32 / 43
夫と妻
カッシーラ伯の決断
しおりを挟む
「地蔵っ…女性もいるのよ!エロイ発言は禁止ぃぃ!」
手加減しないでリュー君の脇腹に拳を入れたつもりなのに、リュー君はニヨニヨした笑顔のままだ。
「はいは~い」
っち…浮かれ地蔵め。
視線を感じてリュー君の肩越しに向こうを見ると、ナフィ姉様とガンバレス大尉からもニヨニヨした笑顔を向けられていた。
恥ずかしいっ! もう一度、拳を地蔵の脇腹に叩きこんでおく。
暫くするとカッシーラ伯達は帰って来られた。
伯達の魔質が暗い…。カッシーラ伯は暗い表情のままリュー君の前に立たれた。
「殿下…やはり決断せねばならないようです」
「そうですか…。ご助力は惜しみませんよ」
何?何なの?
私が怪訝そうな顔をするとリュー君は、後で…と言って微笑んでくれた。
何だろうか…
やっぱり、クラシスは王宮の浄化は拒否したらしい。
私達はその日はミランジェ洋装店(仮)に帰った。デジバラとダンカレは宿屋の方へ帰った。家に予備の寝台もないし、何かサザウンテクロス軍部での会議のようなものがあるらしい。
何だか皆コソコソしている気がするなぁ。
家に戻る前に、リュー君と一緒に食材を買いに市場に出かけた。
「あ…葉野菜の値段が上がってる」
いつも行く市場の野菜屋のお兄さんは私がそう呟くと、ごめんね~と謝罪しながら苦笑いをした。
「先月からさ、色々と税金が上がってね。うちだけじゃないよ?全部の税金が軒並み上がったんだ。もしかするとまた上がる…とか噂もあったし、あんまり税が上がるようなら…うちもボレンティ公爵領かカッシーラ伯領に引っ越そうかな~とか言っててね」
というお兄さんの言葉に、そう言えば…と商店が並ぶ道沿いを見てみる。閉まっているお店が増えてる?
これ、あれだ…クラシスの馬鹿が税金上げろ…とか言ったのを本当に法案通しちゃって、消費税?みたいなの徴収しちゃったんだ…。こんなことしたら都会じゃ暮らしにくいって皆、地方に逃げちゃうよ?ドーナツ化現象まっしぐらになるよ。馬鹿だな、クラシス。
その後、肉屋と卵屋と香辛料屋にも寄ったんだけど、どの店も値上がりしていて、おまけに品物が欠品している店もあった。
「他国から輸入してくる商品にかけてる関税も上がってるんだよ」
と、外国から香辛料の買い付けをしているおじさんはぼやいていた。こりゃ益々ヤバイ政策を打ち立てている。
「やっぱりな…」
とリュー君は呟いている。リュー君も何か知っているの?
市場からの帰り道、手を繋いでリュー君と帰りながら果物屋に寄ったら、店は閉まっていた。ドアの前には張り紙が貼ってある。
『移転しました』
引っ越し先はカッシーラ伯領になっていた。これは本格的にドーナツ化現象が始まっている。
家に帰り夕食の準備をして
チキンのクリーム煮と葉野菜のピリ辛サラダ、野菜のポトフを作った。
夕食後
リュー君は黒茶を飲みながら、忙しそうな皆の事情を話してくれた。
「独立?!」
「そう…ベイフィート王国からカッシーラ伯領は独立するんだ。その際にボレンティ公爵領とウラッテロ侯爵領も追随するそうだ。」
リュー君はテーブルの上にこの国の地図を広げた。
「カッシーラ伯領の隣がウラッテロ侯爵領、その隣に隣接しているのがボレンティ公爵領。北側の領土三分の一ほどが、新生カッシーラ国…仮にだけど、になるわけだ」
本当だ。この三つの領土が団結して独立したら…そうなるわ。
「クラシスに在位が変わってから独立しようとしていたのだけれど、二年以上も歳月がかかったのはウラッテロ侯爵を説得するのに時間がかかったということだ。しかもボランティ公爵の娘、マジアリートの姉上がウラッテロ侯爵の長兄に嫁いでいてね。その姉上が独立に猛反対していたらしい。ところが、先日その姉上が何者かに狙われた」
「!」
「犯人は捕まえたよ。この間言ってただろ?プリエレアンナ妃が王族の血族の子種が欲しくて…って、どうやら本格的にその手段に出て来たらしい」
「酷い…」
「流石にご自身も狙われて考え方を変えられたそうだ。産まれたばかりのご子息もいらっしゃる。と言う訳でウラッテロ侯爵一族も独立に追随することになった」
マジアリート様のお姉様怖かったでしょうに…
「ろくでもないね、プリエレアンナ様」
リュー君は眉間に皺を寄せていた。
「プリエレアンナ妃が直接指示を出している訳じゃないさ、プリエレアンナ妃の実家のローエモンタン伯爵家とその一派が暗躍しているんだ。俺とカッシーラ伯が調べた結果だ」
そっか独立か。
「なるほど…そういうことね。じゃあここに洋装店を開店しても商店街が寂れちゃう可能性が高いよね…。うちも引っ越しかな」
「その事なんだけど…もし引っ越すならカッシーラ伯領にしない?」
リュー君はそう言って少し微笑んでいる。でも魔質は…ちょっと落ち込んでいるみたい。
「それって…」
「うん?」
「リュー君はあまり乗り気じゃない?」
「!」
リュー君は息を飲んだ後、苦笑いをした。
「ミランジェには隠せないな…う~ん、乗り気じゃないことはないんだよ?ただ…」
「ただ?」
「色々と逃れたくて、飛び込んだことだけど、結局別の場所で絡めとられて…身動き取れなくなっているのかな…とか。でも唯一の救いは絡み取られた先にミランジェも一緒に居てくれること…かな。ごめんな…巻き込んじゃって」
リュー君の魔質は萎れている…。そうか、サザウンテロス帝国の継承問題のしがらみから逃れたと思ったのに、今度は別の国の継承問題に巻き込まれている。
結局はどこでも後継ぎや王子達で揉めたり…一緒なんだよね。
「このベイフィートの独立問題に俺とミランジェが担ぎ出されるのは…例の小説の主人公達に似ていて、今…庶民のみならず、大陸中の人間が注目しているから…なんだって。あの小説の2人がカッシーラ伯の味方についた…これが独立の旗印になるらしい」
ああ…なるほど。私とリュー君は変な意味で人気者っていうか、時の人だものね。そりゃシンボルマークにされちゃうわな。
「もういいじゃない、諦めましょう…って言い方はしないよ?楽しもうよ!カッシーラ伯領に引っ越しね。あっちでも鞄作って頑張るよ。リュー君も一緒でしょう?全然怖くないし、楽しい事しかないね」
リュー君は目を見開いた後、私を引き寄せた。顔中にリュー君の口づけが降ってくる。
「俺、ミランジェが俺の奥さんで良かった…て心の底から思ってる」
「そう?うん、私もリュー君の奥さんで良かったよ~」
その後2人でソファの上でイチャイチャして、流されるように…
「ホラ~ミランジェ?おいで~!」
「おいでじゃないわよぅ…地蔵っ!」
ポワ~ッとなって私は半分服を脱ぎかけて、正気に戻った。いつの間に一緒に風呂に入る流れになっているんだ!?
「ホラ~早く」
「……」
「ホ~ラ?」
「……」
笑顔の地蔵が怖い。脱衣所で仁王立ちで裸族のまま手招きしてるのも怖いけど、何より魔圧が怖い。これで断ろうものなら後で何をされるか…
「ミランジェ~?」
「は、は~い。いきま~す」
地蔵圧に負けた。大人しく地蔵の足の間に座って湯舟に浸かる。後ろにいる地蔵に凭れるとゴツゴツしていて凭れ心地はあまり良くない。
地蔵が私を後ろから抱え込んでくる。首筋にチュチュッするの、やめいっ。
「明日からサザウンテロスかあ~」
地蔵の呟きに気が付いた。こうやってお風呂に入るのも暫くは無理なのかな?そう言えばクリマリの攻撃ってまだ何か仕掛けてくるのだろうか。
「リュー君」
「ん~?」
「国に帰ってもクリマリは攻撃してくるの?」
背後のリュー君から緊張したような魔力を感じる。
「そうだった…すっかり忘れてた」
「?」
首を捻ってリュー君を顧みると、頭を抱えていた。
「えっとね~城で出される食事はほぼ毒入りだ。食事はミランジェが準備して欲しいな~。それと部屋の中に入る前に魔術系の罠があるから常に気を付けてね。それと、これもミランジェに頼んでおくね。城に滞在している間は部屋には魔物理防御障壁を常に張り続けていて欲しい、一番強固な防御で」
一気にリュー君に言われて唖然となる。
食事が毒入り?魔術系の罠?常に障壁を?
「それって…サザウンテロス帝国に帰っても…ずっと怖い思いをしていたってこと?」
「ご、ごめんねミランジェ怖い思いをさせるけど…」
「違うよ、そうじゃないよ。今までもリュー君が安心して食事も出来ず…自分の部屋に居る時でさえ緊張していたってことなの?」
私がリュー君の言葉を遮ってそう叫ぶとリュー君は困ったように頷いた。
「うん、まあ…でも父上が間に入ってはくれていたんだけど、父上が諭すとまた嫌がらせが加速するんだよな。母上が兄上達を怒ると母上にも暴言吐くしさ。クリヒリエンス兄上とマリエンスの言い分はこうだ。『リュージエンスばかり贔屓にするな』だって。だから父上や母上が間に入れば入るほど拗れてさ…。父上達には見て見ぬふりしておいてくれって言ってるんだ。両親は影から支援はしてくれているんだけどね~」
そうなのか…国王陛下と国王妃のご理解があるならまだ救いはあるわね。
「リュー君本当に大変だったのね…もうそんな心配はいらないからね?私が防御を完璧にしてあげるし、毒も無効化出来るから安心して休んでね?」
リュー君は嬉しそうにしながら私に抱き付いてきた。
うん。うん…あれ?
リュー君の手がどんどん嫌な手つきになってきた。し、しまった!全裸で風呂場だった!
…
……
………
「明日はサザウンテロス帝国だっ!もういい加減にしろっ!」
私がそう怒鳴りながらベットに潜り込み、タオルケットを頭から被ろうとするとリュー君が私の顔を覗き込んできた。
「後一回だけお願いします」
「…」
…
……
翌朝、完璧に寝不足だった。朝一にダンカレとデジバラがやって来た少し前に眠りについた所だった。
「ミランジェ機嫌悪いね…」
「疲れてる?」
おうっおうっ!疲れもするわ!
疲れた私とは違い、ご機嫌で朝食を食べているエロ地蔵。本当…地蔵って悟り開いてたんじゃなかったの?涼しい顔して煩悩をひた隠しにしていたのか?
私は野菜のスムージをジョッキでゴクゴクと飲んでいた。
「フィーッ…」
「すげぇ、野菜の飲み物なのに、酒を煽っているみたいだ」
ダンカレをジロリと睨んでやる。マフィンを朝から何個食べているんだっいい加減にしろ!こっちは今から義実家に行くから気を引き締めているっていうのに。ダンカレを睨んだついでにリュー君も睨んでやる。
今からあんたの実家に乗り込んでやるっていうのに、旦那のあんたが足を引っ張ってどうするんだよっ。私の体力の事も少しは考えろっ!
手加減しないでリュー君の脇腹に拳を入れたつもりなのに、リュー君はニヨニヨした笑顔のままだ。
「はいは~い」
っち…浮かれ地蔵め。
視線を感じてリュー君の肩越しに向こうを見ると、ナフィ姉様とガンバレス大尉からもニヨニヨした笑顔を向けられていた。
恥ずかしいっ! もう一度、拳を地蔵の脇腹に叩きこんでおく。
暫くするとカッシーラ伯達は帰って来られた。
伯達の魔質が暗い…。カッシーラ伯は暗い表情のままリュー君の前に立たれた。
「殿下…やはり決断せねばならないようです」
「そうですか…。ご助力は惜しみませんよ」
何?何なの?
私が怪訝そうな顔をするとリュー君は、後で…と言って微笑んでくれた。
何だろうか…
やっぱり、クラシスは王宮の浄化は拒否したらしい。
私達はその日はミランジェ洋装店(仮)に帰った。デジバラとダンカレは宿屋の方へ帰った。家に予備の寝台もないし、何かサザウンテクロス軍部での会議のようなものがあるらしい。
何だか皆コソコソしている気がするなぁ。
家に戻る前に、リュー君と一緒に食材を買いに市場に出かけた。
「あ…葉野菜の値段が上がってる」
いつも行く市場の野菜屋のお兄さんは私がそう呟くと、ごめんね~と謝罪しながら苦笑いをした。
「先月からさ、色々と税金が上がってね。うちだけじゃないよ?全部の税金が軒並み上がったんだ。もしかするとまた上がる…とか噂もあったし、あんまり税が上がるようなら…うちもボレンティ公爵領かカッシーラ伯領に引っ越そうかな~とか言っててね」
というお兄さんの言葉に、そう言えば…と商店が並ぶ道沿いを見てみる。閉まっているお店が増えてる?
これ、あれだ…クラシスの馬鹿が税金上げろ…とか言ったのを本当に法案通しちゃって、消費税?みたいなの徴収しちゃったんだ…。こんなことしたら都会じゃ暮らしにくいって皆、地方に逃げちゃうよ?ドーナツ化現象まっしぐらになるよ。馬鹿だな、クラシス。
その後、肉屋と卵屋と香辛料屋にも寄ったんだけど、どの店も値上がりしていて、おまけに品物が欠品している店もあった。
「他国から輸入してくる商品にかけてる関税も上がってるんだよ」
と、外国から香辛料の買い付けをしているおじさんはぼやいていた。こりゃ益々ヤバイ政策を打ち立てている。
「やっぱりな…」
とリュー君は呟いている。リュー君も何か知っているの?
市場からの帰り道、手を繋いでリュー君と帰りながら果物屋に寄ったら、店は閉まっていた。ドアの前には張り紙が貼ってある。
『移転しました』
引っ越し先はカッシーラ伯領になっていた。これは本格的にドーナツ化現象が始まっている。
家に帰り夕食の準備をして
チキンのクリーム煮と葉野菜のピリ辛サラダ、野菜のポトフを作った。
夕食後
リュー君は黒茶を飲みながら、忙しそうな皆の事情を話してくれた。
「独立?!」
「そう…ベイフィート王国からカッシーラ伯領は独立するんだ。その際にボレンティ公爵領とウラッテロ侯爵領も追随するそうだ。」
リュー君はテーブルの上にこの国の地図を広げた。
「カッシーラ伯領の隣がウラッテロ侯爵領、その隣に隣接しているのがボレンティ公爵領。北側の領土三分の一ほどが、新生カッシーラ国…仮にだけど、になるわけだ」
本当だ。この三つの領土が団結して独立したら…そうなるわ。
「クラシスに在位が変わってから独立しようとしていたのだけれど、二年以上も歳月がかかったのはウラッテロ侯爵を説得するのに時間がかかったということだ。しかもボランティ公爵の娘、マジアリートの姉上がウラッテロ侯爵の長兄に嫁いでいてね。その姉上が独立に猛反対していたらしい。ところが、先日その姉上が何者かに狙われた」
「!」
「犯人は捕まえたよ。この間言ってただろ?プリエレアンナ妃が王族の血族の子種が欲しくて…って、どうやら本格的にその手段に出て来たらしい」
「酷い…」
「流石にご自身も狙われて考え方を変えられたそうだ。産まれたばかりのご子息もいらっしゃる。と言う訳でウラッテロ侯爵一族も独立に追随することになった」
マジアリート様のお姉様怖かったでしょうに…
「ろくでもないね、プリエレアンナ様」
リュー君は眉間に皺を寄せていた。
「プリエレアンナ妃が直接指示を出している訳じゃないさ、プリエレアンナ妃の実家のローエモンタン伯爵家とその一派が暗躍しているんだ。俺とカッシーラ伯が調べた結果だ」
そっか独立か。
「なるほど…そういうことね。じゃあここに洋装店を開店しても商店街が寂れちゃう可能性が高いよね…。うちも引っ越しかな」
「その事なんだけど…もし引っ越すならカッシーラ伯領にしない?」
リュー君はそう言って少し微笑んでいる。でも魔質は…ちょっと落ち込んでいるみたい。
「それって…」
「うん?」
「リュー君はあまり乗り気じゃない?」
「!」
リュー君は息を飲んだ後、苦笑いをした。
「ミランジェには隠せないな…う~ん、乗り気じゃないことはないんだよ?ただ…」
「ただ?」
「色々と逃れたくて、飛び込んだことだけど、結局別の場所で絡めとられて…身動き取れなくなっているのかな…とか。でも唯一の救いは絡み取られた先にミランジェも一緒に居てくれること…かな。ごめんな…巻き込んじゃって」
リュー君の魔質は萎れている…。そうか、サザウンテロス帝国の継承問題のしがらみから逃れたと思ったのに、今度は別の国の継承問題に巻き込まれている。
結局はどこでも後継ぎや王子達で揉めたり…一緒なんだよね。
「このベイフィートの独立問題に俺とミランジェが担ぎ出されるのは…例の小説の主人公達に似ていて、今…庶民のみならず、大陸中の人間が注目しているから…なんだって。あの小説の2人がカッシーラ伯の味方についた…これが独立の旗印になるらしい」
ああ…なるほど。私とリュー君は変な意味で人気者っていうか、時の人だものね。そりゃシンボルマークにされちゃうわな。
「もういいじゃない、諦めましょう…って言い方はしないよ?楽しもうよ!カッシーラ伯領に引っ越しね。あっちでも鞄作って頑張るよ。リュー君も一緒でしょう?全然怖くないし、楽しい事しかないね」
リュー君は目を見開いた後、私を引き寄せた。顔中にリュー君の口づけが降ってくる。
「俺、ミランジェが俺の奥さんで良かった…て心の底から思ってる」
「そう?うん、私もリュー君の奥さんで良かったよ~」
その後2人でソファの上でイチャイチャして、流されるように…
「ホラ~ミランジェ?おいで~!」
「おいでじゃないわよぅ…地蔵っ!」
ポワ~ッとなって私は半分服を脱ぎかけて、正気に戻った。いつの間に一緒に風呂に入る流れになっているんだ!?
「ホラ~早く」
「……」
「ホ~ラ?」
「……」
笑顔の地蔵が怖い。脱衣所で仁王立ちで裸族のまま手招きしてるのも怖いけど、何より魔圧が怖い。これで断ろうものなら後で何をされるか…
「ミランジェ~?」
「は、は~い。いきま~す」
地蔵圧に負けた。大人しく地蔵の足の間に座って湯舟に浸かる。後ろにいる地蔵に凭れるとゴツゴツしていて凭れ心地はあまり良くない。
地蔵が私を後ろから抱え込んでくる。首筋にチュチュッするの、やめいっ。
「明日からサザウンテロスかあ~」
地蔵の呟きに気が付いた。こうやってお風呂に入るのも暫くは無理なのかな?そう言えばクリマリの攻撃ってまだ何か仕掛けてくるのだろうか。
「リュー君」
「ん~?」
「国に帰ってもクリマリは攻撃してくるの?」
背後のリュー君から緊張したような魔力を感じる。
「そうだった…すっかり忘れてた」
「?」
首を捻ってリュー君を顧みると、頭を抱えていた。
「えっとね~城で出される食事はほぼ毒入りだ。食事はミランジェが準備して欲しいな~。それと部屋の中に入る前に魔術系の罠があるから常に気を付けてね。それと、これもミランジェに頼んでおくね。城に滞在している間は部屋には魔物理防御障壁を常に張り続けていて欲しい、一番強固な防御で」
一気にリュー君に言われて唖然となる。
食事が毒入り?魔術系の罠?常に障壁を?
「それって…サザウンテロス帝国に帰っても…ずっと怖い思いをしていたってこと?」
「ご、ごめんねミランジェ怖い思いをさせるけど…」
「違うよ、そうじゃないよ。今までもリュー君が安心して食事も出来ず…自分の部屋に居る時でさえ緊張していたってことなの?」
私がリュー君の言葉を遮ってそう叫ぶとリュー君は困ったように頷いた。
「うん、まあ…でも父上が間に入ってはくれていたんだけど、父上が諭すとまた嫌がらせが加速するんだよな。母上が兄上達を怒ると母上にも暴言吐くしさ。クリヒリエンス兄上とマリエンスの言い分はこうだ。『リュージエンスばかり贔屓にするな』だって。だから父上や母上が間に入れば入るほど拗れてさ…。父上達には見て見ぬふりしておいてくれって言ってるんだ。両親は影から支援はしてくれているんだけどね~」
そうなのか…国王陛下と国王妃のご理解があるならまだ救いはあるわね。
「リュー君本当に大変だったのね…もうそんな心配はいらないからね?私が防御を完璧にしてあげるし、毒も無効化出来るから安心して休んでね?」
リュー君は嬉しそうにしながら私に抱き付いてきた。
うん。うん…あれ?
リュー君の手がどんどん嫌な手つきになってきた。し、しまった!全裸で風呂場だった!
…
……
………
「明日はサザウンテロス帝国だっ!もういい加減にしろっ!」
私がそう怒鳴りながらベットに潜り込み、タオルケットを頭から被ろうとするとリュー君が私の顔を覗き込んできた。
「後一回だけお願いします」
「…」
…
……
翌朝、完璧に寝不足だった。朝一にダンカレとデジバラがやって来た少し前に眠りについた所だった。
「ミランジェ機嫌悪いね…」
「疲れてる?」
おうっおうっ!疲れもするわ!
疲れた私とは違い、ご機嫌で朝食を食べているエロ地蔵。本当…地蔵って悟り開いてたんじゃなかったの?涼しい顔して煩悩をひた隠しにしていたのか?
私は野菜のスムージをジョッキでゴクゴクと飲んでいた。
「フィーッ…」
「すげぇ、野菜の飲み物なのに、酒を煽っているみたいだ」
ダンカレをジロリと睨んでやる。マフィンを朝から何個食べているんだっいい加減にしろ!こっちは今から義実家に行くから気を引き締めているっていうのに。ダンカレを睨んだついでにリュー君も睨んでやる。
今からあんたの実家に乗り込んでやるっていうのに、旦那のあんたが足を引っ張ってどうするんだよっ。私の体力の事も少しは考えろっ!
7
あなたにおすすめの小説
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました
志熊みゅう
恋愛
十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。
卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。
マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。
その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。
――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。
彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。
断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。
第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。
「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。
「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。
だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。
全43話+番外編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる