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第二章
103話 お値段以上過ぎます
「僕は注文通りに作っただけだよ」
リヒトは、何を言ってるんだという顔をした。
お前こそ何を言ってるんだ。
「そんな注文してませんけど?」
「したよ」
すごい自信満々で言い切られる。
その態度に、俺は途端に弱気になった。
した…?いや、騙されるな。してないはずだ。
呪われるのを前提で生きてないし、そんな効力をつけようなどと、普通は思いつかない。
それに、そんな大層な魔法陣を組み込んだのなら、馬鹿高い金額になったはずだ。
材料を提供したとはいえ、それは一部で残りの材料はリヒトが用意した。支払った代金は通常より少し高いかなって程度で、定食のご飯大盛りにデザートもつけたからプラス三百五十円くらいの感覚だ。
「フィンが言ったんだよ。従者たちは僕の心配ばかりするけど、僕は置いていく従者の方が心配だって」
むすっとしたリヒトに言われ、そんなことを言ったような覚えはあるなと、少しずつと思い出してきた。
あの魔道具をリヒトに発注したのは、一年生の階級テストが終わった後の冬休みの時だった。
「留学早々、魔笛にドラゴンまで遭遇するなんて、僕はついてるのかな?」
ここは、リヒトの託児所だった場所が正式に『リヒト魔道具研究室』になった場所だ。
ガラス張りだった所は壁になり、隣の部屋から見えないようになっている。
リヒトが研究台から動かないので、俺は勝手知ったる何とやらで、自分でお茶を入れ、変な形の椅子に腰掛けながら、クッキーを食べていた。
俺の言葉に、リヒトは背を向けたまま、珍しく弾んだ声を出す。
「ついてるよ。そのおかげで僕は得してる。それにしても綺麗な鱗だね。何に使えるかな?」
リヒトは、俺が持ち込んだドラゴンの鱗を嬉しそうに見ていた。魔笛の影響で暴れていたドラゴンが落として行った物だ。ちょっとくらい良いよねと、こっそり数枚持ち帰り、リヒトに魔道具製作の材料に使えるならとプレゼントしたのだ。
さっそく何に使おうかとリヒトは楽しそうに考えながら、俺に何か欲しい物はないかと聞いてきた。
リヒトは、魔道具を作ることが楽しいのであって、自分が何か欲しくて作ってるわけではないみたいだった。
「じゃあ、遠くにいても僕が元気にやってることが分かるアクセサリーみたいな物を二つ作って欲しい。従者二人にプレゼントしたいんだ。うっかり魔笛やドラゴンに遭遇したことをエリクたちに喋ったからか、最近やたらと身の危険を心配されて困ってるんだ」
「それだけ?」
不服そうに言われた。
内容が簡単過ぎて不満らしい。
そんな簡単な物ではないと思うのだが、リヒトは俺に何を期待しているのだろうか。
「うーん。それなら、そのアクセサリーに御守りのような効果をつけることはできる?エリクたちは僕の心配をするけど、僕からしたら、魔法が不得手な二人の方が心配なんだよね。エリクはまだ身体能力に優れてるからマシだけど、トリスタンは戦闘向きじゃないし」
言った後で、使用人に対して常に戦闘することを基準に考えてるのも変な話だなと気づいた。
主人である俺が、悲しいことにトラブル体質気味だから、その影響が従者二人にあったら嫌だなと思ったのだ。
俺の言葉をリヒトは疑問に思わなかったようで、もっと具体的に説明しろと言ってきた。
具体的にと言われても。
神社で買う御守りみたいな感じでもいいのだ。
悪いものを寄せ付けませんようにって感じで。
魔除けの石を使うとかさ。
「そうだな…例えば魔獣避けの香料を混ぜるとか」
「魔獣?そういえば、フィンは山で魔獣に追いかけられたことあったね」
ココに助けてもらって難を逃れた話だ。
「時空の歪みに落ちないように、近くにあったら分かるように光るとか」
「フィンは三回くらい落ちたんだっけ?二回目以降はすぐに見つかって良かったね」
カール作、探索くん二十八号のおかげだ。
本当に素晴らしい作品である。
それにしても落ち過ぎだな、俺。
「毒薬を飲まされないよう、毒物の入った物や器を持ったら、食べ物の色が変わるとか」
