青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ

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夫と妻

名演技

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リュー君を呼び出したのはクラシスじゃないの?

私の心の声と同じくリュー君が

「ベイフィート国王陛下からお手紙を頂いて参上したのですが?」

と、プリエレアンナ様に淡々と告げた。するとプリエレアンナ様はウフフと微笑んだ後

「陛下は後でお越しになられますわ」

と小首を傾げた。

なんだその上目遣いは?!ああ…痛い。私も気を付けよう。アラサーの年齢になってぶりっ子?キャラは痛いだけだ。

「そうですか、では後ほどお伺い致します」

とリュー君は踵を返した。

「お待ちになって!」

プリエレアンナ様はリュー君を呼び止めた。

「リュージエンス殿下はミランジェ様と政略婚なのですってね?」

「…」

振り向いてプリエレアンナ様に顔を向けているリュー君の顔は私からは見えない。今、リュー君はどんな顔をしているのだろう…
 
「メイドが教えてくれましたわ…あの時、殿下が口に出していた言葉…全部物語の中の文章を引用されていたのですってね…オホホ。大方ミランジェ様にそう言うように強要されてらしたのでしょう?お可哀そうに…」

プリエレアンナ様はどこかで頭でもぶつけたんだろうか?

ものすごい独自解釈であの時の地蔵の名演技をぶった切ってきた。

「あんなおばさんに可哀そうって言われてる殿下がカワイソーだよ」

「きんもっマジきんもっ!」

デジバラとダンカレの声にハッとしてリュー君の後ろ姿を見た。リュー君は何て答えるのだろう。

「私が政略婚でミランジェと幼馴染で物語の2人と境遇が似ていて…それがプリエレアンナ妃と何か関係があるのでしょうか?」

静かに、そして淡々とリュー君は答えた。そして…また踵を返して私が居る方向に顔を向けると…蕩けるような笑顔を向けて来た。

「今、私がミランジェを愛しているのはあなたには何も関係ないですよね、では失礼」

ひやあああ…!顔から火が出そうっ。

「うわわ~!」

「やっばっ!何!?あの殿下の蕩けそうな顔っ!?」

横で双子が囃し立てるけど、恥ずかしすぎて顔を上げられない。

すると、ビリリ…!と突然何かが裂けるような音がした。私も扉の前に立っていたリュー君も振り向いた。

「っな!?」

「ぎゃっ!」

なんとプリエレアンナ様はドレスの胸元の布を引き裂いて…半乳をポロンと出していた。そして尚もドレスの裾を引き千切ると、乳をさらけ出したままリュー君を睨んだ。

「きゃあああ!リュージエンス殿下何をなさるのぉぉぉ…誰かあ~~助けて!」

プリエレアンナ様は突然そう叫んだ。

「っ…ちっ!」

リュー君が舌打ちをした。すると間髪を入れずに部屋のドアが勢いよく叩かれた。

「プリエレアンナ様!?プリエレアンナ様?!如何なされました?リュージエンス殿下に何か如何しいことをされているのでしょうかぁぁ!?」

廊下から大声で何故か室内の実況中継をするメイドの声が聞こえてきた。

プリエレアンナ様を見るとニヤ~ッと嫌な笑いをしている。

「ミランジェ!閣下!魔法の解術を!」

リュー君が叫んだことで気が付いた。そ、そうか!

私は慌てて透過魔法の術を解いて、すぐにリュー君に駆け寄った。私が魔法を解いたのと同時に、扉が開け放たれメイドと侍従と近衛の3人が駈け込んで来た。

「ああっ!?プリエレアンナ様ぁぁーーリュージエンス殿下にいたぶら…れ…?」

と言いながら走り寄ろうとしたメイドは入口で固まってしまった。

何故ならば室内には、リュー君以下私と双子以外にもトキワステラーテ王国のメンバーとサザウンテロス帝国メンバー、おまけにボレンティ公爵親子、おまけにカッシーラ伯と留めに宰相様がいたからだ。勿論皆、透過魔法の解術はして堂々と室内で立っている。半乳プリエレアンナを見ないようにしつつ、プリエレアンナ様を取り巻いている。

