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夫と妻
少年と美魔女
先ずは城に乗り込むのに変装は必要よね。顔を隠す…仮面?いやいや…豪華なドレスを着て行ったら外見でミランジェだとバレるし…
私はプリエレアンナのご懐妊騒ぎを収める…所謂産婦人科医の立場としてベイフィート城に乗り込む予定だ。
いくら何でも元嫁、元国王妃が再婚相手を侍らせて城に入るのはマズかろうということで私は考え込んでいた。
「変装…顔に覆面…ベール…占い師?これだっ!」
神秘的な装いに見える様に翡翠色のヴェールがないか…と端切れを入れている籐籠をひっくり返していると、リュー君がノックをしてから部屋に入って来た。
「ミランジェ、支度が…何してるの?」
「え?何ってベイフィート城に侵入するのに変装しなきゃいけないでしょう?顔を隠して尚且つ、プリエレアンナ様にビシーッと『父親はこいつだ!』と突きつける時に胡散臭くなっちゃいけないでしょう?威厳があるように見えて神秘的で顔の隠せる頭から隠せるヴェールを作ろうかと思って」
リュー君は何とも言えない顔で私を見ている。
「張り切っている所に言いにくいけど…変装しなくていいから。普通に俺の隣にいてくれていいから…」
「嘘ぉ!?」
「ホント…はいはい。ミランジェも着替えてよ~」
リュー君に背中を押されて来客用応接室に連れていかれた…何で?
室内には仕立て屋カオラ・ジオールの店主とマダムが待ち構えていた。
「さあ、姫様。御着替え致しましょうね!」
側に立っていたメイドの子達に腕を取られた。私は女性達に連れていかれた…
カオラ・ジオールのマダムが用意してくれていたドレスは抑えた配色の翡翠色のドレスだった。リュー君の瞳の色と一緒だとすぐに気が付いた。
「姫様、最高の状態に仕上げて見せますよ!」
何だか…マダムもメイド達も気合が入ってるな…私のドレスを着付けて、メイクを始めた時にマダム達の気合いの理由が分かった。
「ベイフィートの第二妃に…あ、今は第一妃にでしたかね~とにかくミランジェ姫様の御美しさを存分に見せつけていらして下さいまし!」
「そうですわっ!姫様の美しさで第二妃…あ、第一妃でしたか?その方にバーンとお見せすれば宜しいのですよ!」
マダムもメイドの子達も論点がズレちゃってるっていうか…見せつける為に行くんじゃないんだけどな…と言う言葉は女子達の迫力に押されて何も言えなかった。
そして、マダムとメイドの女の子達の最高傑作?のミランジェとリュージエンス第二殿下夫妻が出来上がった。
気合いが入るのは良いんだけどさぁ、私のメイクがすごくて瞼と睫毛の付近が重い…痒くなっても手でゴシゴシしちゃいけないメイクだよ、これ。
「ミランジェ、派手だね~」
「地蔵に言われたくはないよ!」
そう今日はリュー君も、王子様仕様のキラキラ服だ。いつもは地味目の色合いの服を着ているけど、今日は黒と銀色が基調の王子様っぽい。
さてさて
本日はお姉様、ナフテラージャ第一王女殿下と旦那様のダーシュ=タウメントス閣下とダンカレ=ハッテーガウンレンテとデジバラ=ハッテーガウンレンテも一緒だ。
そして王宮に備え付けらている転移魔法陣に向かう時にリュー君と話していて、妙にウキウキしているリュー君に気がついた。
「リュー君、何だか嬉しそうね?」
リュー君は笑顔で私の顔を見た。
「今日、サザウンテロス軍のキューインス中将閣下と魔術師団のガンバレス大尉も来られるんだ~お2人共俺の剣技と魔術の師匠だし、面白い方々だからお会いするの楽しみだ」
おお~リュー君の師匠なんだね!どんなおじ様達なんだろうか?実はイケオジ好きなんだよね~
と思っていたら、ベイフィート城の貴賓室で待っていたのは予想を裏切る見た目の方々だった。
貴賓室に入ると数名の黒い詰襟の格好いいお兄様の軍団がいた。
あれは!サザウンテロス帝国軍!?きゃあ!帝国軍といえば詰襟よね~(注*あくまでミランジェの主観です)
ところがその中に居る黒髪の少年兵と妖艶なおねーさまにリュー君は親し気に声をかけられた。
「キューインス閣下!ガンバレス大尉!」
ん?んんん?
「おーリュージ殿下、元気だったかい?」
と言って少年兵(疑)が言っているのを聞いて更にびっくりしたよ!え?もしかしてあれが閣下なのか?
キューインス閣下?と思われる少年は黒髪の細身でカッコイイ方なんだけど幾つなの?ていうくらい若い…リュー君より年下なの?まさかね…
おまけにガンバレス大尉と思われる方は目の覚めるような紫色の髪の妖艶はおねーさまだった。アラフィフくらいかな?美魔女だね。
「ミランジェ」
私が遠巻きにサザウンテロス帝国の軍人様方を見ていると、リュー君に手招きされた。
私が恐る恐る近づくと、近づく一歩手前でリュー君は私を引き寄せて
「妻のミランジェです」
と言った。
そうリュー君が言った途端、皆さんが息を飲んだ。私は慌てて淑女の礼をとった。
「ミランジェに御座います」
軍人の皆様の魔質が私に向かって来る。友好的な魔質じゃない…。歓迎されてない…のだろう。そりゃそうかバツイチでリュー君とは完全なる政略結婚だし。
少し俯いて下唇を噛み締めていると、リュー君の手が私の腰をソッと支えてくれた。
「キューインス閣下、俺…ミランジェと今、市井で2人で生活しているんですよ?」
「ええっ!?」
キューインス閣下(少年?)は物凄く驚いているようだ。リュー君はキューインス閣下の隣に立つ妖艶なガンバレス大尉に
「ミランジェの作る料理はとても美味しいのです。それに鞄や服も作れる裁縫の腕もあるんですよ」
と更に言った。私はリュー君を見上げた。リュー君は優しい微笑みで私を見ていた。
私は気を取り直すとサザウンテロス帝国の皆様に微笑んで見せた。
すると皆様の魔質が変わった。キューインス閣下が私にググッと近づいて来られた。近くで見ても男の子っぽいんだけど…この方本当にお幾つなの?
「ミランジェ姫、お料理出来るの?」
「ミランジェ、アレ出してみてよ。閣下喜ぶから~」
アレ…と言われて私は手に持っていた薄い緑色の輝石で装飾したパーティーバッグの口を開けた。
実はこの掌サイズのバッグも『魔法収納機能』を搭載している魔道具鞄だ。
ぶっちゃけパーティードレスを着ている時のお出かけって意外に持ち歩く物が多いのだ。
扇子にハンカチ、簡単な化粧道具、お財布、そして男性宅にお泊り…つまり外泊しちゃった!な朝帰りの時の為の着替え…など。
女子は正装の時は手持ちのバッグは小ぶりになってしまうので、物が収納出来なくてお付きのメイドが持って付き従っている場合も多い。
そんな煩わしさともおさらばっ☆画期的な小ささで魔物理防御、腐敗防止、重量無効、時間停止、消臭、亜空間結合、等々。
今、私が作ることのできる最高傑作の魔道具パーティーバッグなのだ。
「はい、お口に合うか分かりませんが召し上がれ」
私はパーティーバッグの質量より明らかにオーバーしている白い包みをバッグからドーンと取り出した。
「わあっ!?」
「何だ!?」
「えええっ!?」
そして白い包みをキューインス閣下に渡した。
「な、な、今の何っ?これ何ぃ!?」
リュー君は吹き出しながら説明した。
「閣下の好物ですよ。昨夜ミランジェが作ってくれました。この鞄もミランジェの作った鞄です」
なるほど…リュー君が昨日作ってくれと言っていたのは、閣下の好物を渡そうと思っていたのか。
キューインス閣下は包みを開けた。開けた途端、笑顔になった。閣下可愛い!と思った…割りと真剣に。
「鳥の揚げ物!」
へぇ…キューインス閣下、鳥の唐揚げ…好きなんだ。籠の中いっぱいに入った唐揚げを見て閣下は満面の笑顔だ。何度も言うがこれは可愛い…
「か、鞄だってぇ!?ちょっと…え?え?それ見せてみな!」
美魔女が私のパーティーバッグをひったくると、中を開けてそして驚愕していた。
「これ…何だい!?こんな多重掛け術式で…こんなに安定しているなんて!本当に姫が作ったの!?」
美魔女、ガンバレス大尉は興奮してパーティーバッグをひっくり返したりしている。鞄の魔術式を視ているのかな?
「はい、元々裁縫は得意でして…作ってみたら成功したので今は魔道具として販売しております」
ガンバレス大尉はギュルンと目を見開いて私を見た。美魔女のガン見…結構怖い。
「どんな意匠の鞄でも作れる?」
「はい、お色や素材…ご希望があれば沿えますが?」
ガンバレス大尉に両手を掴まれた。ガンバレス大尉も満面の笑顔だ。綺麗だな~多分アラフィフぐらいだろうと思うけど…
「作って~作って~!おいっ!お前達もお願いしろ!行軍の時に手荷物が全てこんな小さい鞄に入るんだぞ!ところでミランジェ姫~この揚げ物の隠し味は何?香辛料がすっごく好みだ!」
キューインス閣下が唐揚げをモグモグ食べながら、後ろに控えている軍のお兄様達に叫んだ。
お兄様達も顔を輝かせた。私は魔道具の注文用紙を取り出すと皆様に渡した。
「唐揚げの隠し味はハーウバーという少し辛味に癖のある実です。塩と数種類の香辛料と実を入れてスープで煮だしたものに鳥を漬け込んでから、衣をつけて揚げてます。鞄の方は両手の空く腰鞄が便利かと思います、えっとこれ、リュージエンス殿下の鞄です。まだ製作途中ですがご参考までに…」
とパーティーバッグの中からリュー君のウエストポーチを取り出して皆様に見せた。
確かリュー君もまだ見ていないはずだ。
「わあ、灰色と赤色の布地って色合いが大丈夫かな~って心配だったけど、格好いいな~」
「後は魔法かけるのと、細かな所の直しかな?もう少し待っててね」
「うん!ありがとミランジェ」
とリュー君といつものテンションで会話をしていたら閣下も美魔女もキョトンとした顔で私とリュー君を見ている。ん?何かしら?
「リュージ殿下、確かミランジェ姫とは政略結婚だって言ってたよね」
キューインス閣下に聞かれてリュー君と顔を見合わせた。
「そうよね?」
「そうだよね」
美魔女が私にパーティーバッグを返しながらニヤニヤとしている。
「へぇ~それにしては仲の宜しい事で~」
えっ!?でもそれは…
「リュー君とは話しやすいもの…それに私のやりたい事を馬鹿にしたりしないし…優しいし…」
自分で言っていて段々恥ずかしくなってきた。顔に熱が籠るのが分かる。
「…ぐはっ」
「かわ…っ」
後ろに居る軍のお兄様達の何か叫び声が聞こえたけど、すぐに静かになった。私は閣下の方を見た。閣下も唐揚げを食べながらニヤニヤしている。
「リュー君ねぇ~それはなにより~」
と恥ずかしくなって俯いている所へ扉が叩かれ
「お待たせ致しました。プリエレアンナ妃の診察をお願い致します」
と声がかけられた。
さあ、きたかーー!
私はプリエレアンナのご懐妊騒ぎを収める…所謂産婦人科医の立場としてベイフィート城に乗り込む予定だ。
いくら何でも元嫁、元国王妃が再婚相手を侍らせて城に入るのはマズかろうということで私は考え込んでいた。
「変装…顔に覆面…ベール…占い師?これだっ!」
神秘的な装いに見える様に翡翠色のヴェールがないか…と端切れを入れている籐籠をひっくり返していると、リュー君がノックをしてから部屋に入って来た。
「ミランジェ、支度が…何してるの?」
「え?何ってベイフィート城に侵入するのに変装しなきゃいけないでしょう?顔を隠して尚且つ、プリエレアンナ様にビシーッと『父親はこいつだ!』と突きつける時に胡散臭くなっちゃいけないでしょう?威厳があるように見えて神秘的で顔の隠せる頭から隠せるヴェールを作ろうかと思って」
リュー君は何とも言えない顔で私を見ている。
「張り切っている所に言いにくいけど…変装しなくていいから。普通に俺の隣にいてくれていいから…」
「嘘ぉ!?」
「ホント…はいはい。ミランジェも着替えてよ~」
リュー君に背中を押されて来客用応接室に連れていかれた…何で?
