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第5章
調査開始
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神林家をお暇し、萌愛の力になれるとホッと一安心した裕璃に待っていたのは衝撃的な台詞だった。
「じゃ、そういうことだから、ユリ。この一件は任せたぞ。頑張れよ」
「…え?ちょ、待って待って!今神林さんの家で優秀な調査員がいるとか言ってたよね?ボクが頼んだんだからそりゃボク主軸でやるつもりだったけど、もうちょっとそういう系の専門の人に手伝ってもらえたりしないの?」
「そうは言ってもストーカー関係はほぼストーカー本人を殺してくれっていう殺人案件だったからな。あのお嬢がどうしたいのかはっきりさせないことにはどう解決していくかも決められたもんじゃねぇ。それに、あの父親じゃないがまだ緊急性が感じられないのでな、お前一人でも大丈夫だと思うんだが?」
「うッ…確かに緊急性はない気がするけどさぁ…」
言い淀む裕璃に拍車をかけるように、龍は楽しそうに笑みながらさらりと言う。
「この際だからついでに言っておくが、俺はお前をかなり優秀だと思っているぞ?その年にして一人でも何件か解決できているしな」
「何なの急に…すごい褒めてくれるじゃん…」
裕璃は唐突すぎる称賛に、照れくさくていたたまれない気持ちになった。
龍は解決報告をした時に「よくやった」と言ってくれるが、特に何もないタイミングで人を褒めるのは珍しいのだ。
「あっはっは…まぁ依頼者はユリの友達なんだ。探偵に任せるよりも、自分が近くにいるようにして様子を見た方がいいんじゃないか?」
「…うん、分かった。頑張るね」
「おう、その心意気だ」
そうして、一旦裕璃が一人で調査することになったのだった。
•
•
萌愛は登下校の際、車で送迎してもらっている。そのため普段は後ろから視線を感じたり追われたりすることがないが、少し買い物に出かける時など、一人で出歩くタイミングで人影を感じることがあった。
四人での話し合いから数日後、裕璃は参考書を買いに行きたいと言う萌愛に付き合って大型書店に来ていた。
今までも外に出かけるときは誰かしらの付き添いがあったが、ストーカーは登下校時以外なら萌愛が一人だろうがそうでなかろうが現れるそうだ。
この書店には電車で訪れたのだが、道中で怪しい人影を見かけることはなかった。
そこで、萌愛が英検の参考書を見ている間に裕璃はさり気なく辺りを見渡した。
(ん~…?今日は来ないのかな~?)
やはり周りは普通の客ばかりで、コソコソしている人はいない。
そこで、ふと裕璃は萌愛につくストーカーがどんな感じの人物か全く知らないということに気づいた。
それでは仮にこの場にストーカーがいたとしても、堂々としていれば一般客に紛れ込んでしまうだろう。そのため、萌愛にそっと聞いてみることにした。
「ねぇ萌愛ちゃん、そういえばついてくる人がどんな感じかって分かる?ほら、背が高いとか細身とか」
その問いに、萌愛は顎に手をやり考える。
「…そうねぇ~、あまり間近で見たことがないけれど、背はそこまで高くない気がするわ。細身ではあるわね。あと、マスクをしているから顔は分かりづらいわ」
「…おっけ~、ありがとう」
「いえ、こちらこそお手を煩わせてしまってごめんなさいですの」
「それは大丈夫だって」
その後、ついでだということで二人は文庫本コーナーに行って楽しく話し、萌愛が小説を物色している間も裕璃はずっと周囲を警戒していたのだが、とうとう書店を出るまでそれらしき人影と遭遇することがなかった。
書店を発ち、次はどうしたいか尋ねると、萌愛は「久し振りのお出かけなので何か甘いものを食べたい」と恥ずかしそうに訴えた。
その様子を微笑ましげに見つめつつ、「じゃ、近くに美味しいケーキ屋さんがあるみたいだから行ってみよっか」と言うと萌愛が目を輝かせて何度も頷いたので、二人はケーキ屋に向かって歩き出した。