リュー君は走り寄って来た私を抱き締めると、頬に何度もキスをした後に小声で私の耳元に囁いた。

「芝居に付き合って」

そして息を吸い込んだ。

「おいっ!ベイフィート国王陛下にすぐにご連絡を!急にプリエレアンナ妃が我々の目の前でご乱心されたのだ!」

「…っえ…な…?」

メイドはオロオロしながら何かを言おうとしてプリエレアンナ様を見たりリュー君を見たりしている。

リュー君はそんなメイドに畳みかけた。

「早くしないとプリエレアンナ様が益々ご乱心になるぞっ!ああ、そうであった、今ここには術師の方々がおられるな~是非とも診察をして頂こうか?」

とリュー君がそう言って視線を動かした時にガンバレス大尉と女性の治療術師の方が大げさに声を上げながらプリエレアンナ様に近づこうとした。

「まああ、これは気鬱の病でしょうかね~!」

「かなりの重篤な状態ですわね~!」

おば様達の熱演がすごい。そして、キューインス閣下がまだオロオロしている近衛に命令をした。

「早く、陛下をお呼びしろ!私達が見ている!」

そう言われてもメイド達はオロオロするばかりだ。

「わっ…私はっリュージエンス殿下にいたぶられたのですよぉぉ?!どう責任を取って下さいますのぉ…」

まだ芝居を続けようと乳を放り出しながらプリエレアンナ様が泣きの演技を見せてきた。

「そのような事実は御座いませんな」

バッサリ…。ボレンティ公爵がプリエレアンナ様の言葉に被せる様にして言い切った。

「このような衆人環視の前でよくもそんな破廉恥な言葉を使われますなぁ…」

宰相様が更に切り捨てる。

「プリエレアンナ妃…虚言の疑いですか…」

カッシーラ伯が淡々とそう告げられた。

そうして、廊下で騒いだ声が聞こえたのか…複数の近衛がやって来て、辺りは騒然となった。

流石にいつまでも半乳のままではマズイと思ったのか、メイドに何か言ってブランケットを上から羽織るプリエレアンナ様。非常に不貞腐れていますね。

そりゃそうか、恐らくリュー君が本当に1人で来ていたのなら、あのように乳を放り出して騒いでリュー君に不名誉な濡れ衣を着せる段取りだったのだろう。恐らく踏み込んで来たあのメイド達はグルだ。

そして

パターン1…リュー君に怒ったクラシスから上手い具合に離縁をされる。そして更に責任とれや~!とリュー君に詰め寄り、リュー君の第二妃に収まる。

パターン2…クラシスがリュー君を許す。しかし傷物になったので第二妃は辞めます。修道院か…隠居。

どちらに転んでもよかったはずだ。お腹の子供をこっそりと生み落として陛下の子供じゃない事実を隠蔽しようとしていたのだろう。

ただ、まさかのパターン3でリュー君は皆を連れて来て目撃させてしまった…という訳だ。

騒ぎを聞きつけてやって来たクラシスは宰相様から話を聞いて頭を何度も振っていた。

「懐妊して疲れが出たのであろう…許してやって欲しい」

今、何て言った?許して欲しい?

室内は異常に静まり返っている。そこへリュー君が沈黙を破った。

「疲れていたから許せと?私に迫り、あまつさえ婦女子を暴行したと濡れ衣を着せようとしたり…ミランジェを侮辱したことを全て許せと申されますのか?」

怖っ……リュー君の魔力が上がって室内でぶつかってスパーク?を起こしている。ここにいる皆様は身をすくめている。演技かな?演技だったら本気度がすごいのですが…?

