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兄と弟
大人の気持ち、子供の気持ち
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サザウンテロス帝国、国王陛下は人払いをして部屋に魔物理防御と消音魔法を使った。
聞かれたくないお話ですね。私は居住まいを正した。
「先ずは…リュージエンスと婚姻をしてくれてありがとう。本当に助かっている」
私は微笑みながら首を横に振った。
「いえ、私こそリュージエンス殿下に助けて頂いたのです。あのまま離縁されて1人で居たら…とても卑屈で良くない思いに囚われて、今でも世を恨み人をも恨み続けていたと思います。リュージエンス殿下とお引き合わせ頂いたこと感謝致します」
国王陛下は優しく微笑んで頷きながらリュー君を見た。
「お前、ミランジェ姫にご迷惑かけてないだろうな~?」
リュー君は、え~?と言いながら私を見た。
「どう?」
「良い旦那様でしょう?」
と私が返すとリュー君は嬉しそうに笑い返してきた。
「良かった…」
とジャニファーお義母様が私とリュー君を見て微笑まれた。
今、聞いてみようかな…?まずは当たり障りのない話題から…。
「リュージエンス殿下は気遣いも素晴らしい方ですね~市井で一緒にお買い物にも付き合って下さるし」
私がリュー君を褒めちぎると国王陛下と国王妃もパアッと笑顔になった。
「そうなのよね~リュージは…」
「うんうん~」
お二人はとても楽しそうにリュー君の昔話をしている。
そうか…3人兄弟の真ん中のリュー君が一番国王陛下に似ている。顔も性格も…恐らくご両親が望む次期国王としての資質も…
ああ、何となくこの政略婚姻の裏側も見えてきた。私との婚姻は後ろ盾を得ることもあるけれど、行く行くはリュー君を次期国王に推す為に必要な婚姻だったんだ。
そして、リュー君はそのことに気付いている。リュー君は私と会って見極めようとしたのだろうか。ミランジェは国王陛下になる自分について来てくれるのか…それとも、リュージエンスという男について来てくれるのか…
もしかしたらリュー君は、国王陛下のリュージエンス殿下について行くと言ってしまう王女殿下なら、切り捨てていたのかもしれない。
そうか…。私は足枷になるものね。でも、リュー君は気が付いたよね?
私ならどんな逆境でも踏ん張る雑草女だって…。リュー君を見ると、ん?みたいな顔で私を見ている。
よーし、こうなったらおばちゃんの本領発揮だ。厚かましくガンガン行ってやるよっ!
「でも…クリヒリエンス王太子殿下もマリエンス殿下も…お義母様にお顔立ちが似てますね」
私が会話が途切れた頃にそう話しかけると、国王妃は目を丸くした。
「そ…そうね。私に似ているかしらね」
「マリエンス殿下を見ていると、昔のリュージエンス殿下を思い出します。リュー君も昔はぽっちゃ…」
「言うなっ」
リュー君が素早く遮ってきた。
「また怒って~?でも、リュー君は体を鍛えて痩せたんでしょう?マリエンス殿下って痩せたらリュー君に似てるんじゃないかと思うんだけどな~クリヒリエンス王太子殿下も運動しないんじゃない?少し鍛えればあんなロン…細身じゃなくてもう少し肉付きのよいお体になると思うけど…」
私がそう言うと国王陛下は苦笑いをした。
「体を鍛えろ…と諭しても反発してね~」
ふむふむ…
「つい、リュージを見ろ!軍で鍛えたおかげでしっかりした体つきになっただろう…とか言ってしまったら益々反発されてね」
リュー君とクリマリを比べちゃった訳だね。出来れば兄弟の優劣をつけて欲しくないところだけど…
仕方ないよね~気持ちはすごく分かる。私は子供の言い分も大人の言い分もどちらも分かっているつもりだ。
親だって、親の前に一人の人間だ。怒っても諭しても言う事を聞いてくれない捻くれた子供より、素直で従順な子供を贔屓してしまう。
人間だもの、親子だからと言ってもどうしても性格や価値観の合わない親子もいる。子供だって千差万別。親だって千差万別だ。
でもせめてクリマリとも歩み寄りをみせて欲しいよね。
「分かりましたわ。それならば、クリヒリエンス王太子殿下とマリエンス殿下のお2人を鍛錬にお誘いしますわ」
「何だってぇ!?」
こんな時にも気の合うリュー君と国王陛下はほぼ同時にそう叫んでいた。
私は颯爽と立ち上がるとまずはクリヒリエンス王太子殿下の部屋を訪ねた。この王宮のどこに隠れていたってズバッと私にはお見通しだぁ!
ふふん、生意気にも部屋に消音魔法と魔物理防御障壁を張っているな~?こんな、へなちょこ魔法は私にかかれば…
「クリヒリエンス王太子殿下、失礼致します。ミランジェ妃殿下がお越しでございます」
ドア前に立っていたメイドに呼びかけをさせた後、有無を言わさずに扉を開けた。
「なっ!?」
室内にはクリヒリエンス王太子殿下の他に貴族や役人と思われる数人の男性がいた。
おやおや、おじさん達と秘密の相談ですかな~?今度は落とし穴でも掘ってリュー君を落としてやろうぜっヌハハ!とか笑っていたのかな?
「クリヒリエンス王太子殿下、ご歓談中失礼致しますわ、明日の朝8時に軍の鍛錬場にお越し下さいませ。走り込みを致しますわよ」
クリはキョトンとして私を見ている。あらやだよ、そのキョトンとした顔、リュー君に似ているじゃないか。
私はそれだけ言って部屋を退出しかけて一度振り向くと
「まさか王太子殿下ともあろう方が逃げたりはしませんよね?」
と、存分に煽ってから廊下に出た。
廊下には私の後について来ていたリュー親子、3人がポカンとした顔で立ち尽くしていた。
私は直ぐにマリエンス王子殿下の所へ移動した。この王宮のどこにぃ!…以下同文につき省略。
部屋の前に立つとメイドに取り次ぎを頼むとメイドは私を睨みつけた。お前メイドだろ~ぅ?
「今、マリエンス殿下はお忙しいのです、お引き取り下さいませ!」
不敬なうえに頑張るな~。私は体に黒い魔力を漂わせたメイドに向かって扇子を押し当てた。一気に浄化魔法を流し込む。
「!」
メイドは驚いたような顔をした。恐らくだが魔力の濁りのせいで、睡眠不足、イライラ、眩暈や頭痛などもあったに違いない。不快感が消えて視界が明瞭になったと思われる。
私はメイドに頷いてみせた。メイドは聡い子のようで、すぐに室内に案内してくれた。
これはこれは…
マリエンス殿下もおじ様達に囲まれて密談中のようだ。
「ご歓談中失礼致します。マリエンス殿下、明日の朝8時に軍の鍛錬場にお越し下さいませ。走り込みを致しますわよ。」
マリエンス殿下は座っているソファから立ち上がって少しよろめいている。
体幹が弱いと見た!体が丸っこいせいもあるけれど…
「どっ…どうして僕が…」
「あ~らクリヒリエンス王太子殿下もご参加されるようですよぉ~?もし参加されないのでしたら、私より運動が苦手ということですよね。ああ、お気の毒~走れない〇〇はただの〇〇だ」
「何だって?」
「いえ、何でも~?では失礼~」
ニヤニヤしながらバランスボールを煽ってやった。これでマリエンス殿下も参加するでしょう。
そして廊下に戻るとリュー君と義両親はまだ呆けていた。
「本当に走り込みをするの?」
私はそう聞いてきたリュー君をビシッと扇子で指し示した。
「そうよっ以前よりは私も基礎体力がついてきたし、あの板と球体には負けないわよ!あら王子殿下に対して不敬でしたわね、失礼」
扇子を広げてほくそ笑んでみせると、リュー君は爆笑した。リュー父母はオロオロしている。
リュー君は私が子供の頃に見たクリヒリエンス王太子殿下の印象を『長くて厚みの無い板』と称したことをヒィヒィ笑いながらご両親に説明した。
「おまけに、何ぃ?マリエンスは球体なの?」
「以前のリュー君も中々のぽっちゃり王子だったけどマリ君はさらに丸いわね」
「マリ君…!」
私が何か言うたびに笑い始めるリュー君、何かのツボにはまっているね。
そして国王陛下夫妻もようやく事態を飲み込み始めたようで、急に私の心配をし始めた。
「明日、あの子達は鍛錬場には来ないかもしれないぞ?」
「もし来たとしても、ミランジェちゃんに何か言いがかりをつけてこないかしら…」
と、言っているご両親にリュー君は笑顔でこう言っていた。
「俺も一緒だし、大丈夫だよ~もし来ない時はミランジェだけ鍛えておけばいいからね!」
おふぅ…それはそれでリュー君のしごきが私だけに向かう危険性が出てきたね。
絶対来いやっ!クリマリ!
…という私の呪い?が効いたのか、翌日朝8時…
クリヒリエンス王太子殿下とマリエンス殿下は時間通りに鍛錬場に現れた。後ろにお付の方々をゾロゾロ連れているけれど…。そんなに見守る人いる?でもさ見守る人が多いほど赤っ恥の被害が増えるだけだよ?
私の側には朝も早くから心配された国王陛下夫妻とリュー君もいる。…まあいいか、恥をかくのは私ではないし。
私は悪役令嬢のように腰に手を当てると、クリマリを見ながらオーホホホッ!と高笑いをしてあげた。
「遅刻しないでお越し頂けたようで良かったですわ~!では、まずはこの鍛錬場の中を5周走りましょうか?」
いきなり長距離を言い過ぎたか?自分でもお調子に乗り過ぎた!と発言してから気が付いた。
「ミランジェ…」
ちょっと咎めるようなリュー君の声に背中に冷や汗が伝うけれど、オーーーホホッホホ!と更に笑って誤魔化した。
「さあ、参りましょうか?」
私は颯爽と走り出した。私の場合、走る…といっても少し早歩き程度ではある。暫く軽快に早歩きをしていて、何だかおかしい?と後ろを振り向いた。
予想以上に…ロングボードとバランスボールは…虚弱だった…
アレ…歩いてるのか?静止しているようにも見えるが…。私も思わず立ち止まってクリマリを見ていたけど、私よりリュー君と国王陛下夫妻の方が驚いているようだ。
「ひぃ…ぜい…」
「ぐぅ…がっ…」
バランスボールの方が転んだ!ボヨヨン…と自身のお腹の弾力で転んだ直撃を免れているようだ。流石球体!
