12 / 43
師匠と弟子
弟子の前に後ろ盾にされました
しおりを挟む
リュー君とゆっくりと声がした方を向くと、綺麗な金髪を短く刈り上げた髪に垂れ目気味の優しい目元の…
義兄の鬼神(今日は優男)のダーシュ=タウメントス大佐が腰に手を当てて立っていた。
ぎゃあっお義兄様?お姉様と一緒にベイフィートに来ていたの!?
私は隣に立つリュー君の服の袖を引っ張った。
「リュー君、気のせい…だよね?こっちは見えてない…のよね?」
「う…うん、多分見えてない…んだけど…見てるな?」
リュー君とコソコソ喋っている間も義兄はこっちを見て、顎に手を当てて…小さく頷いている。
「中々…すごい術を使っているけど、ミランジェの魔力が駄々洩れだ…俺とナフテラージャくらいしか気が付いてないとは思うけどね。ちょっとついておいで」
そう言って義兄は歩き出してしまう。
「仕方ない…完全にバレてるみたいだし、ついていこっか…」
私とリュー君は仕方なくお義兄様の後をついて行った。
ダーシュ=タウメントスお義兄様は貴賓室の一室に入った。その室内には2人男性がいて…
2人共私の従兄弟だった…
しかも双子の…ものすごく性格のひん曲がった…根性悪の特務隊の隊員の…ムカつくけど濃紺色の髪色で黒目の…認めたくないけど、アイドルみたいな容姿をしている。
何度も言うが、性格はひん曲がって根性悪だけど…アイドルみたいな双子の従兄弟がいた。
「隊長、お疲れっす」
「あれ?なんか隊長の後ろで…すんごい術の…あっれ?あれ~?」
最初の挨拶をした方が弟のデシバラ=ハッテーガウンレンテ、17歳。
後の方が兄のダンカレ=ハッテーガウンレンテ、17歳。
2人の見分け方は無い。あえて2人で容姿、性格、話し方等を似せようとしているので、まったくの一緒と言っても過言ではない。特務隊の性質上潜入などの仕事もあり、二人一役という特殊な任務用に敢えて…と思われる。
因みに私は完璧に見分けられる。当たり前だが魔質は千差万別。2人は魔質だけは別質だ。
「ホラ、もういいだろう。術を解けよ」
一瞬、鬼神の鬼圧?を私に向けてきた義兄に私は悲鳴を上げてしまった。リュー君は舌打ちしながら術を解いた。
「あれー?ミランジェ何やってるの?」
「あれれ?リュージエンス殿下じゃね?」
双子は2人でクルクルと私とリュー君の周りを回った。
「お久しぶりでございます、タウメントス大佐、ガウンレンテ大尉」
私がそう言って淑女の礼を取ると双子はピタッと動きを止めて、ジィーッと私を見詰めてきた。
「これ、本当にミランジェ?」
「なんかおかしい?」
アイドル2人に至近距離から見詰められる。どうしよう…中身がおばさんの日本人だってバレた?いや、それでもミランジェの記憶はあるし、ややこしい…。彼らにミランジェではない…と疑われているのならば、どこか遠くへ逃げてしまえばいい。
と、色々と思考をしていた時に双子から同時に抱きつかれた。
「ぎゃあ!」
「ははっ!俺、このミランジェの方がいいな!」
「俺も俺もッ!前のミランジェはツーンとしてて感じ悪かった!」
一つ年下とはいえ、相手は体も大きい男の子だ。両サイドからぎゅうぎゅう抱きつかれて息も出来ないっ!骨が折れる!