室内には仕立て屋カオラ・ジオールの店主とマダムが待ち構えていた。
「さあ、姫様。御着替え致しましょうね!」
側に立っていたメイドの子達に腕を取られた。私は女性達に連れていかれた…
カオラ・ジオールのマダムが用意してくれていたドレスは抑えた配色の翡翠色のドレスだった。リュー君の瞳の色と一緒だとすぐに気が付いた。
「姫様、最高の状態に仕上げて見せますよ!」
何だか…マダムもメイド達も気合が入ってるな…私のドレスを着付けて、メイクを始めた時にマダム達の気合いの理由が分かった。
「ベイフィートの第二妃に…あ、今は第一妃にでしたかね~とにかくミランジェ姫様の御美しさを存分に見せつけていらして下さいまし!」
「そうですわっ!姫様の美しさで第二妃…あ、第一妃でしたか?その方にバーンとお見せすれば宜しいのですよ!」
マダムもメイドの子達も論点がズレちゃってるっていうか…見せつける為に行くんじゃないんだけどな…と言う言葉は女子達の迫力に押されて何も言えなかった。
そして、マダムとメイドの女の子達の最高傑作?のミランジェとリュージエンス第二殿下夫妻が出来上がった。
気合いが入るのは良いんだけどさぁ、私のメイクがすごくて瞼と睫毛の付近が重い…痒くなっても手でゴシゴシしちゃいけないメイクだよ、これ。
「ミランジェ、派手だね~」
「地蔵に言われたくはないよ!」
そう今日はリュー君も、王子様仕様のキラキラ服だ。いつもは地味目の色合いの服を着ているけど、今日は黒と銀色が基調の王子様っぽい。
さてさて
本日はお姉様、ナフテラージャ第一王女殿下と旦那様のダーシュ=タウメントス閣下とダンカレ=ハッテーガウンレンテとデジバラ=ハッテーガウンレンテも一緒だ。
そして王宮に備え付けらている転移魔法陣に向かう時にリュー君と話していて、妙にウキウキしているリュー君に気がついた。
「リュー君、何だか嬉しそうね?」
リュー君は笑顔で私の顔を見た。
「今日、サザウンテロス軍のキューインス中将閣下と魔術師団のガンバレス大尉も来られるんだ~お2人共俺の剣技と魔術の師匠だし、面白い方々だからお会いするの楽しみだ」
おお~リュー君の師匠なんだね!どんなおじ様達なんだろうか?実はイケオジ好きなんだよね~
と思っていたら、ベイフィート城の貴賓室で待っていたのは予想を裏切る見た目の方々だった。
貴賓室に入ると数名の黒い詰襟の格好いいお兄様の軍団がいた。
あれは!サザウンテロス帝国軍!?きゃあ!帝国軍といえば詰襟よね~(注*あくまでミランジェの主観です)
ところがその中に居る黒髪の少年兵と妖艶なおねーさまにリュー君は親し気に声をかけられた。
「キューインス閣下!ガンバレス大尉!」
ん?んんん?
「おーリュージ殿下、元気だったかい?」
と言って少年兵(疑)が言っているのを聞いて更にびっくりしたよ!え?もしかしてあれが閣下なのか?
キューインス閣下?と思われる少年は黒髪の細身でカッコイイ方なんだけど幾つなの?ていうくらい若い…リュー君より年下なの?まさかね…
おまけにガンバレス大尉と思われる方は目の覚めるような紫色の髪の妖艶はおねーさまだった。アラフィフくらいかな?美魔女だね。
「ミランジェ」
私が遠巻きにサザウンテロス帝国の軍人様方を見ていると、リュー君に手招きされた。
私が恐る恐る近づくと、近づく一歩手前でリュー君は私を引き寄せて
「妻のミランジェです」
と言った。
そうリュー君が言った途端、皆さんが息を飲んだ。私は慌てて淑女の礼をとった。
「ミランジェに御座います」
軍人の皆様の魔質が私に向かって来る。友好的な魔質じゃない…。歓迎されてない…のだろう。そりゃそうかバツイチでリュー君とは完全なる政略結婚だし。
少し俯いて下唇を噛み締めていると、リュー君の手が私の腰をソッと支えてくれた。
「キューインス閣下、俺…ミランジェと今、市井で2人で生活しているんですよ?」
「ええっ!?」
キューインス閣下(少年?)は物凄く驚いているようだ。リュー君はキューインス閣下の隣に立つ妖艶なガンバレス大尉に
「ミランジェの作る料理はとても美味しいのです。それに鞄や服も作れる裁縫の腕もあるんですよ」
と更に言った。私はリュー君を見上げた。リュー君は優しい微笑みで私を見ていた。
私は気を取り直すとサザウンテロス帝国の皆様に微笑んで見せた。
すると皆様の魔質が変わった。キューインス閣下が私にググッと近づいて来られた。近くで見ても男の子っぽいんだけど…この方本当にお幾つなの?
「ミランジェ姫、お料理出来るの?」
「ミランジェ、アレ出してみてよ。閣下喜ぶから~」
アレ…と言われて私は手に持っていた薄い緑色の輝石で装飾したパーティーバッグの口を開けた。
実はこの掌サイズのバッグも『魔法収納機能』を搭載している魔道具鞄だ。
ぶっちゃけパーティードレスを着ている時のお出かけって意外に持ち歩く物が多いのだ。
扇子にハンカチ、簡単な化粧道具、お財布、そして男性宅にお泊り…つまり外泊しちゃった!な朝帰りの時の為の着替え…など。
女子は正装の時は手持ちのバッグは小ぶりになってしまうので、物が収納出来なくてお付きのメイドが持って付き従っている場合も多い。
そんな煩わしさともおさらばっ☆画期的な小ささで魔物理防御、腐敗防止、重量無効、時間停止、消臭、亜空間結合、等々。
今、私が作ることのできる最高傑作の魔道具パーティーバッグなのだ。
「はい、お口に合うか分かりませんが召し上がれ」
私はパーティーバッグの質量より明らかにオーバーしている白い包みをバッグからドーンと取り出した。
「わあっ!?」
「何だ!?」
「えええっ!?」
そして白い包みをキューインス閣下に渡した。
「な、な、今の何っ?これ何ぃ!?」
リュー君は吹き出しながら説明した。
「閣下の好物ですよ。昨夜ミランジェが作ってくれました。この鞄もミランジェの作った鞄です」
なるほど…リュー君が昨日作ってくれと言っていたのは、閣下の好物を渡そうと思っていたのか。
キューインス閣下は包みを開けた。開けた途端、笑顔になった。閣下可愛い!と思った…割りと真剣に。
「鳥の揚げ物!」
へぇ…キューインス閣下、鳥の唐揚げ…好きなんだ。籠の中いっぱいに入った唐揚げを見て閣下は満面の笑顔だ。何度も言うがこれは可愛い…
「か、鞄だってぇ!?ちょっと…え?え?それ見せてみな!」
美魔女が私のパーティーバッグをひったくると、中を開けてそして驚愕していた。
「これ…何だい!?こんな多重掛け術式で…こんなに安定しているなんて!本当に姫が作ったの!?」
美魔女、ガンバレス大尉は興奮してパーティーバッグをひっくり返したりしている。鞄の魔術式を視ているのかな?
「はい、元々裁縫は得意でして…作ってみたら成功したので今は魔道具として販売しております」
ガンバレス大尉はギュルンと目を見開いて私を見た。美魔女のガン見…結構怖い。
「どんな意匠の鞄でも作れる?」
「はい、お色や素材…ご希望があれば沿えますが?」
ガンバレス大尉に両手を掴まれた。ガンバレス大尉も満面の笑顔だ。綺麗だな~多分アラフィフぐらいだろうと思うけど…
「作って~作って~!おいっ!お前達もお願いしろ!行軍の時に手荷物が全てこんな小さい鞄に入るんだぞ!ところでミランジェ姫~この揚げ物の隠し味は何?香辛料がすっごく好みだ!」
キューインス閣下が唐揚げをモグモグ食べながら、後ろに控えている軍のお兄様達に叫んだ。
お兄様達も顔を輝かせた。私は魔道具の注文用紙を取り出すと皆様に渡した。
「唐揚げの隠し味はハーウバーという少し辛味に癖のある実です。塩と数種類の香辛料と実を入れてスープで煮だしたものに鳥を漬け込んでから、衣をつけて揚げてます。鞄の方は両手の空く腰鞄が便利かと思います、えっとこれ、リュージエンス殿下の鞄です。まだ製作途中ですがご参考までに…」
とパーティーバッグの中からリュー君のウエストポーチを取り出して皆様に見せた。
確かリュー君もまだ見ていないはずだ。
「わあ、灰色と赤色の布地って色合いが大丈夫かな~って心配だったけど、格好いいな~」
「後は魔法かけるのと、細かな所の直しかな?もう少し待っててね」
「うん!ありがとミランジェ」
とリュー君といつものテンションで会話をしていたら閣下も美魔女もキョトンとした顔で私とリュー君を見ている。ん?何かしら?
「リュージ殿下、確かミランジェ姫とは政略結婚だって言ってたよね」
キューインス閣下に聞かれてリュー君と顔を見合わせた。
「そうよね?」
「そうだよね」
美魔女が私にパーティーバッグを返しながらニヤニヤとしている。
「へぇ~それにしては仲の宜しい事で~」
えっ!?でもそれは…
「リュー君とは話しやすいもの…それに私のやりたい事を馬鹿にしたりしないし…優しいし…」
自分で言っていて段々恥ずかしくなってきた。顔に熱が籠るのが分かる。
「…ぐはっ」
「かわ…っ」
後ろに居る軍のお兄様達の何か叫び声が聞こえたけど、すぐに静かになった。私は閣下の方を見た。閣下も唐揚げを食べながらニヤニヤしている。
「リュー君ねぇ~それはなにより~」
と恥ずかしくなって俯いている所へ扉が叩かれ
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と声がかけられた。
さあ、きたかーー!
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