「じゃ、そういうことだから、ユリ。この一件は任せたぞ。頑張れよ」
「…え?ちょ、待って待って!今神林さんの家で優秀な調査員がいるとか言ってたよね?ボクが頼んだんだからそりゃボク主軸でやるつもりだったけど、もうちょっとそういう系の専門の人に手伝ってもらえたりしないの?」
「そうは言ってもストーカー関係はほぼストーカー本人を殺してくれっていう殺人案件だったからな。あのお嬢がどうしたいのかはっきりさせないことにはどう解決していくかも決められたもんじゃねぇ。それに、あの父親じゃないがまだ緊急性が感じられないのでな、お前一人でも大丈夫だと思うんだが?」
「うッ…確かに緊急性はない気がするけどさぁ…」
言い淀む裕璃に拍車をかけるように、龍は楽しそうに笑みながらさらりと言う。
「この際だからついでに言っておくが、俺はお前をかなり優秀だと思っているぞ?その年にして一人でも何件か解決できているしな」
「何なの急に…すごい褒めてくれるじゃん…」
裕璃は唐突すぎる称賛に、照れくさくていたたまれない気持ちになった。
龍は解決報告をした時に「よくやった」と言ってくれるが、特に何もないタイミングで人を褒めるのは珍しいのだ。
「あっはっは…まぁ依頼者はユリの友達なんだ。探偵に任せるよりも、自分が近くにいるようにして様子を見た方がいいんじゃないか?」
「…うん、分かった。頑張るね」
「おう、その心意気だ」
そうして、一旦裕璃が一人で調査することになったのだった。
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萌愛は登下校の際、車で送迎してもらっている。そのため普段は後ろから視線を感じたり追われたりすることがないが、少し買い物に出かける時など、一人で出歩くタイミングで人影を感じることがあった。
四人での話し合いから数日後、裕璃は参考書を買いに行きたいと言う萌愛に付き合って大型書店に来ていた。
今までも外に出かけるときは誰かしらの付き添いがあったが、ストーカーは登下校時以外なら萌愛が一人だろうがそうでなかろうが現れるそうだ。
この書店には電車で訪れたのだが、道中で怪しい人影を見かけることはなかった。
そこで、萌愛が英検の参考書を見ている間に裕璃はさり気なく辺りを見渡した。
(ん~…?今日は来ないのかな~?)
やはり周りは普通の客ばかりで、コソコソしている人はいない。
そこで、ふと裕璃は萌愛につくストーカーがどんな感じの人物か全く知らないということに気づいた。
それでは仮にこの場にストーカーがいたとしても、堂々としていれば一般客に紛れ込んでしまうだろう。そのため、萌愛にそっと聞いてみることにした。
「ねぇ萌愛ちゃん、そういえばついてくる人がどんな感じかって分かる?ほら、背が高いとか細身とか」
その問いに、萌愛は顎に手をやり考える。
「…そうねぇ~、あまり間近で見たことがないけれど、背はそこまで高くない気がするわ。細身ではあるわね。あと、マスクをしているから顔は分かりづらいわ」
「…おっけ~、ありがとう」
「いえ、こちらこそお手を煩わせてしまってごめんなさいですの」
「それは大丈夫だって」
その後、ついでだということで二人は文庫本コーナーに行って楽しく話し、萌愛が小説を物色している間も裕璃はずっと周囲を警戒していたのだが、とうとう書店を出るまでそれらしき人影と遭遇することがなかった。
書店を発ち、次はどうしたいか尋ねると、萌愛は「久し振りのお出かけなので何か甘いものを食べたい」と恥ずかしそうに訴えた。
その様子を微笑ましげに見つめつつ、「じゃ、近くに美味しいケーキ屋さんがあるみたいだから行ってみよっか」と言うと萌愛が目を輝かせて何度も頷いたので、二人はケーキ屋に向かって歩き出した。
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