元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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ゴーレムを鍛えてみる

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 ロウキはダン達がウルスラに出発した後、ライとリンに協力してもらって人型状態の戦闘訓練を行っていた。
『さすがリル殿』
「ロウキもなかなかやりますね!」
 リルと打ち合う姿は中々堂に行ったものだ。
 それに引き換え――
「えっと、変に手加減しなくていいわよ?」
 キョーコと練習用の棒で打ち合いをしていたイリアはへたばっていた。

「ゴリアテを修理してください」
「あ~、とりあえず他のゴーレムからパーツ取って組み直せないか試してるから、ちょっと待っててね」
 ログハウス横のスペースでゴリアテと呼ばれたゴーレムの胴体の周りに、雑魚ゴーレムの山を作って、ダンジョンから持ち帰った工具を片手にキョーコが思案顔をしていた。イリアはそんなキョーコに迫る勢いで近づき、お願いをする。
「イリアの本来の運用として、ゴリアテに乗っていることが正常! つまりイリア単独で行動するのは最終手段な訳で――」
「とりあえず、大人しくダンさんのトコに行きなさい?」
 手にしたスパナを、その人物に向けながらキョーコが言う。イリアは「ぐぬぬ」と悔しそうにしながらも、その言葉通りに、腕組みして待っている件の人物の前に移動した。
「来ました」
「ふむ。――って鎧みたいなモノですよね?」
 嫌々と時間稼ぎをしていたイリアに嫌味事でも言うのかと思えば、ダンはそんな意図と全くの別の事を聞いてきた。訳は分からなかったがイリアは問いかけに答える。
「その認識でほぼ間違ってはいない。付け加えるなら、力をサポートする機能も付いていると思ってもらえば、より正しい認識だと言える」
 ダンは再度「ふむ」と少し考えた。
「ならば、より良く使えるようにイリアさんも動けるようにしましょうか」
「やっぱりそういう反応になるのが分かってた!」
 しかしイリアもこの世界の住人の強さ、その理由と仕組みを知りたくて、シンジュクを離れてダン達についてきたのだ。そう易々と諦めたりはしない!――早々にくじけかけたが。
「それじゃあ、とりあえず両手を前に出してもらえます?」
 そう言われて両手をダンに向かって突き出す。ダンも両手で受け取るように握った。
「――うん、以前よりも『おーら』が出ていますね」
 何やら体内を波のような感触が行き来している。生体型端末として、ベースとなった人類の神経網と同じ感覚器が備わっているイリアはその何とも言えない感覚を拾っていた。
「この妙な感覚はダンが?」
「おや、これを感知出来るんですか? ならば」
 そういうとゆったりとした動きで、ダンはイリアの腹と背中に手を置くように腕を動かす。体も自然とイリアの横に移動していた。そして何やら腹から背中、背中から腹と先ほどの波のようなモノが行ったり来たり。
「衝撃波? しかしダメージを負うほどの振動ではない。そもそも振動してない?」
「それじゃあよ~」
「何を?」と思ったイリアは次の瞬間、コアが急激な熱を帯びたような感覚を覚えた。リアクターで摂取したものをエネルギーに変え、そのエネルギーをコアで更に変換して体へと供給するラインに流す。人で言えば栄養を取って、心臓で各所に血を送るようなものだ。つまりコア=心臓だ。
 そのコアが突如最大駆動まで跳ね上がったような感覚がイリアを襲った。
「ん~、がしづらいな」
「だ、ン、ちょっ」
 コアから供給されるソレに、ダンの手から放たれる波が変化して包むように? あるいは添えられるようにラインを走る力が体を循環し始めた。
「血、ではない。内部循環するリキッドに含まれる? この波は?」
「一通り回りましたね。それじゃあよ~」
「え? はや? ダン待っ」
「はい!」
 グルリと臓器が動いたような気がして――イリアは吐いた。

 やってしまった。とダンは思った。
 に施した方法で、闘気オーラを循環させ自覚させる。現状成功していた方法だったのだが、やはりゴーレム相手には無理だったのか?
「あ~、大丈夫ですかイリアさん?」
 とりあえずイリアの背中を擦りながら声を掛ける。人種のように見えたイリアならばと期待をしたものの、過去に出会ったゴーレムを思い出してみれば、そのほとんどはを動かして色々としてきたように記憶していた。とすれば教授するべきは闘気の扱いよりも魔素の扱いではなかっただろうか?
 悶々と考えていたダンに、イリアの声が聞こえてくる。
「ダン。今のは何ですか?」
「あ~、今のですか? アレは闘気を外から操作する技でして、僕がイリアさんの闘気を動かしました。ハラワタを抉ったような感覚でしたよね?」
「ハラワタを抉る? ダンはその感覚を知っているのですか?」
「正確にはなら持っていますね。さすがに竜相手には無傷とはいきませんで」
「は? 竜?」
 イリアの記憶には伝承の中にしかいない生物の名前だったので驚いたのだが、ダンには竜そのものに驚いたように感じられた。
「ま、その竜は確実に息の根を止めてきましたから襲ってくることはありません。安心してくださっていいですよ?」
 大団長以下第1軍の精鋭と共に、竜の巣から飛び出した若い竜を、王国西部に広がる大平原で仕留めた記憶が蘇ってくる。『思えば大団長の本当の武器をあの時初めて拝見したな』とウンウン頷いているダン。それを見て、さらにおよび腰になるイリア。そもそも地面に手を突いた姿勢から、まだ回復してすらいなかったのだが。
「と、そんなことより回復しましたか?」
 ダンの思考は長くは続かなかった。元より切って、ぶっ飛ばして、食われて、薙ぎ払われてとひたすら剣を振り回していた記憶しかないのだ。その時後方から攻撃していたメンバーだったら全体像が見えていたかもしれないが、最前線で竜と切り結んでいたダンには竜のドアップぐらいしか記憶が無い。
「……とりあえず、先程ダンがやろうとしていたことは理解出来た。つまり、だな?」
 ふらりと立ち上がったイリアが、その場に脱力した姿勢で静止した。
 普通の人にはただ立っているだけにしか見えないその姿に、しかしダンはその目に宿した闘気を通して確かなものを見ていた。
「おお、闘気が放たれている!」
「イリアのコアの稼働率を上げた。つまりを『おーら』を動かすと表現しているのだろう? 原理さえわかれば、逆にイリア達のような存在の方が遥かに――」
「んじゃ、ソレを体に止めて一時堪えてみましょう」
 フフンとしたり顔のイリアは、ダンのその言葉に固まった。
「……ナンテ?」
「一時ですよ一時。耐えられるまで耐えましょう」
「ムリ? コレ、一時的ナ、オーバーロードダヨ? アト、スウ十秒モ持ツカワカラナイ、ヨ?」
 何故かカタコトになったイリアにダンは笑顔を向ける。
「目標はとりあえず1時間! その後は徐々に伸ばしていきましょう!」
「イ、イヤァァァァァ!」

 何故か初日に奇声を上げて気絶してしまったが、イリアは2日目からはしっかりと訓練をしてくれた。ちょっと眼つきが普通じゃない気がするけど。
 あと何故か肉を片手に訓練している。
「コアの稼働に『かろりー』を使いますので」
 闘気のコントロールがまだまだ下手なのだと、ダンは納得して考えることを止めた。
「でも闘気の漏れは少なくなってきましたね。2日目にしては優秀な方ですよイリアさん」
「……しかし、が使えるとはいえ、我々防衛部隊を蹴散らせたのには納得出来ていませんが?」
 何やら疑わしき眼つきも加わるイリア。もはやドンヨリとした闇を思わせる眼つきだ。なにか闇でも抱えているのか?
 とはいえ疑問があるならば答えるのが教えだ。
「ふむ、そういえば皆さんも正しく理解してなかったっぽいですね。ちょっと全員に集まってもらってから説明しましょうか」
 そういって個々に訓練や家事やら、あとゴリアテにかじり付いているのとかを連れてくるダン。
 そして全員が集まったところで、マジックバッグから1本の木を取り出すダン。そしていつもの剣を取り出すと、その木を上へと放り投げる。
 そう、をだ。枝打ちされていない切り倒した状態の木。
「ハッ!」と気合の声と共に、木が切断される。空中で縦に切り裂かれた木が地面へと落ちると、ドガガと大きな音をたてた。明らかに軽いモノが落ちた音ではない。
 更にダンは真ん中のほぼ板になった木を掴み上げると説明を始めた。
「え~、この板は同じ木から作られたモノと皆さん見ましたよね? コレを使って説明します」
「「「今のパフォーマンスは一体!?」」
 全員のツッコミをスルーして、ダンは手に持った板状の木を更に上下2つに切った。そして剣をしまうと、その板を左右の手に持つ。表裏を見せて一枚を地面に突き立て、一枚を手にしたままダンが説明を始めた。
「ではこの板を使って、闘気のというものの説明をしたいと思います。ん~、それじゃあイリアさん、あの雑魚ゴーレムの武器で使えるものを持ってきていただけますか?」
 そういわれてイリアはゴーレムの山から比較的損傷の少ない銃剣を掴んで持ってくる。
「その武器って、誰が使っても飛ばすモノは同じ威力なんですよね?」
「その通り。『ぱうだー』の配合を変えなければ威力はほぼ同じだ」
 『ぱうだー』とやらの説明はされたが、ダンには『威力は同じだ』の所しか理解は出来ていなかった。でもこれからする説明にはちょうど良かったのでダンはとりあえず頷いて進める。
「その武器で、まずはこちらを撃ってもらえますか?」
 そういって指し示すのは地面に立てた板。明確な指示だったので、イリアはその板に切っ先を向け、銃剣のグリップにあるトリガーを引いた。ドッ! と音をたてて撃ち出される弾丸。板を貫通した。
「まあ、当然的に当たったモノがありま――貫通しましたか。とりあえずこのように板を打ち抜ける威力はあるという事ですね。それじゃ、次コッチにお願いします」
 そういってダンが手に持った板をフラフラと振る。
「……かなりの衝撃が手にかかると思いますが?」
「大丈夫。やっちゃって♪」
 持っていない手でグーを作って突き出したダン。イリアとしては、『どこかに固定しないのか?』という問いかけだったのだが。指示に従って銃剣をダンの手の板に向ける。そして撃つ。
 ガキンッ!
「?!」
 先程と違って貫通することなく、鉄を撃ったような音がした。そう、。ダンが手に持つのは先程撃った板と同じもの。
「どういった仕掛けカラクリが?」
「からくり? まあ説明しますと、この板は僕の闘気を覆わせています。ホラ、ここに当たって出来た窪みがあるでしょ? んで、ここら辺に~、あ、あった!」
 そういってダンが摘まみ上げた金属の粒。それにキョーコが声を上げた。
「え、銃弾!? 私、銃弾撃たれてたの!?」
 イリアは呆れたような顔をして言った。
「防衛軍が銃弾を撃たずに『ごむすたん弾』を撃つわけないのですが? 治安維持じゃないのですよ?」
「え~? でも私死んでないけど?」
 それにダンは不満げに息を吐く。
「まったく。そんなヤワな体で『1人1オーガ』なんて言う訳ないじゃないですか。皆さんは闘気を纏って日常生活を送れるように。ただの力押しで負けるような仕上がりにはなってませんよ?……とはいえ、まだオーガは無理でしょうが」
 最後にボソッと呟いた言葉はイリアとリルとロウキにしか聞こえなかった。
「闘気の効果はまず第一に頑強になるというものです。とはいえ、これはお互いの闘気の力比べを始めると、途端に恩恵が少なくなりますが。格下相手にはとても効果があります。そして次に」
 ダンは手に持った板を地面の板に振り下ろした。パカン! と小気味よい音をたてて、
「闘気で武器を覆うと、素材の耐久度に闘気分が乗せられる形となります。第一の効果が武器にまで延長している形ですね。上位の魔物というのは、この『闘気の上乗せ』された武器でないと傷を負わない特性があります。ようは『力こそパワー』だそうです。同僚の言葉ですが」
「なにか『頭痛が痛い』みたいな言葉ですね」
「……絶対、ウチの弟だ」
「そして第二に体の能力が上がります。これも『きんにく』? とやらに作用しているのではと言われました。ようはスジ肉の事らしいですが、頑強になった体だから力も出せるようになったんじゃないかと思います」
 イリアは遠い目をしていた。『私のマッスルパッケージ、常人の2倍は力出せるはずなんだけど。そっかー、片手で木を放り投げる『びっくり超人』相手だったかー』とか考えていた。
「まあ、街で観察していると、普通の人は常時闘気を纏っていないようですけどね。そういやウチの第2軍も意識して纏ってる人いなかったような?」
「『おーら』と呼んでいるモノを常時展開していると、『かろりー』が枯渇するような気がしますが?」
 イリアは横で頭を抱えるキョーコを見ながらダンへと質問する。
「え? 闘気は循環させておけば大丈夫ですよ? 攻撃とかに使う、外に出したものは回収出来ませんが」
 対してダンは真顔だ。思わずイリアは左右を見てみたが、誰も驚いた様子はない。驚いているのが自分だけという状態に、イリアは背筋が寒くなるという状態を初めて知った。正確にはダンと出会ってから幾度となくその状態になっているのだが、自覚したのは初めてだった。
『全員、されている!?』
 狼狽したイリアの雰囲気に、キョーコが「ふっ」と笑いを漏らす。
「大丈夫。1か月も経てば、あなたも『これが常識』と思う様になるわ。……じゃなけりゃ、やってられるかってが続くもの」
『それは果たしてなのか? 本当にじゃないのか?』そんな言葉が頭を過ぎるものの、イリアの口から出たのは違う言葉だった。
「イ、イヤァァァァァ!」
 違った。悲鳴だった。
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