あの日咲かせた緋色の花は

棺ノア

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第5章

令嬢

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終業のチャイムが鳴り、生徒達は帰り支度をしたり部活準備に向かったりと、各々が思い思いに動き出した。

裕璃も例外ではなく、帰宅しようと復習に使う予定のノートをリュックに詰め込んでいたのだが、背後で自分を呼ぶ声が聞こえたのでくるりと振り返った。

「上城さん、少し良いかしら?」

「あれ、萌愛ちゃん?どうしたの?」

視線の先には、裕璃のクラスメイトであり学年を通して"お嬢様の理想"と評判の神林  萌愛(かんばやし もな)が浮かない顔で立っていた。

「少し相談したいのですが、あまり周囲に聞こえると困るから一度私の家に来ていただきたいの。急で申し訳無いのだけど、今からでは都合が悪いかしら?」

「いや?特に何かする予定もないから、取り敢えず話聞きに行こうか?ボクが役立てるかどうか知らないけど…」

裕璃の言葉に、今まで全面に出ていた浮かない表情が僅かに明るくなる。

「ほんと?ありがとう!では表に迎えの車が来ているので案内しますわ」

そうして裕璃は芽愚に連絡を入れ、二人で萌愛の家に行くことになった。




「…ストーカー!?」

「声が大きいですの!!…そうなの、何だか最近外にいると視線を感じることが多くて……それだけならまだしも、明らかに私を追う足音が聞こえることもありますの。裕璃さんのおうちは大財閥ですから、探偵業のようなものをしていらしたら少し調べていただきたいのですわ」

萌愛の話を聞き、裕璃は頭を抱えた。
確かに黒城組には、探偵もどきの仕事をする者がいる。しかし、表社会で動ける範囲で受けるため依頼の殆どが浮気調査や捜し物調査であり、今回のような事件性を孕む案件は専門外なのだ。

とは言え裕璃とて、困っている人がいるなら出来るだけ助けたいと思う。もし本当にストーカーだった場合、行動がエスカレートする可能性もあるため早い段階で解決しておく必要があった。

ちなみに萌愛が急に裕璃を名前呼びするようになったのは、裕璃が堅苦しいからと苗字呼びを拒んだためである。

「警察は?」

「それが一度ご相談したのですが、二日間調査して何もなかったら気のせいだとおっしゃってね…。全然寄り添ってくださらなかったの」

「え、何それ使えな…クズじゃん…」

今の警察が手に負えないほど治安が悪いと言えども、ここまでヒドいとは思わなかった。そんなことならば裕璃が手を差し伸べるしかあるまい。

「えぇぇええ……ちょっと待ってね?取り敢えず家で相談してみるよ。ボクだけでどうするか決められることじゃないからね」

「そ、そうよね!本当に私ったら自分の事ばかり考えて…ごめんなさい…」

「いやいや、付きまとわれてると気づいたらそりゃ不安にもなるよ。じゃ、萌愛ちゃんはしばらく外に出るとき絶対に誰かと一緒にね。絶対一人になっちゃダメだからね!!」

「わ、分かったわ!」

プランは一切見えていないが、情報収集班もいることだし、何とかなるだろう。

もしダメだったら自分だけで調査してもいいしなぁと、裕璃はボンヤリと思っていた。
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