77 / 80
6.旅は道連れ
帰還への出発
しおりを挟む
ペロッーーー
ヒデトはとろみを帯びた白濁液で染まった手指を舌で舐め取った。
「さてと、」
背中の翼は既に消えていて、獲物を狩るような欲望に満ちていた面影も今ではひっそりとヒデトの中で眠っている。
「無事、奈緒様を確保できた事ですし。
そろそろ、お暇しましょうか。」
「……ぅ、ん?」
「あぁ、奈緒様はご無理をなさらずに。
そのままでも大丈夫ですよ?」
奈緒は、精根を使い果たしたようで、
目の焦点も合っていない。
ヒデトに与えられた快楽で、暫くは動けそうにないだろう。
このまま眠ってしまっても問題はない。
なぜなら、あとはミナト様の所へと戻るだけなのだから。
事が終わった後の奈緒の身体を綺麗にしてやってから、
奈緒を見つけた時のために、事前準備していた洋服に
着替えさせた。
サイズもぴったりだし、この第7地区の気候にもあっているものだから、不便は無いだろう。
さて、この部屋にも特に用事は無いし、帰るだけなのだが……。
普通であれば、高層マンションの入り口まで搬送器具で降りて、
ゲートまで人混みに紛れながら逃げるのが定石なのだが、
ここは第7地区だ。
先ほどもベランダに大量の鳥類型バディが来てたという事は、私たちは監視されているのだろう。
上空に監視の目があれば、地上を歩いたところですぐに居場所も分かってしまう。
ゲートまではスピード勝負ということだ。
奈緒を横抱きに抱えつつヒデトは長い足を、ベランダの手すりへとかける。
「……はは。」
乾いた笑みが、自然と零れる。
太陽の光を浴びてキラキラと反射している海と、
どこまでも高く透き通るような空の青は、
互いに交じり合う事もなく、自然の雄大さを物語っている。
本来であれば、奈緒様とのバカンスとしてここに来たかった。
この件が無事に終わったとしても、
当分はここに来ることはできないだろう。
残念だな……。
ここ以外にも、旅行先として有名な場所はあるけれど、
海がこんなに綺麗な観光地はここだけだ。
「よし、行きましょうか。」
まあ、ゆっくりするためにも、この一件を解決して第3地区に戻らないと。
ヒデトは決着をつけるために、右足を上空へと踏み出す。
重力に従って、輝く金髪もふわりと風になびき漂う。
そして左足で手すりを蹴ったのを最後に、空中へと放り出された。
落ちるスピードがどんどんと速まっていく。
高層マンションの中盤まで来たところで、
ヒデトは翼を広げた。
風の抵抗を受けつつも、翼を器用に使い、ヒデトは滑空する。
スピードを落とさず、ゲートのある施設に向けて進んでいく。
しかし、ヒデトたちをそう易々と逃したくはない輩もいるのは確かだ。
早速、彼らを見つけたバディたちは、後を追いそれぞれの主人へと動向を報告する。
「ちっ―――」
敵の中には、奈緒を抱きかかえていた、あの青年もいるのだろう。
奈緒を攫ったこともあり、一矢を報いてやりたいが、優先するべきはゲートを潜って逃げる事だ。
奈緒様が大人しく眠って下さっている事が幸いした。
体当たりまで仕掛けてくるバディを、翼をたたみ回転することで受け流す。
あともう少し。
他のバディたちからの距離を離し、こちらが優位だと思い始めた時だった。
「―――っつ!?」
頭に直接響く高音のような、つんざく音が鳴り響く。
翼の制御がきかず、平衡感覚も分からなくなる。
しかし、ヒデトは奈緒を絶対に離すまいと抱きしめた。
翼をそのままに、2人は重なって落ちていった―――
―――絶望とともに―――
ヒデトはとろみを帯びた白濁液で染まった手指を舌で舐め取った。
「さてと、」
背中の翼は既に消えていて、獲物を狩るような欲望に満ちていた面影も今ではひっそりとヒデトの中で眠っている。
「無事、奈緒様を確保できた事ですし。
そろそろ、お暇しましょうか。」
「……ぅ、ん?」
「あぁ、奈緒様はご無理をなさらずに。
そのままでも大丈夫ですよ?」
奈緒は、精根を使い果たしたようで、
目の焦点も合っていない。
ヒデトに与えられた快楽で、暫くは動けそうにないだろう。
このまま眠ってしまっても問題はない。
なぜなら、あとはミナト様の所へと戻るだけなのだから。
事が終わった後の奈緒の身体を綺麗にしてやってから、
奈緒を見つけた時のために、事前準備していた洋服に
着替えさせた。
サイズもぴったりだし、この第7地区の気候にもあっているものだから、不便は無いだろう。
さて、この部屋にも特に用事は無いし、帰るだけなのだが……。
普通であれば、高層マンションの入り口まで搬送器具で降りて、
ゲートまで人混みに紛れながら逃げるのが定石なのだが、
ここは第7地区だ。
先ほどもベランダに大量の鳥類型バディが来てたという事は、私たちは監視されているのだろう。
上空に監視の目があれば、地上を歩いたところですぐに居場所も分かってしまう。
ゲートまではスピード勝負ということだ。
奈緒を横抱きに抱えつつヒデトは長い足を、ベランダの手すりへとかける。
「……はは。」
乾いた笑みが、自然と零れる。
太陽の光を浴びてキラキラと反射している海と、
どこまでも高く透き通るような空の青は、
互いに交じり合う事もなく、自然の雄大さを物語っている。
本来であれば、奈緒様とのバカンスとしてここに来たかった。
この件が無事に終わったとしても、
当分はここに来ることはできないだろう。
残念だな……。
ここ以外にも、旅行先として有名な場所はあるけれど、
海がこんなに綺麗な観光地はここだけだ。
「よし、行きましょうか。」
まあ、ゆっくりするためにも、この一件を解決して第3地区に戻らないと。
ヒデトは決着をつけるために、右足を上空へと踏み出す。
重力に従って、輝く金髪もふわりと風になびき漂う。
そして左足で手すりを蹴ったのを最後に、空中へと放り出された。
落ちるスピードがどんどんと速まっていく。
高層マンションの中盤まで来たところで、
ヒデトは翼を広げた。
風の抵抗を受けつつも、翼を器用に使い、ヒデトは滑空する。
スピードを落とさず、ゲートのある施設に向けて進んでいく。
しかし、ヒデトたちをそう易々と逃したくはない輩もいるのは確かだ。
早速、彼らを見つけたバディたちは、後を追いそれぞれの主人へと動向を報告する。
「ちっ―――」
敵の中には、奈緒を抱きかかえていた、あの青年もいるのだろう。
奈緒を攫ったこともあり、一矢を報いてやりたいが、優先するべきはゲートを潜って逃げる事だ。
奈緒様が大人しく眠って下さっている事が幸いした。
体当たりまで仕掛けてくるバディを、翼をたたみ回転することで受け流す。
あともう少し。
他のバディたちからの距離を離し、こちらが優位だと思い始めた時だった。
「―――っつ!?」
頭に直接響く高音のような、つんざく音が鳴り響く。
翼の制御がきかず、平衡感覚も分からなくなる。
しかし、ヒデトは奈緒を絶対に離すまいと抱きしめた。
翼をそのままに、2人は重なって落ちていった―――
―――絶望とともに―――
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
478
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる