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第六章
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夕食を食べた後、顧海は自分から持ちかける。
「このあと一緒にシャワーを浴びよう。俺が体を拭いてやるよ。お前の体の傷は水に濡らさないほうがいい」
白洛因は断固拒絶する。
「俺の傷は顔だけだぞ。別に入浴に差しつかえはない」
「足もケガしてるじゃないか」
顧海は下心満載の目線で白洛因の膝を凝視し、自分に幸運が回って来ることを願った。
「ちょっと腫れただけだ。たいした傷じゃない」
白洛因は気にしない素振りで服を持ってシャワー室に向かう。
「同じ男だろう。一緒に洗ったって恥ずかしがることないじゃないか」
「目障りだ」
頑なで意固地な言葉に打ちのめされるどころか、顧海は軽く笑いを浮かべてみせた。
白洛因が入浴していると、浴室にしているシャワーカーテンがめくられ、顧海の魅惑的で放埓な顔が現れる。
「やっぱり心配だよ。大丈夫か?」
白洛因は彼に向かって石鹸箱を投げつけ、怒鳴りつけた。
「大丈夫だよ!」
顧海はシャワーカーテンを元に戻し、とても得をしたように歩きながらニヤけた。
あんなに恥ずかしがることがあるか? この間酒に酔ったときなんて自分からナニのでかさを比べようとしたくせに。つまり、あいつはムッツリスケベってことだな。表面上は隠しているが、実は誰よりスケベなんだ!
白洛因は手早く入浴を終えたが、服を着るときにもモヤモヤしていた。彼はよく銭湯を利用するのだが、大勢の男と裸で向き合って体を洗ってもなんの違和感もない。それがなぜ相手が顧海だと変な感じになるんだ?
顧海は白洛因のズボンを脱がせ、消毒液を手に取って彼に使おうとした。
白洛因は白い脱脂綿と透明な液体を見て肝を冷やす。小さい頃ケガをすると白漢旗が消毒をしてから薬を塗ってくれたのだが、その消毒はケガよりも痛かったのだ。
「消毒はやめないか。そのまま薬を塗ればいいよ」
「おとなしくしろ!」
顧海はもぞもぞ動く白洛因の足を押さえ、宥めようとする。
「大丈夫だ。痛くないから」
白洛因は少し力を抜いたが、すぐに刺すような痛みに襲われ、呻き声を上げた。
「ふざけんな。痛くないって言っただろう」
顧海はニヤリと笑う。
「俺の痛くないって言葉を信じたのか?」
白洛因は憤慨し、歯ぎしりをした。
顧海は胸がすっとした。午後あんなに嫌な思いをさせられたんだ。ちょっとくらい痛い思いをしてもらわないと俺の気が済まない!
薬を塗るころには白洛因はすでに抵抗する元気もなくなっていた。
顧海は薬を塗りながら彼の様子を窺ったが、白洛因はずっと同じ表情で耐えている。
「まだ痛むか?」
思わず尋ねると、白洛因は首を振った。
顧海はわざとゆっくり薬を塗りながら、さりげなく世間話をするように聞いてみる。
「今日のあの男だか女だかわからない奴は誰だ?」
それを聞いて白洛因はまた毛を逆立てた。
「もっとマシな言い方はできないのか?」
「だって実際そういう見た目だろう。俺は悪くない」
白洛因は怒りの目を向けながら不機嫌に答える。
「俺の幼馴染でこのあたりに住んでる。いい奴だよ!」
「名前は?」
「楊猛」
「楊萌? 確かに萌え~だな」
白洛因は顧海の頭をはたく。
「いい加減にしろよ」
そう言って顧海を蹴り、自分は布団の中に潜り込んだ。
明かりを消した後、顧海はまたも彼に堂々とセクハラ技をかけ始める。
数日前には白洛因が寝ているのをいいことに揉んだりつねったりしたのだが、いまや隠す気は失せた。白洛因が横たわると顧海はすぐに我慢できなくなり、スケベな手を白洛因のパジャマに潜り込ませる。
なんてすべすべなんだ……顧海はうっとりする。
白洛因は胸や背中を縦横無尽に這う顧海の手を強く掴み、眉間にしわを寄せた。
「どうかしてるだろう。こんな夜更けに俺にセクハラするなよ」
顧海は白洛因の肩の窪みに頭を乗せ、不埒な動きを続ける。
「だってお前に触りたいんだもん」
白洛因は彼に全身を撫でまわされて鳥肌が立ち、一喝した。
「触るなら彼女のところに行けよ。俺を触ってどうする!」
「あっちよりお前を触るほうが気持ちいいし……」
顧海は白洛因の耳元でささやく。だが白洛因は彼を睨みつけた。
「なんだと?」
顧海はその表情を見た途端呼吸が荒くなり、あやうく噛みつきそうになる。
「だって彼女はここにいないし、ムラムラしたとき隣にお前しかいないじゃないか……」
白洛因は怒り狂い、顧海の手を引っ張り出して振り払う。
「自分で自分を触ればもっと気持ちいいだろうが」
顧海の言葉はさらにエスカレートする。
「お前のことも気持ちよくしたいんだよ。一緒にやろうぜ。めちゃくちゃ気持ちいいから!」
「誰がお前とやるって?」
白洛因は怒りに胸を喘がせ、視線を顧海に向けながら、不埒な手が伸びてくるのを防ごうと身構えた。
顧海は白洛因が怯えながら自分を見る姿に突然可愛さを感じ、爆発しそうになる。彼が癇癪を起した時の頑固な口元や執拗な視線、挑発された後に我慢しつつも同時にどこか楽しんでいる様子が見たくて、抱え込んで虐め倒したくなった。
「このあと一緒にシャワーを浴びよう。俺が体を拭いてやるよ。お前の体の傷は水に濡らさないほうがいい」
白洛因は断固拒絶する。
「俺の傷は顔だけだぞ。別に入浴に差しつかえはない」
「足もケガしてるじゃないか」
顧海は下心満載の目線で白洛因の膝を凝視し、自分に幸運が回って来ることを願った。
「ちょっと腫れただけだ。たいした傷じゃない」
白洛因は気にしない素振りで服を持ってシャワー室に向かう。
「同じ男だろう。一緒に洗ったって恥ずかしがることないじゃないか」
「目障りだ」
頑なで意固地な言葉に打ちのめされるどころか、顧海は軽く笑いを浮かべてみせた。
白洛因が入浴していると、浴室にしているシャワーカーテンがめくられ、顧海の魅惑的で放埓な顔が現れる。
「やっぱり心配だよ。大丈夫か?」
白洛因は彼に向かって石鹸箱を投げつけ、怒鳴りつけた。
「大丈夫だよ!」
顧海はシャワーカーテンを元に戻し、とても得をしたように歩きながらニヤけた。
あんなに恥ずかしがることがあるか? この間酒に酔ったときなんて自分からナニのでかさを比べようとしたくせに。つまり、あいつはムッツリスケベってことだな。表面上は隠しているが、実は誰よりスケベなんだ!
白洛因は手早く入浴を終えたが、服を着るときにもモヤモヤしていた。彼はよく銭湯を利用するのだが、大勢の男と裸で向き合って体を洗ってもなんの違和感もない。それがなぜ相手が顧海だと変な感じになるんだ?
顧海は白洛因のズボンを脱がせ、消毒液を手に取って彼に使おうとした。
白洛因は白い脱脂綿と透明な液体を見て肝を冷やす。小さい頃ケガをすると白漢旗が消毒をしてから薬を塗ってくれたのだが、その消毒はケガよりも痛かったのだ。
「消毒はやめないか。そのまま薬を塗ればいいよ」
「おとなしくしろ!」
顧海はもぞもぞ動く白洛因の足を押さえ、宥めようとする。
「大丈夫だ。痛くないから」
白洛因は少し力を抜いたが、すぐに刺すような痛みに襲われ、呻き声を上げた。
「ふざけんな。痛くないって言っただろう」
顧海はニヤリと笑う。
「俺の痛くないって言葉を信じたのか?」
白洛因は憤慨し、歯ぎしりをした。
顧海は胸がすっとした。午後あんなに嫌な思いをさせられたんだ。ちょっとくらい痛い思いをしてもらわないと俺の気が済まない!
薬を塗るころには白洛因はすでに抵抗する元気もなくなっていた。
顧海は薬を塗りながら彼の様子を窺ったが、白洛因はずっと同じ表情で耐えている。
「まだ痛むか?」
思わず尋ねると、白洛因は首を振った。
顧海はわざとゆっくり薬を塗りながら、さりげなく世間話をするように聞いてみる。
「今日のあの男だか女だかわからない奴は誰だ?」
それを聞いて白洛因はまた毛を逆立てた。
「もっとマシな言い方はできないのか?」
「だって実際そういう見た目だろう。俺は悪くない」
白洛因は怒りの目を向けながら不機嫌に答える。
「俺の幼馴染でこのあたりに住んでる。いい奴だよ!」
「名前は?」
「楊猛」
「楊萌? 確かに萌え~だな」
白洛因は顧海の頭をはたく。
「いい加減にしろよ」
そう言って顧海を蹴り、自分は布団の中に潜り込んだ。
明かりを消した後、顧海はまたも彼に堂々とセクハラ技をかけ始める。
数日前には白洛因が寝ているのをいいことに揉んだりつねったりしたのだが、いまや隠す気は失せた。白洛因が横たわると顧海はすぐに我慢できなくなり、スケベな手を白洛因のパジャマに潜り込ませる。
なんてすべすべなんだ……顧海はうっとりする。
白洛因は胸や背中を縦横無尽に這う顧海の手を強く掴み、眉間にしわを寄せた。
「どうかしてるだろう。こんな夜更けに俺にセクハラするなよ」
顧海は白洛因の肩の窪みに頭を乗せ、不埒な動きを続ける。
「だってお前に触りたいんだもん」
白洛因は彼に全身を撫でまわされて鳥肌が立ち、一喝した。
「触るなら彼女のところに行けよ。俺を触ってどうする!」
「あっちよりお前を触るほうが気持ちいいし……」
顧海は白洛因の耳元でささやく。だが白洛因は彼を睨みつけた。
「なんだと?」
顧海はその表情を見た途端呼吸が荒くなり、あやうく噛みつきそうになる。
「だって彼女はここにいないし、ムラムラしたとき隣にお前しかいないじゃないか……」
白洛因は怒り狂い、顧海の手を引っ張り出して振り払う。
「自分で自分を触ればもっと気持ちいいだろうが」
顧海の言葉はさらにエスカレートする。
「お前のことも気持ちよくしたいんだよ。一緒にやろうぜ。めちゃくちゃ気持ちいいから!」
「誰がお前とやるって?」
白洛因は怒りに胸を喘がせ、視線を顧海に向けながら、不埒な手が伸びてくるのを防ごうと身構えた。
顧海は白洛因が怯えながら自分を見る姿に突然可愛さを感じ、爆発しそうになる。彼が癇癪を起した時の頑固な口元や執拗な視線、挑発された後に我慢しつつも同時にどこか楽しんでいる様子が見たくて、抱え込んで虐め倒したくなった。
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