「ぐえぇ…」
「いい加減にして下さい!ガウンレンテ大尉」
リュー君が双子2人を私から引き剥がしてくれた。死ぬかと思った…
「でさ…うちの密偵からの報告じゃ、一人で市井に逃げていたみたいだし…リュージエンス殿下に無事保護されたって聞いてたのに、なんでまた城に戻って来てるの?」
ダーシュお義兄様が、まあ座んなよ~と言いながらソファに私とリュー君を促した。
私はこちらを見たリュー君に一度頷いてみせてからお義兄様に向き直った。
「今日こちらに、ナフテラージャ王女殿下がいらっしゃるとお聞きして…リュージエンス殿下の術なら人に見つかる心配は無い…とのことでしたので、城に侵入しました」
私がそう答えるとダーシュお義兄様は、苦笑しながらリュー君を見た。
「わざわざナフィに怒られに来るなんて、ミランジェ面白いな!」
お義兄様!言うに事を欠いてなんて言い草…。別に怒られに来ている訳じゃなくって…
「ナフテラージャ王女殿下に直接お会いして、今後の方針も確認したかったのです」
今後の方針?隣に座るリュー君の突然の発言に顔を向けると、リュー君が困ったような笑顔を私に向けながら
「ごめんね、ミランジェ。黙ってたことがあるんだ」
と、謝られた。ちょっと嫌な予感がするんだけど…。お義兄様と双子が妙にニヤニヤしているのも気になる。
すると部屋の扉の向こうからナフテラージャ王女殿下、お姉様の魔質が近づいて来た。
あ、戻って来ちゃった…
静かに扉が開けられてお姉様が部屋に入って来られて、ストンとお義兄様の隣に座られた。
「世も末ね」
「どうした?」
お姉様は私の方を見た。お姉様の魔質を見る限り、それほど怒ってはいないようだ。
お姉様はどうした?と聞かれたご自分の旦那様を一度見てから再び私の方を見た。
「ミランジェも見えたわね?あの第二王妃のお腹の子」
「はい」
私がそう答えるとお姉様は大きく溜め息をついた。
「も~ミランジェのことだけですから、さっさと済ませて帰ろうと思っておりましたのにね。このままで行くと、ベイフィートは直系の世継ぎはいなくなりますね。今の所は…ですが」
「それは…プリエレアンナ様のお腹のお子が陛下の子供ではない…ということで間違いないと?」
リュー君がそう聞くと、ダーシュお義兄様と双子が揃って、ええっ!と叫び声をあげた。
「この国の術師は何をしているのでしょうかね…もしや実子ではないと分かっていても黙認しているのかしら?」
「でもお姉様、一部の方を誤魔化せても他に魔質が見える方は沢山おられます。それでも隠し通せるものなのでしょうか?」
お姉様は私から顔を逸らせると目を細めて扉の向こう…恐らくプリエレアンナ様とクラシスを見ている。
「あの愚鈍な国王陛下では…気が付かないわね。さあ、これはお父様の読み通りになりそうね」
お父様の読み?何かしら?お姉様は私とリュー君を交互に見た。
「さてミランジェ、先ほど正式にあなたとベイフィート国王陛下の離縁が決定したわ。それでね、急で申し訳ないけれど今度は隣の…リュージエンス殿下と婚姻してね」
今…お姉様なんて言った?
リュージエンス殿下と婚姻してね?コンイン…こ…結婚!?リュー君と結婚!?
私は驚きでしどろもどろになってしまった。
「で…な…今、私…一人暮らしで…店を借りてて…」
「ああ、婚姻はしてもらうけど、後は自由に生活してていいわよ?リュージエンス殿下の後見人にトキワステラーテ王国が付いたっていうのを知らしめる為の婚姻だから、気楽にね」
お姉様?き…気楽も何も…後見人…?
つまりはリュー君が後ろ盾を得る為に私と婚姻するっていうわけなのね。
「ミランジェ…ごめんね。後で詳しい事情は説明するから、それと剣術指導もちゃんと手伝うから、冒険者の依頼の手伝いもするからっ!だから助けると思って俺と婚姻して!」
リュー君が私の前に跪いて頭を下げつつ懇願した。王子様のプロポーズ?のようだ。
しかしあまりに当然すぎる。
半信半疑でリュー君の魔質をジロジロと見てしまう。しかしリュー君の魔質は相変わらずの青い湖面の水のような澄んだ綺麗な青色の魔質だ。嘘はついていない。これは本当に訳アリなうえに、相当困っているのだね。
よし分かった。お地蔵様は雪まみれだ、笠をかけてあげましょう!リアル笠地蔵だね!
