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冒険
矛と遺跡2
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森を抜け、女神像の横を通り…それはそれは複雑な防御障壁が現れた。障壁に触れたら…呪詛が発動するかな?
「絶対触らないで下さい、強力な呪詛がかかってます」
私がそう告げると流石に浮かれていたおじさん達も神妙な顔つきになり、後ろに下がってくれた。
いつもしている詠う解呪も、空気読め!になりそうだったので、抑揚のない詠唱に切り替えることにした。
静かに浄化魔法を唱えながら、複雑な術式を視る。
凄いな…この奥に遺跡があるんだよね。その建物の姿が完全に透過魔法で隠されている…この遺跡を作った人はすごい術者だったんだろうな。それを元、異世界人のこんな私が踏み込んでしまうことをお許し下さい。
心の中でお辞儀をしながら、複雑に絡んだ術式の解術に挑んだ。
まるであやとりをしているみたいだ…と綻びを見付け、糸を抜き…巻き取っているイメージで解術をしていく。時々呪いの気配を感じて、浄化魔法を唱えながら目を開けると夕焼け空が目に入ってきた。
あれから数時間は経っているみたいだ。
私は詠唱を止めた。お腹が空いた…3分の2くらいは解けたかな?いつの間にかシーダが斜め後ろに立っていたので、振り向いて声をかけた。
「お腹空いた…今日はここまでで、いい?」
「ああ、ご苦労さん」
どうやら私が解術をしている間に野営用のテントを張って、泊まりの準備をしてくれていたようだった。流石は王子様達のテント…お城から料理人も連れてきていたようで、干した肉だけの淋しい食事は避けられそうだった。
まあ私はリュックサックの中に、ロールパンサンドを山盛り隠し持ってるけどさ…グフフ。
私は一応シーダと共にプリンス飯を頂けることになった。
こんな野営テントで魔獣肉のローストビーフ食べれるなんてっ…幸せ。
「ララーナ=レイジアンテ、どうだ?解術は順調か?魔術師達は驚異の速さで進んでいると言っているが…」
お肉を口に入れて美味しさを噛み締めていると、ホグレイッツの国王陛下が優しい笑顔でそう聞いてきた。
驚異の速さ…かどうかは分からないけど、解けないなぁ~と感じる所は今の所、感じないかな?
「今の所、解けないと感じないので…時間はかかるかもしれませんが何とかなりそうです」
「おおっ!」
「流石モレアの華!」
モレアの華とか関係ないと思うけど、私のチートの能力が役に立つなら、まあ頑張りましょ~
「ララーナ無理はするなよ…」
「うん…」
シーダと見詰め合っていると、スィーダレン殿下が大きな咳払いをした。
「こういう場面をなるべく見たくない奴は、鍛錬に付き合えー」
すると、食事を終えたSSクラスのお兄様達も含めて結構な人数の人達が森の向こう側で、掛け声をかけて訓練を初めてしまった。別にイチャコラしてる訳じゃない…よね?
チラッとシーダを見ると苦笑していた。
次の日
朝からプリンス朝食飯を食べて、私は再び障壁の前に立った。
またあやとりのように絡まった術式を解いていく…不思議だな。複雑で誰も解けなかったと言われているけど、全然難しいこと無いのにね。どれくらい呪詛を解いていただろうか…少しウトウトしていたかもしれない。
「あんたなんかいらないわよ!」
急に声が聞こえて、私はハッと驚いて後ろを見た。
「え?」
後ろは森のはずなのに…マンションの室内に居る。ここは…見覚えがあり過ぎる、昔住んでいたあのマンションだ。隣の部屋で父と母が言い争いをしている。
待って…待って?喧嘩しないで…声を出しているはずなのに、何故か出ない。父も母も旅行鞄を取り出して、荷物を纏めている。
「お母さんと仲良くな」
「お父さんを頼んだわよ」
2人共、鞄を持って出て行ったけど…え?同時に出て行ったの?お金は…?いつも現金が入っている戸棚の引き出しを開けた。
「無い…無い…お金無い」
お互いにどちらかが家に残っていると思っているんだ!
連絡…を電話が使えない?どうしよう…どうしよう…
ああ…電気が止まった…学校に行けば授業料を払えと先生に言われる…お風呂にも入れない。どこにいけばいい?どうしよう…助けてって誰に言えばいいの?
