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第九章
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「どうして黙ってるんだ?」
顧海の問いかけに白洛因は目を閉じる。顔も見たくなかった。
俺を見たくないのか? 見たくなくてもお前の目を開けさせてやるからな!
顧海は顔を寄せ、前触れもなく白洛因の薄い唇に口づけた。
白洛因の体は硬直し、驚愕に目を見張る。逆に顧海は目を閉じ、とても深く集中していた。熟練したテクニックと不器用な心がないまぜになり、白洛因の腰に添えられた手はかすかに震えていた。
心が嵐に巻き込まれたようだった。
「お前……」
白洛因はくぐもった声を上げたが、あっという間に顧海の口に飲み込まれる。顧海は完全に理性を打ち捨てた。舌先が白洛因の歯茎に触れた瞬間、その湿った感触に電流が走る。かつてないほど大きく心が震え、顧海の胸に燃え盛る炎は彼自身をも焼き尽くそうとしていた。
足りない。全然足りない。もっと欲しい。
白洛因が歯を使って攻撃してくるのを防ぐため、顧海は手で彼の両頬を押さえ、無理やり舌を差し込んだ。舌同士が触れ合うとさらに大きな電流が体の隅々まで流れ込む。顧海は荒々しく貪欲に白洛因の口腔を蹂躙し、逃げ惑う彼の舌を捉え、甘く噛んで吸い舐る。すべて腹に飲みこんでしまいたかった。
男女間のキスとは違い、そこに至るまでに過剰なムード作りもなく、心の深いところから沸き起こる激情が一線を越えて噴き出し、大きな力に飲み込まれていく。激しく狂おしく、津波のような破壊力で二人の心を砕く勢いだった。
顧海の唇が白洛因から離れても、彼の手はまだ白洛因の頬に触れていた。髪を後ろに撫でつけると、完璧に整った顔が現れる。この顔が彼を魅了し、魂を惑わし、すべての意志を奪い尽くしていく。
「ベイビー……」
顧海は我を忘れ、うっとりと白洛因に見入った。
「前から俺の気持ちは知っていたんだろう? 俺のお前に対する感情が普通じゃないってとっくにわかっていたよな? だから俺がキスをしたって驚かないだろう」
白洛因の怒りの形相は美しい。一秒ごとに表情が変わる。
「顧海! 貴様……」
「怒るな!」
顧海は白洛因の口を塞いだ。
「まず俺の話を聞いてくれ。それから罵ればいい。どうせ俺はお前の中で高潔なイメージでもないし、それを壊したところでせいぜい俺を恨む程度だよな。無視されるくらいなら恨まれたほうがマシだ。白洛因、よく聞け。俺はお前を兄弟分だと思ったことはない。優しくしたのはお前が好きだからだ。俺はお前を恋愛相手として尽くしたし、お前と一緒のベッドに寝たがったのはお前とやりたかったからだ。俺はお前のエロい声がどうしても聞きたかった」
「……」
「俺をろくでなしの変態だと思うだろう? 言っておくが他の奴はどうでもいい。お前だけだ。お前みたいに魅力的でエロい奴は他にいない。お前が笑っただけで俺はメロメロになるんだ。白洛因、清純ぶるのはやめろ。この野郎、お前は俺の下心が分かっててわざと誘惑してるんだろう! 俺は今日話したことをちっとも後悔してないぞ! 俺を罵りたいんだろう? それなら好きなだけ罵ればいい! お前が罵れば罵るほど俺は興奮するし、お前をやりたくなる。お前の怒ったり我慢したり気まずそうな顔がどれだけそそるか知ってるか? 俺が品行方正な人間じゃなけりゃ今頃お前のズボンを引きちぎってるぞ!……まあいい。さあ、俺を罵れ。聞いてやる。好きなだけ俺を責めろ!」
白洛因は神様に盛大なドッキリを仕掛けられているような気分になったが、堪えた。顧海が口角泡を飛ばしていやらしい言葉で彼を侮辱しているのに、それでも我慢したのだ。
「お前を罵ったりしないよ」
白洛因は異常なほど冷静だった。顧海は探るように白洛因の顔を凝視した後、絶望的な笑顔を浮かべた。
「がっかりしたか? 俺という人間に出会って後悔したんだろう? 俺をお前の世界から完全に消し去りたいか? 無駄だ! 俺に飽き飽きして逃げたくなっても許さないからな!」
もし白洛因の手にレンガがあれば、顧海の口元めがけて投げつけていただろう。
「顧海、そんなことを言うと後で代償を払う羽目になるぞ」
「かまわないね!」
顧海の瞳には力がみなぎっていた。
「毎日お前に会えるなら、どんな対価も払う」
「よし、じゃあよく聞け。俺はそもそも今朝お前に謝りに来ようとしてたんだ。夕べ父さんとじっくり話をしたんだけど、父さんはお前の素性をまったく気にしていないってわかったんだ。お前を家に連れて来いと言われて、俺は承諾したんだぞ! その結果、朝から攫われぐるぐる巻きにされてここに連れてこられ、頭のおかしな奴に侮辱されまくったんだ。なあ、俺はどうするべきだと思う?」
「……」
「俺の手を解け!」
白洛因は吠えた。今度は顧海の顔色がどんどん変わっていく。
「それは……本当か?」
彼の顔には期待と不安が入り混じっているようだった。
「いい加減にしろ!」
顧海はまだ疑いの色を消さない。
「わざと俺を弄んでまた騙すつもりじゃないだろうな?」
被害者意識から抜け出せない顧海は、携帯を持ち上げ白漢旗に電話をかけた。
「おじさん……」
「大海、なんで最近家に遊びに来ないんだ? おじさんはお前に会いたいよ。ばあちゃんも毎日お前のことを話してるぞ」
「おじさん、因子は全部話したんでしょう?」
そう言いながら白洛因をチラチラ盗み見る。
「そうだよ。大海、因子の物分かりが悪いから俺がお前のところに行けって言ったんだ。もうそっちに着いただろう?」
「はい……」
顧海は息が詰まったように答えた。
「もうすぐ着くと思います。見に行ってみます、あの、おじさん、それじゃあ……」
形勢は逆転した。白洛因は沈んだ面持ちで刺すような視線を顧海に向ける。
「解け!」
顧海はやはり厚顔無恥に白洛因にぴったりくっついたが、表情は優しさがあふれるものに変わっていた。
「俺が解いてお前が逃げたらどうする?」
「安心しろ。絶対逃げないから!」
顧海は手錠を外した。次の瞬間、白洛因は獰猛な獣のように顧海の腕を掴んで蹴りつける。ベッドの端から端まで、それからベッドの下まで蹴り倒し、それでも気が収まらず、完全に怒りが解けて良心が自分を諫めるまで冷たく硬い手錠で顧海を打ち据えた。
「ベイビー、怒るなよ」
「誰が誰をやるって?」
顧海は頭を抱えたが、口元には邪な笑みが残っていた。
「女房とやりたくない男はいい旦那じゃないだろう?」
「こいつ……」
白洛因は顧海を追いかけ部屋中を走り回る。虐め疲れた白洛因はベッドに座ってしばらく息を整えると、立ち上がって戸口に向かった。
「どこに行くんだよ」
顧海は立ちはだかる。白洛因は怒りの眼差しを向けた。
「俺がどこに行こうが勝手だろう!」
「それはダメだ」
顧海は真剣な顔をする。
「まだちゃんと話ができてないのに、帰っちゃうのか?」
「これ以上お前に何を言えというんだ」
白洛因が十数年かけて増やしてきた脳細胞は、今日だけで怒りのあまり数億個は死んだだろう。
「俺はすごく頑張って告白したんだ。それに対して何か答えを返してくれよ」
「俺に答えを返せって?」
白洛因は怒りで息が荒くなる。
「お前を打ち殺さないだけでもマシだと思え」
「どんな返事をくれるんだ?」
顧海はドアの框にもたれ、いやらしくチンピラめいた笑みを浮かべた。
「俺はお前が好きだと言ったんだ。何かしら返してくれないと」
白洛因の耳元は赤さを通り越して紫色に変わる。
「顧海、お前はまともになれないのか?」
「誰がまともじゃないって?」
顧海はまっすぐ立ち、頑強不屈な様子ではっきり言い切った。
「俺は心の底から本音で話をしてるんだ!」
しばらく沈黙が続いた後、白洛因は答えを絞り出す。
「俺たちは両方とも男だ」
「両方男だからなんだっていうんだ」
顧海は堂々と胸を張った。
「忘れたのか。あの日俺たち街角で犬と猫がいちゃついてるのを見たじゃないか」
「それとこれとは違うだろう?」
白洛因は頭を壁にぶつけて死にたくなる。顧海はそれでも言い張った。
「男でも女でも、雄猫だろうと雌犬だろうとどうでもいい。言えよ。俺のことが好きか?」
白洛因は喉仏を動かし、この一言を口にするのに長い時間を費やした。
「好きじゃない」
顧海は凍りついた。白洛因は顧海を押しのける。
「どけよ。俺は帰る!」
顧海は微動だにしなかった。白洛因は怒る。
「お前はどうしたいんだ」
「俺が好きじゃないんだろう? わかった。俺は引き続きお前を閉じ込める。そして俺を好きになったら自由にしてやるよ!」
「顧海!」
顧海は向きを変え、屈強な体躯で同じ身長の白洛因を強く激しい力で抱きしめ、再び唇を塞ぐ。白洛因が狂ったように蹴っても無視し、強い腕で彼をがっちり押さえつけると、胸いっぱいの情熱を白洛因の唇にぶつけ、何度も繰り返し彼の唇と舌に吸い付いた。血の味が口の中に広がると顧海はさらに高まり、大軍が心の中で暴れ回るように鼓動も高鳴り血が上った。
「因子!」
顧海はわずかに譲歩するように白洛因を見つめる。
「俺は本当にお前が好きなんだ。きっとお前はとっくに気づいていたと思うけど。俺のさっきの戯言は無視してもいいよ。でもいまの話は疑わないでくれ。お前に俺との関係を強要したりはしない。ただお前の気持ちが知りたいんだ。だからお前もそんなに答えを急がなくていい。俺は待つ。俺はお前を口説いて大きな愛情でお前の心を動かす! 絶対にできるはずだ!」
「……」
顧海の問いかけに白洛因は目を閉じる。顔も見たくなかった。
俺を見たくないのか? 見たくなくてもお前の目を開けさせてやるからな!
顧海は顔を寄せ、前触れもなく白洛因の薄い唇に口づけた。
白洛因の体は硬直し、驚愕に目を見張る。逆に顧海は目を閉じ、とても深く集中していた。熟練したテクニックと不器用な心がないまぜになり、白洛因の腰に添えられた手はかすかに震えていた。
心が嵐に巻き込まれたようだった。
「お前……」
白洛因はくぐもった声を上げたが、あっという間に顧海の口に飲み込まれる。顧海は完全に理性を打ち捨てた。舌先が白洛因の歯茎に触れた瞬間、その湿った感触に電流が走る。かつてないほど大きく心が震え、顧海の胸に燃え盛る炎は彼自身をも焼き尽くそうとしていた。
足りない。全然足りない。もっと欲しい。
白洛因が歯を使って攻撃してくるのを防ぐため、顧海は手で彼の両頬を押さえ、無理やり舌を差し込んだ。舌同士が触れ合うとさらに大きな電流が体の隅々まで流れ込む。顧海は荒々しく貪欲に白洛因の口腔を蹂躙し、逃げ惑う彼の舌を捉え、甘く噛んで吸い舐る。すべて腹に飲みこんでしまいたかった。
男女間のキスとは違い、そこに至るまでに過剰なムード作りもなく、心の深いところから沸き起こる激情が一線を越えて噴き出し、大きな力に飲み込まれていく。激しく狂おしく、津波のような破壊力で二人の心を砕く勢いだった。
顧海の唇が白洛因から離れても、彼の手はまだ白洛因の頬に触れていた。髪を後ろに撫でつけると、完璧に整った顔が現れる。この顔が彼を魅了し、魂を惑わし、すべての意志を奪い尽くしていく。
「ベイビー……」
顧海は我を忘れ、うっとりと白洛因に見入った。
「前から俺の気持ちは知っていたんだろう? 俺のお前に対する感情が普通じゃないってとっくにわかっていたよな? だから俺がキスをしたって驚かないだろう」
白洛因の怒りの形相は美しい。一秒ごとに表情が変わる。
「顧海! 貴様……」
「怒るな!」
顧海は白洛因の口を塞いだ。
「まず俺の話を聞いてくれ。それから罵ればいい。どうせ俺はお前の中で高潔なイメージでもないし、それを壊したところでせいぜい俺を恨む程度だよな。無視されるくらいなら恨まれたほうがマシだ。白洛因、よく聞け。俺はお前を兄弟分だと思ったことはない。優しくしたのはお前が好きだからだ。俺はお前を恋愛相手として尽くしたし、お前と一緒のベッドに寝たがったのはお前とやりたかったからだ。俺はお前のエロい声がどうしても聞きたかった」
「……」
「俺をろくでなしの変態だと思うだろう? 言っておくが他の奴はどうでもいい。お前だけだ。お前みたいに魅力的でエロい奴は他にいない。お前が笑っただけで俺はメロメロになるんだ。白洛因、清純ぶるのはやめろ。この野郎、お前は俺の下心が分かっててわざと誘惑してるんだろう! 俺は今日話したことをちっとも後悔してないぞ! 俺を罵りたいんだろう? それなら好きなだけ罵ればいい! お前が罵れば罵るほど俺は興奮するし、お前をやりたくなる。お前の怒ったり我慢したり気まずそうな顔がどれだけそそるか知ってるか? 俺が品行方正な人間じゃなけりゃ今頃お前のズボンを引きちぎってるぞ!……まあいい。さあ、俺を罵れ。聞いてやる。好きなだけ俺を責めろ!」
白洛因は神様に盛大なドッキリを仕掛けられているような気分になったが、堪えた。顧海が口角泡を飛ばしていやらしい言葉で彼を侮辱しているのに、それでも我慢したのだ。
「お前を罵ったりしないよ」
白洛因は異常なほど冷静だった。顧海は探るように白洛因の顔を凝視した後、絶望的な笑顔を浮かべた。
「がっかりしたか? 俺という人間に出会って後悔したんだろう? 俺をお前の世界から完全に消し去りたいか? 無駄だ! 俺に飽き飽きして逃げたくなっても許さないからな!」
もし白洛因の手にレンガがあれば、顧海の口元めがけて投げつけていただろう。
「顧海、そんなことを言うと後で代償を払う羽目になるぞ」
「かまわないね!」
顧海の瞳には力がみなぎっていた。
「毎日お前に会えるなら、どんな対価も払う」
「よし、じゃあよく聞け。俺はそもそも今朝お前に謝りに来ようとしてたんだ。夕べ父さんとじっくり話をしたんだけど、父さんはお前の素性をまったく気にしていないってわかったんだ。お前を家に連れて来いと言われて、俺は承諾したんだぞ! その結果、朝から攫われぐるぐる巻きにされてここに連れてこられ、頭のおかしな奴に侮辱されまくったんだ。なあ、俺はどうするべきだと思う?」
「……」
「俺の手を解け!」
白洛因は吠えた。今度は顧海の顔色がどんどん変わっていく。
「それは……本当か?」
彼の顔には期待と不安が入り混じっているようだった。
「いい加減にしろ!」
顧海はまだ疑いの色を消さない。
「わざと俺を弄んでまた騙すつもりじゃないだろうな?」
被害者意識から抜け出せない顧海は、携帯を持ち上げ白漢旗に電話をかけた。
「おじさん……」
「大海、なんで最近家に遊びに来ないんだ? おじさんはお前に会いたいよ。ばあちゃんも毎日お前のことを話してるぞ」
「おじさん、因子は全部話したんでしょう?」
そう言いながら白洛因をチラチラ盗み見る。
「そうだよ。大海、因子の物分かりが悪いから俺がお前のところに行けって言ったんだ。もうそっちに着いただろう?」
「はい……」
顧海は息が詰まったように答えた。
「もうすぐ着くと思います。見に行ってみます、あの、おじさん、それじゃあ……」
形勢は逆転した。白洛因は沈んだ面持ちで刺すような視線を顧海に向ける。
「解け!」
顧海はやはり厚顔無恥に白洛因にぴったりくっついたが、表情は優しさがあふれるものに変わっていた。
「俺が解いてお前が逃げたらどうする?」
「安心しろ。絶対逃げないから!」
顧海は手錠を外した。次の瞬間、白洛因は獰猛な獣のように顧海の腕を掴んで蹴りつける。ベッドの端から端まで、それからベッドの下まで蹴り倒し、それでも気が収まらず、完全に怒りが解けて良心が自分を諫めるまで冷たく硬い手錠で顧海を打ち据えた。
「ベイビー、怒るなよ」
「誰が誰をやるって?」
顧海は頭を抱えたが、口元には邪な笑みが残っていた。
「女房とやりたくない男はいい旦那じゃないだろう?」
「こいつ……」
白洛因は顧海を追いかけ部屋中を走り回る。虐め疲れた白洛因はベッドに座ってしばらく息を整えると、立ち上がって戸口に向かった。
「どこに行くんだよ」
顧海は立ちはだかる。白洛因は怒りの眼差しを向けた。
「俺がどこに行こうが勝手だろう!」
「それはダメだ」
顧海は真剣な顔をする。
「まだちゃんと話ができてないのに、帰っちゃうのか?」
「これ以上お前に何を言えというんだ」
白洛因が十数年かけて増やしてきた脳細胞は、今日だけで怒りのあまり数億個は死んだだろう。
「俺はすごく頑張って告白したんだ。それに対して何か答えを返してくれよ」
「俺に答えを返せって?」
白洛因は怒りで息が荒くなる。
「お前を打ち殺さないだけでもマシだと思え」
「どんな返事をくれるんだ?」
顧海はドアの框にもたれ、いやらしくチンピラめいた笑みを浮かべた。
「俺はお前が好きだと言ったんだ。何かしら返してくれないと」
白洛因の耳元は赤さを通り越して紫色に変わる。
「顧海、お前はまともになれないのか?」
「誰がまともじゃないって?」
顧海はまっすぐ立ち、頑強不屈な様子ではっきり言い切った。
「俺は心の底から本音で話をしてるんだ!」
しばらく沈黙が続いた後、白洛因は答えを絞り出す。
「俺たちは両方とも男だ」
「両方男だからなんだっていうんだ」
顧海は堂々と胸を張った。
「忘れたのか。あの日俺たち街角で犬と猫がいちゃついてるのを見たじゃないか」
「それとこれとは違うだろう?」
白洛因は頭を壁にぶつけて死にたくなる。顧海はそれでも言い張った。
「男でも女でも、雄猫だろうと雌犬だろうとどうでもいい。言えよ。俺のことが好きか?」
白洛因は喉仏を動かし、この一言を口にするのに長い時間を費やした。
「好きじゃない」
顧海は凍りついた。白洛因は顧海を押しのける。
「どけよ。俺は帰る!」
顧海は微動だにしなかった。白洛因は怒る。
「お前はどうしたいんだ」
「俺が好きじゃないんだろう? わかった。俺は引き続きお前を閉じ込める。そして俺を好きになったら自由にしてやるよ!」
「顧海!」
顧海は向きを変え、屈強な体躯で同じ身長の白洛因を強く激しい力で抱きしめ、再び唇を塞ぐ。白洛因が狂ったように蹴っても無視し、強い腕で彼をがっちり押さえつけると、胸いっぱいの情熱を白洛因の唇にぶつけ、何度も繰り返し彼の唇と舌に吸い付いた。血の味が口の中に広がると顧海はさらに高まり、大軍が心の中で暴れ回るように鼓動も高鳴り血が上った。
「因子!」
顧海はわずかに譲歩するように白洛因を見つめる。
「俺は本当にお前が好きなんだ。きっとお前はとっくに気づいていたと思うけど。俺のさっきの戯言は無視してもいいよ。でもいまの話は疑わないでくれ。お前に俺との関係を強要したりはしない。ただお前の気持ちが知りたいんだ。だからお前もそんなに答えを急がなくていい。俺は待つ。俺はお前を口説いて大きな愛情でお前の心を動かす! 絶対にできるはずだ!」
「……」
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