「分かったわ、約束よ!初心者の私を立派な冒険者にしてくれるならその申し出承諾しましょう!」
「やった!ミランジェありがとうっ!」
って…おいこら!どさくさに紛れて私の手に口づけを落とすんじゃない!油断も隙も無いお地蔵めっ!
「それはそうと、お腹の御子の件…どうしましょうか?」
とお姉様に聞くとメラッと魔力を上げた。
「あなたが気にすることじゃありませんよ。カッシーラ伯とボレンティ公爵に正式な書簡を渡してあります。もし白日の下に晒したいのなら、手を打たれるでしょう」
こればかりは、もう私では手の出しようがない。お姉様はパン…と手を打った。
「さあ、ダーシュ帰りましょうか」
するとお義兄様はソファの背もたれにグダーッと体を預けて仰け反っている。
「え~もう?俺、ミランジェが借りたぼろぼろの家見てみたいんだけど~」
「ちょっとお義兄様?聞き捨てならない表現が聞こえてきましたよ?ボロボロとは何事ですか!」
「諜報がそう言ってたんだもん。非常に危うい均衡で建っている家屋を借りられましたって…」
危うい均衡って何だ!ばっちりしっかり地面に根を下ろして建ってるよ!その諜報って誰だよ!
そしてそそくさとベイフィート城を出て商店街の端にある『ミランジェ洋装店(仮)』の前にトキワステラーテ王国御一行様をご案内した。
「納屋ですの?」
「お姉様、納屋ではございません、一応民家でございます」
「こりゃ隣を騎馬隊が通ったらペチャンコだな」
「お義兄様、こんな路地裏に騎馬隊なんて来ませんよ」
「俺、蹴ってみようかな!」
「のしイカにしてやろうか?ダンカレ!」
「うわーっ屋根もボロボロだよ!」
「百人乗ってもだい…じゃねーわ!降りなさいっデジバラ!」
屋根に登ったデジバラに怒っているとリュー君が、そう言えばさ~とピカピカに復元されたこの家の鍵を私のリュックサックの中から出していた。
「この家の外観を『再生』させないの?どうして?」
お姉様もダーシュお義兄様も若干顔を強張らせている。リュー君は聞いておきながら勝手に鍵を開けて、中に入って行く。そして、後に続いて室内に入って来たお姉様は歓喜の悲鳴を上げられた。
「これが?ふ…復活の魔法!?これがそうなの?ミランジェ…ミランジェ!」
「は、はいぃぃ!」
お姉様は頬を染めている。そしてお姉様に手を取られた。お姉様の魔力が光り輝いている。
「もうぅぅ!どうしてもっと早くこの魔法見せてくれなかったの?!再生したいもの沢山あったのに~大事にしていたのに落として壊しちゃった宝石箱とか、あまりの美味しさにもう少し食べたかったお菓子とか~」
何気にみみっちい…おっと失礼、コンパクトな再生のお願い事だね。
「でね、ミランジェ。復活の御手の力で…死者の再生は試してみたの?」
お姉様の発言にその場の空気が緊張したものに変わった。
死者の再生…。そう復活の御手の力の伝承に死者の蘇りが可能だったという記述があるのだ。あることはあるのだがその術は初代王が使った後に禁術指定をして…今は誰も使えない。
私は使えるのかと聞かれても分からない。だってイメージ、つまりは思い描けないものは術として発動しないのだ。どうやら復活の御手の力とは、想像力の豊かな方がよりリアルな魔法が使えるのではないかと、最近まで細々したものの復活と再生を試してきた私の結論だった。
「生憎と知り合いに亡くなられた方がおりませんので…」
お姉様は少し悲しそうな顔をされている。
暫く喋ってからお姉様とお義兄様と双子達は帰っていった。急に家の中が静かになる。
じっと自分の手を見ているとリュー君が頭を撫でてくれた。優しいな地蔵は…
「よし…じゃあまずは町内を10周走ってこい!」
んあ!?ちょい待てよ?今のしんみりした雰囲気から、急に何?
「モタモタするな、今から冒険者の特訓だ」
嘘でしょう!?
