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夫と妻
プリエレアンナのコント
リュー君達と廊下に出てベイフィート国王陛下、元旦那のクラシスとプリエレアンナ様が待つ大広間に向かう。
歩く私の横にナフテラージャお姉様が近付いて来た。
「どうやらリュージエンス殿下があちらの軍の方との間に上手く入ってくれたみたいね」
「お姉様…はい」
ナフィお姉様は顔をほころばせた。
「私…リュージエンス殿下との再婚でまたベイフィート国王のようにミランジェが辛い思いをするのじゃないかと気がかりだったのだけど…杞憂だった?」
私は泣きそうになった。なんとか涙を堪えて
「杞憂よ?お姉さ…ま」
と答えた。お姉様も涙を堪えているみたいな表情をされていた。
そして大広間に到着した。
室内に入るとクラシス国王陛下(元夫)、話題のプリエレアンナ様、カッシーラ伯とマジアリート様とボレンティ公爵、横にいるのがカッシーラ伯がお呼びした治療術師かな?他には役人の方がいる。
あれ?クラシスの周りを見て気が付いた。私の横にいるお姉様も気が付いたみたいだ。
「護衛の中にお腹の子の父親がいないわね」
「本当ですね…」
「そんなもの…答えは簡単だろう?」
とお姉様と私の後ろからダーシュお義兄様が小声で囁いたので、振り返ってお義兄様を見た。
ダーシュお義兄様はニヤニヤしていた。
「例えお腹の子が陛下の子でない、と結論が出ても父親が誰か?という言及された時に当の本人の父親がいればその場で捕まって、投獄…後に国外追放かな?良くて陛下とプリエレアンナ様との離縁の後、元妃との婚姻を強要される。この場で父親の所在を曖昧にしたいプリエレアンナ妃の入れ知恵か、本人の自己判断か…はたまた第三者の指示か…。面白いね~」
「本日は我が妃、プリエレアンナの汚名を雪ぐ為に足をお運び頂き感謝する」
汚名…クラシスの言葉に内心で失笑する。
クラシスの話の後を引き継いで宰相が集まった治療術師の紹介をした。
ナフテラージャ王女殿下、(私は省かれた)カッシーラ伯領の治療術師、サザウンテロス帝国のガンバレス大尉、そしてボレンティ公爵の治療術師。そして王宮付の魔術師団の治療術師が揃っていた。
宰相は立会人としてカッシーラ伯とリュー君を紹介した。
「リュージエンス=ヴェシュ=サザウンテロスと申します」
キラキラとした笑顔を見せて極上王子様スマイルをギャラリーのご婦人方やおじ様達に向けるリュー君。人々から感嘆の溜め息が漏れる。
「…まあ」
小さくそういう声が聞こえて私は見た。プリエレアンナ様だ。一目見て驚いてしまった。
プリエレアンナ様の魔質は喜びとか歓喜のようなものを含むある感情を魔質に乗せて体中からあふれ出していた。
「ちょっと…あれ?」
私の隣のナフィ姉様も気が付いたみたい。私の顔を見たので頷いて見せた。
恐らくだが今、魔質の視えている治療術師の方々はプリエレアンナ様の変化に気が付いた…と思われる。皆様の魔力が驚きと戸惑いに包まれているからだ。ガンバレス大尉が私を顧みている。
その彼女の顔には、アレ?間違いない?と書いている気がした。私はゆっくりと頷いてみた。
プリエレアンナ様はクラシスの横で扇子で顔を半分隠してはいるが…その顔がにやけている。
なんとプリエレアンナ様はリュー君に一目惚れをしたようだ…。こんな状況下でなんて図太い神経なんだ!
「では、今からプリエレアンナ様の診察を…」
と、そんな周りの戸惑いに何も気が付かない宰相が声を張り上げた時に、クラシスが「待てっ!」と鋭く声を上げた。
「その前に…そこのミランジェに例の部屋の鍵を開けさせろ!」
大広間が静寂に包まれた。
おいおいおい?いやいやいや?
あのね私さ~仮にも…じゃない、正式にあなたと離縁してトキワステラーテ王国籍に戻ってからリュー君に嫁いで今はミランジェ=ヴェシュ=サザウンテロスになっている訳よ?
サザウンテロス帝国第二王子殿下の妃殿下なのよ?もうあんたの嫁じゃないのよ?他国の王子殿下の嫁なのよ?
一国の国王陛下が私的な場所ならいざ知らず、公的な場所で他国の妃殿下を呼び捨てって…
お前は馬鹿かっ!
私と共に周りにいる方々から溜め息というか…失笑が漏れる。するとカッシーラ伯が沈黙を破るように声を上げられられた。
「陛下っ、今はミランジェ妃殿下の件は後でも宜しいかと…」
「ミランジェが私の宝石を貯め込んでいるの周知の事実!ミランジェよもや言い逃れする訳じゃあるまいな!」
私の宝石ねぇ?はああ…馬鹿の相手って疲れるわ…と思ったらリュー君が静かに私の側に来ると手を差し出した。
「ミランジェ妃、開けて見せて差し上げれば?」
と言って極上の笑みを見せてくれた。リュー君の目はキラキラと輝いている…悪戯しちゃおっかな~という輝きっぽい。リュー君あんたも大概腹黒だね?根性悪男だね?ぐへへ…
私はリュー君の手を取った。
すると、ギリッ…とプリエレアンナ様の魔質が歪み良くない魔力を吐き出している。
私の緊張というか、心の動揺がリュー君に伝わったようだ。リュー君の目が少し鋭くなった。
「どうした?」
「後で」
リュー君は頷くと私と並んで歩き出した。
いきり立つクラシスが私達を先導する。いきり立つ馬鹿…心の中でクラシスを散々に腐す。
第一妃の部屋へ向かう途中でカッシーラ伯が素早く近づいて来られて
「どうしましょうか?」
と聞かれたが、リュー君が
「暫く様子を見ましょう」
と、小声で返している。そこへ…ナフィ姉様とガンバレス大尉も近付いて来た。リュー君が消音魔法を張ってくれた。
「あれどういうことなんです?あんな不敬な言い方他国の王女に…」
ガンバレス大尉が私とナフィ姉様を交互に見る。
「あの国王陛下は愚鈍な方なのです」
ナフィ姉様がクラシスを一言で集約して答えてくれた。
ガンバレス大尉はポカンとした後に更に私達に顔を近づけてきた。
「おまけにあの嫁…プリエレアンナ妃の魔質視ましたか?」
「視ました」
「ええ」
ガンバレス大尉はチラッとリュー君を見上げた。
「殿下分かってて煽ったんじゃないですよね?」
とガンバレス大尉はリュー君に言い放った。リュー君は首を捻った後私を見た。
「さっき緊張していたことに関係ある?」
と天然なのか腹黒なのか分からない問いかけをしてきた。
このボケボケ地蔵めっ!私は扇子でリュー君の二の腕をビシッと叩いてやった。
「いったいな!」
「半分は地蔵のせいで困ったことになってるじゃない!いいこと?プリエレアンナ様が地蔵に一目惚れしちゃったみたいなのよ!」
「ジゾーって何?」
「俺の愛称みたいです」
リュー君の後ろに居たキューインス閣下がそう言った時に、またプリエレアンナ様から気持ちの悪い魔力が流れてきた。チラリとプリエレアンナ様を見ると…ものすごい顔で睨んでいた。
睨みたいのは追い出された私の方だよ…。こちらからプリエレアンナ様を睨むのは目が腐りそうなのでやめておく。
「ところでミランジェ、あなたの魔法で封印している部屋は今はどうなっているの?」
ナフィお姉様が近づいて来た第一妃の部屋のほうを見た。
私は、頷きながら部屋の魔法封印をこっそりと解術した。うふふ…
「お姉様ご心配なく…今、部屋の封印を解術しておきました。今は簡単に入れますよ」
「まああ…うふふ。それは楽しみね~入って驚いて騒ぐお芝居までみれるのかしら~?」
ナフィお姉様も大概腹黒で根性悪ですね?
そうしている間に第一妃の部屋に到着した。クラシスが振り向いて私を見たので、近づこうとするとリュー君が腰に手を当てた。
「一緒に行くよ」
「リュー君」
プリエレアンナ様が嫉妬…かな?の魔質をぶつけてくる。あなたが嫉妬する理由が分からないわ。お腹の子供をどうするかでも考えていればいいのに。
私は手に持っていたパーティーバッグの中から、宝石の保管部屋の鍵を出してクラシスに差し出した。
「どうぞ」
クラシスは訝しげに鍵を受け取ると、保管部屋の前に立った。ウキウキしてしまうことは許して欲しい。これこそざまあ!の瞬間だと思い、つい前のめりでクラシスの手元を見てしまう。
鍵を差し入れると扉は開いた。当たり前だ。馬鹿みたいにベイフィート側の魔術師達からざわめきが起こる。もしかして散々開けようと魔術をぶつけたりしていたのかもしれない。ごくろうさま~
「開いた…!」
クラシスが室内に踏み込むとほぼ同時にプリエレアンナ様も部屋に飛び込んでいった。国王陛下を押し退けてない?妊婦さん元気だね…。
ベイフィートの役人の方も室内を覗き込んでいる。
「空…?」
「空だとっ!?」
カッシーラ伯と目が合ってお互いに笑いそうになっている顔をしているので余計におかしくなってきた。
すると、私の横にいるナフィお姉様が
「まあ宜しいのではありませんか?ミランジェにあげたお小遣いで買っていた宝石ですし、面倒だから捨てたんでしょ?」
と言った。言ってのけてしまった。
クラシスとプリエレアンナ様が保管部屋から飛び出してきた。
「お小遣いだと?」
「ええ、ミランジェに毎月渡しているお小遣い。ミランジェにかかる費用はトキワステラーテ王国からの経費で賄っていますので」
クラシスはワナワナ震えながら宰相を見た。
「そうなのか!?」
クラシス知らなかったの?いや違うな…皆様が嘲笑うような魔質を出している。
「いつも申しましておりますが、トキワステラーテ王国からの支援金の中にミランジェ元妃の遊興費が含まれておりました。元妃にかかる費用はそちらから出しておりますので、ベイフィートの出費は御座いません」
クラシスはそう言った宰相を見てプリエレアンナ様を見た。
「プリエレアンナ…お前よく言っていたな?ミランジェがベイフィートの財を使い込んでいると…」
まああ…そんなことを言っていたの?と、言っても私もつい最近までそう思っていたのだけど。
するとカッシーラ伯が
「国王陛下っ私共が再三申し上げていた通り、トキワステラーテ王国からの支援金はっ…!」
「いたたたっ!」
ギョッ…として皆が叫び出したプリエレアンナ様を見た。プリエレアンナ様はお腹を押さえて倒れ込んだ。
「プリエレアンナッ?!プリ…誰かっ誰かっ…術医を!」
ここに居ます…。クラシスの周りにいる魔術医(私を含む)の皆さんが静かに手を挙げている。
「陛下っ私が診ます!」
と、皆様を押し退けておじさんがプリエレアンナ様の側に走り込んだ。そして瞬時に
「これはッ!お腹の御子に触りがありました!この審議はこれ以上続けられませんっ!」
と叫んだ。今、お腹の診察していたか?一瞬だったよ?
慌てているクラシスと痛がるプリエレアンナ様、そして別室にプリエレアンナ様を連れて行こうと騒ぐベイフィートの役人達。
それとは反対に白けた雰囲気になっている他国の術者やマジアリート様達。
あ……
ああ………これ。
盛大な茶番のような気がしてきたわ…演技ヘタね、棒読みじゃん。
予め、何か合図でも決めていたのかもしれない。プリエレアンナ様が腹痛を訴えてどさくさに紛れに審議を打ち切りにする。
私はとんでもない学芸会レベルのコントを見せられて呆れていたが、なんとリュー君がいきなり口を開いた。
「先ほどから私の妃を敬称無しに呼び捨てにされておいでだが、ベイフィート国王陛下は如何お考えか?」
と、顔はニッコリ、魔質は阿修羅再びのリュー君はとんでもない威圧をぶちかまして、茶番劇に絡みだし始めましたよっ!おいっ!?地蔵?学芸会コントに地蔵枠で特別出演か!?
