27 / 33
第5章
急展開
しおりを挟む
キッと睨みつけながら問いかけると、男は虚ろな目をこちらに向けながら言った。
「お前は何者だ?あの小娘とはどういう関係なんだ」
「そんなの他人の貴方に関係ないじゃないですか」
「いいから答えろ!」
このままでは埒が明かないと判断した裕璃はため息を吐きながら答えた。
「彼女は大切な友人ですが。何者かと問われても見た通りただの学生です」
「嘘だ。お前はあの小娘と歩くとき、常に僕がいる側にまわっていただろう。さっきも腕を掴まれると分かって避けた。あのスピードは常人では無理だ」
裕璃はその台詞を聞き、ギリィッと歯を噛み締めた。そうだ。確かに男の言うとおりケーキ屋を出た後も男の存在に気づき、男から萌愛を隠すように歩いていた。まさかそれを悟られているとは…。
「それで?何の用ですか?ボクとて暇なワケではありませんし、さっさと帰りたいんですけど?」
帰りたかったのは本当だが、探りを入れられてこちらの正体を悟られては面倒だ。また、煽りに煽ることで頭に血が上り口を滑らせてもらえたらラッキーである。
裕璃は相手を小馬鹿にするような口調で問うた。
すると、男からの返事は一言。
「あの小娘から離れておけ」
「…はぁ?」
(従うわけないでしょ?何言ってんの?)
思い切り訝しげな顔をすると、男はスッと目を細めて話し出した。
「最近、どこに行くにしても小娘の周りにお前がいる。面倒事に巻き込まれたくなければ離れろと言っているんだ。どうせボディーガードだか何だかを頼まれているんだろうが、お前とていざとなれば自分が一番かわいいだろう?人間なんて所詮そんなもんさ。さっさと手を引きな」
「何言ってんの?ボクはただの彼女の友達であってボディーガードでも何でもない。だからこれからも一緒に出かけたりするし仲良くする。用事はそれだけ?ならもう帰るね」
話すのが嫌になり、男に背を向け一歩踏み出すと、背後から不穏な台詞が聞こえた。
「…いいんだな?このままだとお前も死ぬぞ」
驚き、勢いよく振り返ると、今までほとんど表情を変えなかった男がニヤニヤと笑っていた。
「…どういうこと」
「はぁ?お前に言う訳ないだろ?まぁせいぜい残り少ない人生楽しめよな。フハハ」
「…絶対に死なないし、彼女も死なせない。」
「強がっていられるのも今のうちだな」
言いたい事は言い切ったのか、男はくるりと背を向けると裕璃が向かうのとは逆方向に歩いて行った。
(何だったんだろ…)
ストーカーとは言え、具体的に実害があったわけではなかったので悠長に捉えていたが、それが油断だったというのだろうか。
(…嫌な予感がする)
自分の予感が的中し、しかもそれがかなり最悪に近い形で実現するとは夢にも思わず、裕璃は帰路に就いた。
•
•
次の日、龍に呼び出された裕璃は衝撃の事実に愕然としていた。
「神林萌愛さんが拉致されたそうだ」
「…え?なんで!?買い物に行ってからちゃんと送り届けたし、それ以降は外に出ないって言ってた!!チャイムなっても自分は出ないって…!いつ!?」
「それが、どうやら夕食後の話らしい。風呂が湧いたので呼びに行ったら部屋がもぬけの殻で、窓が開いていたそうだ。ここ最近は窓すら開けないようにしていたのにどうしてだと嘆いていたな」
「そんなぁ…」
「グダグダ言っても仕方ない。今から萌愛さんの部屋を調べに行くぞ。ユリも準備しろ」
そうして裕璃は龍と共に神林邸に向かったのだった。
到着早々、部屋の調査に入るのかと思っていたが、以前使用した客間に通された。
ソワソワしながら待っていると、すぐに萌愛の父親と、母親と思しき女性が姿を現した。
昨日の夜は寝ていないのだろう。瞳は虚ろで生気を失っており、明らかに疲弊していた。
「急に呼び出してすみません」
「いえ、状況が急転したのですから仕方ありません。部屋の様子や経緯を教えていただいても?」
「はい、すぐにご案内致します」
そしてぞろぞろと連れ立って二階への階段を登った。
「ねぇ、そういや萌愛ちゃんのご両親、名前なんていうの?」
途中、ふとまだ聞いていなかったような気がしてこっそり龍に尋ねる。
「言っていなかったか?雅臣(まさおみ)さんと莉子(りこ)さんだ」
「了解、ありがと。今後何か呼ぶことがあったらどうしようと思ってたんだ」
お礼を言いつつ、裕璃は弱り果てている萌愛の両親を見つめ、こんなことを思っていた。
(いいなぁ…自分がいなくなったらこんなに心配してくれる人達がいて)
それは、嫉妬に似たような羨望。
(きっと今はメグ姉とか、龍さんだって心配してくれるだろうけど、本当の親はもういないからなぁ)
(ボクが壊しちゃったから)
「お前は何者だ?あの小娘とはどういう関係なんだ」
「そんなの他人の貴方に関係ないじゃないですか」
「いいから答えろ!」
このままでは埒が明かないと判断した裕璃はため息を吐きながら答えた。
「彼女は大切な友人ですが。何者かと問われても見た通りただの学生です」
「嘘だ。お前はあの小娘と歩くとき、常に僕がいる側にまわっていただろう。さっきも腕を掴まれると分かって避けた。あのスピードは常人では無理だ」
裕璃はその台詞を聞き、ギリィッと歯を噛み締めた。そうだ。確かに男の言うとおりケーキ屋を出た後も男の存在に気づき、男から萌愛を隠すように歩いていた。まさかそれを悟られているとは…。
「それで?何の用ですか?ボクとて暇なワケではありませんし、さっさと帰りたいんですけど?」
帰りたかったのは本当だが、探りを入れられてこちらの正体を悟られては面倒だ。また、煽りに煽ることで頭に血が上り口を滑らせてもらえたらラッキーである。
裕璃は相手を小馬鹿にするような口調で問うた。
すると、男からの返事は一言。
「あの小娘から離れておけ」
「…はぁ?」
(従うわけないでしょ?何言ってんの?)