義兄の鬼神(今日は優男)のダーシュ=タウメントス大佐が腰に手を当てて立っていた。
ぎゃあっお義兄様?お姉様と一緒にベイフィートに来ていたの!?
私は隣に立つリュー君の服の袖を引っ張った。
「リュー君、気のせい…だよね?こっちは見えてない…のよね?」
「う…うん、多分見えてない…んだけど…見てるな?」
リュー君とコソコソ喋っている間も義兄はこっちを見て、顎に手を当てて…小さく頷いている。
「中々…すごい術を使っているけど、ミランジェの魔力が駄々洩れだ…俺とナフテラージャくらいしか気が付いてないとは思うけどね。ちょっとついておいで」
そう言って義兄は歩き出してしまう。
「仕方ない…完全にバレてるみたいだし、ついていこっか…」
私とリュー君は仕方なくお義兄様の後をついて行った。
ダーシュ=タウメントスお義兄様は貴賓室の一室に入った。その室内には2人男性がいて…
2人共私の従兄弟だった…
しかも双子の…ものすごく性格のひん曲がった…根性悪の特務隊の隊員の…ムカつくけど濃紺色の髪色で黒目の…認めたくないけど、アイドルみたいな容姿をしている。
何度も言うが、性格はひん曲がって根性悪だけど…アイドルみたいな双子の従兄弟がいた。
「隊長、お疲れっす」
「あれ?なんか隊長の後ろで…すんごい術の…あっれ?あれ~?」
最初の挨拶をした方が弟のデシバラ=ハッテーガウンレンテ、17歳。
後の方が兄のダンカレ=ハッテーガウンレンテ、17歳。
2人の見分け方は無い。あえて2人で容姿、性格、話し方等を似せようとしているので、まったくの一緒と言っても過言ではない。特務隊の性質上潜入などの仕事もあり、二人一役という特殊な任務用に敢えて…と思われる。
因みに私は完璧に見分けられる。当たり前だが魔質は千差万別。2人は魔質だけは別質だ。
「ホラ、もういいだろう。術を解けよ」
一瞬、鬼神の鬼圧?を私に向けてきた義兄に私は悲鳴を上げてしまった。リュー君は舌打ちしながら術を解いた。
「あれー?ミランジェ何やってるの?」
「あれれ?リュージエンス殿下じゃね?」
双子は2人でクルクルと私とリュー君の周りを回った。
「お久しぶりでございます、タウメントス大佐、ガウンレンテ大尉」
私がそう言って淑女の礼を取ると双子はピタッと動きを止めて、ジィーッと私を見詰めてきた。
「これ、本当にミランジェ?」
「なんかおかしい?」
アイドル2人に至近距離から見詰められる。どうしよう…中身がおばさんの日本人だってバレた?いや、それでもミランジェの記憶はあるし、ややこしい…。彼らにミランジェではない…と疑われているのならば、どこか遠くへ逃げてしまえばいい。
と、色々と思考をしていた時に双子から同時に抱きつかれた。
「ぎゃあ!」
「ははっ!俺、このミランジェの方がいいな!」
「俺も俺もッ!前のミランジェはツーンとしてて感じ悪かった!」
一つ年下とはいえ、相手は体も大きい男の子だ。両サイドからぎゅうぎゅう抱きつかれて息も出来ないっ!骨が折れる!