「お腹空いた…」
腕が上がらない…ああ…眠い。
誰かが呼んでいる…
…
……
「ララーナ…」
体を揺すられて、ハッと意識が戻ってきた。私の体を黒いモヤが覆っている。呪い!?
急いで浄化魔法を詠う…息が苦しい。大分呪いに晒されていたみたいだ、咳き込んでいると体が引き寄せられた。
「ララーナ、大丈夫だ…落ち着け」
シーダ…シーダの大きな手が背中を擦ってくれる。深く息を吸う…吐く…大丈夫、頑張れる。
もう一度浄化魔法を詠った…段々と黒いモヤが薄れていく。黒い霧が晴れて周りを見ると、膝を突いているお兄さん達が見える、え?
「ララーナが解術している時に、少し詠唱が途切れたんだ…そうしたらララーナが倒れた。その後に呪いが襲ってきてな…大丈夫だ。城の魔術師達もいたし、何とか浄化は出来た」
私は慌てて屈んでいるお兄さん達の背中に擦りながら浄化魔法をかけた。黒いモヤが消える。
「ララーナちゃん…すまん」
「油断した…」
すると、ホグレイッツ国王陛下の野太い声が森の中に響いた。
「だから遊びじゃないと言っとるんだ!ふざけていないで…しっかり見張りをしろ!」
……さっきまで映写石でイエーーイ!とか言って写メ撮ってなかったっけ?どの口が言う?
「勝手なおっさんだなぁ…」
私は不敬だから言えないけど、シーダが代わりに言ってくれたから良しとしよう。
その後は順調に解術が出来た。
多分先程の過去の自分は、呪いの影響で呪詛が見せたものだろう。私を捨てて逃げ出した両親…ある意味似たもの夫婦だったんだよね…思わず過去の自分を笑いそうになる。
今思えば私も子供過ぎたし、困っている…助けて…と周りの大人達に訴えても良かったんだよね、馬鹿だな。本当に馬鹿だ。何も死ぬまで我慢しなくてもよかったんだ。
「やったーーー!呪いが解けている!」
「……」
過去を思い出してしんみりしていたのに、おっさん達の祝!呪いの解呪成功!写メ合戦で雰囲気ぶち壊しだね…
まあ5000年間、中に入れなかったんだから嬉しい気持ちは分かる。アレだよ、発掘してピラミッドの中に入ってナントカⅡ世の墓発見!とかいうのと同じなんだろうね。
しまった……余計なこと考えちゃった。お墓あるんじゃないかな。…入口で入らずに待ってようかな。
小走りで森を移動して行く集団の前にめっちゃ大きなナントカ神殿みたいな建物が突如現れた。うわーーっカッコイイ!
「凄いぞっ!凄い!」
またおじさん達が写メを連写してるけど…これさ、建物の中に入るまでに魔石の残量を使い切ってしまうんじゃね?データ容量が足りませんってやつだよ。
案の定、ギルドから来ている魔術師のおじさんが「記録し過ぎて魔石が足りない!」とか言い出した。私をチラチラ見るけど、映写石は持ってねぇよ!
「大きいな~」
おじさん達の一番後に建物の前に辿り着いて、リコイーダ君と一緒にポカンと口を開けて入口の門を見てしまう。実物見たことないけど、紫禁城みたいな感じだね。皆が建物の中に入って行くので、仕方なく付いて行くことにした。
しかし…予想を覆して建物の中は綺麗だった。魔力ランプ?みたいなのが全部壊れずについているし、遺跡の中の部屋も荒らされることもなく当時のまま保存されているようだった。
魔術師のおじ様達の待望の古代語魔術の錬金術系の魔法書が唸るように発見されたとかで、皆は小躍りしていた。
私の役目も終わったと思って、建物から外に出ると外の木の根元でぼんやりと座っていたら、シーダが横に来て一緒に隣に座ってくれた。
「疲れたか?」
「うん~ちょっと?」
シーダは私の手を握ってくれた。温かい…
「お前が呪いを受けた時にな…見たことの無い風景が見えた」
シーダの言葉にギクッとした。シーダは言葉を続けた。
「親から置いていかれて…痩せ細っていく女の子が見えた。泣いていた絶望していた…あれはララーナだよな?」
過去の姿を見られていた…!シーダにバレた…手に汗が滲んだ。
シーダは重ねた私の手をトントン…と優しく撫でてくれている。
「過去の記憶があるんだな…」
「う…うん」
「見たことのない世界だった…もしかして異界か?」
「うん…」
シーダは大きく息を吐いた。
「もっと早く言えよ…母上が大喜びすると思うぜ」
「え?」
シーダの顔を見上げるとニヤニヤと笑っている。
「珍しいものが大好きなんだよ、あの人。教えてやれば大喜びさ」
ああ…ああ!涙が溢れてきた。シーダに抱き付いたら、優しく抱き返してくれた。
「馬鹿だな…早く言えよ。そうしたらもっともっと甘やかしてやるのにさ」
「もう充分甘やかしてもらってるぅ…ううっ…ん」
シーダの胸の中でワンワン泣いた。途中でお兄さん達が心配してくれて、周りに来てくれたけど嬉し泣きだから…とシーダが説明してくれていた。
遺跡からの帰りは泣きつかれて眠ってしまったみたいだ。いつの間にかシーダにおぶわれていて、ヌクヌク背中再びだった。
帰りの移動中、半分夢うつつの時にシーダから声をかけられたのもあまり覚えていなかった。
「ララーナ、俺の嫁に来いよ。それで王子妃になっちまうけど構わないよな?」
半分寝ぼけていた私は
「ふぁい…」
と返事をした……らしい。シーダはそのやり取りを映写石に記録していた…こんな所で魔石の力を使ってくるなんて!
横でリコイーダ君とギアラクさんにも聞かれていたみたいなので、今更逃げたりはしないけど。
そんなこんなでなし崩し的にシーダと一緒にカッセルヘイザー王国に住むことになった。
そしてシーダの言った通り、アサシアニカ妃は異世界人の世界の話を聞いてとても興奮していた。私は14才で死んだので、異世界の政治経済、工業、化学…それほど触れたことが無くてお役に立てなくてすみませんと国王陛下に伝えたが、私の作った魔道具の鞄と化粧品…携帯電話やデジカメ、食べ物の話を聞いただけでも十分に魔道具開発の役に立つとのことだった。
良かった…
そうして元異世界人で今も庶民の私は、王子妃としての勉強をスタートさせたのだった。
「絶対触らないで下さい、強力な呪詛がかかってます」
私がそう告げると流石に浮かれていたおじさん達も神妙な顔つきになり、後ろに下がってくれた。
いつもしている詠う解呪も、空気読め!になりそうだったので、抑揚のない詠唱に切り替えることにした。
静かに浄化魔法を唱えながら、複雑な術式を視る。
凄いな…この奥に遺跡があるんだよね。その建物の姿が完全に透過魔法で隠されている…この遺跡を作った人はすごい術者だったんだろうな。それを元、異世界人のこんな私が踏み込んでしまうことをお許し下さい。
心の中でお辞儀をしながら、複雑に絡んだ術式の解術に挑んだ。
まるであやとりをしているみたいだ…と綻びを見付け、糸を抜き…巻き取っているイメージで解術をしていく。時々呪いの気配を感じて、浄化魔法を唱えながら目を開けると夕焼け空が目に入ってきた。
あれから数時間は経っているみたいだ。
私は詠唱を止めた。お腹が空いた…3分の2くらいは解けたかな?いつの間にかシーダが斜め後ろに立っていたので、振り向いて声をかけた。
「お腹空いた…今日はここまでで、いい?」
「ああ、ご苦労さん」
どうやら私が解術をしている間に野営用のテントを張って、泊まりの準備をしてくれていたようだった。流石は王子様達のテント…お城から料理人も連れてきていたようで、干した肉だけの淋しい食事は避けられそうだった。
まあ私はリュックサックの中に、ロールパンサンドを山盛り隠し持ってるけどさ…グフフ。
私は一応シーダと共にプリンス飯を頂けることになった。
こんな野営テントで魔獣肉のローストビーフ食べれるなんてっ…幸せ。
「ララーナ=レイジアンテ、どうだ?解術は順調か?魔術師達は驚異の速さで進んでいると言っているが…」
お肉を口に入れて美味しさを噛み締めていると、ホグレイッツの国王陛下が優しい笑顔でそう聞いてきた。
驚異の速さ…かどうかは分からないけど、解けないなぁ~と感じる所は今の所、感じないかな?
「今の所、解けないと感じないので…時間はかかるかもしれませんが何とかなりそうです」
「おおっ!」
「流石モレアの華!」
モレアの華とか関係ないと思うけど、私のチートの能力が役に立つなら、まあ頑張りましょ~
「ララーナ無理はするなよ…」
「うん…」
シーダと見詰め合っていると、スィーダレン殿下が大きな咳払いをした。
「こういう場面をなるべく見たくない奴は、鍛錬に付き合えー」
すると、食事を終えたSSクラスのお兄様達も含めて結構な人数の人達が森の向こう側で、掛け声をかけて訓練を初めてしまった。別にイチャコラしてる訳じゃない…よね?
チラッとシーダを見ると苦笑していた。
次の日
朝からプリンス朝食飯を食べて、私は再び障壁の前に立った。
またあやとりのように絡まった術式を解いていく…不思議だな。複雑で誰も解けなかったと言われているけど、全然難しいこと無いのにね。どれくらい呪詛を解いていただろうか…少しウトウトしていたかもしれない。
「あんたなんかいらないわよ!」
急に声が聞こえて、私はハッと驚いて後ろを見た。
「え?」
後ろは森のはずなのに…マンションの室内に居る。ここは…見覚えがあり過ぎる、昔住んでいたあのマンションだ。隣の部屋で父と母が言い争いをしている。
待って…待って?喧嘩しないで…声を出しているはずなのに、何故か出ない。父も母も旅行鞄を取り出して、荷物を纏めている。
「お母さんと仲良くな」
「お父さんを頼んだわよ」
2人共、鞄を持って出て行ったけど…え?同時に出て行ったの?お金は…?いつも現金が入っている戸棚の引き出しを開けた。
「無い…無い…お金無い」
お互いにどちらかが家に残っていると思っているんだ!
連絡…を電話が使えない?どうしよう…どうしよう…
ああ…電気が止まった…学校に行けば授業料を払えと先生に言われる…お風呂にも入れない。どこにいけばいい?どうしよう…助けてって誰に言えばいいの?
「お腹空いた…」
腕が上がらない…ああ…眠い。
誰かが呼んでいる…
…
……
「ララーナ…」
体を揺すられて、ハッと意識が戻ってきた。私の体を黒いモヤが覆っている。呪い!?
急いで浄化魔法を詠う…息が苦しい。大分呪いに晒されていたみたいだ、咳き込んでいると体が引き寄せられた。
「ララーナ、大丈夫だ…落ち着け」
シーダ…シーダの大きな手が背中を擦ってくれる。深く息を吸う…吐く…大丈夫、頑張れる。
もう一度浄化魔法を詠った…段々と黒いモヤが薄れていく。黒い霧が晴れて周りを見ると、膝を突いているお兄さん達が見える、え?
「ララーナが解術している時に、少し詠唱が途切れたんだ…そうしたらララーナが倒れた。その後に呪いが襲ってきてな…大丈夫だ。城の魔術師達もいたし、何とか浄化は出来た」
私は慌てて屈んでいるお兄さん達の背中に擦りながら浄化魔法をかけた。黒いモヤが消える。
「ララーナちゃん…すまん」
「油断した…」
すると、ホグレイッツ国王陛下の野太い声が森の中に響いた。
「だから遊びじゃないと言っとるんだ!ふざけていないで…しっかり見張りをしろ!」
……さっきまで映写石でイエーーイ!とか言って写メ撮ってなかったっけ?どの口が言う?
「勝手なおっさんだなぁ…」
私は不敬だから言えないけど、シーダが代わりに言ってくれたから良しとしよう。
その後は順調に解術が出来た。
多分先程の過去の自分は、呪いの影響で呪詛が見せたものだろう。私を捨てて逃げ出した両親…ある意味似たもの夫婦だったんだよね…思わず過去の自分を笑いそうになる。
今思えば私も子供過ぎたし、困っている…助けて…と周りの大人達に訴えても良かったんだよね、馬鹿だな。本当に馬鹿だ。何も死ぬまで我慢しなくてもよかったんだ。
「やったーーー!呪いが解けている!」
「……」
過去を思い出してしんみりしていたのに、おっさん達の祝!呪いの解呪成功!写メ合戦で雰囲気ぶち壊しだね…
まあ5000年間、中に入れなかったんだから嬉しい気持ちは分かる。アレだよ、発掘してピラミッドの中に入ってナントカⅡ世の墓発見!とかいうのと同じなんだろうね。
しまった……余計なこと考えちゃった。お墓あるんじゃないかな。…入口で入らずに待ってようかな。
小走りで森を移動して行く集団の前にめっちゃ大きなナントカ神殿みたいな建物が突如現れた。うわーーっカッコイイ!
「凄いぞっ!凄い!」
またおじさん達が写メを連写してるけど…これさ、建物の中に入るまでに魔石の残量を使い切ってしまうんじゃね?データ容量が足りませんってやつだよ。
案の定、ギルドから来ている魔術師のおじさんが「記録し過ぎて魔石が足りない!」とか言い出した。私をチラチラ見るけど、映写石は持ってねぇよ!
「大きいな~」
おじさん達の一番後に建物の前に辿り着いて、リコイーダ君と一緒にポカンと口を開けて入口の門を見てしまう。実物見たことないけど、紫禁城みたいな感じだね。皆が建物の中に入って行くので、仕方なく付いて行くことにした。
しかし…予想を覆して建物の中は綺麗だった。魔力ランプ?みたいなのが全部壊れずについているし、遺跡の中の部屋も荒らされることもなく当時のまま保存されているようだった。
魔術師のおじ様達の待望の古代語魔術の錬金術系の魔法書が唸るように発見されたとかで、皆は小躍りしていた。
私の役目も終わったと思って、建物から外に出ると外の木の根元でぼんやりと座っていたら、シーダが横に来て一緒に隣に座ってくれた。
「疲れたか?」
「うん~ちょっと?」
シーダは私の手を握ってくれた。温かい…
「お前が呪いを受けた時にな…見たことの無い風景が見えた」
シーダの言葉にギクッとした。シーダは言葉を続けた。
「親から置いていかれて…痩せ細っていく女の子が見えた。泣いていた絶望していた…あれはララーナだよな?」
過去の姿を見られていた…!シーダにバレた…手に汗が滲んだ。
シーダは重ねた私の手をトントン…と優しく撫でてくれている。
「過去の記憶があるんだな…」
「う…うん」
「見たことのない世界だった…もしかして異界か?」
「うん…」
シーダは大きく息を吐いた。
「もっと早く言えよ…母上が大喜びすると思うぜ」
「え?」
シーダの顔を見上げるとニヤニヤと笑っている。
「珍しいものが大好きなんだよ、あの人。教えてやれば大喜びさ」
ああ…ああ!涙が溢れてきた。シーダに抱き付いたら、優しく抱き返してくれた。
「馬鹿だな…早く言えよ。そうしたらもっともっと甘やかしてやるのにさ」
「もう充分甘やかしてもらってるぅ…ううっ…ん」
シーダの胸の中でワンワン泣いた。途中でお兄さん達が心配してくれて、周りに来てくれたけど嬉し泣きだから…とシーダが説明してくれていた。
遺跡からの帰りは泣きつかれて眠ってしまったみたいだ。いつの間にかシーダにおぶわれていて、ヌクヌク背中再びだった。
帰りの移動中、半分夢うつつの時にシーダから声をかけられたのもあまり覚えていなかった。
「ララーナ、俺の嫁に来いよ。それで王子妃になっちまうけど構わないよな?」
半分寝ぼけていた私は
「ふぁい…」
と返事をした……らしい。シーダはそのやり取りを映写石に記録していた…こんな所で魔石の力を使ってくるなんて!
横でリコイーダ君とギアラクさんにも聞かれていたみたいなので、今更逃げたりはしないけど。
そんなこんなでなし崩し的にシーダと一緒にカッセルヘイザー王国に住むことになった。
そしてシーダの言った通り、アサシアニカ妃は異世界人の世界の話を聞いてとても興奮していた。私は14才で死んだので、異世界の政治経済、工業、化学…それほど触れたことが無くてお役に立てなくてすみませんと国王陛下に伝えたが、私の作った魔道具の鞄と化粧品…携帯電話やデジカメ、食べ物の話を聞いただけでも十分に魔道具開発の役に立つとのことだった。
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