ミランジェ…ごめんね。後で詳しい事情は説明するから、それと剣術指導もちゃんと手伝うから、冒険者の依頼の手伝いもするからっ!だから助けると思って俺と婚姻して!」

リュー君が私の前に跪いて頭を下げつつ懇願した。王子様のプロポーズ?のようだ。

しかしあまりに当然すぎる。

半信半疑でリュー君の魔質をジロジロと見てしまう。しかしリュー君の魔質は相変わらずの青い湖面の水のような澄んだ綺麗な青色の魔質だ。嘘はついていない。これは本当に訳アリなうえに、相当困っているのだね。

よし分かった。お地蔵様は雪まみれだ、笠をかけてあげましょう!リアル笠地蔵だね!

「分かったわ、約束よ!初心者の私を立派な冒険者にしてくれるならその申し出承諾しましょう!」

「やった!ミランジェありがとうっ!」

って…おいこら!どさくさに紛れて私の手に口づけを落とすんじゃない!油断も隙も無いお地蔵めっ!

「それはそうと、お腹の御子の件…どうしましょうか?」

とお姉様に聞くとメラッと魔力を上げた。

「あなたが気にすることじゃありませんよ。カッシーラ伯とボレンティ公爵に正式な書簡を渡してあります。もし白日の下に晒したいのなら、手を打たれるでしょう」

こればかりは、もう私では手の出しようがない。お姉様はパン…と手を打った。

「さあ、ダーシュ帰りましょうか」

するとお義兄様はソファの背もたれにグダーッと体を預けて仰け反っている。

「え~もう?俺、ミランジェが借りたぼろぼろの家見てみたいんだけど~」

「ちょっとお義兄様?聞き捨てならない表現が聞こえてきましたよ?ボロボロとは何事ですか!」

「諜報がそう言ってたんだもん。非常に危うい均衡で建っている家屋を借りられましたって…」

危うい均衡って何だ!ばっちりしっかり地面に根を下ろして建ってるよ!その諜報って誰だよ!

そしてそそくさとベイフィート城を出て商店街の端にある『ミランジェ洋装店(仮)』の前にトキワステラーテ王国御一行様をご案内した。

「納屋ですの?」

「お姉様、納屋ではございません、一応民家でございます」

「こりゃ隣を騎馬隊が通ったらペチャンコだな」

「お義兄様、こんな路地裏に騎馬隊なんて来ませんよ」

「俺、蹴ってみようかな!」

「のしイカにしてやろうか?ダンカレ!」

「うわーっ屋根もボロボロだよ!」

「百人乗ってもだい…じゃねーわ!降りなさいっデジバラ!」

屋根に登ったデジバラに怒っているとリュー君が、そう言えばさ~とピカピカに復元されたこの家の鍵を私のリュックサックの中から出していた。

「この家の外観を『再生』させないの?どうして?」

お姉様もダーシュお義兄様も若干顔を強張らせている。リュー君は聞いておきながら勝手に鍵を開けて、中に入って行く。そして、後に続いて室内に入って来たお姉様は歓喜の悲鳴を上げられた。

「これが?ふ…復活の魔法!?これがそうなの?ミランジェ…ミランジェ!」

「は、はいぃぃ!」

お姉様は頬を染めている。そしてお姉様に手を取られた。お姉様の魔力が光り輝いている。

「もうぅぅ!どうしてもっと早くこの魔法見せてくれなかったの?!再生したいもの沢山あったのに~大事にしていたのに落として壊しちゃった宝石箱とか、あまりの美味しさにもう少し食べたかったお菓子とか~」

何気にみみっちい…おっと失礼、コンパクトな再生のお願い事だね。

「でね、ミランジェ。復活の御手の力で…死者の再生は試してみたの?」

お姉様の発言にその場の空気が緊張したものに変わった。

死者の再生…。そう復活の御手の力の伝承に死者の蘇りが可能だったという記述があるのだ。あることはあるのだがその術は初代王が使った後に禁術指定をして…今は誰も使えない。

私は使えるのかと聞かれても分からない。だってイメージ、つまりは思い描けないものは術として発動しないのだ。どうやら復活の御手の力とは、想像力の豊かな方がよりリアルな魔法が使えるのではないかと、最近まで細々したものの復活と再生を試してきた私の結論だった。

「生憎と知り合いに亡くなられた方がおりませんので…」

お姉様は少し悲しそうな顔をされている。

暫く喋ってからお姉様とお義兄様と双子達は帰っていった。急に家の中が静かになる。

じっと自分の手を見ているとリュー君が頭を撫でてくれた。優しいな地蔵は…

「よし…じゃあまずは町内を10周走ってこい!」

んあ!?ちょい待てよ?今のしんみりした雰囲気から、急に何?

「モタモタするな、今から冒険者の特訓だ」

嘘でしょう!?

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