「ぐえぇ…」
「いい加減にして下さい!ガウンレンテ大尉」
リュー君が双子2人を私から引き剥がしてくれた。死ぬかと思った…
「でさ…うちの密偵からの報告じゃ、一人で市井に逃げていたみたいだし…リュージエンス殿下に無事保護されたって聞いてたのに、なんでまた城に戻って来てるの?」
ダーシュお義兄様が、まあ座んなよ~と言いながらソファに私とリュー君を促した。
私はこちらを見たリュー君に一度頷いてみせてからお義兄様に向き直った。
「今日こちらに、ナフテラージャ王女殿下がいらっしゃるとお聞きして…リュージエンス殿下の術なら人に見つかる心配は無い…とのことでしたので、城に侵入しました」
私がそう答えるとダーシュお義兄様は、苦笑しながらリュー君を見た。
「わざわざナフィに怒られに来るなんて、ミランジェ面白いな!」
お義兄様!言うに事を欠いてなんて言い草…。別に怒られに来ている訳じゃなくって…
「ナフテラージャ王女殿下に直接お会いして、今後の方針も確認したかったのです」
今後の方針?隣に座るリュー君の突然の発言に顔を向けると、リュー君が困ったような笑顔を私に向けながら
「ごめんね、ミランジェ。黙ってたことがあるんだ」
と、謝られた。ちょっと嫌な予感がするんだけど…。お義兄様と双子が妙にニヤニヤしているのも気になる。
すると部屋の扉の向こうからナフテラージャ王女殿下、お姉様の魔質が近づいて来た。
あ、戻って来ちゃった…
静かに扉が開けられてお姉様が部屋に入って来られて、ストンとお義兄様の隣に座られた。
「世も末ね」
「どうした?」
お姉様は私の方を見た。お姉様の魔質を見る限り、それほど怒ってはいないようだ。
お姉様はどうした?と聞かれたご自分の旦那様を一度見てから再び私の方を見た。
「ミランジェも見えたわね?あの第二王妃のお腹の子」
「はい」
私がそう答えるとお姉様は大きく溜め息をついた。
「も~ミランジェのことだけですから、さっさと済ませて帰ろうと思っておりましたのにね。このままで行くと、ベイフィートは直系の世継ぎはいなくなりますね。今の所は…ですが」
「それは…プリエレアンナ様のお腹のお子が陛下の子供ではない…ということで間違いないと?」
リュー君がそう聞くと、ダーシュお義兄様と双子が揃って、ええっ!と叫び声をあげた。
「この国の術師は何をしているのでしょうかね…もしや実子ではないと分かっていても黙認しているのかしら?」
「でもお姉様、一部の方を誤魔化せても他に魔質が見える方は沢山おられます。それでも隠し通せるものなのでしょうか?」
お姉様は私から顔を逸らせると目を細めて扉の向こう…恐らくプリエレアンナ様とクラシスを見ている。
「あの愚鈍な国王陛下では…気が付かないわね。さあ、これはお父様の読み通りになりそうね」
お父様の読み?何かしら?お姉様は私とリュー君を交互に見た。
「さてミランジェ、先ほど正式にあなたとベイフィート国王陛下の離縁が決定したわ。それでね、急で申し訳ないけれど今度は隣の…リュージエンス殿下と婚姻してね」
今…お姉様なんて言った?
リュージエンス殿下と婚姻してね?コンイン…こ…結婚!?リュー君と結婚!?
私は驚きでしどろもどろになってしまった。
「で…な…今、私…一人暮らしで…店を借りてて…」
「ああ、婚姻はしてもらうけど、後は自由に生活してていいわよ?リュージエンス殿下の後見人にトキワステラーテ王国が付いたっていうのを知らしめる為の婚姻だから、気楽にね」
お姉様?き…気楽も何も…後見人…?
つまりはリュー君が後ろ盾を得る為に私と婚姻するっていうわけなのね。
「ミランジェ…ごめんね。後で詳しい事情は説明するから、それと剣術指導もちゃんと手伝うから、冒険者の依頼の手伝いもするからっ!だから助けると思って俺と婚姻して!」
リュー君が私の前に跪いて頭を下げつつ懇願した。王子様のプロポーズ?のようだ。
しかしあまりに当然すぎる。
半信半疑でリュー君の魔質をジロジロと見てしまう。しかしリュー君の魔質は相変わらずの青い湖面の水のような澄んだ綺麗な青色の魔質だ。嘘はついていない。これは本当に訳アリなうえに、相当困っているのだね。
よし分かった。お地蔵様は雪まみれだ、笠をかけてあげましょう!リアル笠地蔵だね!
「分かったわ、約束よ!初心者の私を立派な冒険者にしてくれるならその申し出承諾しましょう!」
「やった!ミランジェありがとうっ!」
って…おいこら!どさくさに紛れて私の手に口づけを落とすんじゃない!油断も隙も無いお地蔵めっ!
「それはそうと、お腹の御子の件…どうしましょうか?」
とお姉様に聞くとメラッと魔力を上げた。
「あなたが気にすることじゃありませんよ。カッシーラ伯とボレンティ公爵に正式な書簡を渡してあります。もし白日の下に晒したいのなら、手を打たれるでしょう」
こればかりは、もう私では手の出しようがない。お姉様はパン…と手を打った。
「さあ、ダーシュ帰りましょうか」
するとお義兄様はソファの背もたれにグダーッと体を預けて仰け反っている。
「え~もう?俺、ミランジェが借りたぼろぼろの家見てみたいんだけど~」
「ちょっとお義兄様?聞き捨てならない表現が聞こえてきましたよ?ボロボロとは何事ですか!」
「諜報がそう言ってたんだもん。非常に危うい均衡で建っている家屋を借りられましたって…」
危うい均衡って何だ!ばっちりしっかり地面に根を下ろして建ってるよ!その諜報って誰だよ!
そしてそそくさとベイフィート城を出て商店街の端にある『ミランジェ洋装店(仮)』の前にトキワステラーテ王国御一行様をご案内した。
「納屋ですの?」
「お姉様、納屋ではございません、一応民家でございます」
「こりゃ隣を騎馬隊が通ったらペチャンコだな」
「お義兄様、こんな路地裏に騎馬隊なんて来ませんよ」
「俺、蹴ってみようかな!」
「のしイカにしてやろうか?ダンカレ!」
「うわーっ屋根もボロボロだよ!」
「百人乗ってもだい…じゃねーわ!降りなさいっデジバラ!」
屋根に登ったデジバラに怒っているとリュー君が、そう言えばさ~とピカピカに復元されたこの家の鍵を私のリュックサックの中から出していた。
「この家の外観を『再生』させないの?どうして?」
お姉様もダーシュお義兄様も若干顔を強張らせている。リュー君は聞いておきながら勝手に鍵を開けて、中に入って行く。そして、後に続いて室内に入って来たお姉様は歓喜の悲鳴を上げられた。
「これが?ふ…復活の魔法!?これがそうなの?ミランジェ…ミランジェ!」
「は、はいぃぃ!」
お姉様は頬を染めている。そしてお姉様に手を取られた。お姉様の魔力が光り輝いている。
「もうぅぅ!どうしてもっと早くこの魔法見せてくれなかったの?!再生したいもの沢山あったのに~大事にしていたのに落として壊しちゃった宝石箱とか、あまりの美味しさにもう少し食べたかったお菓子とか~」
何気にみみっちい…おっと失礼、コンパクトな再生のお願い事だね。
「でね、ミランジェ。復活の御手の力で…死者の再生は試してみたの?」
お姉様の発言にその場の空気が緊張したものに変わった。
死者の再生…。そう復活の御手の力の伝承に死者の蘇りが可能だったという記述があるのだ。あることはあるのだがその術は初代王が使った後に禁術指定をして…今は誰も使えない。
私は使えるのかと聞かれても分からない。だってイメージ、つまりは思い描けないものは術として発動しないのだ。どうやら復活の御手の力とは、想像力の豊かな方がよりリアルな魔法が使えるのではないかと、最近まで細々したものの復活と再生を試してきた私の結論だった。
「生憎と知り合いに亡くなられた方がおりませんので…」
お姉様は少し悲しそうな顔をされている。
暫く喋ってからお姉様とお義兄様と双子達は帰っていった。急に家の中が静かになる。
じっと自分の手を見ているとリュー君が頭を撫でてくれた。優しいな地蔵は…
「よし…じゃあまずは町内を10周走ってこい!」
んあ!?ちょい待てよ?今のしんみりした雰囲気から、急に何?
「モタモタするな、今から冒険者の特訓だ」
嘘でしょう!?
6
あなたにおすすめの小説
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました
志熊みゅう
恋愛
十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。
卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。
マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。
その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。
――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。
彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。
断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。
第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。
「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。
「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。
だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。
全43話+番外編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる