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兄と弟
好かれようとする努力
私はマリ君もチラッと見てから溜息をついた。この子達は根本的に分かってないのね。
「じゃあ王子殿下というのは抜きにして、クリ様は人から好かれようと努力をされていますか?」
クリ様は怪訝な顔をした。
「そんなことをしなくても、私は…」
「王太子殿下を大事にするは当たり前です。良い大人になろう、良い男になろう、良い人間になろう…。クリ様は人に好かれる為に努力をされていますか?良いことをして国王陛下に褒めて頂こう…そういう努力をされていますか?」
私は国王陛下に頷いて見せた。国王陛下はハッとして気付かれたようだ。私に柔らかく微笑み返してくれた。
「リュージエンス殿下は子供の時からご自身のお立場を理解しておいででした。王太子殿下であるクリ様を支える…その為に軍人になろう。そして努力なさって、体を絞り…鍛えて今のような美丈夫になっておいでです。全ては努力の結果です」
私はリュー君の顔を見た。若干ニヤついている…顔を引き締めろ地蔵っ!
「国王陛下に対してもそうです。リュー君は飾ることなく本音をぶつけております。これは魔質を見れば一目瞭然です。素直な気持ちで国王陛下に向き合っておられます。陛下も親でありながらも、一人の人間です。素直な好意を見せてくれて期待に応えようと頑張る子供が可愛いのは当たり前です。好かれようと努力している人は皆から好かれます。そして好きだと愛情を向けてくれる人には皆、素直に愛を返してくれます」
クリマリには私の話…通じるかな?マリ君を見る。マリ君は目を真ん丸にしている。
「クリ様やマリ君は『自分は王子だ、愛されて当然だ』と思っていませんか?ご自分達は周りに愛情を持って接していないのに、全ての愛を捧げ…と思っていませんか?」
私は、呆然としているクリマリに微笑みかけてからまた歩きだした。するとリュー君も横について来る。
「ありがとう、ミランジェ。俺の言いたいこと全部言ってくれた」
「そう?私、これでも抑えてるのよ?言いたいことの1割程度しか言えてないけど?」
リュー君はまた吹き出した。
「ミランジェには全部バレてると思うけど、俺、このままでも王太子として担ぎ出されても、どっちでもいいんだよ。ただ、皆が幸せになってくれればいいだけ」
「あら?そう…そこはリュー君と気が合うわね、私もそうよ」
リュー君は私と手を繋いだ。私はその手を深く繋ぎ直した。いわゆる恋人繋ぎだー!よっしゃー!
…と思った瞬間だった。
地蔵は浮かれたのか、はたまた調子に乗ったのか、何を思ったのか全速力で駆け出した。
当然、運動神経の壊死している私は一歩進んだ所で足がもつれ、2mほどリュー君に引きずられた。
何度でも言おう…これでもリュー君の嫁なのに、奴は嫁を2mも引きずったのだ。当然、私は転んで足を打ち付けた。もちろん膝が擦り剝けた。リュー父と母は仰天した。あろうことか今は敵対している?はずのロングボード兄までもが
「女性を引き倒すなんて何事だ!」
と、リュー君を叱りつけていた。おまけにマリ君までもが
「だっさ」
とリュー君を一撃していた。
リュー君はお義母様、キューインス閣下、ガンバレス大尉にまで怒られていた。
その夜リュー君はしょんぼりしていた。
「何だかうれしくなって駆け出したっていうか、完全にミランジェの運動神経が鈍いこと忘れてた」
「鈍くて悪かったねぇ…」
じっとりとした目でリュー君を睨んでやる。
勿論、膝の怪我はガンバレス大尉が治してくれた。その膝の怪我が治った後、私は当初の宣言通りに鍛錬場5周を歩いてではあるが完走した。ロングボードは3周目で脱落、バランスボールは2.4周目くらいで脱落した。
ざまぁ!と思ったけど心の中に留めておいた。直接会って見るとクリマリは捻くれてはいるが、諸悪の根源ではなかった。どうやらクリマリの後ろで暗躍する輩がいるようだ。
ボリボリ、モグモグ…
軽快に音をたてながらお義母様がお見舞いにと差し入れてくれた焼き菓子を頬張る。寝る前にリュー君のウエストポーチに仕上げの魔法をかけていく。
「え~と…重力無効化と防腐魔法と…亜空間連結と、時間停止…繋ぎ止めるえ~と…」
本を見ながら魔法をかけていく。あ、そうだった消臭魔法もいるよね。最後に魔物理防御をかけて…。
ウエストポーチが魔法を定着した輝きを放った。
「出来たよ~リュー君」
私が灰色の生地に赤と黒色の生地で作った飾りポケットをつけたウエストポーチをリュー君に渡すと、リュー君はしょんぼりしていた魔質を輝かせた。
「わ~ありがとう。めっちゃカッコイイ!」
そうだろう~そうだろう!
翌日からサザウンテロス帝国での婚姻式の準備が始まった。リュー君の希望により、翡翠色の生地に柔らかい布地のドレープがふんだんに使われたドレスが婚姻衣装になった。
今回は国王陛下や国王妃のご意見やご意向に沿いながら婚姻衣装などを決めてもらうことにした。
そういえばリュー君は軍の正装一択らしい。サザウンテロス帝国の正装ってどんなのだろう?誘惑に駆られて制服って詰襟?と、リュー君に聞いたけど逆につめえりって何?と聞かれて答えに窮した。
こちらの世界では何て言うのだろう?是非ともTHE帝国軍!てな感じのパキーッとした正装を希望しますよ?
そして私は今日も鍛錬場で朝からウォーキングをしている。
ウォーキングを始めて今日で3日目なのだが…初日より何だか若い兵士の方が多い。こんなに(7時)から鍛錬場って人が居たっけ?最近益々朝練の人が増えている気がするな…。
私が鍛錬場に入ると、兵士の皆さんが一斉に振り向いて
「姫様っおはようございます!」
と号令でもかけたようにご挨拶をくれる。朝から圧がすごい…。あれ、今日は近衛のお兄様達もいるわ。
「皆様、おはようございます」
ああ、居る居る~私は内心ほくそ笑みながら彼らに近づいた。
「おはようございます、クリ様、マリ君」
そうなのだ、クリヒリエンス王太子殿下とマリエンス王子殿下が、なんと朝練に参加し始めたのだ!
これには国王陛下もリュー君もびっくりしていた。
「兄上もマリエンスも頑張るな~」
私の後ろに居たリュー君が呑気な声を出す。
「リュー君も暇ね、毎日朝練に付き合わなくてもいいのよ?」
私が後ろを振り返ってそう言うと、リュー君は鍛錬場をぐるりと見回している。
「うん、まあ…威嚇しておかないとね~」
「何ですって?」
「ううん~何でもな・い・よっ!」
と言っていつの間にか若い兵士の子の体を羽交い締めにしている。あれ?その子いつの間に近くに来ていたの?
「いててっいてぇ!殿下っすみませっ…すみませーーん!」
何だろう?プロレスかな…若い子達ってじゃれ合ったりたりするよね。
クリ様とマリ君も恐る恐るという感じではあるが、若い兵士達と会話をしている。そして皆でランニングを始めている。
よしよし、非常に良い傾向だ。
私は走る集団とは別にゆっくりとウォーキングを開始した。
◆ ◆ ◆ ◇
サザウンテロス帝国に滞在して10日ほど過ぎた。
どうやらクリリューマリの三兄弟はゆっくりとだが、歩み寄りを見せているようだ。その間にも私はクリマリの後ろで暗躍しているっぽい『腹黒』な臣下や役人を物陰からキューインス閣下と覗き見して密告してあげた。
「あいつら腹黒ですぜ~旦那」
「そうかいそうかい~こりゃ大手柄だ!」
…そんな感じだろう。
その後のキューインス閣下と国王陛下の調査の結果、なんとクリヒリエンス王太子殿下とマリエンス殿下の側でうろついていた臣下達は裏で繋がっていたそうだ。
まずは邪魔なリュー君を排除して、王子同士で潰し合いをしてもらい、後は扱いにくい方の王子を排除して自分達が後ろから操る腹積もりだったそうだ。ぶっちゃけクリマリのどちらの王子が王位に立っても構わなかった…と言っていたとか。
クリヒリエンス王太子殿下とマリエンス殿下も舐められたものだね。
さて婚姻式が後15日に迫ったある日、仮縫いの婚姻衣装の試着をしていた。
「綺麗だよ、ミランジェ」
「うふふありがとう、リュー君」
と初々しい新婚カップルごっこを楽しんでいる所に、軍人さんっぽい人が部屋に音も無く入って来て、リュー君に耳打ちしていた。そして私をチラ見すると、一礼だけしてまた音も無く去って行く。
忍者かアレ?
リュー君は忍者が去った後、何かを考え込んでいるようだ。
仮縫いの試着が終わり…2人で廊下に出て歩き出すとリュー君は小声で私の耳元に囁いた。
「俺達の婚姻式が終わった次の日に…独立宣言するんだって」
「!」
何が…とか聞かなくても分かっている。カッシーラ伯はとうとうベイフィート王国から独立するのだ。
「俺もどうするか決めないとな…」
「カッシーラ伯領に引っ越すんでしょう?」
「う~ん当面はね。ミランジェ…はそのどこでも構わない?」
「何が?」
「洋装店開くの」
「もちろんよ、前も言ったけどリュー君が居るんだったらどこでも楽しめるよ」
リュー君は笑顔を見せながらちょっぴり泣いていた。
どうしたんだろう…怖くて聞けないけど、何かの決断をしようとしたリュー君の背中を私の言葉が押しちゃったことだけははっきりと分かる。
どうしよう…無人島で暮らしたい!とかだったなら流石に、単身赴任でどうぞ!と言いたいかもしれない。
その日からリュー君は何かゴソゴソ動いていた。気になったので、それとなく聞いたけど
「本決まりになってから~」
と返されて濁される。それに何だか三兄弟で密談?みたいなのをちょいちょいしてるっぽい。
王宮のどこに隠れていたって私にはズバッとお見通しだぁぁ!……でも除け者は辛いよ。
寂しさを紛らわせるために、キューインス閣下とガンバレス大尉の魔法のバッグを縫う。
「キューインス閣下には黄色の布地使っちゃうもんね~」
独り言が空しい…。夕方しょんぼりしながらポケットの飾りを縫っているとリュー母が遊びに来てくれた。
「ミランジェちゃん、魔道具作ってるんですってね、見せてね」
お義母様と一緒に同じ年頃のおば様と女の子がいる。
何となく魔質を視る。…あっ!皆似た魔質だ。と言うことは…私は慌てて淑女の礼を取った。
「お初に御目にかかります、ミランジェに御座います」
「まあ、分かるのかしら」
「さすがトキワステラーテ王国の王女殿下ね」
お義母とおば様は頷き合っている。
おば様と女の子は淑女の礼をされた。
「ジュリニーク=ナツサンテ、ジャニファーの妹でございます」
「リオラメーレ=ナツサンテです。姪でございます」
とご挨拶された。
あ~分かった!リオラメーレからメラメラと嫉妬の炎が見えてるわぁ!
リュー君をめぐる三角関係の愛憎劇がここに始まったっ!
…だよね?
「じゃあ王子殿下というのは抜きにして、クリ様は人から好かれようと努力をされていますか?」
クリ様は怪訝な顔をした。
「そんなことをしなくても、私は…」
「王太子殿下を大事にするは当たり前です。良い大人になろう、良い男になろう、良い人間になろう…。クリ様は人に好かれる為に努力をされていますか?良いことをして国王陛下に褒めて頂こう…そういう努力をされていますか?」
私は国王陛下に頷いて見せた。国王陛下はハッとして気付かれたようだ。私に柔らかく微笑み返してくれた。
「リュージエンス殿下は子供の時からご自身のお立場を理解しておいででした。王太子殿下であるクリ様を支える…その為に軍人になろう。そして努力なさって、体を絞り…鍛えて今のような美丈夫になっておいでです。全ては努力の結果です」
私はリュー君の顔を見た。若干ニヤついている…顔を引き締めろ地蔵っ!
「国王陛下に対してもそうです。リュー君は飾ることなく本音をぶつけております。これは魔質を見れば一目瞭然です。素直な気持ちで国王陛下に向き合っておられます。陛下も親でありながらも、一人の人間です。素直な好意を見せてくれて期待に応えようと頑張る子供が可愛いのは当たり前です。好かれようと努力している人は皆から好かれます。そして好きだと愛情を向けてくれる人には皆、素直に愛を返してくれます」
クリマリには私の話…通じるかな?マリ君を見る。マリ君は目を真ん丸にしている。
「クリ様やマリ君は『自分は王子だ、愛されて当然だ』と思っていませんか?ご自分達は周りに愛情を持って接していないのに、全ての愛を捧げ…と思っていませんか?」
私は、呆然としているクリマリに微笑みかけてからまた歩きだした。するとリュー君も横について来る。
「ありがとう、ミランジェ。俺の言いたいこと全部言ってくれた」
「そう?私、これでも抑えてるのよ?言いたいことの1割程度しか言えてないけど?」
リュー君はまた吹き出した。
「ミランジェには全部バレてると思うけど、俺、このままでも王太子として担ぎ出されても、どっちでもいいんだよ。ただ、皆が幸せになってくれればいいだけ」
「あら?そう…そこはリュー君と気が合うわね、私もそうよ」
リュー君は私と手を繋いだ。私はその手を深く繋ぎ直した。いわゆる恋人繋ぎだー!よっしゃー!
…と思った瞬間だった。
地蔵は浮かれたのか、はたまた調子に乗ったのか、何を思ったのか全速力で駆け出した。
当然、運動神経の壊死している私は一歩進んだ所で足がもつれ、2mほどリュー君に引きずられた。
何度でも言おう…これでもリュー君の嫁なのに、奴は嫁を2mも引きずったのだ。当然、私は転んで足を打ち付けた。もちろん膝が擦り剝けた。リュー父と母は仰天した。あろうことか今は敵対している?はずのロングボード兄までもが
「女性を引き倒すなんて何事だ!」
と、リュー君を叱りつけていた。おまけにマリ君までもが
「だっさ」
とリュー君を一撃していた。
リュー君はお義母様、キューインス閣下、ガンバレス大尉にまで怒られていた。
その夜リュー君はしょんぼりしていた。
「何だかうれしくなって駆け出したっていうか、完全にミランジェの運動神経が鈍いこと忘れてた」
「鈍くて悪かったねぇ…」
じっとりとした目でリュー君を睨んでやる。
勿論、膝の怪我はガンバレス大尉が治してくれた。その膝の怪我が治った後、私は当初の宣言通りに鍛錬場5周を歩いてではあるが完走した。ロングボードは3周目で脱落、バランスボールは2.4周目くらいで脱落した。
ざまぁ!と思ったけど心の中に留めておいた。直接会って見るとクリマリは捻くれてはいるが、諸悪の根源ではなかった。どうやらクリマリの後ろで暗躍する輩がいるようだ。
ボリボリ、モグモグ…
軽快に音をたてながらお義母様がお見舞いにと差し入れてくれた焼き菓子を頬張る。寝る前にリュー君のウエストポーチに仕上げの魔法をかけていく。
「え~と…重力無効化と防腐魔法と…亜空間連結と、時間停止…繋ぎ止めるえ~と…」
本を見ながら魔法をかけていく。あ、そうだった消臭魔法もいるよね。最後に魔物理防御をかけて…。
ウエストポーチが魔法を定着した輝きを放った。
「出来たよ~リュー君」
私が灰色の生地に赤と黒色の生地で作った飾りポケットをつけたウエストポーチをリュー君に渡すと、リュー君はしょんぼりしていた魔質を輝かせた。
「わ~ありがとう。めっちゃカッコイイ!」
そうだろう~そうだろう!
翌日からサザウンテロス帝国での婚姻式の準備が始まった。リュー君の希望により、翡翠色の生地に柔らかい布地のドレープがふんだんに使われたドレスが婚姻衣装になった。
今回は国王陛下や国王妃のご意見やご意向に沿いながら婚姻衣装などを決めてもらうことにした。
そういえばリュー君は軍の正装一択らしい。サザウンテロス帝国の正装ってどんなのだろう?誘惑に駆られて制服って詰襟?と、リュー君に聞いたけど逆につめえりって何?と聞かれて答えに窮した。
こちらの世界では何て言うのだろう?是非ともTHE帝国軍!てな感じのパキーッとした正装を希望しますよ?
そして私は今日も鍛錬場で朝からウォーキングをしている。
ウォーキングを始めて今日で3日目なのだが…初日より何だか若い兵士の方が多い。こんなに(7時)から鍛錬場って人が居たっけ?最近益々朝練の人が増えている気がするな…。
私が鍛錬場に入ると、兵士の皆さんが一斉に振り向いて
「姫様っおはようございます!」
と号令でもかけたようにご挨拶をくれる。朝から圧がすごい…。あれ、今日は近衛のお兄様達もいるわ。
「皆様、おはようございます」
ああ、居る居る~私は内心ほくそ笑みながら彼らに近づいた。
「おはようございます、クリ様、マリ君」
そうなのだ、クリヒリエンス王太子殿下とマリエンス王子殿下が、なんと朝練に参加し始めたのだ!
これには国王陛下もリュー君もびっくりしていた。
「兄上もマリエンスも頑張るな~」
私の後ろに居たリュー君が呑気な声を出す。
「リュー君も暇ね、毎日朝練に付き合わなくてもいいのよ?」
私が後ろを振り返ってそう言うと、リュー君は鍛錬場をぐるりと見回している。
「うん、まあ…威嚇しておかないとね~」
「何ですって?」
「ううん~何でもな・い・よっ!」
と言っていつの間にか若い兵士の子の体を羽交い締めにしている。あれ?その子いつの間に近くに来ていたの?
「いててっいてぇ!殿下っすみませっ…すみませーーん!」
何だろう?プロレスかな…若い子達ってじゃれ合ったりたりするよね。
クリ様とマリ君も恐る恐るという感じではあるが、若い兵士達と会話をしている。そして皆でランニングを始めている。
よしよし、非常に良い傾向だ。
私は走る集団とは別にゆっくりとウォーキングを開始した。
◆ ◆ ◆ ◇
サザウンテロス帝国に滞在して10日ほど過ぎた。
どうやらクリリューマリの三兄弟はゆっくりとだが、歩み寄りを見せているようだ。その間にも私はクリマリの後ろで暗躍しているっぽい『腹黒』な臣下や役人を物陰からキューインス閣下と覗き見して密告してあげた。
「あいつら腹黒ですぜ~旦那」
「そうかいそうかい~こりゃ大手柄だ!」
…そんな感じだろう。
その後のキューインス閣下と国王陛下の調査の結果、なんとクリヒリエンス王太子殿下とマリエンス殿下の側でうろついていた臣下達は裏で繋がっていたそうだ。
まずは邪魔なリュー君を排除して、王子同士で潰し合いをしてもらい、後は扱いにくい方の王子を排除して自分達が後ろから操る腹積もりだったそうだ。ぶっちゃけクリマリのどちらの王子が王位に立っても構わなかった…と言っていたとか。
クリヒリエンス王太子殿下とマリエンス殿下も舐められたものだね。
さて婚姻式が後15日に迫ったある日、仮縫いの婚姻衣装の試着をしていた。
「綺麗だよ、ミランジェ」
「うふふありがとう、リュー君」
と初々しい新婚カップルごっこを楽しんでいる所に、軍人さんっぽい人が部屋に音も無く入って来て、リュー君に耳打ちしていた。そして私をチラ見すると、一礼だけしてまた音も無く去って行く。
忍者かアレ?
リュー君は忍者が去った後、何かを考え込んでいるようだ。
仮縫いの試着が終わり…2人で廊下に出て歩き出すとリュー君は小声で私の耳元に囁いた。
「俺達の婚姻式が終わった次の日に…独立宣言するんだって」
「!」
何が…とか聞かなくても分かっている。カッシーラ伯はとうとうベイフィート王国から独立するのだ。
「俺もどうするか決めないとな…」
「カッシーラ伯領に引っ越すんでしょう?」
「う~ん当面はね。ミランジェ…はそのどこでも構わない?」
「何が?」
「洋装店開くの」
「もちろんよ、前も言ったけどリュー君が居るんだったらどこでも楽しめるよ」
リュー君は笑顔を見せながらちょっぴり泣いていた。
どうしたんだろう…怖くて聞けないけど、何かの決断をしようとしたリュー君の背中を私の言葉が押しちゃったことだけははっきりと分かる。
どうしよう…無人島で暮らしたい!とかだったなら流石に、単身赴任でどうぞ!と言いたいかもしれない。
その日からリュー君は何かゴソゴソ動いていた。気になったので、それとなく聞いたけど
「本決まりになってから~」
と返されて濁される。それに何だか三兄弟で密談?みたいなのをちょいちょいしてるっぽい。
王宮のどこに隠れていたって私にはズバッとお見通しだぁぁ!……でも除け者は辛いよ。
寂しさを紛らわせるために、キューインス閣下とガンバレス大尉の魔法のバッグを縫う。
「キューインス閣下には黄色の布地使っちゃうもんね~」
独り言が空しい…。夕方しょんぼりしながらポケットの飾りを縫っているとリュー母が遊びに来てくれた。
「ミランジェちゃん、魔道具作ってるんですってね、見せてね」
お義母様と一緒に同じ年頃のおば様と女の子がいる。
何となく魔質を視る。…あっ!皆似た魔質だ。と言うことは…私は慌てて淑女の礼を取った。
「お初に御目にかかります、ミランジェに御座います」
「まあ、分かるのかしら」
「さすがトキワステラーテ王国の王女殿下ね」
お義母とおば様は頷き合っている。
おば様と女の子は淑女の礼をされた。
「ジュリニーク=ナツサンテ、ジャニファーの妹でございます」
「リオラメーレ=ナツサンテです。姪でございます」
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