【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。

雪村 里帆

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PART11

屋上のジンクスと修羅場

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コンビニのパンとジュースを抱えた上原さんは、見たこともない程の無表情で、私の顔を見つめてきた。


「え、違うの上原さんっ。殴られたってそんな大層なことじゃなくて。ぶつかった拍子に顎に桜庭くんの拳が当たっちゃったって話!」


「ハァ~。雪村さん、苦し紛れの嘘つかないでもらっていいです?ほんっと嘘つくの下手すぎ。
桜庭先輩、よくこんな嘘に今まで騙されてきたもんです。哀れな先輩……」


「何、どういうこと?正直に言いなよユッキー?私にも言えないことなの?ねぇ?
もう気を遣って嘘つかないで!ユッキーのそういう所、何気に傷付くよ!私、そんなに信頼されてないの!?」


上原さんはスノウホワイトも恥じらうほどの真っ白な瑞々しい肌を赤くさせて、激昂した。
これ以上、友人を失いたくないあまり私は本当のことを話すことにした。


「……ごめんなさい。昨日、桜庭くんに頬を平手打ちされたの。顎の痣は殴られたとかじゃないけど、その時床に当たって出来た痣。
誰かが匿名で私と課長の隠し撮りの写真を桜庭くんに送ってきたみたいで。それで彼、激怒しちゃって」


「……っ」


上原さんは顔を真っ赤にさせて、抱えていたパンとジュースを私の手に乱暴に押し付け、屋上のドアの向こうに大股でズカズカと歩いて行った。
その拍子に思い切り力任せにドアを開けて行ったので、鉄のぶつかる激しい金属音が屋上に鳴り響いた。

これは嫌な予感しかしない。
私は押し付けられた食べ物とお弁当箱をベンチに置き去りにして、上原さんの後を着いて行った。

背後から倉本さんの声が聞こえたけど、それどころではなかった。

ヒールが鉄製の階段に当たる音が煩わしい程に響く。私は小走りで上原さんの後ろ姿を懸命に追い掛けるも、大股で歩いて行っただけの彼の速度に追いつけやしなかった。


「上原さん!待って!」


いつか上原さんが言ったジンクス通りだった。
あそこでランチをした社員に災難が降りかかる話。
私はあそこでランチをした日から、最悪な目に遭っている。
きっと今日からそのジンクスの話に、私のエピソードが加わることだろう。

上原さんの前方の通路に桜庭くんが歩いているのを見つけてしまった。
私は上原さんを捕まえて止めようとしたけど、それは遅かった。


「桜庭!お前さ、いい加減にしなよ!」


これが一番の最悪の事態かもしれない。
事もあろうか、上原さんは桜庭くんに向かって大声で呼び止めた後、桜庭くんのシャツの胸倉を掴んで通路の壁に彼を押しやった。


「やだなあ、公衆の面前で。誰に向かってこんな事してるの上原さん。こんな事してどうなるか位、分かるよね?」


「うるさいっ!お前こそ公衆の面前じゃなかったら女の子殴っていいと思ってんのかよ!!最低だな!」


通路を歩いていた数名の女子社員が手に口を当てながら呆然と2人の様子を見ていた。

180センチ近くある彼を、上原さんはいとも簡単に壁に押し付けて身動きを封じている。
背丈も私と同じくらいなのに、だ。

ここでようやく上原さんの生物学上の性別が男性であることを思い知らされた。
私はこんな風に桜庭くんを押さえ付けるなんて事は到底出来なかった……。

俄かに騒ぎを聞き付けた社員がゾロゾロと集まってきて、こぞって全員が好奇に目を丸くして何かを呟いていた。


「お願い上原さんっ!落ち着いて!私が悪いの!」


桜庭くんは虚な目をして、上原さんの頭上の向こう側辺りをぼうっと眺めていた。


「ユッキーは黙ってて!どんな理由があっても、人を殴っていい事にならないよな?桜庭」


「胸倉を掴むのも暴行罪に当たるけど」


「うるせぇよ、どの口がそう言ってんだよ!」


普段の朗らかで天真爛漫な様子からは想像も付かないほど、上原さんは強い口調で叫んだ。
その時、後方から手が伸びて来て、誰かに私の肩を無理矢理引っ張られる。課長の手だった。

課長は私を上原さんから遠ざけると、通路の端の方に体を押しやって引き離して来た。
その拍子に、野次馬に紛れていた倉本さんにぶつかる。


「お前らどうした?仕事に戻れ」


落ち着き払った声で、しかしながら場を制するような毅然とした態度で課長は言った。


「宮野、お前も何とか言えよ!勘が鋭い癖にこう言う時ばっかり知らないフリしてさあ!気付いてたんじゃないの!?ユッキー傷付いてんだよ!そりゃユッキーも思わせぶりで悪い女だったかもしれないけど、だからって殴っていいわけないだろ!ふざけんな!」


課長は捲し立てる上原さんの怒りをいなす様にして、至って冷静に彼の肩を押さえ付けた。
そして逆側の手で頭を押さえつけると、あっという間に桜庭くんから引き離す。

課長は至近距離で桜庭くんの目をじっと見つめた。
辺りの空気が深刻なまでにピリつき、ざわめきが一層音量を増す。

彼はどう出るのかと思ったら、予想外にも落ち着き払った声を放った。


「桜庭、感情の上ではお前を部署異動とさせたいところだが、そんな事をしたらうちの課がしばらく機能しなくなる。その代わりに、今までの口論の内容が事実なら、規律違反行為でしばらくの出勤停止処分が下されるように手配する。……頭冷やせ」


「宮野!お前さ、自分の女殴られてそんなんで気が済むのかよ!」


「上原黙れ。ここは会社だぞ。
俺はお前らの上司だ。俺までくだらん私情に走ったら総務部が他の部署から笑い者にされんだろ。
……桜庭、俺は大分前から気付いてたよ。お前と雪村がそういう関係だって。でも俺は、雪村が結果的に俺の元に戻って来てくれたら、そんなのどうでも良かった。形はどうあれ、あいつの側にいる事の方が重要だと俺は思っている。だから身を引けとは言わんが、少し頭を冷やしたらどうだ」


桜庭くんは憤るのかと思いきや、どてっ腹を刺されたかのような顔付きになり、口の端を歪ませた後、静かに目を伏せた。


「……参ったなぁ。そこまで宮野さんに言われちゃったら敵対心も萎えるってもんですよ。
承知しました。1週間ゆっくり休んで、頭冷やします」


そう言い残すと、桜庭くんは踵を返してオフィスへと長い脚を運ばせた。

課長はフゥッと短くため息をつくと、私の方を振り向き、スタスタと近寄って来た。
側にいる倉本さんには目もくれず、私にいつものパワハラ宜しくな蔑んだ眼差しを寄越してきた。


「てわけだ、雪村。1週間も桜庭が居ないんだ、お前、責任もって桜庭の分まで働けよ」


「か、課長……!」


「あと、次にカレーにこっそりニンジン入れたら俺はキレる。仕事に戻れ」


数日前、カレーにこっそりフードプロセッサーで粉々にしたニンジンを混ぜた恨みを今ここで晴らしてくるとは。
呆気に取られた私の背中を誰かが軽く押しやってきた。総務部長が騒ぎが収まったところを見計らって人並みを掻き分けて課長の元へ駆け寄った。


「み、宮野くん……!」


部長は何故か小さなしょぼくれた目に涙を浮かべて、課長に熱い視線を送っていた。


「部長、お騒がせしました。単なるプライベートの些細な揉め事です。聞かなかったことにできますよね?」


「も、勿論だとも!私は何も聞いていないよ、ね、宮野くんっ!あ、肩凝ってないか?君、また36協定ギリギリのラインで残業しっぱなしじゃあないか!どれ、肩を揉んであげよう!」


「いえ、結構です」


課長は部長のぼてっとした指を払い退けて身をかわした。


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