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5.光と闇

番外編:紅葉狩り 後編

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「置いていかないでよ~、奈緒~。」

ミナトを無視しながら、歩いていると一際大きい大木が見えてきた。

何より驚いたのはその葉っぱの赤いこと。
まるで血のように染まっているが、嫌な色ではない。

目に自然と焼き付けられるような神秘的な光景。

ミナトが追いついてきて、俺の隣に並んだ。

「ああ、この木ね。
 カルーナレッドっていうんだよ。
 綺麗でしょ。」

「こんな木見たことない。」

「そりゃ、そうだよ~
 そこら辺には生えてなくて、
 ここだけでしか見られない。」

「ふーん、でも、なんでこんなに赤いの?」

「知りたい?怖くなっちゃうかもよー」

ミナトがまたイタズラな顔をしてこっちを見てくる。

「桜の木の下には死体が埋まってるとかと似たようなもんかな?」

「さくら?
そんな植物は聞いたことないけど、
まぁ、内容としては半分あたりかな。」

「伝説としては、こんな感じ。

ある男女が駆け落ちするために逃げてたんだけど、色んな邪魔が入って離れ離れになっちゃったんだ。

どちらも必死に抵抗してお互いに会おうとするんだけど、途中で力尽きて死んでしまう。

愛しさと無念、後悔、絶望などで浮かばれずに、その死体に種が宿り、血肉と思念を糧としてこの木は成長した。

だから、こうして季節の終わりには、
また会えなかったと血涙を流すように紅い葉っぱを落とすんだ。」

「全然、報われないじゃん。
 聞かなきゃよかった。」

「そう?愛の力が為せる技だよー。
 生まれ変わってもお互いを求め合うんだから。」

初めて見た時とはまた違った印象を感じながら、奈緒はカルーナレッドが落とす葉っぱを眺める。

「ずっと会えないなんて、悲しいだけじゃん……。」

「そんな事ないよ~。
カルーナレッドはもう一本、別の場所で生えてるし。
どちらが雌雄かわからないけど。」

「二本だけなのか?」

「そうだよー。どう頑張っても2本以上にはならない。

どちらかが欠けるまで、交配が成功する事はないんだ。」

「ふーん。そっかー。」

ミナトは、急にカルーナレッドの葉っぱを探り始めた。

「おし、これでいいかなー。
 奈緒、これ持っててー」

「え、何、持って帰るのー?」

「折角だからお土産ー。
 奈緒が持ってて~」

「うん、わかった。
 しおりにでもしようかな。」

こうして、2人は山道を散策しながら束の間の課外授業という休息を楽しんだ。

帰ってからも奈緒は、栞なっても色あせることのない鮮やかな葉っぱに見惚れる。

恋愛は決して絶対成就するという事はないけれど、できるだけ多くの人が幸せになれたらいいなぁと思うのだった……。




ミナトの話した伝説には実は続きがあった。

雌雄のカルーナレッドの紅の葉を交換したカップルは、死しても解けない確固たる縁で結ばれるという事を……。

そしてこの縁結びは、あまりに効果があり過ぎるので、並大抵のカップルは逆に避けて通るのが習わしであり、覚悟を決めた者達しかやらないという……。




「次は奈緒と、もう一方の木を観に行かなくちゃね……ふふっ」

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