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3.囚われの華
温暖気候
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潮を含んだ風が、その宮殿の中をサアーっと駆け巡る。
大理石でできた石柱は幾本も立ち並び、
扉もなく開放的なそこからは、街並みを一望できる。
太陽でキラキラとその光を反射して輝く海には数えきれないほどの船が停泊し、
その街の活気の良さを表している。
宮殿の一番奥には玉座があり、風にひらひらと煽られてもめくれない特殊な布で遮られている。
その布は陽の光は通せど、誰の視線からもその玉座に座る者の姿を一切見せることはない。
その玉座に向かって、黒髪で黒い瞳を持つ、少し日焼けした肌の青年が跪いて、声を掛ける。
「――ツキヤ様、彼は第3地区にいる模様です。
いかがなさいますか?」
「ふぅむ。
ひとたび会えば噛み千切ろうと襲い掛かってくるあの野蛮な獣がおる所か。
お主だとどうするのが良いと思う?」
「はい、そうですね――。
今取り戻すのは少し性急なのかと。
どうやら、他にも彼を狙っている者がいるようです。
あの堅牢な檻から彼を救い出すのに、
この者たちを利用するのはどうでしょう。」
「ほほう、それは妙案だね。」
「あと、もう1点ございます。
この者たちは手荒く、よくない噂を頻繁に耳にします。
素早く彼を救い出して恩を売るというのもよろしいかと。」
「よう、わかった。
では、おまえにこの件はまかせよう。
彼を無事ここまで連れてくるように。」
「かしこまりました。
その任を頂くなんて、ありがたき幸せです。」
「きっと彼はこの地区に良い恩恵をもたらす事だろう。
その時が、楽しみだ。
なあ、おまえもそう思うだろう――?」
「―――ふっ、はい。」
その問いに彼はまるで当然だと応えるように、唇を歪ませ、その顔に笑みを浮かべる。
もう用は済んだとばかり、彼はさっと立ち上がり服をはためかせながら、その場を後にした。
「彼は僕が助けるんだ。――」
~。・*・。~
寝起きにはバディであるクロのぬくもりと重みを腹に感じるが、
いつまでたっても、その感覚はやってこない。
奈緒は違和感を感じつつも目を開ける。
そういえば、ミナトに最後までやられたんだった……。
俺の身体、大丈夫かな――?
今のところの特に痛みなどはないのだけれど。
ベッドから起き上がると俺の目にはいつもと違う風貌の部屋が目に入る。
そこはまるでコンクリートのような堅い壁で覆われた薄暗い部屋で、
窓もなく暮らしに必要な最低限の物しか残されていなかった。
「――――――」
俺は驚きのあまり声が出ない。
目が覚めれば、いつものようにミナトかヒデトがいて、
あたたかな朝食を囲み紅茶を飲む、そんな日常が再びくるはずだったのに。
いったい、どういう事だろう。
俺は何者かに拉致されたんだろうか。
どうしよう。
現状を少し把握したところで部屋を見渡し、クロの姿を探してもどこにもいなかった。
俺、どうなっちゃうんんだろう……。
不安に胸が押しつぶされそうだ。
誰か――。
薄暗い部屋の中でポツリ――
一人寂しく、奈緒は膝を抱えて頭を埋めた。
――……が、いないと俺は一人――
大理石でできた石柱は幾本も立ち並び、
扉もなく開放的なそこからは、街並みを一望できる。
太陽でキラキラとその光を反射して輝く海には数えきれないほどの船が停泊し、
その街の活気の良さを表している。
宮殿の一番奥には玉座があり、風にひらひらと煽られてもめくれない特殊な布で遮られている。
その布は陽の光は通せど、誰の視線からもその玉座に座る者の姿を一切見せることはない。
その玉座に向かって、黒髪で黒い瞳を持つ、少し日焼けした肌の青年が跪いて、声を掛ける。
「――ツキヤ様、彼は第3地区にいる模様です。
いかがなさいますか?」
「ふぅむ。
ひとたび会えば噛み千切ろうと襲い掛かってくるあの野蛮な獣がおる所か。
お主だとどうするのが良いと思う?」
「はい、そうですね――。
今取り戻すのは少し性急なのかと。
どうやら、他にも彼を狙っている者がいるようです。
あの堅牢な檻から彼を救い出すのに、
この者たちを利用するのはどうでしょう。」
「ほほう、それは妙案だね。」
「あと、もう1点ございます。
この者たちは手荒く、よくない噂を頻繁に耳にします。
素早く彼を救い出して恩を売るというのもよろしいかと。」
「よう、わかった。
では、おまえにこの件はまかせよう。
彼を無事ここまで連れてくるように。」
「かしこまりました。
その任を頂くなんて、ありがたき幸せです。」
「きっと彼はこの地区に良い恩恵をもたらす事だろう。
その時が、楽しみだ。
なあ、おまえもそう思うだろう――?」
「―――ふっ、はい。」
その問いに彼はまるで当然だと応えるように、唇を歪ませ、その顔に笑みを浮かべる。
もう用は済んだとばかり、彼はさっと立ち上がり服をはためかせながら、その場を後にした。
「彼は僕が助けるんだ。――」
~。・*・。~
寝起きにはバディであるクロのぬくもりと重みを腹に感じるが、
いつまでたっても、その感覚はやってこない。
奈緒は違和感を感じつつも目を開ける。
そういえば、ミナトに最後までやられたんだった……。
俺の身体、大丈夫かな――?
今のところの特に痛みなどはないのだけれど。
ベッドから起き上がると俺の目にはいつもと違う風貌の部屋が目に入る。
そこはまるでコンクリートのような堅い壁で覆われた薄暗い部屋で、
窓もなく暮らしに必要な最低限の物しか残されていなかった。
「――――――」
俺は驚きのあまり声が出ない。
目が覚めれば、いつものようにミナトかヒデトがいて、
あたたかな朝食を囲み紅茶を飲む、そんな日常が再びくるはずだったのに。
いったい、どういう事だろう。
俺は何者かに拉致されたんだろうか。
どうしよう。
現状を少し把握したところで部屋を見渡し、クロの姿を探してもどこにもいなかった。
俺、どうなっちゃうんんだろう……。
不安に胸が押しつぶされそうだ。
誰か――。
薄暗い部屋の中でポツリ――
一人寂しく、奈緒は膝を抱えて頭を埋めた。
――……が、いないと俺は一人――
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