しかし遅い…思ったより走る?速度が遅い。こんなに基礎体力が無いなんて想像以上だ。
何とかヨロヨロしながら私に追いついてきたクリマリに私は一喝した。
「クリ様っマリ君っ!お2人共、女の私に負けて悔しくないのですか!?」
クリマリはゼーゼー言いながら、膝に手をついて私を見上げている。
「クリ様はご存じですか?王太子殿下とは本来は外交や視察、各領地の役人と現地調査…体を動かし動き回る公務も多いのですよ?馬車移動も多いですし、時には外交先で夜遅くまで晩餐や夜会に付き合わされた翌日、早朝から地方視察などもあるのです。自堕落なんて以ての外、早寝早起きが基本です」
私はクリ様を見下ろした。そうだ、もとの資質はリュー君と同じなはずだ。絶対にやればできる子なのだ。魔力も相当強い。
「クリ様は王太子殿下として何か努力をされていますか?そして王族として国民に愛される王子として努力されていますか?」
クリヒリエンス王太子殿下は息を整えると、背を伸ばして私を見下ろした。
「私は王太子殿下だっ、国民が私を敬うのは当然の義務だ!」
聞かれたくないお話ですね。私は居住まいを正した。
「先ずは…リュージエンスと婚姻をしてくれてありがとう。本当に助かっている」
私は微笑みながら首を横に振った。
「いえ、私こそリュージエンス殿下に助けて頂いたのです。あのまま離縁されて1人で居たら…とても卑屈で良くない思いに囚われて、今でも世を恨み人をも恨み続けていたと思います。リュージエンス殿下とお引き合わせ頂いたこと感謝致します」
国王陛下は優しく微笑んで頷きながらリュー君を見た。
「お前、ミランジェ姫にご迷惑かけてないだろうな~?」
リュー君は、え~?と言いながら私を見た。
「どう?」
「良い旦那様でしょう?」
と私が返すとリュー君は嬉しそうに笑い返してきた。
「良かった…」
とジャニファーお義母様が私とリュー君を見て微笑まれた。
今、聞いてみようかな…?まずは当たり障りのない話題から…。
「リュージエンス殿下は気遣いも素晴らしい方ですね~市井で一緒にお買い物にも付き合って下さるし」
私がリュー君を褒めちぎると国王陛下と国王妃もパアッと笑顔になった。
「そうなのよね~リュージは…」
「うんうん~」
お二人はとても楽しそうにリュー君の昔話をしている。
そうか…3人兄弟の真ん中のリュー君が一番国王陛下に似ている。顔も性格も…恐らくご両親が望む次期国王としての資質も…
ああ、何となくこの政略婚姻の裏側も見えてきた。私との婚姻は後ろ盾を得ることもあるけれど、行く行くはリュー君を次期国王に推す為に必要な婚姻だったんだ。
そして、リュー君はそのことに気付いている。リュー君は私と会って見極めようとしたのだろうか。ミランジェは国王陛下になる自分について来てくれるのか…それとも、リュージエンスという男について来てくれるのか…
もしかしたらリュー君は、国王陛下のリュージエンス殿下について行くと言ってしまう王女殿下なら、切り捨てていたのかもしれない。
そうか…。私は足枷になるものね。でも、リュー君は気が付いたよね?
私ならどんな逆境でも踏ん張る雑草女だって…。リュー君を見ると、ん?みたいな顔で私を見ている。
よーし、こうなったらおばちゃんの本領発揮だ。厚かましくガンガン行ってやるよっ!
「でも…クリヒリエンス王太子殿下もマリエンス殿下も…お義母様にお顔立ちが似てますね」
私が会話が途切れた頃にそう話しかけると、国王妃は目を丸くした。
「そ…そうね。私に似ているかしらね」
「マリエンス殿下を見ていると、昔のリュージエンス殿下を思い出します。リュー君も昔はぽっちゃ…」
「言うなっ」
リュー君が素早く遮ってきた。
「また怒って~?でも、リュー君は体を鍛えて痩せたんでしょう?マリエンス殿下って痩せたらリュー君に似てるんじゃないかと思うんだけどな~クリヒリエンス王太子殿下も運動しないんじゃない?少し鍛えればあんなロン…細身じゃなくてもう少し肉付きのよいお体になると思うけど…」
私がそう言うと国王陛下は苦笑いをした。
「体を鍛えろ…と諭しても反発してね~」
ふむふむ…
「つい、リュージを見ろ!軍で鍛えたおかげでしっかりした体つきになっただろう…とか言ってしまったら益々反発されてね」
リュー君とクリマリを比べちゃった訳だね。出来れば兄弟の優劣をつけて欲しくないところだけど…
仕方ないよね~気持ちはすごく分かる。私は子供の言い分も大人の言い分もどちらも分かっているつもりだ。
親だって、親の前に一人の人間だ。怒っても諭しても言う事を聞いてくれない捻くれた子供より、素直で従順な子供を贔屓してしまう。
人間だもの、親子だからと言ってもどうしても性格や価値観の合わない親子もいる。子供だって千差万別。親だって千差万別だ。
でもせめてクリマリとも歩み寄りをみせて欲しいよね。
「分かりましたわ。それならば、クリヒリエンス王太子殿下とマリエンス殿下のお2人を鍛錬にお誘いしますわ」
「何だってぇ!?」
こんな時にも気の合うリュー君と国王陛下はほぼ同時にそう叫んでいた。
私は颯爽と立ち上がるとまずはクリヒリエンス王太子殿下の部屋を訪ねた。この王宮のどこに隠れていたってズバッと私にはお見通しだぁ!
ふふん、生意気にも部屋に消音魔法と魔物理防御障壁を張っているな~?こんな、へなちょこ魔法は私にかかれば…
「クリヒリエンス王太子殿下、失礼致します。ミランジェ妃殿下がお越しでございます」
ドア前に立っていたメイドに呼びかけをさせた後、有無を言わさずに扉を開けた。
「なっ!?」
室内にはクリヒリエンス王太子殿下の他に貴族や役人と思われる数人の男性がいた。
おやおや、おじさん達と秘密の相談ですかな~?今度は落とし穴でも掘ってリュー君を落としてやろうぜっヌハハ!とか笑っていたのかな?
「クリヒリエンス王太子殿下、ご歓談中失礼致しますわ、明日の朝8時に軍の鍛錬場にお越し下さいませ。走り込みを致しますわよ」
クリはキョトンとして私を見ている。あらやだよ、そのキョトンとした顔、リュー君に似ているじゃないか。
私はそれだけ言って部屋を退出しかけて一度振り向くと
「まさか王太子殿下ともあろう方が逃げたりはしませんよね?」
と、存分に煽ってから廊下に出た。
廊下には私の後について来ていたリュー親子、3人がポカンとした顔で立ち尽くしていた。
私は直ぐにマリエンス王子殿下の所へ移動した。この王宮のどこにぃ!…以下同文につき省略。
部屋の前に立つとメイドに取り次ぎを頼むとメイドは私を睨みつけた。お前メイドだろ~ぅ?
「今、マリエンス殿下はお忙しいのです、お引き取り下さいませ!」
不敬なうえに頑張るな~。私は体に黒い魔力を漂わせたメイドに向かって扇子を押し当てた。一気に浄化魔法を流し込む。
「!」
メイドは驚いたような顔をした。恐らくだが魔力の濁りのせいで、睡眠不足、イライラ、眩暈や頭痛などもあったに違いない。不快感が消えて視界が明瞭になったと思われる。
私はメイドに頷いてみせた。メイドは聡い子のようで、すぐに室内に案内してくれた。
これはこれは…
マリエンス殿下もおじ様達に囲まれて密談中のようだ。
「ご歓談中失礼致します。マリエンス殿下、明日の朝8時に軍の鍛錬場にお越し下さいませ。走り込みを致しますわよ。」
マリエンス殿下は座っているソファから立ち上がって少しよろめいている。
体幹が弱いと見た!体が丸っこいせいもあるけれど…
「どっ…どうして僕が…」
「あ~らクリヒリエンス王太子殿下もご参加されるようですよぉ~?もし参加されないのでしたら、私より運動が苦手ということですよね。ああ、お気の毒~走れない〇〇はただの〇〇だ」
「何だって?」
「いえ、何でも~?では失礼~」
ニヤニヤしながらバランスボールを煽ってやった。これでマリエンス殿下も参加するでしょう。
そして廊下に戻るとリュー君と義両親はまだ呆けていた。
「本当に走り込みをするの?」
私はそう聞いてきたリュー君をビシッと扇子で指し示した。
「そうよっ以前よりは私も基礎体力がついてきたし、あの板と球体には負けないわよ!あら王子殿下に対して不敬でしたわね、失礼」
扇子を広げてほくそ笑んでみせると、リュー君は爆笑した。リュー父母はオロオロしている。
リュー君は私が子供の頃に見たクリヒリエンス王太子殿下の印象を『長くて厚みの無い板』と称したことをヒィヒィ笑いながらご両親に説明した。
「おまけに、何ぃ?マリエンスは球体なの?」
「以前のリュー君も中々のぽっちゃり王子だったけどマリ君はさらに丸いわね」
「マリ君…!」
私が何か言うたびに笑い始めるリュー君、何かのツボにはまっているね。
そして国王陛下夫妻もようやく事態を飲み込み始めたようで、急に私の心配をし始めた。
「明日、あの子達は鍛錬場には来ないかもしれないぞ?」
「もし来たとしても、ミランジェちゃんに何か言いがかりをつけてこないかしら…」
と、言っているご両親にリュー君は笑顔でこう言っていた。
「俺も一緒だし、大丈夫だよ~もし来ない時はミランジェだけ鍛えておけばいいからね!」
おふぅ…それはそれでリュー君のしごきが私だけに向かう危険性が出てきたね。
絶対来いやっ!クリマリ!
…という私の呪い?が効いたのか、翌日朝8時…
クリヒリエンス王太子殿下とマリエンス殿下は時間通りに鍛錬場に現れた。後ろにお付の方々をゾロゾロ連れているけれど…。そんなに見守る人いる?でもさ見守る人が多いほど赤っ恥の被害が増えるだけだよ?
私の側には朝も早くから心配された国王陛下夫妻とリュー君もいる。…まあいいか、恥をかくのは私ではないし。
私は悪役令嬢のように腰に手を当てると、クリマリを見ながらオーホホホッ!と高笑いをしてあげた。
「遅刻しないでお越し頂けたようで良かったですわ~!では、まずはこの鍛錬場の中を5周走りましょうか?」
いきなり長距離を言い過ぎたか?自分でもお調子に乗り過ぎた!と発言してから気が付いた。
「ミランジェ…」
ちょっと咎めるようなリュー君の声に背中に冷や汗が伝うけれど、オーーーホホッホホ!と更に笑って誤魔化した。
「さあ、参りましょうか?」
私は颯爽と走り出した。私の場合、走る…といっても少し早歩き程度ではある。暫く軽快に早歩きをしていて、何だかおかしい?と後ろを振り向いた。
予想以上に…ロングボードとバランスボールは…虚弱だった…
アレ…歩いてるのか?静止しているようにも見えるが…。私も思わず立ち止まってクリマリを見ていたけど、私よりリュー君と国王陛下夫妻の方が驚いているようだ。
「ひぃ…ぜい…」
「ぐぅ…がっ…」
バランスボールの方が転んだ!ボヨヨン…と自身のお腹の弾力で転んだ直撃を免れているようだ。流石球体!
しかし遅い…思ったより走る?速度が遅い。こんなに基礎体力が無いなんて想像以上だ。
何とかヨロヨロしながら私に追いついてきたクリマリに私は一喝した。
「クリ様っマリ君っ!お2人共、女の私に負けて悔しくないのですか!?」
クリマリはゼーゼー言いながら、膝に手をついて私を見上げている。
「クリ様はご存じですか?王太子殿下とは本来は外交や視察、各領地の役人と現地調査…体を動かし動き回る公務も多いのですよ?馬車移動も多いですし、時には外交先で夜遅くまで晩餐や夜会に付き合わされた翌日、早朝から地方視察などもあるのです。自堕落なんて以ての外、早寝早起きが基本です」
私はクリ様を見下ろした。そうだ、もとの資質はリュー君と同じなはずだ。絶対にやればできる子なのだ。魔力も相当強い。
「クリ様は王太子殿下として何か努力をされていますか?そして王族として国民に愛される王子として努力されていますか?」
クリヒリエンス王太子殿下は息を整えると、背を伸ばして私を見下ろした。
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