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師匠と弟子
辺境伯領は大変なことになっています
メイドの方がお茶の準備に来たので、マジアリート様は口を閉ざされた。私とリュー君も大人しく準備されるのを待っていた。そうだ、マジアリート様に聞いてみよう。
「そうですわ、マジアリート様。私、基礎体力をつけようかと思いまして…リュージエンス殿下が討伐をされている間、この辺りで走り込みをしたいのですが、適切な場所をご存じありません?」
「ぅえ?」
マジアリート様は変な声を上げられた。私の前にティーカップを置いたメイドの方も、カチャ…と茶器の音をたててしまった。失礼致しました…とメイドの女性は準備を続けられた。
「あの…ミランジェ妃、本気で走り込みをされるのですか?」
「はい」
「あの…今は魔獣や…魔物が大繁殖しておりまして、外を歩かれるのは非常に危険でして…」
「嘘…」
思わずリュー君を見てしまったが、リュー君も、ゲッ!?みたいな顔をしていた。
「それほどに魔獣が多いのですか?」
「はい、普段なら魔の谷から偶に魔獣化した獣が降りて来る程度なのですが…ここ数年はほぼ毎日…」
「そんなに…」
確か魔獣は魔の谷から現れると聞くし、この辺境伯領が谷に近いから、一番遭遇率が高いけれど…それでも毎日現れるって…そうかベイフィート城の魔に惹かれて…
「ミランジェ妃、先日おっしゃっていたベイフィールド城の内部には禍々しい魔の塊が巣食っている…というのは具体的には城のどの辺りか分かりますか?それとその魔とは…正体は何ですか?生き物ですか?モノ…例えば魔石とかでしょうか?」
マジアリート様に聞かれて返答に困ってしまう。
「その魔が居る?存在する大体の方向は分かるのですが、私が立ち入ったことの無い場所でして…」
「妃殿下が…ですか?城内でそんな場所あるかな?」
やっぱり言わなきゃいけないよね…
「…です」
つい、声が小さくなる。
「え?」
マジアリート様とリュー君の声が重なった。
意を決して顔を上げた。
「陛下の寝所です!」
マジアリート様とリュー君はたっぷり数秒固まっていた。
「陛下の寝所…」
「ミランジェ入ったことないの?」
ああもう、いやだ…目の前のイケメン2人は、何かを想像しているのか、ニヤニヤしたり咳払いしたりしている。
「わ、私は…その寝所に何かあるのが分かるので怖くて近づきたくなくて…ずっと避けていたのです。ですから…」
私の言葉を制するようにリュー君が手を上げた。
「国王陛下の寝所はカッシーラ伯や宰相に許可を頂けないと中は見せてはもらえないだろう?その魔の塊は改めて確認するとして…取り敢えずはミランジェは魔道具の鞄を作ってみれば?」
むぅ…。確かに外をウロウロすることは今は危険だし、仕方ないか。
「よしっ、じゃあまずミランジェのオベントーって言うの食べようかな?」
いきなり食い気ですか!?
