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5.光と闇
番外編:紅葉狩り 前編
しおりを挟むこれは、俺がこの世界に来て少し経ってからの話である。
ミナトは普段から業務で忙しいけれど、合間をぬって、課外授業と称して外に連れ出してくれたりもした。
この時は確か、季節の移り変わりで四季の中では秋に相当するものだった。
暑すぎず、かといって少し肌寒いと思えば、日向に少し居るだけですぐに身体は温もってしまう。
人々も過ごしやすい天気と言う事も相まって、外へ出て暖色系に染まった木々の元でゆったりとした時間を楽しんでいた。
「綺麗な紅だな。」
「そうだねー。
まぁ、俺は見飽きたけど。」
ミナトにとっては、木々も背景の一部のようで無関心な素振りをとっている。
そんなミナトよりも、奈緒は初めて見る生物に興味を示さずにはいられず、先を歩いていた。
「ずっと、仕事ばっかりしてると眼を悪くしてしまうぞー。
たまには、こうやって遠目に大自然を眺めないとーーー、って、うわっ!」
突然目の前が、真っ暗になった。
だが、安心して欲しい。
突然、世界が終わったと言う事でも、
大穴にでも落ちたという事ではない。
誰かさんのイタズラのせいで、俺の両眼はその誰かさんの両手で覆われている。
「もぉーーーっ!!ミナトっ!
何すんだよー」
「あははっ、びっくりしたー?
奈緒ったら、面白い反応ー。」
「ほんとっにー。
めちゃ、めちゃびっくりしたじゃんかー。
ほら、早く手をのけろーっ」
ミナトが後ろから密着した状態で喋るから、吐息が首元に当たってこそばゆい。
「ふふっ、これなんてどう?
ふぅーーー」
「っひゃ///」
さっきまで、頑張って変な声を出さないように我慢してたのに……。
「あはは、可愛い声ーっ。」
「もー、ミナトー!
おこるぞー!!」
奈緒には本当に怒る気なんてなかったけれど、怒ったフリでもしなければ朱に染まった頬の言い訳はできない。
ミナトは奈緒を揶揄うのに満足したようで、すんなりと離れていった。
「んふふ~、さっきのお返し。
奈緒だって、植物ばっかり見てないで、たまには俺も見てくれなきゃ。」
「なっ!?いつも一緒にいるじゃん……。」
耐えがたい、甘酸っぱい雰囲気が満ちてきた。
(ミナトってば……。こういうのは彼女とやれよなー。)
奈緒は先を急ぐようにミナトを置いて、そっぽを向きながら歩く事にした。
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