ハイロイン

ハイロインofficial

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第四章

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「こんなにたくさん釣ったのに、お前の家で飯を食わせてくれないのか?」
 顧海グー・ハイは家に寄りたがったが、白洛因バイ・ロインは祖母のことを思い出してすぐに拒絶する。
「魚を料理したらお前の家に持って行くから待ってろよ」
 顧海は老若男女がひしめく雑多な自分の住居を思い出し、ひやっとした。それだけは避けなければならない。白洛因が来れば、そこが顧海の実家ではないとバレてしまう。
「なんでお前の家で食べちゃいけないんだよ」
 顧海は眉をひそめ、彼を責める。
「本来お前から俺を招くのが筋だろう。それなのに俺にこんな言い方をさせるなんて、ずいぶん礼儀知らずじゃないか?」
「俺はめちゃくちゃ礼儀知らずなんだよ」
 白洛因は顧海の手からバケツを奪う。
「魚が食いたければおとなしく家で待ってろ。食いたくなければそれでもいい」
 顧海は『家』という言葉にふたたび震え上がった。
 白漢旗バイ・ハンチーはすでに帰宅し、戸口のところに新しい木を二本植えようとしているところだった。白洛因が帰ってきたのを見て微笑みを浮かべたが、顧海に気づくとさらに嬉しそうに笑う。
「おじさん!」
 顧海は親しげに呼びかけた。
 白漢旗はすぐさま答え、顧海の肩を叩いた。それから儀礼的な挨拶を言いかけ、ハッと顔色を変える。
「なんでこんなに濡れてるんだ? ほら、早く家に入って綺麗な服に着替えないと」
 白洛因は顧海と白漢旗の前に立ちはだかり、冷たい空気をただよわせた。
「父さん、うちのどこに余分な服があるんだ?」
「あるに決まってる。ちょうど買ってきたばかりだ。それを彼に貸してやればいい」
 よりにもよってなにも今日買わなくてもいいだろう……白洛因は眉をひそめた。彼は本当に顧海に自分の家に入ってほしくなかったのだ。
「おじさん、よかったらまずシャワーを貸してくれませんか? 俺、体中泥だらけなんで、新しい服を借りても汚しちゃうから」
「いい加減にしろよ!」
 白洛因は目を吊り上げて凶暴な顔つきになる。
 白漢旗は逆に喜んでいるようだった。
「もちろんだ。お湯の出し方、わかるか? わからなければ洛因と一緒に入ればいい」
「それはよかった。助かります」
 顧海の笑みは今にも口からこぼれて顎から地面にしたたり落ちそうだった。
「何がよかったんだ」
 白洛因は吠える。
「うちにはちゃんとしたトイレすらないんだ。シャワーは外で、シャワーヘッドは毎日詰まり放題。人に貸せるようなものか?」
「平気だよ!」
 顧海はおおらかに答えた。
「カーテンがあるじゃないか。うちなんて完全に外で、夏は直接水道の水を浴びるんだ。お湯さえないんだぞ」
 白漢旗は大笑いした。
「お湯ならうちにあるから、好きなだけ使えばいい!」
 いい加減にしろ! 白洛因は奥歯を噛みしめ、腹を立てて部屋に戻り、片づけを始める。
 客が来なければ部屋がこんなに散らかっていることにも気づかなかった。白洛因が片づけをしていると、顧海の叫び声が聞こえてきた。
「白洛因、お湯はどうやって出すんだ?」
 白洛因は聞こえないふりをした。
 しばらくすると、白漢旗が部屋に駆け込んできて白洛因を責める。
「見てやりなさい! なんて気の利かない奴なんだ!」
 白洛因は憤慨しながらシャワー室へ駆け込み、猛然とカーテンを開けた。顧海はすでに素っ裸になっていて、傲然といい身体を白洛因の前に晒す。白洛因は心底この筋肉がしっかりついた尻を蹴り飛ばしてやりたいと思った。
「お湯の出し方もわからないのに、なんで急いで素っ裸になったんだ」
 顧海は軽く白洛因の襟を引き寄せ、ボタンを三つ立て続けに外した。
「一緒に入ろうぜ! お前のズボンの裾も泥で汚れてるじゃないか。嫌じゃないのか?」
「お気遣いどうもありがとう!」
 白洛因は歯をむき出して顧海の滑らかな肩を叩き、膝で顧海の股間を蹴ると、歯の隙間から声を絞り出した。
「一人で入れ!」
  顧海はニヤニヤ笑う。
「白洛因のエッチ」
 白洛因は立ち去るつもりだったが、顧海の言葉を聞いて引き返した。顧海は無意識に自分の大事な場所を隠す。
「ずいぶん素早いじゃないか」
 白洛因は顔をしかめた。
 顧海は笑いを収め、真面目な顔で白洛因に聞く。
「シャワー室はビニールのカーテンだから外から透けて見えるけど、気にしないのか?」
「誰も来ないよ。特に女性はね。カーテンを開けて庭を裸で駆け回っても誰も気にしないさ」
「白さん、いるかしら?」
 そのとき、外からゾウおばさんのやさしい声が聞こえてきた。
 白洛因は口をつぐむ。
「嘘だろ!」
 顧海は凍りついた。
「誰も来ないなんて、俺をからかったのか?」
 白洛因はふんと笑う。
「おとなしくしてないと、俺を怒らせたらライターでこのカーテンに火をつけるぞ」
「……」



 鄒おばさんはバケツの中の魚を見て目を輝かせた。
「今日は魚を買ったの?」
「釣ったんだ」
 白洛因は得意げに笑う。
「鄒おばさん、おすそ分けするから料理してくれないかな。父さんに任せたらひどいことになりそうだから」
「あははは」
 鄒おばさんは豪快に笑った。
「この子ったら本当に口が上手いわね。じゃあ料理したらここに運んでくるわ」
 白漢旗は家から駆け出してくると、あわてて鄒おばさんを引き止める。
「とんでもない! 申し訳ないよ! 何匹か持って行ってくれ。残りは自分で料理するから」
 鄒おばさんは笑って何も言わず、バケツを持って白漢旗を避け、門を出て行った。
 またも遠慮したふりをしている父を引き留め、白洛因は真剣に相談する。
「顧海は多分うちで食べたいって言うだろうけど、我が家の飯は不味いからって断って。絶対受け入れないでほしいんだ」
「お前はどうしてそんなことを言うんだ?」
 白漢旗は眉をひそめる。
「お前たち二人で釣った魚だろう? なんで食べさせてやらないんだ」
「そんなことは言ってないよ。彼の家に届けるつもりだ」
 白洛因は視線を祖父母の部屋に向け、白漢旗に訴えた。
「うちの家族を笑いものにするわけにはいかないだろう!」
 白漢旗は息子の意図を理解して頷く。
「わかった。安心しろ。絶対引き留めないから」
 そのときちょうど顧海が出てきたので、白洛因は入れ替わりに服を持って浴室に入る。
「おじさん、誰がこの花を植えたんだ?」
「ああ、うちの息子が植えたんだ。綺麗だろう?」
「綺麗だね。一輪もらってもいい?」
「いいよ。好きに摘むといい」
 白洛因は思わずカーテンを引きちぎりそうになった。半年以上かけてやっと一輪だけ咲いた花だぞ!
「おじさん、晩ご飯をここでごちそうになってもいいですか?」
 その後沈黙が続き、白洛因はお湯を止めた。びしょぬれの髪の毛にはまだ泡が残っていたが、外の音を聞こうと耳をそばだてる。
「もちろん!」
 そして豪快な笑い声が聞こえてきた。
「帰りたくても帰さないぞ! ここでお腹いっぱい食べて行きなさい。はははははは……」
「……!!」
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