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夫と妻
カッシーラ伯の決断
「地蔵っ…女性もいるのよ!エロイ発言は禁止ぃぃ!」
手加減しないでリュー君の脇腹に拳を入れたつもりなのに、リュー君はニヨニヨした笑顔のままだ。
「はいは~い」
っち…浮かれ地蔵め。
視線を感じてリュー君の肩越しに向こうを見ると、ナフィ姉様とガンバレス大尉からもニヨニヨした笑顔を向けられていた。
恥ずかしいっ! もう一度、拳を地蔵の脇腹に叩きこんでおく。
暫くするとカッシーラ伯達は帰って来られた。
伯達の魔質が暗い…。カッシーラ伯は暗い表情のままリュー君の前に立たれた。
「殿下…やはり決断せねばならないようです」
「そうですか…。ご助力は惜しみませんよ」
何?何なの?
私が怪訝そうな顔をするとリュー君は、後で…と言って微笑んでくれた。
何だろうか…
やっぱり、クラシスは王宮の浄化は拒否したらしい。
私達はその日はミランジェ洋装店(仮)に帰った。デジバラとダンカレは宿屋の方へ帰った。家に予備の寝台もないし、何かサザウンテクロス軍部での会議のようなものがあるらしい。
何だか皆コソコソしている気がするなぁ。
家に戻る前に、リュー君と一緒に食材を買いに市場に出かけた。
「あ…葉野菜の値段が上がってる」
いつも行く市場の野菜屋のお兄さんは私がそう呟くと、ごめんね~と謝罪しながら苦笑いをした。
「先月からさ、色々と税金が上がってね。うちだけじゃないよ?全部の税金が軒並み上がったんだ。もしかするとまた上がる…とか噂もあったし、あんまり税が上がるようなら…うちもボレンティ公爵領かカッシーラ伯領に引っ越そうかな~とか言っててね」
というお兄さんの言葉に、そう言えば…と商店が並ぶ道沿いを見てみる。閉まっているお店が増えてる?
これ、あれだ…クラシスの馬鹿が税金上げろ…とか言ったのを本当に法案通しちゃって、消費税?みたいなの徴収しちゃったんだ…。こんなことしたら都会じゃ暮らしにくいって皆、地方に逃げちゃうよ?ドーナツ化現象まっしぐらになるよ。馬鹿だな、クラシス。
その後、肉屋と卵屋と香辛料屋にも寄ったんだけど、どの店も値上がりしていて、おまけに品物が欠品している店もあった。
「他国から輸入してくる商品にかけてる関税も上がってるんだよ」
と、外国から香辛料の買い付けをしているおじさんはぼやいていた。こりゃ益々ヤバイ政策を打ち立てている。
「やっぱりな…」
とリュー君は呟いている。リュー君も何か知っているの?
市場からの帰り道、手を繋いでリュー君と帰りながら果物屋に寄ったら、店は閉まっていた。ドアの前には張り紙が貼ってある。
『移転しました』
引っ越し先はカッシーラ伯領になっていた。これは本格的にドーナツ化現象が始まっている。
家に帰り夕食の準備をして
チキンのクリーム煮と葉野菜のピリ辛サラダ、野菜のポトフを作った。
夕食後
リュー君は黒茶を飲みながら、忙しそうな皆の事情を話してくれた。
「独立?!」
「そう…ベイフィート王国からカッシーラ伯領は独立するんだ。その際にボレンティ公爵領とウラッテロ侯爵領も追随するそうだ。」
リュー君はテーブルの上にこの国の地図を広げた。
「カッシーラ伯領の隣がウラッテロ侯爵領、その隣に隣接しているのがボレンティ公爵領。北側の領土三分の一ほどが、新生カッシーラ国…仮にだけど、になるわけだ」
本当だ。この三つの領土が団結して独立したら…そうなるわ。
「クラシスに在位が変わってから独立しようとしていたのだけれど、二年以上も歳月がかかったのはウラッテロ侯爵を説得するのに時間がかかったということだ。しかもボランティ公爵の娘、マジアリートの姉上がウラッテロ侯爵の長兄に嫁いでいてね。その姉上が独立に猛反対していたらしい。ところが、先日その姉上が何者かに狙われた」
「!」
「犯人は捕まえたよ。この間言ってただろ?プリエレアンナ妃が王族の血族の子種が欲しくて…って、どうやら本格的にその手段に出て来たらしい」
「酷い…」
「流石にご自身も狙われて考え方を変えられたそうだ。産まれたばかりのご子息もいらっしゃる。と言う訳でウラッテロ侯爵一族も独立に追随することになった」
マジアリート様のお姉様怖かったでしょうに…
「ろくでもないね、プリエレアンナ様」
リュー君は眉間に皺を寄せていた。
「プリエレアンナ妃が直接指示を出している訳じゃないさ、プリエレアンナ妃の実家のローエモンタン伯爵家とその一派が暗躍しているんだ。俺とカッシーラ伯が調べた結果だ」
そっか独立か。
「なるほど…そういうことね。じゃあここに洋装店を開店しても商店街が寂れちゃう可能性が高いよね…。うちも引っ越しかな」
「その事なんだけど…もし引っ越すならカッシーラ伯領にしない?」
リュー君はそう言って少し微笑んでいる。でも魔質は…ちょっと落ち込んでいるみたい。
「それって…」
「うん?」
「リュー君はあまり乗り気じゃない?」
「!」
リュー君は息を飲んだ後、苦笑いをした。
「ミランジェには隠せないな…う~ん、乗り気じゃないことはないんだよ?ただ…」
「ただ?」
「色々と逃れたくて、飛び込んだことだけど、結局別の場所で絡めとられて…身動き取れなくなっているのかな…とか。でも唯一の救いは絡み取られた先にミランジェも一緒に居てくれること…かな。ごめんな…巻き込んじゃって」
リュー君の魔質は萎れている…。そうか、サザウンテロス帝国の継承問題のしがらみから逃れたと思ったのに、今度は別の国の継承問題に巻き込まれている。
結局はどこでも後継ぎや王子達で揉めたり…一緒なんだよね。
「このベイフィートの独立問題に俺とミランジェが担ぎ出されるのは…例の小説の主人公達に似ていて、今…庶民のみならず、大陸中の人間が注目しているから…なんだって。あの小説の2人がカッシーラ伯の味方についた…これが独立の旗印になるらしい」
ああ…なるほど。私とリュー君は変な意味で人気者っていうか、時の人だものね。そりゃシンボルマークにされちゃうわな。
「もういいじゃない、諦めましょう…って言い方はしないよ?楽しもうよ!カッシーラ伯領に引っ越しね。あっちでも鞄作って頑張るよ。リュー君も一緒でしょう?全然怖くないし、楽しい事しかないね」
リュー君は目を見開いた後、私を引き寄せた。顔中にリュー君の口づけが降ってくる。
「俺、ミランジェが俺の奥さんで良かった…て心の底から思ってる」
「そう?うん、私もリュー君の奥さんで良かったよ~」
その後2人でソファの上でイチャイチャして、流されるように…
「ホラ~ミランジェ?おいで~!」
「おいでじゃないわよぅ…地蔵っ!」
ポワ~ッとなって私は半分服を脱ぎかけて、正気に戻った。いつの間に一緒に風呂に入る流れになっているんだ!?
「ホラ~早く」
「……」
「ホ~ラ?」
「……」
笑顔の地蔵が怖い。脱衣所で仁王立ちで裸族のまま手招きしてるのも怖いけど、何より魔圧が怖い。これで断ろうものなら後で何をされるか…
「ミランジェ~?」
「は、は~い。いきま~す」
地蔵圧に負けた。大人しく地蔵の足の間に座って湯舟に浸かる。後ろにいる地蔵に凭れるとゴツゴツしていて凭れ心地はあまり良くない。
地蔵が私を後ろから抱え込んでくる。首筋にチュチュッするの、やめいっ。
「明日からサザウンテロスかあ~」
地蔵の呟きに気が付いた。こうやってお風呂に入るのも暫くは無理なのかな?そう言えばクリマリの攻撃ってまだ何か仕掛けてくるのだろうか。
「リュー君」
「ん~?」
「国に帰ってもクリマリは攻撃してくるの?」
背後のリュー君から緊張したような魔力を感じる。
「そうだった…すっかり忘れてた」
「?」
首を捻ってリュー君を顧みると、頭を抱えていた。
「えっとね~城で出される食事はほぼ毒入りだ。食事はミランジェが準備して欲しいな~。それと部屋の中に入る前に魔術系の罠があるから常に気を付けてね。それと、これもミランジェに頼んでおくね。城に滞在している間は部屋には魔物理防御障壁を常に張り続けていて欲しい、一番強固な防御で」
一気にリュー君に言われて唖然となる。
食事が毒入り?魔術系の罠?常に障壁を?
「それって…サザウンテロス帝国に帰っても…ずっと怖い思いをしていたってこと?」
「ご、ごめんねミランジェ怖い思いをさせるけど…」
「違うよ、そうじゃないよ。今までもリュー君が安心して食事も出来ず…自分の部屋に居る時でさえ緊張していたってことなの?」
私がリュー君の言葉を遮ってそう叫ぶとリュー君は困ったように頷いた。
「うん、まあ…でも父上が間に入ってはくれていたんだけど、父上が諭すとまた嫌がらせが加速するんだよな。母上が兄上達を怒ると母上にも暴言吐くしさ。クリヒリエンス兄上とマリエンスの言い分はこうだ。『リュージエンスばかり贔屓にするな』だって。だから父上や母上が間に入れば入るほど拗れてさ…。父上達には見て見ぬふりしておいてくれって言ってるんだ。両親は影から支援はしてくれているんだけどね~」
そうなのか…国王陛下と国王妃のご理解があるならまだ救いはあるわね。
「リュー君本当に大変だったのね…もうそんな心配はいらないからね?私が防御を完璧にしてあげるし、毒も無効化出来るから安心して休んでね?」
リュー君は嬉しそうにしながら私に抱き付いてきた。
うん。うん…あれ?
リュー君の手がどんどん嫌な手つきになってきた。し、しまった!全裸で風呂場だった!
…
……
………
「明日はサザウンテロス帝国だっ!もういい加減にしろっ!」
私がそう怒鳴りながらベットに潜り込み、タオルケットを頭から被ろうとするとリュー君が私の顔を覗き込んできた。
「後一回だけお願いします」
「…」
…
……
翌朝、完璧に寝不足だった。朝一にダンカレとデジバラがやって来た少し前に眠りについた所だった。
「ミランジェ機嫌悪いね…」
「疲れてる?」
おうっおうっ!疲れもするわ!
疲れた私とは違い、ご機嫌で朝食を食べているエロ地蔵。本当…地蔵って悟り開いてたんじゃなかったの?涼しい顔して煩悩をひた隠しにしていたのか?
私は野菜のスムージをジョッキでゴクゴクと飲んでいた。
「フィーッ…」
「すげぇ、野菜の飲み物なのに、酒を煽っているみたいだ」
ダンカレをジロリと睨んでやる。マフィンを朝から何個食べているんだっいい加減にしろ!こっちは今から義実家に行くから気を引き締めているっていうのに。ダンカレを睨んだついでにリュー君も睨んでやる。
今からあんたの実家に乗り込んでやるっていうのに、旦那のあんたが足を引っ張ってどうするんだよっ。私の体力の事も少しは考えろっ!
手加減しないでリュー君の脇腹に拳を入れたつもりなのに、リュー君はニヨニヨした笑顔のままだ。
「はいは~い」
っち…浮かれ地蔵め。
視線を感じてリュー君の肩越しに向こうを見ると、ナフィ姉様とガンバレス大尉からもニヨニヨした笑顔を向けられていた。
恥ずかしいっ! もう一度、拳を地蔵の脇腹に叩きこんでおく。
暫くするとカッシーラ伯達は帰って来られた。
伯達の魔質が暗い…。カッシーラ伯は暗い表情のままリュー君の前に立たれた。
「殿下…やはり決断せねばならないようです」
「そうですか…。ご助力は惜しみませんよ」
何?何なの?
私が怪訝そうな顔をするとリュー君は、後で…と言って微笑んでくれた。
何だろうか…
やっぱり、クラシスは王宮の浄化は拒否したらしい。
私達はその日はミランジェ洋装店(仮)に帰った。デジバラとダンカレは宿屋の方へ帰った。家に予備の寝台もないし、何かサザウンテクロス軍部での会議のようなものがあるらしい。
何だか皆コソコソしている気がするなぁ。
家に戻る前に、リュー君と一緒に食材を買いに市場に出かけた。
「あ…葉野菜の値段が上がってる」
いつも行く市場の野菜屋のお兄さんは私がそう呟くと、ごめんね~と謝罪しながら苦笑いをした。
「先月からさ、色々と税金が上がってね。うちだけじゃないよ?全部の税金が軒並み上がったんだ。もしかするとまた上がる…とか噂もあったし、あんまり税が上がるようなら…うちもボレンティ公爵領かカッシーラ伯領に引っ越そうかな~とか言っててね」
というお兄さんの言葉に、そう言えば…と商店が並ぶ道沿いを見てみる。閉まっているお店が増えてる?
これ、あれだ…クラシスの馬鹿が税金上げろ…とか言ったのを本当に法案通しちゃって、消費税?みたいなの徴収しちゃったんだ…。こんなことしたら都会じゃ暮らしにくいって皆、地方に逃げちゃうよ?ドーナツ化現象まっしぐらになるよ。馬鹿だな、クラシス。
その後、肉屋と卵屋と香辛料屋にも寄ったんだけど、どの店も値上がりしていて、おまけに品物が欠品している店もあった。
「他国から輸入してくる商品にかけてる関税も上がってるんだよ」
と、外国から香辛料の買い付けをしているおじさんはぼやいていた。こりゃ益々ヤバイ政策を打ち立てている。
「やっぱりな…」
とリュー君は呟いている。リュー君も何か知っているの?
市場からの帰り道、手を繋いでリュー君と帰りながら果物屋に寄ったら、店は閉まっていた。ドアの前には張り紙が貼ってある。
『移転しました』
引っ越し先はカッシーラ伯領になっていた。これは本格的にドーナツ化現象が始まっている。
家に帰り夕食の準備をして
チキンのクリーム煮と葉野菜のピリ辛サラダ、野菜のポトフを作った。
夕食後
リュー君は黒茶を飲みながら、忙しそうな皆の事情を話してくれた。
「独立?!」
「そう…ベイフィート王国からカッシーラ伯領は独立するんだ。その際にボレンティ公爵領とウラッテロ侯爵領も追随するそうだ。」
リュー君はテーブルの上にこの国の地図を広げた。
「カッシーラ伯領の隣がウラッテロ侯爵領、その隣に隣接しているのがボレンティ公爵領。北側の領土三分の一ほどが、新生カッシーラ国…仮にだけど、になるわけだ」
本当だ。この三つの領土が団結して独立したら…そうなるわ。
「クラシスに在位が変わってから独立しようとしていたのだけれど、二年以上も歳月がかかったのはウラッテロ侯爵を説得するのに時間がかかったということだ。しかもボランティ公爵の娘、マジアリートの姉上がウラッテロ侯爵の長兄に嫁いでいてね。その姉上が独立に猛反対していたらしい。ところが、先日その姉上が何者かに狙われた」
「!」
「犯人は捕まえたよ。この間言ってただろ?プリエレアンナ妃が王族の血族の子種が欲しくて…って、どうやら本格的にその手段に出て来たらしい」
「酷い…」
「流石にご自身も狙われて考え方を変えられたそうだ。産まれたばかりのご子息もいらっしゃる。と言う訳でウラッテロ侯爵一族も独立に追随することになった」
マジアリート様のお姉様怖かったでしょうに…
「ろくでもないね、プリエレアンナ様」
リュー君は眉間に皺を寄せていた。
「プリエレアンナ妃が直接指示を出している訳じゃないさ、プリエレアンナ妃の実家のローエモンタン伯爵家とその一派が暗躍しているんだ。俺とカッシーラ伯が調べた結果だ」
そっか独立か。
「なるほど…そういうことね。じゃあここに洋装店を開店しても商店街が寂れちゃう可能性が高いよね…。うちも引っ越しかな」
「その事なんだけど…もし引っ越すならカッシーラ伯領にしない?」
リュー君はそう言って少し微笑んでいる。でも魔質は…ちょっと落ち込んでいるみたい。
「それって…」
「うん?」
「リュー君はあまり乗り気じゃない?」
「!」
リュー君は息を飲んだ後、苦笑いをした。
「ミランジェには隠せないな…う~ん、乗り気じゃないことはないんだよ?ただ…」
「ただ?」
「色々と逃れたくて、飛び込んだことだけど、結局別の場所で絡めとられて…身動き取れなくなっているのかな…とか。でも唯一の救いは絡み取られた先にミランジェも一緒に居てくれること…かな。ごめんな…巻き込んじゃって」
リュー君の魔質は萎れている…。そうか、サザウンテロス帝国の継承問題のしがらみから逃れたと思ったのに、今度は別の国の継承問題に巻き込まれている。
結局はどこでも後継ぎや王子達で揉めたり…一緒なんだよね。
「このベイフィートの独立問題に俺とミランジェが担ぎ出されるのは…例の小説の主人公達に似ていて、今…庶民のみならず、大陸中の人間が注目しているから…なんだって。あの小説の2人がカッシーラ伯の味方についた…これが独立の旗印になるらしい」
ああ…なるほど。私とリュー君は変な意味で人気者っていうか、時の人だものね。そりゃシンボルマークにされちゃうわな。
「もういいじゃない、諦めましょう…って言い方はしないよ?楽しもうよ!カッシーラ伯領に引っ越しね。あっちでも鞄作って頑張るよ。リュー君も一緒でしょう?全然怖くないし、楽しい事しかないね」
リュー君は目を見開いた後、私を引き寄せた。顔中にリュー君の口づけが降ってくる。
「俺、ミランジェが俺の奥さんで良かった…て心の底から思ってる」
「そう?うん、私もリュー君の奥さんで良かったよ~」
その後2人でソファの上でイチャイチャして、流されるように…
「ホラ~ミランジェ?おいで~!」
「おいでじゃないわよぅ…地蔵っ!」
ポワ~ッとなって私は半分服を脱ぎかけて、正気に戻った。いつの間に一緒に風呂に入る流れになっているんだ!?
