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帰郷 農業者編
サポート好き冒険者。その能力を見せる
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農奴の女の子たちを連れて、僕は一先ず市場を目指した。
僕の身の回りの物は必要最低限だが揃っているので、女の子たちに必要な物を調達しようというわけだ。
「あの? どこに行くんですか?」
女の子たちの中で一番年上であろう女の子が話しかけてくる。女の子たちは全部で8人。
8人で銀貨50枚だったということは1人当たり10枚を下回っている計算だが、その8人の内、3人はまだ本当に小さい子だったので併せて1人銀貨10枚という計算がされたのだろう。
普段の生活では銀貨の下の銅貨で食材などは買える。銅貨100枚で銀貨1枚だ。持ち家さえ持っていれば銀貨1枚だけでも2週間は生活出来るだろう。
ま、常に宿屋に泊まるような冒険者は数日で銀貨単位のお金が飛んで行ってしまうのだけど。
「市場だよ。はぐれないようについてきてね?」
人の流れに流されないように、ゆっくりとした足取りで進む僕を見失わないように女の子たちが後ろをついてくる。それを見て、僕は調達しなければならないものを1つ頭の中に追加した。
市場に到着した。市場には食料品を扱う店が多いが、それ以外にも生活用品や動物などの皮を扱う店などがある。
「すみませ~ん。商品を見せてもらえますか?」
「あいよ、何が欲しいんだい?」
「厚めで柔らかい皮をいくつか欲しいんですが」
「ん~、そうするとこの辺りだな。見てくれ」
素材自体の名前を詳しく知っているわけではないので、僕は触ってその商品を確認してみる。そうしていくつかの商品の中から1つ選びだした。
「この皮を5枚いただけますか?」
「おう。そうすると銀貨3枚ってとこだな」
「ではこれで。あと皮を縫う糸も補充したいんですが、売ってるお店知ってますか?」
「ほい毎度。糸か……、確か6軒先にあったはずだぜ?」
「分かりました。助かります」
僕はお礼を言うと、後ろに控えていた少女達へ買った皮を渡した。
「とりあえず持ってて。寒かったら羽織っててもいいけども」
「え? あの?」
「じゃ、次の店に行こうか」
こうして僕はいくつかの店を回って糸や布等を買い、それを少女達に持ってもらって次に食料品の店に移動する。
目当ては豆類や干し果物などをメインに買っていく予定だ。
「すみません。保存が効くものを買いたいんですが」
「あら? ウチの商品はどれも保存が効くよ?」
「えっと、故郷に土産として買っていきたいので、1月は持つモノがいいんですけど」
「そうなると完全に水っ気が飛んだヤツがいいね……。この辺りのは天日に十分に晒してるから乾いてるはずさ」
また僕は商品を見させてもらう。とはいえ食べ物だから手にすることは出来ないけども。
教えて貰った目利きの方法で商品を見ていく。
そしていくつか買うと、僕は食べ物用の麻袋を取り出して商品を入れて貰った。
「まいどあり~」という威勢のいい声に送られて、僕は次の店を目指す。
「荷、車?」
「そうだよ。さすがに君達を歩かせて移動するとなると時間が掛かりそうだからね。みんなにはコレに乗ってもらおうかと考えてるんだ。けどやっぱり高いな」
市場の端の方、さすがに商品が嵩張るからなのか、その店はそんな場所にあった。
「お~、兄さん。荷車が欲しいのかい? どれを買っていく? コイツなんか最近作ったヤツだから長持ちするぞ」
どうみても他の荷車と変わらない物を手で叩きながら売り込みをしてくる商人。とりあえず僕は思案顔をしながら商品を目で見ていく。
「お?」そうすると掘り出し物が見つかった。
「おじさん、その荷車はどうしたの?」
僕が指さしたのは車輪が在らぬ方向へ開いてしまっている荷車だった。
「んん? あ~、ソレか。年季が入ってて、つい先日軸が折れてしまってね。処分するにも金がかかるし、後で壊して薪にでもしようかと思ってたんだよなぁ。坊主、銀貨1枚でどうだ?」
おそらく冗談でそう提案したのだろう。
だが、僕にとっては好都合だった。
「いいの? なら銀貨1枚。ちょうど部品取りして使えそうだし、僕も助かるよ」
商人のおじさんが差し出した手に銀貨1枚を乗せると、僕はその壊れた荷車を担ぎ上げてその場を後にした。
「へ?」と呆けた顔をした商人が、手にした銀貨を握りしめて呆気にとられた顔をしていた。
あの後、市場で荷車に手を入れるような場所がなかったので町外れの方まで移動してきた。
「あの? その壊れた荷車をどうするんですか?」
「え? もちろん修理して使うけど?」
少女の一人がそう聞いてきたので、僕は当たり前な答えをしつつ、肩から下げたボロくさいカバンから道具を取り出した。
「え? その道具はどこに入っていたんですか?」
「ん? ああ! 不思議だったかい? これはマジックバッグってやつだよ」
明らかにカバンの底よりも長い道具を取り出したからびっくりしたのだろう。