歩く私の横にナフテラージャお姉様が近付いて来た。
「どうやらリュージエンス殿下があちらの軍の方との間に上手く入ってくれたみたいね」
「お姉様…はい」
ナフィお姉様は顔をほころばせた。
「私…リュージエンス殿下との再婚でまたベイフィート国王のようにミランジェが辛い思いをするのじゃないかと気がかりだったのだけど…杞憂だった?」
私は泣きそうになった。なんとか涙を堪えて
「杞憂よ?お姉さ…ま」
と答えた。お姉様も涙を堪えているみたいな表情をされていた。
そして大広間に到着した。
室内に入るとクラシス国王陛下(元夫)、話題のプリエレアンナ様、カッシーラ伯とマジアリート様とボレンティ公爵、横にいるのがカッシーラ伯がお呼びした治療術師かな?他には役人の方がいる。
あれ?クラシスの周りを見て気が付いた。私の横にいるお姉様も気が付いたみたいだ。
「護衛の中にお腹の子の父親がいないわね」
「本当ですね…」
「そんなもの…答えは簡単だろう?」
とお姉様と私の後ろからダーシュお義兄様が小声で囁いたので、振り返ってお義兄様を見た。
ダーシュお義兄様はニヤニヤしていた。
「例えお腹の子が陛下の子でない、と結論が出ても父親が誰か?という言及された時に当の本人の父親がいればその場で捕まって、投獄…後に国外追放かな?良くて陛下とプリエレアンナ様との離縁の後、元妃との婚姻を強要される。この場で父親の所在を曖昧にしたいプリエレアンナ妃の入れ知恵か、本人の自己判断か…はたまた第三者の指示か…。面白いね~」
「本日は我が妃、プリエレアンナの汚名を雪ぐ為に足をお運び頂き感謝する」
汚名…クラシスの言葉に内心で失笑する。
クラシスの話の後を引き継いで宰相が集まった治療術師の紹介をした。
ナフテラージャ王女殿下、(私は省かれた)カッシーラ伯領の治療術師、サザウンテロス帝国のガンバレス大尉、そしてボレンティ公爵の治療術師。そして王宮付の魔術師団の治療術師が揃っていた。
宰相は立会人としてカッシーラ伯とリュー君を紹介した。
「リュージエンス=ヴェシュ=サザウンテロスと申します」
キラキラとした笑顔を見せて極上王子様スマイルをギャラリーのご婦人方やおじ様達に向けるリュー君。人々から感嘆の溜め息が漏れる。
「…まあ」
小さくそういう声が聞こえて私は見た。プリエレアンナ様だ。一目見て驚いてしまった。
プリエレアンナ様の魔質は喜びとか歓喜のようなものを含むある感情を魔質に乗せて体中からあふれ出していた。
「ちょっと…あれ?」
私の隣のナフィ姉様も気が付いたみたい。私の顔を見たので頷いて見せた。
恐らくだが今、魔質の視えている治療術師の方々はプリエレアンナ様の変化に気が付いた…と思われる。皆様の魔力が驚きと戸惑いに包まれているからだ。ガンバレス大尉が私を顧みている。
その彼女の顔には、アレ?間違いない?と書いている気がした。私はゆっくりと頷いてみた。
プリエレアンナ様はクラシスの横で扇子で顔を半分隠してはいるが…その顔がにやけている。
なんとプリエレアンナ様はリュー君に一目惚れをしたようだ…。こんな状況下でなんて図太い神経なんだ!
「では、今からプリエレアンナ様の診察を…」
と、そんな周りの戸惑いに何も気が付かない宰相が声を張り上げた時に、クラシスが「待てっ!」と鋭く声を上げた。
「その前に…そこのミランジェに例の部屋の鍵を開けさせろ!」
大広間が静寂に包まれた。
おいおいおい?いやいやいや?
あのね私さ~仮にも…じゃない、正式にあなたと離縁してトキワステラーテ王国籍に戻ってからリュー君に嫁いで今はミランジェ=ヴェシュ=サザウンテロスになっている訳よ?
サザウンテロス帝国第二王子殿下の妃殿下なのよ?もうあんたの嫁じゃないのよ?他国の王子殿下の嫁なのよ?
一国の国王陛下が私的な場所ならいざ知らず、公的な場所で他国の妃殿下を呼び捨てって…
お前は馬鹿かっ!
私と共に周りにいる方々から溜め息というか…失笑が漏れる。するとカッシーラ伯が沈黙を破るように声を上げられられた。
「陛下っ、今はミランジェ妃殿下の件は後でも宜しいかと…」
「ミランジェが私の宝石を貯め込んでいるの周知の事実!ミランジェよもや言い逃れする訳じゃあるまいな!」
私の宝石ねぇ?はああ…馬鹿の相手って疲れるわ…と思ったらリュー君が静かに私の側に来ると手を差し出した。
「ミランジェ妃、開けて見せて差し上げれば?」
と言って極上の笑みを見せてくれた。リュー君の目はキラキラと輝いている…悪戯しちゃおっかな~という輝きっぽい。リュー君あんたも大概腹黒だね?根性悪男だね?ぐへへ…
私はリュー君の手を取った。
すると、ギリッ…とプリエレアンナ様の魔質が歪み良くない魔力を吐き出している。
私の緊張というか、心の動揺がリュー君に伝わったようだ。リュー君の目が少し鋭くなった。
「どうした?」
「後で」
リュー君は頷くと私と並んで歩き出した。
いきり立つクラシスが私達を先導する。いきり立つ馬鹿…心の中でクラシスを散々に腐す。
第一妃の部屋へ向かう途中でカッシーラ伯が素早く近づいて来られて
「どうしましょうか?」
と聞かれたが、リュー君が
「暫く様子を見ましょう」
と、小声で返している。そこへ…ナフィ姉様とガンバレス大尉も近付いて来た。リュー君が消音魔法を張ってくれた。
「あれどういうことなんです?あんな不敬な言い方他国の王女に…」
ガンバレス大尉が私とナフィ姉様を交互に見る。
「あの国王陛下は愚鈍な方なのです」
ナフィ姉様がクラシスを一言で集約して答えてくれた。
ガンバレス大尉はポカンとした後に更に私達に顔を近づけてきた。
「おまけにあの嫁…プリエレアンナ妃の魔質視ましたか?」
「視ました」
「ええ」
ガンバレス大尉はチラッとリュー君を見上げた。
「殿下分かってて煽ったんじゃないですよね?」
とガンバレス大尉はリュー君に言い放った。リュー君は首を捻った後私を見た。
「さっき緊張していたことに関係ある?」
と天然なのか腹黒なのか分からない問いかけをしてきた。
このボケボケ地蔵めっ!私は扇子でリュー君の二の腕をビシッと叩いてやった。
「いったいな!」
「半分は地蔵のせいで困ったことになってるじゃない!いいこと?プリエレアンナ様が地蔵に一目惚れしちゃったみたいなのよ!」
「ジゾーって何?」
「俺の愛称みたいです」
リュー君の後ろに居たキューインス閣下がそう言った時に、またプリエレアンナ様から気持ちの悪い魔力が流れてきた。チラリとプリエレアンナ様を見ると…ものすごい顔で睨んでいた。
睨みたいのは追い出された私の方だよ…。こちらからプリエレアンナ様を睨むのは目が腐りそうなのでやめておく。
「ところでミランジェ、あなたの魔法で封印している部屋は今はどうなっているの?」
ナフィお姉様が近づいて来た第一妃の部屋のほうを見た。
私は、頷きながら部屋の魔法封印をこっそりと解術した。うふふ…
「お姉様ご心配なく…今、部屋の封印を解術しておきました。今は簡単に入れますよ」
「まああ…うふふ。それは楽しみね~入って驚いて騒ぐお芝居までみれるのかしら~?」
ナフィお姉様も大概腹黒で根性悪ですね?
そうしている間に第一妃の部屋に到着した。クラシスが振り向いて私を見たので、近づこうとするとリュー君が腰に手を当てた。
「一緒に行くよ」
「リュー君」
プリエレアンナ様が嫉妬…かな?の魔質をぶつけてくる。あなたが嫉妬する理由が分からないわ。お腹の子供をどうするかでも考えていればいいのに。
私は手に持っていたパーティーバッグの中から、宝石の保管部屋の鍵を出してクラシスに差し出した。
「どうぞ」
クラシスは訝しげに鍵を受け取ると、保管部屋の前に立った。ウキウキしてしまうことは許して欲しい。これこそざまあ!の瞬間だと思い、つい前のめりでクラシスの手元を見てしまう。
鍵を差し入れると扉は開いた。当たり前だ。馬鹿みたいにベイフィート側の魔術師達からざわめきが起こる。もしかして散々開けようと魔術をぶつけたりしていたのかもしれない。ごくろうさま~
「開いた…!」
クラシスが室内に踏み込むとほぼ同時にプリエレアンナ様も部屋に飛び込んでいった。国王陛下を押し退けてない?妊婦さん元気だね…。
ベイフィートの役人の方も室内を覗き込んでいる。
「空…?」
「空だとっ!?」
カッシーラ伯と目が合ってお互いに笑いそうになっている顔をしているので余計におかしくなってきた。
すると、私の横にいるナフィお姉様が
「まあ宜しいのではありませんか?ミランジェにあげたお小遣いで買っていた宝石ですし、面倒だから捨てたんでしょ?」
と言った。言ってのけてしまった。
クラシスとプリエレアンナ様が保管部屋から飛び出してきた。
「お小遣いだと?」
「ええ、ミランジェに毎月渡しているお小遣い。ミランジェにかかる費用はトキワステラーテ王国からの経費で賄っていますので」
クラシスはワナワナ震えながら宰相を見た。
「そうなのか!?」
クラシス知らなかったの?いや違うな…皆様が嘲笑うような魔質を出している。
「いつも申しましておりますが、トキワステラーテ王国からの支援金の中にミランジェ元妃の遊興費が含まれておりました。元妃にかかる費用はそちらから出しておりますので、ベイフィートの出費は御座いません」
クラシスはそう言った宰相を見てプリエレアンナ様を見た。
「プリエレアンナ…お前よく言っていたな?ミランジェがベイフィートの財を使い込んでいると…」
まああ…そんなことを言っていたの?と、言っても私もつい最近までそう思っていたのだけど。
するとカッシーラ伯が
「国王陛下っ私共が再三申し上げていた通り、トキワステラーテ王国からの支援金はっ…!」
「いたたたっ!」
ギョッ…として皆が叫び出したプリエレアンナ様を見た。プリエレアンナ様はお腹を押さえて倒れ込んだ。
「プリエレアンナッ?!プリ…誰かっ誰かっ…術医を!」
ここに居ます…。クラシスの周りにいる魔術医(私を含む)の皆さんが静かに手を挙げている。
「陛下っ私が診ます!」
と、皆様を押し退けておじさんがプリエレアンナ様の側に走り込んだ。そして瞬時に
「これはッ!お腹の御子に触りがありました!この審議はこれ以上続けられませんっ!」
と叫んだ。今、お腹の診察していたか?一瞬だったよ?
慌てているクラシスと痛がるプリエレアンナ様、そして別室にプリエレアンナ様を連れて行こうと騒ぐベイフィートの役人達。
それとは反対に白けた雰囲気になっている他国の術者やマジアリート様達。
あ……
ああ………これ。
盛大な茶番のような気がしてきたわ…演技ヘタね、棒読みじゃん。
予め、何か合図でも決めていたのかもしれない。プリエレアンナ様が腹痛を訴えてどさくさに紛れに審議を打ち切りにする。
私はとんでもない学芸会レベルのコントを見せられて呆れていたが、なんとリュー君がいきなり口を開いた。
「先ほどから私の妃を敬称無しに呼び捨てにされておいでだが、ベイフィート国王陛下は如何お考えか?」
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