思い切り訝しげな顔をすると、男はスッと目を細めて話し出した。
「最近、どこに行くにしても小娘の周りにお前がいる。面倒事に巻き込まれたくなければ離れろと言っているんだ。どうせボディーガードだか何だかを頼まれているんだろうが、お前とていざとなれば自分が一番かわいいだろう?人間なんて所詮そんなもんさ。さっさと手を引きな」
「何言ってんの?ボクはただの彼女の友達であってボディーガードでも何でもない。だからこれからも一緒に出かけたりするし仲良くする。用事はそれだけ?ならもう帰るね」
話すのが嫌になり、男に背を向け一歩踏み出すと、背後から不穏な台詞が聞こえた。
「…いいんだな?このままだとお前も死ぬぞ」
驚き、勢いよく振り返ると、今までほとんど表情を変えなかった男がニヤニヤと笑っていた。
「…どういうこと」
「はぁ?お前に言う訳ないだろ?まぁせいぜい残り少ない人生楽しめよな。フハハ」
「…絶対に死なないし、彼女も死なせない。」
「強がっていられるのも今のうちだな」
言いたい事は言い切ったのか、男はくるりと背を向けると裕璃が向かうのとは逆方向に歩いて行った。
(何だったんだろ…)
ストーカーとは言え、具体的に実害があったわけではなかったので悠長に捉えていたが、それが油断だったというのだろうか。
(…嫌な予感がする)
自分の予感が的中し、しかもそれがかなり最悪に近い形で実現するとは夢にも思わず、裕璃は帰路に就いた。
•
•
次の日、龍に呼び出された裕璃は衝撃の事実に愕然としていた。
「神林萌愛さんが拉致されたそうだ」
「…え?なんで!?買い物に行ってからちゃんと送り届けたし、それ以降は外に出ないって言ってた!!チャイムなっても自分は出ないって…!いつ!?」
「それが、どうやら夕食後の話らしい。風呂が湧いたので呼びに行ったら部屋がもぬけの殻で、窓が開いていたそうだ。ここ最近は窓すら開けないようにしていたのにどうしてだと嘆いていたな」
「そんなぁ…」
「グダグダ言っても仕方ない。今から萌愛さんの部屋を調べに行くぞ。ユリも準備しろ」
そうして裕璃は龍と共に神林邸に向かったのだった。
到着早々、部屋の調査に入るのかと思っていたが、以前使用した客間に通された。
ソワソワしながら待っていると、すぐに萌愛の父親と、母親と思しき女性が姿を現した。
昨日の夜は寝ていないのだろう。瞳は虚ろで生気を失っており、明らかに疲弊していた。
「急に呼び出してすみません」
「いえ、状況が急転したのですから仕方ありません。部屋の様子や経緯を教えていただいても?」
「はい、すぐにご案内致します」
そしてぞろぞろと連れ立って二階への階段を登った。
「ねぇ、そういや萌愛ちゃんのご両親、名前なんていうの?」
途中、ふとまだ聞いていなかったような気がしてこっそり龍に尋ねる。
「言っていなかったか?雅臣(まさおみ)さんと莉子(りこ)さんだ」
「了解、ありがと。今後何か呼ぶことがあったらどうしようと思ってたんだ」
お礼を言いつつ、裕璃は弱り果てている萌愛の両親を見つめ、こんなことを思っていた。
(いいなぁ…自分がいなくなったらこんなに心配してくれる人達がいて)
それは、嫉妬に似たような羨望。
(きっと今はメグ姉とか、龍さんだって心配してくれるだろうけど、本当の親はもういないからなぁ)
(ボクが壊しちゃったから)
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる