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14 万彩
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「また不安そうな顔をしてるなぁ……」
晶にゆっくりと抱きしめられて、晴也の心臓が跳ねた。しかしいい匂いに包まれ、そのうちほっとして眠気さえ覚えてしまう。
ふと見つめ合い、晶の真剣な表情に、いい男だなと晴也は勝手に照れた。そして、彼がキスする気でいることを感じ取ってしまう。
「あ、あの……眼鏡取る、な」
晴也は晶に腰を抱かせたまま、そそくさと眼鏡を外す。晶は晴也を見つめたまま、ぷっと吹き出した。そして眼鏡を頭の上に乗せる。
「お互い眼鏡ってタイミングが測りにくいな」
「そう? こういうことにタイミングってあるのか」
晴也は少しぼやけた晶の目を見て言った。あちらもたぶんはっきり見えていないと思うと、ちょっと可笑しい。
晶は軽く、唇の先だけでまず晴也の頬に触れた。それだけで心臓がどっくん、と音を立てる。間を置かずに唇が重なり、また今日も晴也はワンテンポ遅れて目を閉じた。
今日はすぐに晶は唇をこじ開けてきた。反射的に晴也は顎を引こうとして、後頭部を押さえつけられた。熱くてぬめりを持つものが口の中に押し入って来て、夢中で晴也を求めている。
あ、捕まった、と晴也は思う。舌が絡まり合い、くちゅっと湿った音が立つ。晶はチューしたくて仕方ないと口に出しただけあって、随分執拗に口づけを続けた。晴也も少しずつ、頭の中が蕩けてくるのを自覚した。いつまでやるんだという困惑が、もっとしたいという、淡く熱を帯びた欲求にすり替わり始める。
「あ、やっとエロい顔になってきた」
一度唇が離れると、晶は言った。見えているのだろうか。ぼんやり霞んでいてもわかるくらい、エロい顔になっているのかと思うと、恥ずかしくて逃げ出したくなった。
「もっとしよう」
言いながら晶は、耳たぶに唇を押しつけてくる。背筋にぴりっとしたものが走り、ぞくぞくした。
「あっ、あの、ショウさん……こんなとこじゃ落ち着かないから……っ」
晴也は耳の中に舌先を入れられて、言葉を切ってしまう。
「落ち着かないから? 何処でどうしたい?」
吐息混じりに言われて、思わずひゃっ、と肩を竦める。
「どうしたいか教えて……」
「耳の中で喋るなっ」
ふふふ、と晶は拘束を強めて笑う。晴也はくすぐったくて身を捩るが、ほぼ無駄な抵抗だった。
「先に、風呂にっ、入らせてっ」
晴也は途切れ途切れに訴えた。晶は楽しげに応じる。
「ハルさんは綺麗好きの鳥だから水浴びが好きだな、それとも風呂でやりたい?」
「しないっ、綺麗にするだけだからっ」
「ちんこ洗わせて」
「自分で洗うから!」
晶の手がセーターとシャツの中に入って来て直に腰を撫でたので、晴也はびくりとなって半ば叫んだ。
「どこ触ってんだよっ」
「風呂溜める間に一回抜こっか? 溜まってない?」
晶は手をジーンズの中に入れようとする。晴也はわぁっと声を上げた。
「溜まってない、おまえと一緒にするなっ」
「ハルさんの性欲はいつどうなったら発生するんだ?」
晶は晴也の腰に腕を巻きつけて、晴也をほとんど引きずりながら、キッチンの壁にある風呂の給湯ボタンを押しに行く。そしてリビングのソファまで戻ってくると、眼鏡を頭から外して、晴也をその場に押し倒した。
「ああもう我慢の限界、ハルさん切れで禁断症状が……」
「昨日も会っただろうが……っ!」
晶は晴也にのし掛かりながら、食い込むようなキスをしてきた。晴也は窒息しそうになりつつも、唇と舌が交わる気持ちよさに理性を剥ぎ取られそうになる。思わずぺちぺちと晶の背中を叩いた。唇が離れて、晴也はぜいぜい息をする。
「逃げないから、落ち着いて」
真っ赤になった晴也を見て、晶の表情が蕩けた。またこんな顔をして、何がそんなに嬉しいんだ。
ハルさん、と晶は小さく言って、抱きついてきた。晴也が彼を胸に抱き止めて、ぎゅっとしてやると、嬉しげな笑い声が聞こえた。
「俺の大好きな小鳥ちゃん……」
「はいはい」
「もう俺しばらくハルさん以外何も要らない」
「俺だけじゃ腹は満たされないぞ」
「ちんこは十二分に満たされる」
あ、別人格だったな。本体は飢えてもいいんだろうか。晴也は何を話しているのか、よくわからなくなってきた。はしゃぐ晶が可愛いので、晴也は彼の黒い髪を撫でてやる。お返しをするように顎や首にキスしてくる辺り、かなり犬っぽかった。ふと目が合い、ゆっくり唇を重ねていると、案外早くに風呂が沸くチャイムが鳴る。
晴也はあっ、と思わず声を洩らした。晶は晴也の前髪を指先で弄りながら、どうかした? と訊いた。
「パジャマ忘れた……」
「要らないだろ、どうせ脱ぐのに」
晴也の言葉に、晶は当然のように返す。晴也は嫌だ、と首を振った。これから何をするつもりか知らないが、朝まで裸でいるなんて、明け方の冷え込みで風邪をひいてしまう。
「ここまで来てハルさんに拒否られるなんて涙出そう……」
眉の裾を下げる晶に晴也は言う。
「拒んでない、ずっと素っ裸でいるのは嫌だと言ってるんだ」
「拒んでないって言ったな?」
ピンボケの晴也の視界でも明らかなほど、晶が楽しげな顔になる。晴也は突っ込んだ。
「そこはいいんだよ、何か貸してください」
「俺的にはそこが大事なんだけど……わかった、でもたぶん大きいぞ」
「うん、寝間着だからいいよ」
晶は身軽に身体を起こし、寝室に向かった。一人でソファにしなだれかかる自分が恥ずかしくなり、晴也も身体を起こして風呂の用意をする。
一緒に入らないといけないんだろうなぁ……晴也はこっそりと頰を熱くする。これから尻の穴を解されて、処女喪失か。そう考えると、少し怖い。でも晶に我慢を強いるのも忍びなかった。きっと優しくしてくれる筈だと、晴也は歯ブラシを鞄から出しながら思った。どきどきして呼吸が浅くなった。
晶にゆっくりと抱きしめられて、晴也の心臓が跳ねた。しかしいい匂いに包まれ、そのうちほっとして眠気さえ覚えてしまう。
ふと見つめ合い、晶の真剣な表情に、いい男だなと晴也は勝手に照れた。そして、彼がキスする気でいることを感じ取ってしまう。
「あ、あの……眼鏡取る、な」
晴也は晶に腰を抱かせたまま、そそくさと眼鏡を外す。晶は晴也を見つめたまま、ぷっと吹き出した。そして眼鏡を頭の上に乗せる。
「お互い眼鏡ってタイミングが測りにくいな」
「そう? こういうことにタイミングってあるのか」
晴也は少しぼやけた晶の目を見て言った。あちらもたぶんはっきり見えていないと思うと、ちょっと可笑しい。
晶は軽く、唇の先だけでまず晴也の頬に触れた。それだけで心臓がどっくん、と音を立てる。間を置かずに唇が重なり、また今日も晴也はワンテンポ遅れて目を閉じた。
今日はすぐに晶は唇をこじ開けてきた。反射的に晴也は顎を引こうとして、後頭部を押さえつけられた。熱くてぬめりを持つものが口の中に押し入って来て、夢中で晴也を求めている。
あ、捕まった、と晴也は思う。舌が絡まり合い、くちゅっと湿った音が立つ。晶はチューしたくて仕方ないと口に出しただけあって、随分執拗に口づけを続けた。晴也も少しずつ、頭の中が蕩けてくるのを自覚した。いつまでやるんだという困惑が、もっとしたいという、淡く熱を帯びた欲求にすり替わり始める。
「あ、やっとエロい顔になってきた」
一度唇が離れると、晶は言った。見えているのだろうか。ぼんやり霞んでいてもわかるくらい、エロい顔になっているのかと思うと、恥ずかしくて逃げ出したくなった。
「もっとしよう」
言いながら晶は、耳たぶに唇を押しつけてくる。背筋にぴりっとしたものが走り、ぞくぞくした。
「あっ、あの、ショウさん……こんなとこじゃ落ち着かないから……っ」
晴也は耳の中に舌先を入れられて、言葉を切ってしまう。
「落ち着かないから? 何処でどうしたい?」
吐息混じりに言われて、思わずひゃっ、と肩を竦める。
「どうしたいか教えて……」
「耳の中で喋るなっ」
ふふふ、と晶は拘束を強めて笑う。晴也はくすぐったくて身を捩るが、ほぼ無駄な抵抗だった。
「先に、風呂にっ、入らせてっ」
晴也は途切れ途切れに訴えた。晶は楽しげに応じる。
「ハルさんは綺麗好きの鳥だから水浴びが好きだな、それとも風呂でやりたい?」
「しないっ、綺麗にするだけだからっ」
「ちんこ洗わせて」
「自分で洗うから!」
晶の手がセーターとシャツの中に入って来て直に腰を撫でたので、晴也はびくりとなって半ば叫んだ。
「どこ触ってんだよっ」
「風呂溜める間に一回抜こっか? 溜まってない?」
晶は手をジーンズの中に入れようとする。晴也はわぁっと声を上げた。
「溜まってない、おまえと一緒にするなっ」
「ハルさんの性欲はいつどうなったら発生するんだ?」
晶は晴也の腰に腕を巻きつけて、晴也をほとんど引きずりながら、キッチンの壁にある風呂の給湯ボタンを押しに行く。そしてリビングのソファまで戻ってくると、眼鏡を頭から外して、晴也をその場に押し倒した。
「ああもう我慢の限界、ハルさん切れで禁断症状が……」
「昨日も会っただろうが……っ!」
晶は晴也にのし掛かりながら、食い込むようなキスをしてきた。晴也は窒息しそうになりつつも、唇と舌が交わる気持ちよさに理性を剥ぎ取られそうになる。思わずぺちぺちと晶の背中を叩いた。唇が離れて、晴也はぜいぜい息をする。
「逃げないから、落ち着いて」
真っ赤になった晴也を見て、晶の表情が蕩けた。またこんな顔をして、何がそんなに嬉しいんだ。
ハルさん、と晶は小さく言って、抱きついてきた。晴也が彼を胸に抱き止めて、ぎゅっとしてやると、嬉しげな笑い声が聞こえた。
「俺の大好きな小鳥ちゃん……」
「はいはい」
「もう俺しばらくハルさん以外何も要らない」
「俺だけじゃ腹は満たされないぞ」
「ちんこは十二分に満たされる」
あ、別人格だったな。本体は飢えてもいいんだろうか。晴也は何を話しているのか、よくわからなくなってきた。はしゃぐ晶が可愛いので、晴也は彼の黒い髪を撫でてやる。お返しをするように顎や首にキスしてくる辺り、かなり犬っぽかった。ふと目が合い、ゆっくり唇を重ねていると、案外早くに風呂が沸くチャイムが鳴る。
晴也はあっ、と思わず声を洩らした。晶は晴也の前髪を指先で弄りながら、どうかした? と訊いた。
「パジャマ忘れた……」
「要らないだろ、どうせ脱ぐのに」
晴也の言葉に、晶は当然のように返す。晴也は嫌だ、と首を振った。これから何をするつもりか知らないが、朝まで裸でいるなんて、明け方の冷え込みで風邪をひいてしまう。
「ここまで来てハルさんに拒否られるなんて涙出そう……」
眉の裾を下げる晶に晴也は言う。
「拒んでない、ずっと素っ裸でいるのは嫌だと言ってるんだ」
「拒んでないって言ったな?」
ピンボケの晴也の視界でも明らかなほど、晶が楽しげな顔になる。晴也は突っ込んだ。
「そこはいいんだよ、何か貸してください」
「俺的にはそこが大事なんだけど……わかった、でもたぶん大きいぞ」
「うん、寝間着だからいいよ」
晶は身軽に身体を起こし、寝室に向かった。一人でソファにしなだれかかる自分が恥ずかしくなり、晴也も身体を起こして風呂の用意をする。
一緒に入らないといけないんだろうなぁ……晴也はこっそりと頰を熱くする。これから尻の穴を解されて、処女喪失か。そう考えると、少し怖い。でも晶に我慢を強いるのも忍びなかった。きっと優しくしてくれる筈だと、晴也は歯ブラシを鞄から出しながら思った。どきどきして呼吸が浅くなった。
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