「毒なんて盛られたことあるの?毒には何が効果的だったかな?」
盛られたことはないが、堕胎薬を手渡されたことはある。
俺は自分の人生を振り返りながら、困ったことや危なかった経験などをリヒトに話した。
まだ十三歳だけど、結構、波瀾万丈な人生だったよな。
生まれた家では継母に虐められ、養子に出された一週間後には家出。
母上に毒を盛るよう唆されそうになったり、友達であるヴィルヘルムたちには、最初の頃はたくさん悪戯された。
火の玉が飛んでくる場所へ自分から飛び込んでいき、父上に叱られ謹慎処分を受ける。
祖母には魔獣を持たせようと好意で山に飛ばされ、そこで時空の歪みに落ち一週間行方不明に。
その他にも色々あった。
「フィンが経験したことを元に、危ないことから身を守れるような御守りにするねって伝えたはずだよ。覚えてないの?」
「…覚えてない」
リヒトは俺の話を元に、その全てに対抗できるような魔法陣や材料を使い、互いが干渉しないように計算し、上手く嵌め込むように魔道具を完成させたらしい。
安易に自分の人生を語った俺が悪いのかもしれないが、それが本当ならやり過ぎである。
誰が全部つけろなんて言ったよ。
具体的にって言うから例を挙げただけだ。
どれかでいいんだよ、どれかで。
過剰防衛であり、それは御守りではなく、もはや防具に近かった。
手渡された時は、俺の魔力をペンダントに流し込んだら完成だと言われ、この光る色によって体調も分かるとか、そんなことを説明されたことは覚えている。『光が消えたら死んだことがバレるから気をつけてね』という、よく分からない助言もされていた。
「でも、僕は呪われたことないよ?何で呪い無効化?」
「もしも魔笛などの呪具に触れてしまった場合に、その影響を受けないようにするためだよ」
あぁ、なるほど。
魔笛を使ったがために、心身共に影響を受けた先輩がいた話もしましたね。
「だけど、そんなに効果が付与されてて、あの代金なのおかしくない?材料揃えるのだけでも大変だったはずだよ」
そこは、たまに俺が手に入れてはリヒトに渡していた物を使ったらしい。
ドラゴンの鱗のように、珍しい物を見つけては拾ったり買ったりして、魔道具作りの材料になればとリヒトにお土産だと言って渡していた。
「全部は使い切れなくて、少量ずつ余ってた材料を合わせて作ったから、材料費はあんまりかかってない」
「それでも、色んな魔法陣を組み込んだんでしょ?リヒトの技術が遺憾無く発揮された物だよ。もっと技術料を請求しなきゃ」
目が飛び出るほどの金額を提示されていたなら、押し売りだと文句を言っただろうが、逆に少額を請求されても、それはそれで商品と代金が見合わなくて困る。
リヒトは自分の凄さを分かっていない。
作ろうと思って、本当に作れる実力の高さをもっと自覚しないと駄目だ。
今後、魔道具技師になった時、悪い奴らに利用されて、安価で性能の高い魔道具を作らされていたらと思うと、心配になった。
しかし、それは杞憂だったようだ。
「フィンだから特別価格なだけだよ。他人にはクノちゃんが高い代金を請求してるから心配ない」
そうだった。
リヒトにはすでに、しっかりとした受注窓口があったのだ。
皆さんは覚えておられるだろうか。
リヒトの子守りを兼任していた魔道具研究所の職員であるクノルさんだ。
クノルさんは、今ではリヒトの作る魔道具の中で、一般に向けて売れそうな物を見つけては、研究所の方へ案を出し、商品化を実現していた。
商品化された物は、リヒトが改めて一般向けに手を加えた設計図を描き、それを元に研究所で量産され、市場で販売されている。
そして、リヒトはその売上の何割かを製作者として受け取っており、魔道具技師の卵のようなものになっていた。
今では三種類も魔道具が商品化されており、その一点は俺が要望してできた魔道具だったからか、クノルさんは発案者として俺にも少し売上金が入るようにしてくれていた。
欲しい物をリヒトに言って作ってもらっただけなのだが、お小遣い程度でも収入があるのは嬉しかった。
「あの魔道具は、いろんな魔法陣を組み合わせることができるかの試作品でもあったし、フィンにはいつも実験台になってもらってるからね。恩を売っとくに越したことはないってクノちゃん言ってた」
本音が口から漏れ過ぎだ。
リヒトも直接本人に報告するんじゃありません。
リヒトとクノルさんは、試作品を俺に使わせて商品化する前に性能を試すという方法をとっていた。
ちょっと危ない物でも、俺なら対応できるだろうという謎の信頼をされている。
いつの間にそんな信頼を得ていたのか分からないが、無料でいろんな魔道具を使えるのは単純に楽しかった。
実際に俺が使い勝手が良いと判断し、商品化された物もあるので、やり甲斐もある。
リヒトが本格的に魔道具技師となり独立するなら、クノルさんは秘書としてついていくことになっていた。
営業力もあり、魔道具を愛しているクノルさんが仕事のパートナーになるなら、リヒトの将来も安心だった。
そういうことならと、俺は再度リヒトにお礼を言って、お互いの近況報告をしてから、研究所を後にした。
帰りの馬車の中で、俺は最後にリヒトが言っていたことについて考える。
学校についての話で、リヒトは九月から王立中等学園に入学していた。
『学校ってつまんないね。ここで魔道具作ってる方がずっと楽しいや。僕、中等部卒業したら、そのまま魔道具技師に弟子入りする。すごい人を見つけたんだ。その人の下で学んでみたい』
『高等部には通わないの?』
『必要ないでしょ。義務でもないし、学校なんて中等部だけで充分だよ』
カールもリヒトの意思を尊重し、その件については、中等部を真面目に通い卒業できたら好きにしていいと、条件付きで許可したという。
前世のゲームの中のリヒトは、攻略対象者であり、舞台は王立高等学園だった。
リヒトがこのまま自分の決めた道を進んだなら、それはもう違う世界だ。
「俺の方も、すでに違う世界になってるよな」
俺は王立高等学園には通わないし、バルバラは恵まれている妹なんかじゃなかった。
母親を亡くして、新しい家では肩身の狭い思いをし、鬱積した感情に惹かれた悪魔に利用された、ただの可哀想な女の子だったのだ。
リヒトは、何を言ってるんだという顔をした。
お前こそ何を言ってるんだ。
「そんな注文してませんけど?」
「したよ」
すごい自信満々で言い切られる。
その態度に、俺は途端に弱気になった。
した…?いや、騙されるな。してないはずだ。
呪われるのを前提で生きてないし、そんな効力をつけようなどと、普通は思いつかない。
それに、そんな大層な魔法陣を組み込んだのなら、馬鹿高い金額になったはずだ。
材料を提供したとはいえ、それは一部で残りの材料はリヒトが用意した。支払った代金は通常より少し高いかなって程度で、定食のご飯大盛りにデザートもつけたからプラス三百五十円くらいの感覚だ。
「フィンが言ったんだよ。従者たちは僕の心配ばかりするけど、僕は置いていく従者の方が心配だって」
むすっとしたリヒトに言われ、そんなことを言ったような覚えはあるなと、少しずつと思い出してきた。
あの魔道具をリヒトに発注したのは、一年生の階級テストが終わった後の冬休みの時だった。
「留学早々、魔笛にドラゴンまで遭遇するなんて、僕はついてるのかな?」
ここは、リヒトの託児所だった場所が正式に『リヒト魔道具研究室』になった場所だ。
ガラス張りだった所は壁になり、隣の部屋から見えないようになっている。
リヒトが研究台から動かないので、俺は勝手知ったる何とやらで、自分でお茶を入れ、変な形の椅子に腰掛けながら、クッキーを食べていた。
俺の言葉に、リヒトは背を向けたまま、珍しく弾んだ声を出す。
「ついてるよ。そのおかげで僕は得してる。それにしても綺麗な鱗だね。何に使えるかな?」
リヒトは、俺が持ち込んだドラゴンの鱗を嬉しそうに見ていた。魔笛の影響で暴れていたドラゴンが落として行った物だ。ちょっとくらい良いよねと、こっそり数枚持ち帰り、リヒトに魔道具製作の材料に使えるならとプレゼントしたのだ。
さっそく何に使おうかとリヒトは楽しそうに考えながら、俺に何か欲しい物はないかと聞いてきた。
リヒトは、魔道具を作ることが楽しいのであって、自分が何か欲しくて作ってるわけではないみたいだった。
「じゃあ、遠くにいても僕が元気にやってることが分かるアクセサリーみたいな物を二つ作って欲しい。従者二人にプレゼントしたいんだ。うっかり魔笛やドラゴンに遭遇したことをエリクたちに喋ったからか、最近やたらと身の危険を心配されて困ってるんだ」
「それだけ?」
不服そうに言われた。
内容が簡単過ぎて不満らしい。
そんな簡単な物ではないと思うのだが、リヒトは俺に何を期待しているのだろうか。
「うーん。それなら、そのアクセサリーに御守りのような効果をつけることはできる?エリクたちは僕の心配をするけど、僕からしたら、魔法が不得手な二人の方が心配なんだよね。エリクはまだ身体能力に優れてるからマシだけど、トリスタンは戦闘向きじゃないし」
言った後で、使用人に対して常に戦闘することを基準に考えてるのも変な話だなと気づいた。
主人である俺が、悲しいことにトラブル体質気味だから、その影響が従者二人にあったら嫌だなと思ったのだ。
俺の言葉をリヒトは疑問に思わなかったようで、もっと具体的に説明しろと言ってきた。
具体的にと言われても。
神社で買う御守りみたいな感じでもいいのだ。
悪いものを寄せ付けませんようにって感じで。
魔除けの石を使うとかさ。
「そうだな…例えば魔獣避けの香料を混ぜるとか」
「魔獣?そういえば、フィンは山で魔獣に追いかけられたことあったね」
ココに助けてもらって難を逃れた話だ。
「時空の歪みに落ちないように、近くにあったら分かるように光るとか」
「フィンは三回くらい落ちたんだっけ?二回目以降はすぐに見つかって良かったね」
カール作、探索くん二十八号のおかげだ。
本当に素晴らしい作品である。
それにしても落ち過ぎだな、俺。
「毒薬を飲まされないよう、毒物の入った物や器を持ったら、食べ物の色が変わるとか」
「毒なんて盛られたことあるの?毒には何が効果的だったかな?」
盛られたことはないが、堕胎薬を手渡されたことはある。
俺は自分の人生を振り返りながら、困ったことや危なかった経験などをリヒトに話した。
まだ十三歳だけど、結構、波瀾万丈な人生だったよな。
生まれた家では継母に虐められ、養子に出された一週間後には家出。
母上に毒を盛るよう唆されそうになったり、友達であるヴィルヘルムたちには、最初の頃はたくさん悪戯された。
火の玉が飛んでくる場所へ自分から飛び込んでいき、父上に叱られ謹慎処分を受ける。
祖母には魔獣を持たせようと好意で山に飛ばされ、そこで時空の歪みに落ち一週間行方不明に。
その他にも色々あった。
「フィンが経験したことを元に、危ないことから身を守れるような御守りにするねって伝えたはずだよ。覚えてないの?」
「…覚えてない」
リヒトは俺の話を元に、その全てに対抗できるような魔法陣や材料を使い、互いが干渉しないように計算し、上手く嵌め込むように魔道具を完成させたらしい。
安易に自分の人生を語った俺が悪いのかもしれないが、それが本当ならやり過ぎである。
誰が全部つけろなんて言ったよ。
具体的にって言うから例を挙げただけだ。
どれかでいいんだよ、どれかで。
過剰防衛であり、それは御守りではなく、もはや防具に近かった。
手渡された時は、俺の魔力をペンダントに流し込んだら完成だと言われ、この光る色によって体調も分かるとか、そんなことを説明されたことは覚えている。『光が消えたら死んだことがバレるから気をつけてね』という、よく分からない助言もされていた。
「でも、僕は呪われたことないよ?何で呪い無効化?」
「もしも魔笛などの呪具に触れてしまった場合に、その影響を受けないようにするためだよ」
あぁ、なるほど。
魔笛を使ったがために、心身共に影響を受けた先輩がいた話もしましたね。
「だけど、そんなに効果が付与されてて、あの代金なのおかしくない?材料揃えるのだけでも大変だったはずだよ」
そこは、たまに俺が手に入れてはリヒトに渡していた物を使ったらしい。