「そうですぞっ衣服を自ら破り、わざわざ騒ぎ立てるなど許せの言葉だけでは足りますまい」

ボレンティ公爵がリュー君に追随した。更にカッシーラ伯が追い打ちをかけた。

「サザウンテロス帝国とトキワステラーテ王国の皆様の眼前で有らせまする。言い逃れは出来ません」

クラシスはカッシーラ伯をギロリと睨んだ。

「私が良いと申したのだ!もうこの話は終わりだ」

そう言った時にクラシスからブワッと黒い魔質が流れてきた。余りにも濃厚だった為、ナフィ姉様や他の術師の方の目にも視えたのだろう。

「きゃあ…!」

「アレ…まさか!?」

皆がクラシスを息を止めて見詰める。クラシスは周りを睨みつけながらプリエレアンナ様に向き直って

「もう大丈夫だ…少し休もうか?」

と言い出した。

流石にこれは看過出来る事態ではない。カッシーラ伯は

「それだけでは済みませんよ、兄上!」

と叫んだが、クラシスはカッシーラ伯の方を見ようともしない。

キューインス閣下とガンバレス大尉が私の側に来た。

「さっきのアレ視ましたか?」

「はい、黒い魔質でしたね」

そう私が答えるとガンバレス大尉はうむ…と言って顎を摩った。

「先ほどナフテラージャ王女殿下がこの城は居心地が良くないと仰っておられたのですが、それはミランジェ妃もそう思われますか?」

私は黙って頷いた。

居心地処の話ではない。今すぐにでもこの城から離れたいくらいだ。

私はカッシーラ伯に促されて別室に移動した。リュー君はまだ激おこだった。どうやら演技ではないようだった。

別室に移動して

カッシーラ伯とボレンティ公爵と宰相様…それにリュー君とキューインス閣下やダーシュ=タウメントスお義兄様も加わり、お兄様方で何か話し込んでいる。

早く帰りたい…。さっきから黒い魔力がチラチラ足元にも漂ってきていて、ずっと浄化魔法を使っているのがいい加減疲れてきている。

「ミランジェ」

リュー君に手招きされたのでお兄様方の方へ近づいた。ナフィ姉様もいつの間にか話に加わっていたようだ。

「ミランジェ妃から以前お話し頂いていた禍々しい魔の気配は…先ほどのベイフィート国王陛下から漂い出ていた魔質と同質のものでしょうか?」

私はカッシーラ伯を見ながら頷いた。

「迷うことはありませんわ。あんな恐ろしいもの早く浄化するべきです」

するとナフィ姉様が声を荒げながら言ったので顔を上げるとナフィ姉様と目が合った。

「ミランジェの見立て通り、あれは非常に良くない魔質です。治療術師ならあのような魔質に囚われた者をそのままにしてはおけません。早く浄化しなければ周りにもうつり…被害が出ます」

私も頷いてナフィ姉様を見詰め返した。

すぐにでも浄化をしたほうが良いということで話がまとまったので、カッシーラ伯とボレンティ公爵、宰相様が浄化の為に王宮の奥に立ち入ることの許可をクラシスに貰いに行くことになった。その間、私達は暫くこの別室で待たせてもらうことにした。

「リュー君怒ってる?」

「当たり前だよっ何だアレ!変なもの見せやがって!」

白薔薇の王子様がまた言葉遣いが荒れておりますよ?

「そーだ!そーだ!おばさんの乳なんて見て誰が嬉しいんだよっ!」

「きんもマジきんもっ!」

「デジバラもダンカレもやめなさい…一応不敬だよ?」

ダーシュお義兄様が若干半笑いで双子をたしなめている。実はお義兄様も言いたいんじゃない?

そう言えば

ソファに座った私の横に居るリュー君は、さっきから私と体の距離が近い。いや、まあ昨日から正式な夫婦?になったんだし接触が多いのはいいのだけれど…結構腰を触りまくってるね?

「ミランジェは心配しなくてもいいよ」

「ん?何が?」

「あのプリエレアンナ妃よりミランジェの体の方が断然、綺麗だからさ」

ヒュ~ッと室内の温度が下がった気がした。私は地蔵の脇腹に拳を叩きつけていた。

時と場所を考えろぉ!

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