嬉しそうにニコニコしているリュー君を睨んでみたが、地蔵は気にせずにメイドさんを呼びつけて、取り皿を持ってくるように言いつけている。
私が渋々、リュックサックから唐揚げを入れた小鉢を取り出してくると、何故だかマジアリート様も待ち構えていた。
唐揚げ、野菜フライ、オムレツ…サラダをテーブルに出してくると、王族筋の坊っちゃん2人は勢いよく食べ出した。
凄い勢いで小鉢の料理が無くなっていく。
「何これ?凄く美味しいですね!」
「なんか甘辛い香辛料がかかってる~!旨い!」
「サヨウデゴザイマスカ…」
私の分、残らなさそう…
翌日
流石にこんな所まで来て魔獣に追いかけられたりしたら困るので…私は大人しくデイバッグを縫うことにした。
何でも、カッシーラ伯は例のご懐妊についてクラシス国王陛下に物申してくるので、こちらに帰って来る予定が未定になったらしい。
そう言うことなら…という訳で先にマジアリート様の分を制作することにした。
来客用の居間で型紙を作り、布を切っていると、マジアリート様とカッシーラ伯の侍従のおじ様とメイド長が、やって来た。
「制作されるの見せてもらってもいいですか?」
「はい?構いませんよ」
因みにリュー君はカッシーラ伯領軍の精鋭の皆様とで魔獣退治に出ています。
「物凄い魔道具を制作されるとか?」
侍従のおじ様の熱い視線を受けるが、私は例によって如く『魔法の使い方』の本を見せた。
「物凄い…と言ってもこの本に書いている通りに作っているだけなのですが~。では!始めますね」
私は自分のリュックサックを作った時の様に、針に魔力を注ぎ込みながら一針一針縫っていった。
「肩の部分はちょっぴり派手な色を合わせようと思いまして…」
と、解説しながら、基調は茶色、差し色に紺色と橙色を合わせるとマジアリート様は凄く喜んでくれた。
「わあっ!橙色なんて女の子が持つ鞄の色じゃね?とか思ったけど、予想に反して格好いいです!」
「オホホ…そうでしょう~そうでしょう~!」
そして、外側のポケットも大胆に橙色と紺色の布を使っていく。
そして、通常の鞄の形に縫い上がり、魔力を帯びて薄く発光するデイバッグにまずは…
「亜空間連結…え~と、フムフム…。封印結界…」
「本当に本を見ながら定着させるのですね…。そんな最高位魔法がこの袋に定着するんですか?」
ごちゃごちゃ煩いよ、マジアリート様。
私は何度も本を見ながら、魔法をかけていく。
「えっと、重力無効化と…防腐魔法ね。後、何かあったっけ?」
侍従とメイド長さんが慌てて叫ばれた。
「ちょっとお待ち下さい!そんな高位魔法の重ね掛けをこれ以上したら、魔力暴走が起こってしまいお屋敷が吹き飛んでしまいますっ!」
「ええっ!?重ね掛け魔法ってそんなに危険なの!?」
私、適当にえいっえいっと魔法かけていたけど…危なかったのかな?
「でも、大丈夫だったわよ~!えいっ!」
最後に魔物理防御をデイバッグにかけるとバッグはフワッと発光し…魔法が定着したようだ…多分。
「さっ、マジアリート様出来ましたよ。背負ってみて下さい」
マジアリート様はデイバッグを私から恐る恐る受け取ると、斜め掛けに背負ってから鏡の前で、目を輝かせている。
「うわっ!魔道具抜きにしてもお洒落だし、いいね!早速中に入れてみていい?」
「最初は試された方がいいので、壊れても良い物から入れてみて下さいませ」
と、私が言うとマジアリート様はテーブルの上に置いていたティーポットを躊躇いもなく、デイバッグの中に入れた。
うん、いきなり高そうな茶器と汁物から入れる大胆さ…嫌いじゃない。
「おお、溢れずに出てくるね!あ、この鞄に消臭魔法も付加されてはどうかな?」
茶器を難なく鞄から出し入れしていたマジアリート様の提案を快く了承して、デイバッグに消臭魔法を追加する。
うむうむ、完璧だね。
「で、ミランジェ妃~この魔道具お幾らで?」
マジアリート様はお気に召してくれたようで、これまた躊躇いなくご自身の懐に入れていたお財布かな?を入れてニコニコしながらそう聞いてこられた。
う~んそうだなぁ…材料費と私の工賃…入れて…
「はい、鞄代は銀貨4枚になります!」
「安っ!」
「そんなっ!」
マジアリート様と侍従のおじ様の悲鳴が上がった。え?安いの?