コレは運よくダンジョンの宝箱から出てきたモノだ。しかし当時は宝箱の中にボロくさいカバンだけが入っていて、リックが「ふざけんな!」と当たり散らしたおかげで誰も欲しがらなかったのだ。
僕が鑑定して「これは良いモノだよ?」と言っても、「じゃあお前が持ってろよ!」とリックが言い、その後誰も欲しいと主張せずに結果僕が所有することとなった。
見栄えだけじゃないと何回か言っては見たんだけどなぁ。
道具と修理するための木材を用意すると、僕は身体全身を解して準備を整えた。
「それじゃあいくよ。スキル『木工』発動!」
僕の保有するスキル『木工』Lv2を発動させる。
まあ、発動させるとか考えなくてもスキルは働くんだけどね。
意識の切り替えってヤツかな。
荷車から折れた車軸を車輪ごと抜き出し、その車軸を検分する。
あ~、コレはそもそも使った木が悪いようだ。硬く締まった木を使うべきところに、それっぽい長さの木を差し込んでいたみたい。
ならばと木材をいくつか手に取ると僕はその木材を『張り合わせた』。合板というスキル『木工』で作ることが出来る複合材だ。スキルの力で隙間なく張り合わさった木の板を手に取り『目利き』をする。これもスキル『木工』の力で、木材の品質や状態を確認することが出来る。
無事に一つの材として張り合わさったソレを、今度は『旋盤』で丸い棒へと加工していく。これは流石にスキルの力だけでは出来ないので、マジックバッグから取り出した道具を当てがって削っていく。
削り終わった新たな車軸を車輪に併せてきれいに填まることを確認すると、荷車をひっくり返してから車軸を取り付けていく。
そうして直した荷車を元に戻してから少し引いて具合を確かめてみた。
「うん。問題ないね。それじゃあ次は君達の靴だ」
「え? 靴ですか?」
「もちろん。そのまま歩いてたんじゃ痛いだろう? スキル『革細工』発動!」
取り出した皮と縫い合わせる糸が浮き上がり、ソレをスキル発動の光が包む。そしてしばらくすると歪なきんちゃく袋のようなものが人数分×2作られた。ひもで縛ってある程度大きさの調整が効く靴モドキだ。
それを女の子たちに渡していく。
小さい女の子たちはどうやって使うのか分からなかったようなので、僕と比較的大きな女の子で手助けをしながら履かせていった。
「どうかな? ちゃんと履けたかい?」
「「「は~い」」」と何人かが手を上げながら答えてくれる。
「よし。それじゃあ後は古着と細々としたものを買いに行くとしようか」
そう言って僕は直した荷車を引きながら、女の子たちと市場へと引き返していった。
僕の身の回りの物は必要最低限だが揃っているので、女の子たちに必要な物を調達しようというわけだ。
「あの? どこに行くんですか?」
女の子たちの中で一番年上であろう女の子が話しかけてくる。女の子たちは全部で8人。
8人で銀貨50枚だったということは1人当たり10枚を下回っている計算だが、その8人の内、3人はまだ本当に小さい子だったので併せて1人銀貨10枚という計算がされたのだろう。
普段の生活では銀貨の下の銅貨で食材などは買える。銅貨100枚で銀貨1枚だ。持ち家さえ持っていれば銀貨1枚だけでも2週間は生活出来るだろう。
ま、常に宿屋に泊まるような冒険者は数日で銀貨単位のお金が飛んで行ってしまうのだけど。
「市場だよ。はぐれないようについてきてね?」
人の流れに流されないように、ゆっくりとした足取りで進む僕を見失わないように女の子たちが後ろをついてくる。それを見て、僕は調達しなければならないものを1つ頭の中に追加した。
市場に到着した。市場には食料品を扱う店が多いが、それ以外にも生活用品や動物などの皮を扱う店などがある。
「すみませ~ん。商品を見せてもらえますか?」
「あいよ、何が欲しいんだい?」
「厚めで柔らかい皮をいくつか欲しいんですが」
「ん~、そうするとこの辺りだな。見てくれ」
素材自体の名前を詳しく知っているわけではないので、僕は触ってその商品を確認してみる。そうしていくつかの商品の中から1つ選びだした。
「この皮を5枚いただけますか?」
「おう。そうすると銀貨3枚ってとこだな」
「ではこれで。あと皮を縫う糸も補充したいんですが、売ってるお店知ってますか?」
「ほい毎度。糸か……、確か6軒先にあったはずだぜ?」
「分かりました。助かります」
僕はお礼を言うと、後ろに控えていた少女達へ買った皮を渡した。
「とりあえず持ってて。寒かったら羽織っててもいいけども」
「え? あの?」
「じゃ、次の店に行こうか」
こうして僕はいくつかの店を回って糸や布等を買い、それを少女達に持ってもらって次に食料品の店に移動する。
目当ては豆類や干し果物などをメインに買っていく予定だ。
「すみません。保存が効くものを買いたいんですが」
「あら? ウチの商品はどれも保存が効くよ?」
「えっと、故郷に土産として買っていきたいので、1月は持つモノがいいんですけど」
「そうなると完全に水っ気が飛んだヤツがいいね……。この辺りのは天日に十分に晒してるから乾いてるはずさ」
また僕は商品を見させてもらう。とはいえ食べ物だから手にすることは出来ないけども。
教えて貰った目利きの方法で商品を見ていく。
そしていくつか買うと、僕は食べ物用の麻袋を取り出して商品を入れて貰った。
「まいどあり~」という威勢のいい声に送られて、僕は次の店を目指す。
「荷、車?」
「そうだよ。さすがに君達を歩かせて移動するとなると時間が掛かりそうだからね。みんなにはコレに乗ってもらおうかと考えてるんだ。けどやっぱり高いな」
市場の端の方、さすがに商品が嵩張るからなのか、その店はそんな場所にあった。
「お~、兄さん。荷車が欲しいのかい? どれを買っていく? コイツなんか最近作ったヤツだから長持ちするぞ」
どうみても他の荷車と変わらない物を手で叩きながら売り込みをしてくる商人。とりあえず僕は思案顔をしながら商品を目で見ていく。
「お?」そうすると掘り出し物が見つかった。
「おじさん、その荷車はどうしたの?」
僕が指さしたのは車輪が在らぬ方向へ開いてしまっている荷車だった。
「んん? あ~、ソレか。年季が入ってて、つい先日軸が折れてしまってね。処分するにも金がかかるし、後で壊して薪にでもしようかと思ってたんだよなぁ。坊主、銀貨1枚でどうだ?」
おそらく冗談でそう提案したのだろう。
だが、僕にとっては好都合だった。
「いいの? なら銀貨1枚。ちょうど部品取りして使えそうだし、僕も助かるよ」
商人のおじさんが差し出した手に銀貨1枚を乗せると、僕はその壊れた荷車を担ぎ上げてその場を後にした。
「へ?」と呆けた顔をした商人が、手にした銀貨を握りしめて呆気にとられた顔をしていた。
あの後、市場で荷車に手を入れるような場所がなかったので町外れの方まで移動してきた。
「あの? その壊れた荷車をどうするんですか?」
「え? もちろん修理して使うけど?」
少女の一人がそう聞いてきたので、僕は当たり前な答えをしつつ、肩から下げたボロくさいカバンから道具を取り出した。
「え? その道具はどこに入っていたんですか?」
「ん? ああ! 不思議だったかい? これはマジックバッグってやつだよ」
明らかにカバンの底よりも長い道具を取り出したからびっくりしたのだろう。
コレは運よくダンジョンの宝箱から出てきたモノだ。しかし当時は宝箱の中にボロくさいカバンだけが入っていて、リックが「ふざけんな!」と当たり散らしたおかげで誰も欲しがらなかったのだ。
僕が鑑定して「これは良いモノだよ?」と言っても、「じゃあお前が持ってろよ!」とリックが言い、その後誰も欲しいと主張せずに結果僕が所有することとなった。
見栄えだけじゃないと何回か言っては見たんだけどなぁ。
道具と修理するための木材を用意すると、僕は身体全身を解して準備を整えた。
「それじゃあいくよ。スキル『木工』発動!」
僕の保有するスキル『木工』Lv2を発動させる。
まあ、発動させるとか考えなくてもスキルは働くんだけどね。
意識の切り替えってヤツかな。
荷車から折れた車軸を車輪ごと抜き出し、その車軸を検分する。
あ~、コレはそもそも使った木が悪いようだ。硬く締まった木を使うべきところに、それっぽい長さの木を差し込んでいたみたい。
ならばと木材をいくつか手に取ると僕はその木材を『張り合わせた』。合板というスキル『木工』で作ることが出来る複合材だ。スキルの力で隙間なく張り合わさった木の板を手に取り『目利き』をする。これもスキル『木工』の力で、木材の品質や状態を確認することが出来る。
無事に一つの材として張り合わさったソレを、今度は『旋盤』で丸い棒へと加工していく。これは流石にスキルの力だけでは出来ないので、マジックバッグから取り出した道具を当てがって削っていく。
削り終わった新たな車軸を車輪に併せてきれいに填まることを確認すると、荷車をひっくり返してから車軸を取り付けていく。
そうして直した荷車を元に戻してから少し引いて具合を確かめてみた。
「うん。問題ないね。それじゃあ次は君達の靴だ」
「え? 靴ですか?」
「もちろん。そのまま歩いてたんじゃ痛いだろう? スキル『革細工』発動!」
取り出した皮と縫い合わせる糸が浮き上がり、ソレをスキル発動の光が包む。そしてしばらくすると歪なきんちゃく袋のようなものが人数分×2作られた。ひもで縛ってある程度大きさの調整が効く靴モドキだ。
それを女の子たちに渡していく。
小さい女の子たちはどうやって使うのか分からなかったようなので、僕と比較的大きな女の子で手助けをしながら履かせていった。
「どうかな? ちゃんと履けたかい?」
「「「は~い」」」と何人かが手を上げながら答えてくれる。
「よし。それじゃあ後は古着と細々としたものを買いに行くとしようか」
そう言って僕は直した荷車を引きながら、女の子たちと市場へと引き返していった。
応援ありがとうございます!
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