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夫と妻
白薔薇の王子様
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顔色の悪いリュー君を見詰めながら、どうしよう…と内心焦っていた。
「今までもっと気さくに話しかけてくれていたよね?どうして急に殿下呼びにするの?」
何となく…リュー君の方からおどろおどろしい魔圧が流れてきている気がする。
怒っているの?どうしてよ…
「それは…リュージエンス殿下に失礼だったと思い至りまして」
「何が?」
「敬称を付けずにお呼びしたり、その…不躾にも許しも得ずに近づいたり…」
「だから急にどうしてそう思うようになったの?…もしかしてアイツに何か言われたの?」
アイツ…て誰だろう?私がそう考えている間にリュー君は
「そうかっ…キューインス閣下かガンバレス大尉に何か言われたのか?そうなのか?」
と勝手に決めつけて矢継ぎ早に問いかけてきた。
違う違うよ、そうじゃない。
「いえ…違います。政略婚姻なのに私の接し方がおかしかったのです。殿下のご迷惑も考えずに…だからリュージエンス殿下はどうかお気になさらずに!」
と、言いながらキッチンに走って逃げ込んでしまった、根性無しの私…
こんなに胸が苦しくなるなら言わなければよかった…。自分で想像しているより、リュー君に対する依存度が大きいことに気が付いて唖然とする。
ベイフィート城を出てからの生活で常にリュー君にサポートしてもらってた。私の方が精神的に年上だからーとか謎の上から目線をリュー君にぶちかましているつもりだったけど、実は何も出来ないのは自分の方だった。そのくせリュー君には馴れ馴れしく接する厚かましさ…
そうだ、最初にリュー君は言っていたではないか。
クリマリ(兄弟)の追撃から逃れたい為の婚姻だって…その話の時にしっかり意識して節度ある距離感を保っていれば良かったんだ。
その時、リュー君が部屋の中から静かに外に出て行ったのが分かった。
ああ…これで良かったんだ。
元々1人でここで生活するつもりだったし、リュー君は名目上私と婚姻しているし、後ろ盾は手に入れたしお互いに困ることは無い。
静まり返った室内は怖くて…私は意識を他に向けようとハンバーグのタネを作ることにした。
玉ねぎを細かくみじん切りにしていく。途端に視界がブレる。次から次から涙が溢れる。
「玉…玉ねぎ目に沁み…。ひーっく…ぐすっ」
この涙の原因はそれだけではないのは分かっている。自分から距離を取っておいて、実際置いて行かれたら泣くなんて馬鹿じゃないだろうか…。
「リュー君への依存度半端なーーいっぃぃ…ひーーんっ…。うぐっ…」
私は馬鹿だ。
どうしてもっと上手く話しを出来なかったんだろう。そして今まで通り仲良くして下さいとお願いして、そこでリュー君に無理だと断られたとしても、きっぱりと気持ちを切り替えて…リュー君にご迷惑をかけないように慎ましく名目上の妻として生活しておけばよかったんだ。
後から後悔ばかりしてどうするんだっ!みじん切りにした玉ねぎをフライパンに放り込んでから、洗面所に飛び込んで顔を洗った。
淋しくないっ辛くないっ!元々独りだっ!これ以上リュー君に頼ってどうするんだ!
タオルで顔をゴシゴシと擦っているとリュー君が突然、室内に戻って来た。転移魔法使ったのか?…そして迷わずリュー君は洗面所まで歩いて来た。
私は戸口に立ったリュー君を見た。リュー君は手に何か白い大きな包みを持っている。どうしたのだろう?緊張感が走る。
「ミランジェ」
「は、はい!」
リュー君は一歩、洗面所の中に入って来ると私の前で跪いた!?そして…その大きな包みを私に差し出した。
「ミランジェ…改めて俺と婚姻して本当の夫婦になって下さい」
なっ…なっ…?
そのリュー君が差し出した包みは白薔薇の花束だった。リュー君は真剣な表情で私を見上げている。
「俺との関係に距離を取らないで欲しい。いつもみたいにリュー君でもジゾーでもいい、そう呼んでくれ」
私の涙腺は崩壊した。
「だって…リュー君っ、最初リュー君て呼ぶな!って怒ってたぁ…」
「あ…あれはっそのいきなりだったから…びっくりしたというか、ミランジェに戸惑っていたっていうか…兎に角さ、この白薔薇を受け取って?俺の白い薔薇をミランジェの好きな色に染めてくれ」
きゃああああっ!?ちょっと!?何それ何それぇ!俺の白薔薇を好きな色に染めろだってぇぇ!?
「そ…それ花嫁衣裳の婚姻相手に捧げる、白色の代わり?」
「そのつもり」
私はリュー君の差し出した白薔薇の花束にゆっくりと手を伸ばした。リュー君が嬉しそうな笑顔になった。
純白の薔薇と美形の王子様。とんでもない乙女なシチュエーションだ。私は泣きながら花束に手をかけた…と同時にリュー君に腕を掴まれると花束ごとリュー君に抱き込まれた。
「ミランジェ、了承してくれる?」
「…はいっリュー君。宜しくお願いします」
そして、リュー君の顔が近付いてきた。私は自然と目を閉じた。
そっと触れるリュー君の唇。
リュー君の魔力が唇からゆっくりと流れ込んでくる。やっぱり優しい…心地よい魔力だ。何度か軽く口づけが落とされて、深く溜め息をついたリュー君にがっちりと抱き込まれた。
「も~うっ脅かしてきてぇ~何だよっ!あ、花束潰れた…!」
「ちょっ…とヤダ!」
私は潰れた花束を魔法で再生させると、花瓶に生けて窓際に置いた。白く輝いて綺麗だ!おっといけない~防腐魔法をかけて保存しちゃおう、ぐへへ。
さてその後、夕食の準備をする私にへばりつきながらリュー君はさっきまでのことを散々愚痴っていた。
「びっくりしたよ!急によそよそしくなるしさっ。アイツに何か吹き込まれたんじゃないかとか、閣下達に何か言われたとかさ!ってか、本当に言われてないの?」
さっきから言っているアイツってこの話の流れから察するに近衛のアイツのことか!
「あの近衛は城の部屋の中にあった宝石のことばっかり叫んでたよ?」
「そうか、しかしムカつくなあいつ。俺もぶん殴って鼻をへし折ってやるんだった」
白薔薇の王子様が野蛮な言い方をされてますよ?
「じゃあやっぱり閣下に何か言われたの?」
ハンバーグの形成をしている私を後ろから抱き締めながら、リュー君は頭頂部にキスをしてくる。へえ~リュー君って彼女とかに結構ベタベタしてくるタイプなんだね。
「ん~、私とリュー君の婚姻に閣下は反対していたらしいのね」
「あ~そうだね。反対だ~とか言ってたな」
「その時にリュー君は私とは適当に付き合います…みたいな事を言ってたって閣下に聞かされて…」
「あ……っち…あのおっさん…」
何かリュー君がブツブツ言っているけど…取り敢えず私は話を続けた。
「で、私とは適当に付き合いたいのに、私のほうから図々しくリュー君、リュー君って言って馴れ馴れしいので仕方なく付き合ってくれていて~本当はリュー君を困らせてるんじゃないかって思い至って…。」
「あ……なるほど」
「そう思い出したら、ギルド前で会った時から馴れ馴れしすぎたし王子殿下のリュー君にあまりにも不敬過ぎたことに今更気が付いて…一人猛反省してあの態度になりました。」
ふぅ…とリュー君は溜め息をついた。呆れたよね?自分でも考え過ぎて視野が狭くなっていたな~とは思うわよ?
「本当にびっくりさせんなよ」
「すみません」
「謝らなくてもいいよ。俺だって最初から王女殿下のミランジェに馴れ馴れしかったよ?」
そうだったっけ?最初は美形の地蔵だー!と興奮していたからよく覚えていないわ。
「ミランジェは馴れ馴れしいって言うけどさ、久しぶりに会ったのに…昨日も会ってた幼馴染みたいな感じで自然に話しかけてくれてたから、俺も砕けて話せたのもあるんだよ?俺、基本は人見知りだし。」
ああ~そうだったそうだった!いくら美しく成長していても元の中身はモジモジ大人しいぽっちゃり地蔵だよね。
「そうだよね、リュー君は子供の時に会った時もモジモジしてて薄っすら笑顔の無口なぽっちゃりだったもの」
「ぽっちゃりって言うな!よく覚えてるな~俺と会ったのって一年に一、二回程度だよな」
「印象に残るぽっちゃり王子だったもの」
「ぽっちゃり王子って言うな!あれ?そういえば、お互いの国に訪問した時にクリヒリエンス兄上にも会ってるんじゃないか?兄上の事憶えてる?」
う~ん…クリヒリエンス王太子殿下かぁ…顔は正直憶えてないけどなあ。
「顔は印象に無いけれど、板みたいなお兄様だな~とは思った」
「イタ?」
「そう、真っ直ぐな木の板。何だか平たくて細長くて厚みの無い体型だったのは憶えてる」
何故だかリュー君は爆笑した。
あれ?何だかバカ受けですが、私そんな笑いを取るような発言をしましたっけ?
ヒィヒィ言って笑い転げているリュー君は放置して、形成の終えたハンバーグを焼いていくことにした。まず軽く表面を焼こう。作り終えたハンバーグを全部焼いていく。
そして焼き色のついたハンバーグをオーブンのトレイに並べているとやっと笑いの治まったリュー君が
「ミランジェの兄上への表現、的確過ぎるっ!」
と言ってきた。だって板みたいに見えたんだもん。
「あ~おかしい!今もさ兄上、体が細長いんだよ。おまけに体の厚みも無い。今も板のままだよ…小さい板から大きい板になっただけ…ブッ!思い出してまたおかしくなってきた」
自分で兄上弄りして勝手に笑ってるよ。はいはいっと…
本日の夕食が出来上がりました。
メニューは先ほど作ったハンバーグとコーンスープと頑張って八宝菜を作ってみた。とろみも上手く出来たし中華っぽい仕上がりになってるし、味見もしたので大丈夫なはず。
リュー君は大喜びだった。ずっと美味しいを連発してくれた。お酒を飲みながら八宝菜を食べてニコニコしている。
さてとうとう来ました、夜です。先ほどの甘い流れから察するに初夜になりそうです。
あまり考えたくはないけれど、リュー君はそういう方面の手練れっぽいのでモヤモヤはするけれど、お任せしてみることにしよう。
だがしかしこんな私でも大昔、彼氏がいたことは…ある。
事に至らずにお別れしてしまったけれどもね。まあ、死ぬまでそこそこの年齢まで生きてきていたので、知識もある、ただ実践経験が無いだけだ。
色々と言い訳を頭の中でしながらお風呂から上がって来ると、地蔵がナイスタイミングで部屋にやって来た。
「ミランジェ~。俺の部屋に行く?その方が寝台大きいし~」
妙に浮かれた語尾の感じからすでに地蔵は浮かれモードに突入していると思われる。こっちは戦闘に赴く戦士の心持ちだというのに…。
「よっ宜しくお願いします!」
気合いを籠めてリュー君にそう挨拶をすると、リュー君は苦いお茶を飲んだみたいな顔をして
「何それ~色気が無いよ~」
と言ってきた。色気なんて今は要るものかっ!要るのは気合いだっ気合いだっ!気合いだーっ!
「今までもっと気さくに話しかけてくれていたよね?どうして急に殿下呼びにするの?」
何となく…リュー君の方からおどろおどろしい魔圧が流れてきている気がする。
怒っているの?どうしてよ…
「それは…リュージエンス殿下に失礼だったと思い至りまして」
「何が?」
「敬称を付けずにお呼びしたり、その…不躾にも許しも得ずに近づいたり…」
「だから急にどうしてそう思うようになったの?…もしかしてアイツに何か言われたの?」
アイツ…て誰だろう?私がそう考えている間にリュー君は
「そうかっ…キューインス閣下かガンバレス大尉に何か言われたのか?そうなのか?」
と勝手に決めつけて矢継ぎ早に問いかけてきた。
違う違うよ、そうじゃない。
「いえ…違います。政略婚姻なのに私の接し方がおかしかったのです。殿下のご迷惑も考えずに…だからリュージエンス殿下はどうかお気になさらずに!」
と、言いながらキッチンに走って逃げ込んでしまった、根性無しの私…
こんなに胸が苦しくなるなら言わなければよかった…。自分で想像しているより、リュー君に対する依存度が大きいことに気が付いて唖然とする。
ベイフィート城を出てからの生活で常にリュー君にサポートしてもらってた。私の方が精神的に年上だからーとか謎の上から目線をリュー君にぶちかましているつもりだったけど、実は何も出来ないのは自分の方だった。そのくせリュー君には馴れ馴れしく接する厚かましさ…
そうだ、最初にリュー君は言っていたではないか。
クリマリ(兄弟)の追撃から逃れたい為の婚姻だって…その話の時にしっかり意識して節度ある距離感を保っていれば良かったんだ。
その時、リュー君が部屋の中から静かに外に出て行ったのが分かった。
ああ…これで良かったんだ。
元々1人でここで生活するつもりだったし、リュー君は名目上私と婚姻しているし、後ろ盾は手に入れたしお互いに困ることは無い。
静まり返った室内は怖くて…私は意識を他に向けようとハンバーグのタネを作ることにした。
玉ねぎを細かくみじん切りにしていく。途端に視界がブレる。次から次から涙が溢れる。
「玉…玉ねぎ目に沁み…。ひーっく…ぐすっ」
この涙の原因はそれだけではないのは分かっている。自分から距離を取っておいて、実際置いて行かれたら泣くなんて馬鹿じゃないだろうか…。
「リュー君への依存度半端なーーいっぃぃ…ひーーんっ…。うぐっ…」
私は馬鹿だ。
どうしてもっと上手く話しを出来なかったんだろう。そして今まで通り仲良くして下さいとお願いして、そこでリュー君に無理だと断られたとしても、きっぱりと気持ちを切り替えて…リュー君にご迷惑をかけないように慎ましく名目上の妻として生活しておけばよかったんだ。
後から後悔ばかりしてどうするんだっ!みじん切りにした玉ねぎをフライパンに放り込んでから、洗面所に飛び込んで顔を洗った。
淋しくないっ辛くないっ!元々独りだっ!これ以上リュー君に頼ってどうするんだ!
タオルで顔をゴシゴシと擦っているとリュー君が突然、室内に戻って来た。転移魔法使ったのか?…そして迷わずリュー君は洗面所まで歩いて来た。
私は戸口に立ったリュー君を見た。リュー君は手に何か白い大きな包みを持っている。どうしたのだろう?緊張感が走る。
「ミランジェ」
「は、はい!」
リュー君は一歩、洗面所の中に入って来ると私の前で跪いた!?そして…その大きな包みを私に差し出した。
「ミランジェ…改めて俺と婚姻して本当の夫婦になって下さい」
なっ…なっ…?
そのリュー君が差し出した包みは白薔薇の花束だった。リュー君は真剣な表情で私を見上げている。
「俺との関係に距離を取らないで欲しい。いつもみたいにリュー君でもジゾーでもいい、そう呼んでくれ」
私の涙腺は崩壊した。
「だって…リュー君っ、最初リュー君て呼ぶな!って怒ってたぁ…」
「あ…あれはっそのいきなりだったから…びっくりしたというか、ミランジェに戸惑っていたっていうか…兎に角さ、この白薔薇を受け取って?俺の白い薔薇をミランジェの好きな色に染めてくれ」
きゃああああっ!?ちょっと!?何それ何それぇ!俺の白薔薇を好きな色に染めろだってぇぇ!?
「そ…それ花嫁衣裳の婚姻相手に捧げる、白色の代わり?」
「そのつもり」
私はリュー君の差し出した白薔薇の花束にゆっくりと手を伸ばした。リュー君が嬉しそうな笑顔になった。
純白の薔薇と美形の王子様。とんでもない乙女なシチュエーションだ。私は泣きながら花束に手をかけた…と同時にリュー君に腕を掴まれると花束ごとリュー君に抱き込まれた。
「ミランジェ、了承してくれる?」
「…はいっリュー君。宜しくお願いします」
そして、リュー君の顔が近付いてきた。私は自然と目を閉じた。
そっと触れるリュー君の唇。
リュー君の魔力が唇からゆっくりと流れ込んでくる。やっぱり優しい…心地よい魔力だ。何度か軽く口づけが落とされて、深く溜め息をついたリュー君にがっちりと抱き込まれた。
「も~うっ脅かしてきてぇ~何だよっ!あ、花束潰れた…!」
「ちょっ…とヤダ!」
私は潰れた花束を魔法で再生させると、花瓶に生けて窓際に置いた。白く輝いて綺麗だ!おっといけない~防腐魔法をかけて保存しちゃおう、ぐへへ。
さてその後、夕食の準備をする私にへばりつきながらリュー君はさっきまでのことを散々愚痴っていた。
「びっくりしたよ!急によそよそしくなるしさっ。アイツに何か吹き込まれたんじゃないかとか、閣下達に何か言われたとかさ!ってか、本当に言われてないの?」
さっきから言っているアイツってこの話の流れから察するに近衛のアイツのことか!
「あの近衛は城の部屋の中にあった宝石のことばっかり叫んでたよ?」
「そうか、しかしムカつくなあいつ。俺もぶん殴って鼻をへし折ってやるんだった」
白薔薇の王子様が野蛮な言い方をされてますよ?
「じゃあやっぱり閣下に何か言われたの?」
ハンバーグの形成をしている私を後ろから抱き締めながら、リュー君は頭頂部にキスをしてくる。へえ~リュー君って彼女とかに結構ベタベタしてくるタイプなんだね。
「ん~、私とリュー君の婚姻に閣下は反対していたらしいのね」
「あ~そうだね。反対だ~とか言ってたな」
「その時にリュー君は私とは適当に付き合います…みたいな事を言ってたって閣下に聞かされて…」
「あ……っち…あのおっさん…」
何かリュー君がブツブツ言っているけど…取り敢えず私は話を続けた。
「で、私とは適当に付き合いたいのに、私のほうから図々しくリュー君、リュー君って言って馴れ馴れしいので仕方なく付き合ってくれていて~本当はリュー君を困らせてるんじゃないかって思い至って…。」
「あ……なるほど」
「そう思い出したら、ギルド前で会った時から馴れ馴れしすぎたし王子殿下のリュー君にあまりにも不敬過ぎたことに今更気が付いて…一人猛反省してあの態度になりました。」
ふぅ…とリュー君は溜め息をついた。呆れたよね?自分でも考え過ぎて視野が狭くなっていたな~とは思うわよ?
「本当にびっくりさせんなよ」
「すみません」
「謝らなくてもいいよ。俺だって最初から王女殿下のミランジェに馴れ馴れしかったよ?」
そうだったっけ?最初は美形の地蔵だー!と興奮していたからよく覚えていないわ。
「ミランジェは馴れ馴れしいって言うけどさ、久しぶりに会ったのに…昨日も会ってた幼馴染みたいな感じで自然に話しかけてくれてたから、俺も砕けて話せたのもあるんだよ?俺、基本は人見知りだし。」
ああ~そうだったそうだった!いくら美しく成長していても元の中身はモジモジ大人しいぽっちゃり地蔵だよね。
「そうだよね、リュー君は子供の時に会った時もモジモジしてて薄っすら笑顔の無口なぽっちゃりだったもの」
「ぽっちゃりって言うな!よく覚えてるな~俺と会ったのって一年に一、二回程度だよな」
「印象に残るぽっちゃり王子だったもの」
「ぽっちゃり王子って言うな!あれ?そういえば、お互いの国に訪問した時にクリヒリエンス兄上にも会ってるんじゃないか?兄上の事憶えてる?」
う~ん…クリヒリエンス王太子殿下かぁ…顔は正直憶えてないけどなあ。
「顔は印象に無いけれど、板みたいなお兄様だな~とは思った」
「イタ?」
「そう、真っ直ぐな木の板。何だか平たくて細長くて厚みの無い体型だったのは憶えてる」
何故だかリュー君は爆笑した。
あれ?何だかバカ受けですが、私そんな笑いを取るような発言をしましたっけ?
ヒィヒィ言って笑い転げているリュー君は放置して、形成の終えたハンバーグを焼いていくことにした。まず軽く表面を焼こう。作り終えたハンバーグを全部焼いていく。
そして焼き色のついたハンバーグをオーブンのトレイに並べているとやっと笑いの治まったリュー君が
「ミランジェの兄上への表現、的確過ぎるっ!」
と言ってきた。だって板みたいに見えたんだもん。
「あ~おかしい!今もさ兄上、体が細長いんだよ。おまけに体の厚みも無い。今も板のままだよ…小さい板から大きい板になっただけ…ブッ!思い出してまたおかしくなってきた」
自分で兄上弄りして勝手に笑ってるよ。はいはいっと…
本日の夕食が出来上がりました。
メニューは先ほど作ったハンバーグとコーンスープと頑張って八宝菜を作ってみた。とろみも上手く出来たし中華っぽい仕上がりになってるし、味見もしたので大丈夫なはず。
リュー君は大喜びだった。ずっと美味しいを連発してくれた。お酒を飲みながら八宝菜を食べてニコニコしている。
さてとうとう来ました、夜です。先ほどの甘い流れから察するに初夜になりそうです。
あまり考えたくはないけれど、リュー君はそういう方面の手練れっぽいのでモヤモヤはするけれど、お任せしてみることにしよう。
だがしかしこんな私でも大昔、彼氏がいたことは…ある。
事に至らずにお別れしてしまったけれどもね。まあ、死ぬまでそこそこの年齢まで生きてきていたので、知識もある、ただ実践経験が無いだけだ。
色々と言い訳を頭の中でしながらお風呂から上がって来ると、地蔵がナイスタイミングで部屋にやって来た。
「ミランジェ~。俺の部屋に行く?その方が寝台大きいし~」
妙に浮かれた語尾の感じからすでに地蔵は浮かれモードに突入していると思われる。こっちは戦闘に赴く戦士の心持ちだというのに…。
「よっ宜しくお願いします!」
気合いを籠めてリュー君にそう挨拶をすると、リュー君は苦いお茶を飲んだみたいな顔をして
「何それ~色気が無いよ~」
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