「な…な!?何を…普通の魔道具なら金貨13、14枚…いやいや、50枚はする貴重な魔道具だよっ!?」
マジアリート様に至近距離から怒鳴られる。って言ってもさ~布は市場で値切って買った布地だし…魔法なんて本に載っているのを適当にかけただけよ?
「あの材料費はとても安くて…しかも私の手縫いだし…」
「魔術施術料も含まなくちゃいけないよっ!」
さっきからマジアリート様にものすごい勢いで全否定されている。そ…そっかこの私の手縫いデイバッグもカテゴリー的には『魔道具』のジャンルになるのか…。魔道具ってハイブランドのバッグぐらいのお値段がするんだね。
「う~ん…じゃあ金貨2枚で!」
……マジアリート様から魔力とガンを飛ばされた…。おまけに侍従とメイド長にも睨まれている。
「金貨5枚…いえあの…8枚…うぅ…10枚でっ…これが精いっぱいです!」
マジアリート様はフンッ…と鼻息を吹いてから、デイバッグの中からお財布を取り出して、金貨を10枚を私に静かに差し出した。
「りょ…領収証を…」
「いらないよっ…あのさ、ミランジェ!いいやもう呼び捨てしちゃうよ?元王女殿下だし、世間の金銭感覚からズレているのも分かってるけど~妙にセコイかと思えば、魔道具の販売価格にも疎いし…そんなんじゃ…」
「それくらいにしてあげてくれ、マジアリート」
と、言う声と共にリュー君が、居間に入って来た。何だか…黒い魔質を体中に纏わりつかせている…
「あ、殿下。もう討伐終わられたのですか?」
リュー君は、息を吐きながら私の座っているソファに腰かけた。
「夕方にもう一度行って見るよ。当初は一日一度、討伐して様子を見ようと思っていたけど、思っていたより魔獣の出没頻度が高いみたいだね」
魔獣…そうか、魔獣を討伐していたからリュー君の体から…黒くて…嫌な魔質が漂っているのが見えるのか…
「リュー君…浄化しておくわね…」
「え?」
リュー君の返事を待たずに、リュー君の腕に自分の手を置いた。私の魔力がリュー君の体を包む。
「わっ!」
「まあっ!」
「すごい!」
皆が歓声?悲鳴を上げて私の浄化魔法を見ている。多分ここまでの浄化魔法はこの国に居る魔術師には無理だろう。実際、魔術師でも『治療術師』となると、存在がグッと少なくなる稀有な能力なのだ。
リュー君の体が綺麗に浄化された。リュー君は自分の手をひっくり返したりして、繁々と眺めている。
「俺、もしかして穢れてた?」
「うん、結構ね」
穢れる…とリュー君が言っているのは、実は笑いごとではないのだ。魔獣や魔物の血や毒などで瘴気当りすると、魔力系の心疾患から外傷性疾患…酷い時など精神疾患をも引き起こす恐ろしいものだ。
穢れを浴びた者は即刻、穢れを祓っておかなければ後々危険な状態になることもある。
「今日、討伐に出られていた兵士の皆さまも祓っておきましょうか?」
と、マジアリート様に聞くと、是非お願いしますと真顔でお願いされた。
という訳で、伯領の軍部の詰所にリュー君と一緒に行って…もう面倒なので詰所の建物全体に浄化魔法をかけておいた。
え~とね、一応お声かけしてから浄化しましょうか…と詰所の中を覗いたら、中におられた兵士の皆様が物凄い歓声をあげた後、何故か走り出て来た皆様に囲まれちゃったのよね…まあ私みたいな治療術師が珍しいのでしょうけど…
そんな状態の私をリュー君が腕の中に庇ってくれて、
「騒ぐな、騒ぐな!ミランジェは俺の嫁だ!」
とか訳の分からないこと言いながら怒鳴っていたんだけど、そんな嫁とかわざわざ言う必要ある?
おまけに
結構、機嫌が悪そうな魔質をこちらに向けながら
「ミランジェ…夕方、討伐に行く前に走り込みしとこうか?」
とオラオラ魔力を出しながら、私を睨んでいた。
何でまたそんなオラついた魔力をぶつけながら言われなきゃならないのよ!?
しかも睨む必要なんてあるっ!?
「そうですわ、マジアリート様。私、基礎体力をつけようかと思いまして…リュージエンス殿下が討伐をされている間、この辺りで走り込みをしたいのですが、適切な場所をご存じありません?」
「ぅえ?」
マジアリート様は変な声を上げられた。私の前にティーカップを置いたメイドの方も、カチャ…と茶器の音をたててしまった。失礼致しました…とメイドの女性は準備を続けられた。
「あの…ミランジェ妃、本気で走り込みをされるのですか?」
「はい」
「あの…今は魔獣や…魔物が大繁殖しておりまして、外を歩かれるのは非常に危険でして…」
「嘘…」
思わずリュー君を見てしまったが、リュー君も、ゲッ!?みたいな顔をしていた。
「それほどに魔獣が多いのですか?」
「はい、普段なら魔の谷から偶に魔獣化した獣が降りて来る程度なのですが…ここ数年はほぼ毎日…」
「そんなに…」
確か魔獣は魔の谷から現れると聞くし、この辺境伯領が谷に近いから、一番遭遇率が高いけれど…それでも毎日現れるって…そうかベイフィート城の魔に惹かれて…
「ミランジェ妃、先日おっしゃっていたベイフィールド城の内部には禍々しい魔の塊が巣食っている…というのは具体的には城のどの辺りか分かりますか?それとその魔とは…正体は何ですか?生き物ですか?モノ…例えば魔石とかでしょうか?」
マジアリート様に聞かれて返答に困ってしまう。
「その魔が居る?存在する大体の方向は分かるのですが、私が立ち入ったことの無い場所でして…」
「妃殿下が…ですか?城内でそんな場所あるかな?」
やっぱり言わなきゃいけないよね…
「…です」
つい、声が小さくなる。
「え?」
マジアリート様とリュー君の声が重なった。
意を決して顔を上げた。
「陛下の寝所です!」
マジアリート様とリュー君はたっぷり数秒固まっていた。
「陛下の寝所…」
「ミランジェ入ったことないの?」
ああもう、いやだ…目の前のイケメン2人は、何かを想像しているのか、ニヤニヤしたり咳払いしたりしている。
「わ、私は…その寝所に何かあるのが分かるので怖くて近づきたくなくて…ずっと避けていたのです。ですから…」
私の言葉を制するようにリュー君が手を上げた。
「国王陛下の寝所はカッシーラ伯や宰相に許可を頂けないと中は見せてはもらえないだろう?その魔の塊は改めて確認するとして…取り敢えずはミランジェは魔道具の鞄を作ってみれば?」
むぅ…。確かに外をウロウロすることは今は危険だし、仕方ないか。
「よしっ、じゃあまずミランジェのオベントーって言うの食べようかな?」
いきなり食い気ですか!?
嬉しそうにニコニコしているリュー君を睨んでみたが、地蔵は気にせずにメイドさんを呼びつけて、取り皿を持ってくるように言いつけている。
私が渋々、リュックサックから唐揚げを入れた小鉢を取り出してくると、何故だかマジアリート様も待ち構えていた。
唐揚げ、野菜フライ、オムレツ…サラダをテーブルに出してくると、王族筋の坊っちゃん2人は勢いよく食べ出した。
凄い勢いで小鉢の料理が無くなっていく。
「何これ?凄く美味しいですね!」
「なんか甘辛い香辛料がかかってる~!旨い!」
「サヨウデゴザイマスカ…」
私の分、残らなさそう…
翌日
流石にこんな所まで来て魔獣に追いかけられたりしたら困るので…私は大人しくデイバッグを縫うことにした。
何でも、カッシーラ伯は例のご懐妊についてクラシス国王陛下に物申してくるので、こちらに帰って来る予定が未定になったらしい。
そう言うことなら…という訳で先にマジアリート様の分を制作することにした。
来客用の居間で型紙を作り、布を切っていると、マジアリート様とカッシーラ伯の侍従のおじ様とメイド長が、やって来た。
「制作されるの見せてもらってもいいですか?」
「はい?構いませんよ」
因みにリュー君はカッシーラ伯領軍の精鋭の皆様とで魔獣退治に出ています。
「物凄い魔道具を制作されるとか?」
侍従のおじ様の熱い視線を受けるが、私は例によって如く『魔法の使い方』の本を見せた。
「物凄い…と言ってもこの本に書いている通りに作っているだけなのですが~。では!始めますね」
私は自分のリュックサックを作った時の様に、針に魔力を注ぎ込みながら一針一針縫っていった。
「肩の部分はちょっぴり派手な色を合わせようと思いまして…」
と、解説しながら、基調は茶色、差し色に紺色と橙色を合わせるとマジアリート様は凄く喜んでくれた。
「わあっ!橙色なんて女の子が持つ鞄の色じゃね?とか思ったけど、予想に反して格好いいです!」
「オホホ…そうでしょう~そうでしょう~!」
そして、外側のポケットも大胆に橙色と紺色の布を使っていく。
そして、通常の鞄の形に縫い上がり、魔力を帯びて薄く発光するデイバッグにまずは…
「亜空間連結…え~と、フムフム…。封印結界…」
「本当に本を見ながら定着させるのですね…。そんな最高位魔法がこの袋に定着するんですか?」
ごちゃごちゃ煩いよ、マジアリート様。
私は何度も本を見ながら、魔法をかけていく。
「えっと、重力無効化と…防腐魔法ね。後、何かあったっけ?」
侍従とメイド長さんが慌てて叫ばれた。
「ちょっとお待ち下さい!そんな高位魔法の重ね掛けをこれ以上したら、魔力暴走が起こってしまいお屋敷が吹き飛んでしまいますっ!」
「ええっ!?重ね掛け魔法ってそんなに危険なの!?」
私、適当にえいっえいっと魔法かけていたけど…危なかったのかな?
「でも、大丈夫だったわよ~!えいっ!」
最後に魔物理防御をデイバッグにかけるとバッグはフワッと発光し…魔法が定着したようだ…多分。
「さっ、マジアリート様出来ましたよ。背負ってみて下さい」
マジアリート様はデイバッグを私から恐る恐る受け取ると、斜め掛けに背負ってから鏡の前で、目を輝かせている。
「うわっ!魔道具抜きにしてもお洒落だし、いいね!早速中に入れてみていい?」
「最初は試された方がいいので、壊れても良い物から入れてみて下さいませ」
と、私が言うとマジアリート様はテーブルの上に置いていたティーポットを躊躇いもなく、デイバッグの中に入れた。
うん、いきなり高そうな茶器と汁物から入れる大胆さ…嫌いじゃない。
「おお、溢れずに出てくるね!あ、この鞄に消臭魔法も付加されてはどうかな?」
茶器を難なく鞄から出し入れしていたマジアリート様の提案を快く了承して、デイバッグに消臭魔法を追加する。
うむうむ、完璧だね。
「で、ミランジェ妃~この魔道具お幾らで?」
マジアリート様はお気に召してくれたようで、これまた躊躇いなくご自身の懐に入れていたお財布かな?を入れてニコニコしながらそう聞いてこられた。
う~んそうだなぁ…材料費と私の工賃…入れて…
「はい、鞄代は銀貨4枚になります!」
「安っ!」
「そんなっ!」
マジアリート様と侍従のおじ様の悲鳴が上がった。え?安いの?
「な…な!?何を…普通の魔道具なら金貨13、14枚…いやいや、50枚はする貴重な魔道具だよっ!?」
マジアリート様に至近距離から怒鳴られる。って言ってもさ~布は市場で値切って買った布地だし…魔法なんて本に載っているのを適当にかけただけよ?
「あの材料費はとても安くて…しかも私の手縫いだし…」
「魔術施術料も含まなくちゃいけないよっ!」
さっきからマジアリート様にものすごい勢いで全否定されている。そ…そっかこの私の手縫いデイバッグもカテゴリー的には『魔道具』のジャンルになるのか…。魔道具ってハイブランドのバッグぐらいのお値段がするんだね。
「う~ん…じゃあ金貨2枚で!」
……マジアリート様から魔力とガンを飛ばされた…。おまけに侍従とメイド長にも睨まれている。
「金貨5枚…いえあの…8枚…うぅ…10枚でっ…これが精いっぱいです!」
マジアリート様はフンッ…と鼻息を吹いてから、デイバッグの中からお財布を取り出して、金貨を10枚を私に静かに差し出した。
「りょ…領収証を…」
「いらないよっ…あのさ、ミランジェ!いいやもう呼び捨てしちゃうよ?元王女殿下だし、世間の金銭感覚からズレているのも分かってるけど~妙にセコイかと思えば、魔道具の販売価格にも疎いし…そんなんじゃ…」
「それくらいにしてあげてくれ、マジアリート」
と、言う声と共にリュー君が、居間に入って来た。何だか…黒い魔質を体中に纏わりつかせている…
「あ、殿下。もう討伐終わられたのですか?」
リュー君は、息を吐きながら私の座っているソファに腰かけた。
「夕方にもう一度行って見るよ。当初は一日一度、討伐して様子を見ようと思っていたけど、思っていたより魔獣の出没頻度が高いみたいだね」
魔獣…そうか、魔獣を討伐していたからリュー君の体から…黒くて…嫌な魔質が漂っているのが見えるのか…
「リュー君…浄化しておくわね…」
「え?」
リュー君の返事を待たずに、リュー君の腕に自分の手を置いた。私の魔力がリュー君の体を包む。
「わっ!」
「まあっ!」
「すごい!」
皆が歓声?悲鳴を上げて私の浄化魔法を見ている。多分ここまでの浄化魔法はこの国に居る魔術師には無理だろう。実際、魔術師でも『治療術師』となると、存在がグッと少なくなる稀有な能力なのだ。
リュー君の体が綺麗に浄化された。リュー君は自分の手をひっくり返したりして、繁々と眺めている。
「俺、もしかして穢れてた?」
「うん、結構ね」
穢れる…とリュー君が言っているのは、実は笑いごとではないのだ。魔獣や魔物の血や毒などで瘴気当りすると、魔力系の心疾患から外傷性疾患…酷い時など精神疾患をも引き起こす恐ろしいものだ。
穢れを浴びた者は即刻、穢れを祓っておかなければ後々危険な状態になることもある。
「今日、討伐に出られていた兵士の皆さまも祓っておきましょうか?」
と、マジアリート様に聞くと、是非お願いしますと真顔でお願いされた。
という訳で、伯領の軍部の詰所にリュー君と一緒に行って…もう面倒なので詰所の建物全体に浄化魔法をかけておいた。
え~とね、一応お声かけしてから浄化しましょうか…と詰所の中を覗いたら、中におられた兵士の皆様が物凄い歓声をあげた後、何故か走り出て来た皆様に囲まれちゃったのよね…まあ私みたいな治療術師が珍しいのでしょうけど…
そんな状態の私をリュー君が腕の中に庇ってくれて、
「騒ぐな、騒ぐな!ミランジェは俺の嫁だ!」
とか訳の分からないこと言いながら怒鳴っていたんだけど、そんな嫁とかわざわざ言う必要ある?
おまけに
結構、機嫌が悪そうな魔質をこちらに向けながら
「ミランジェ…夕方、討伐に行く前に走り込みしとこうか?」
とオラオラ魔力を出しながら、私を睨んでいた。
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