ドラゴンの鱗のように、珍しい物を見つけては拾ったり買ったりして、魔道具作りの材料になればとリヒトにお土産だと言って渡していた。
「全部は使い切れなくて、少量ずつ余ってた材料を合わせて作ったから、材料費はあんまりかかってない」
「それでも、色んな魔法陣を組み込んだんでしょ?リヒトの技術が遺憾無く発揮された物だよ。もっと技術料を請求しなきゃ」
目が飛び出るほどの金額を提示されていたなら、押し売りだと文句を言っただろうが、逆に少額を請求されても、それはそれで商品と代金が見合わなくて困る。
リヒトは自分の凄さを分かっていない。
作ろうと思って、本当に作れる実力の高さをもっと自覚しないと駄目だ。
今後、魔道具技師になった時、悪い奴らに利用されて、安価で性能の高い魔道具を作らされていたらと思うと、心配になった。
しかし、それは杞憂だったようだ。
「フィンだから特別価格なだけだよ。他人にはクノちゃんが高い代金を請求してるから心配ない」
そうだった。
リヒトにはすでに、しっかりとした受注窓口があったのだ。
皆さんは覚えておられるだろうか。
リヒトの子守りを兼任していた魔道具研究所の職員であるクノルさんだ。
クノルさんは、今ではリヒトの作る魔道具の中で、一般に向けて売れそうな物を見つけては、研究所の方へ案を出し、商品化を実現していた。
商品化された物は、リヒトが改めて一般向けに手を加えた設計図を描き、それを元に研究所で量産され、市場で販売されている。
そして、リヒトはその売上の何割かを製作者として受け取っており、魔道具技師の卵のようなものになっていた。
今では三種類も魔道具が商品化されており、その一点は俺が要望してできた魔道具だったからか、クノルさんは発案者として俺にも少し売上金が入るようにしてくれていた。
欲しい物をリヒトに言って作ってもらっただけなのだが、お小遣い程度でも収入があるのは嬉しかった。
「あの魔道具は、いろんな魔法陣を組み合わせることができるかの試作品でもあったし、フィンにはいつも実験台になってもらってるからね。恩を売っとくに越したことはないってクノちゃん言ってた」
本音が口から漏れ過ぎだ。
リヒトも直接本人に報告するんじゃありません。
リヒトとクノルさんは、試作品を俺に使わせて商品化する前に性能を試すという方法をとっていた。
ちょっと危ない物でも、俺なら対応できるだろうという謎の信頼をされている。
いつの間にそんな信頼を得ていたのか分からないが、無料でいろんな魔道具を使えるのは単純に楽しかった。
実際に俺が使い勝手が良いと判断し、商品化された物もあるので、やり甲斐もある。
リヒトが本格的に魔道具技師となり独立するなら、クノルさんは秘書としてついていくことになっていた。
営業力もあり、魔道具を愛しているクノルさんが仕事のパートナーになるなら、リヒトの将来も安心だった。
そういうことならと、俺は再度リヒトにお礼を言って、お互いの近況報告をしてから、研究所を後にした。
帰りの馬車の中で、俺は最後にリヒトが言っていたことについて考える。
学校についての話で、リヒトは九月から王立中等学園に入学していた。
『学校ってつまんないね。ここで魔道具作ってる方がずっと楽しいや。僕、中等部卒業したら、そのまま魔道具技師に弟子入りする。すごい人を見つけたんだ。その人の下で学んでみたい』
『高等部には通わないの?』
『必要ないでしょ。義務でもないし、学校なんて中等部だけで充分だよ』
カールもリヒトの意思を尊重し、その件については、中等部を真面目に通い卒業できたら好きにしていいと、条件付きで許可したという。
前世のゲームの中のリヒトは、攻略対象者であり、舞台は王立高等学園だった。
リヒトがこのまま自分の決めた道を進んだなら、それはもう違う世界だ。
「俺の方も、すでに違う世界になってるよな」
俺は王立高等学園には通わないし、バルバラは恵まれている妹なんかじゃなかった。
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