「ホラ~早く」
「……」
「ホ~ラ?」
「……」
笑顔の地蔵が怖い。脱衣所で仁王立ちで裸族のまま手招きしてるのも怖いけど、何より魔圧が怖い。これで断ろうものなら後で何をされるか…
「ミランジェ~?」
「は、は~い。いきま~す」
地蔵圧に負けた。大人しく地蔵の足の間に座って湯舟に浸かる。後ろにいる地蔵に凭れるとゴツゴツしていて凭れ心地はあまり良くない。
地蔵が私を後ろから抱え込んでくる。首筋にチュチュッするの、やめいっ。
「明日からサザウンテロスかあ~」
地蔵の呟きに気が付いた。こうやってお風呂に入るのも暫くは無理なのかな?そう言えばクリマリの攻撃ってまだ何か仕掛けてくるのだろうか。
「リュー君」
「ん~?」
「国に帰ってもクリマリは攻撃してくるの?」
背後のリュー君から緊張したような魔力を感じる。
「そうだった…すっかり忘れてた」
「?」
首を捻ってリュー君を顧みると、頭を抱えていた。
「えっとね~城で出される食事はほぼ毒入りだ。食事はミランジェが準備して欲しいな~。それと部屋の中に入る前に魔術系の罠があるから常に気を付けてね。それと、これもミランジェに頼んでおくね。城に滞在している間は部屋には魔物理防御障壁を常に張り続けていて欲しい、一番強固な防御で」
一気にリュー君に言われて唖然となる。
食事が毒入り?魔術系の罠?常に障壁を?
「それって…サザウンテロス帝国に帰っても…ずっと怖い思いをしていたってこと?」
「ご、ごめんねミランジェ怖い思いをさせるけど…」
「違うよ、そうじゃないよ。今までもリュー君が安心して食事も出来ず…自分の部屋に居る時でさえ緊張していたってことなの?」
私がリュー君の言葉を遮ってそう叫ぶとリュー君は困ったように頷いた。
「うん、まあ…でも父上が間に入ってはくれていたんだけど、父上が諭すとまた嫌がらせが加速するんだよな。母上が兄上達を怒ると母上にも暴言吐くしさ。クリヒリエンス兄上とマリエンスの言い分はこうだ。『リュージエンスばかり贔屓にするな』だって。だから父上や母上が間に入れば入るほど拗れてさ…。父上達には見て見ぬふりしておいてくれって言ってるんだ。両親は影から支援はしてくれているんだけどね~」
そうなのか…国王陛下と国王妃のご理解があるならまだ救いはあるわね。
「リュー君本当に大変だったのね…もうそんな心配はいらないからね?私が防御を完璧にしてあげるし、毒も無効化出来るから安心して休んでね?」
リュー君は嬉しそうにしながら私に抱き付いてきた。
うん。うん…あれ?
リュー君の手がどんどん嫌な手つきになってきた。し、しまった!全裸で風呂場だった!
…
……
………
「明日はサザウンテロス帝国だっ!もういい加減にしろっ!」
私がそう怒鳴りながらベットに潜り込み、タオルケットを頭から被ろうとするとリュー君が私の顔を覗き込んできた。
「後一回だけお願いします」
「…」
…
……
翌朝、完璧に寝不足だった。朝一にダンカレとデジバラがやって来た少し前に眠りについた所だった。
「ミランジェ機嫌悪いね…」
「疲れてる?」
おうっおうっ!疲れもするわ!
疲れた私とは違い、ご機嫌で朝食を食べているエロ地蔵。本当…地蔵って悟り開いてたんじゃなかったの?涼しい顔して煩悩をひた隠しにしていたのか?
私は野菜のスムージをジョッキでゴクゴクと飲んでいた。
「フィーッ…」
「すげぇ、野菜の飲み物なのに、酒を煽っているみたいだ」
ダンカレをジロリと睨んでやる。マフィンを朝から何個食べているんだっいい加減にしろ!こっちは今から義実家に行くから気を引き締めているっていうのに。ダンカレを睨んだついでにリュー君も睨んでやる。
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