元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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昔の近衛たちの実力

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 上位アンデッドナイトが向かってくるのを見たダンは、自分も参戦するかと武器ポーチからいつもの鞘を出そうとする。
 そのダンの前に割り込んでくる人影があった。

「おっと! アイツの相手はあたしに譲っちゃくれないかダンさん?」

 双剣を手にしたファーニが一歩前へと出る。

「悪いけどあたしが前に出るからウェンディ、あとヨロシク!」
「仕方ありませんね。でも余り遅いと

 前に駆け出すファーニの交代するように、マロンの横にウェンディが進み出る。

「では俺達が右を受け持ちますね」

 ライがそう宣言すると、リンも何も言わずに追従する。ポーラは少し悩んでサニーを見たが、そのサニーにブルルと『行け』という様に鳴く姿を見て右の通路へと飛び込んで行った。

「なら私たちが左、と」
「ふん! アンデッドに遅れなぞとらん!」
「……あの、やっぱりアンデッドの存在自体が不可思議でしかないんですが?」

 リル、ロウキ、イリアが左の通路へと進んで行く。ちなみに全員が格闘主体なのだが、3人共アンデッドナイトの持つ剣などには躊躇する様子も見せていない。刃物に対してはイリアも忌避感は持っていないようだ。ある意味では一番ダンに毒されているのかもしれない。

「ふむ。ま、皆さんの経験になりそうですしね。……で? キョーコさんは?」
「あ~、ほら! 私が入る余裕もなさそうだし、いざとなれば後ろから魔法の矢で撃つわよ? というか私だけに聞いて、なんでクローディアには聞かないの?」

 ダンは横で残っているキョーコに問いかけると、キョーコは早口でまくしたててきた。どうにもサボる姿を誤魔化そうとしているようにしか見えなかった。
 その話に上がったクローディアは弓を手に持ちつつ反論する。

「私も入る余地は無いと思ってるけど、気は抜いてない」
「うぐぅ」と呻くキョーコ。呻く時点で自分に非があると認めるようなものだ。

 とはいえ入る余地がないのは確かな事なので、ダンはそれ以上キョーコに何も言わずに戦闘を見守るように十字路の中心に立った。



 ライとリンは持っていた槍を離すと腰に差していた剣を抜き、アンデッドナイトと同じ剣と盾という装備になって2人通路に並んで向かい合う。

 アンデッドナイト達は盾をしっかりと持って、その身を隠すように盾の影に隠れるような防御主体の構え。

 対してライとリンは胸辺りを隠す程度に盾を持ち上げて、剣の切っ先を相手に向ける姿勢の攻撃的な構えだ。

『『オオオオオオオオ!』』

 まずアンデッドナイトが盾を構えたまま突進してくる。ライ達も良く知る『シールドバッシュ』という選択を相手が選んだのだと確信する。

 ライは盾を保持していた手を剣の柄へと移動させて、両手で剣をしっかりと握り、右足を引いて踏ん張る姿勢を見せる。それは一体の杭を連想させる姿だ。

「アーツ『ハードポイント』」
 更にアーツを使って自身の固定と頑強さを得る。

 そこに突進の勢いのままのアンデッドナイトが突っ込んできた。

 ドンッ! という音と共に、ライの剣はアンデッドナイトの盾を貫通することに成功し、そのまま相手の首元へ剣が突き刺さった。


 リンの方は逆に片足を前に滑らせながら姿勢を低く、その手に持った盾を体へと密着させる。

 その楔を打つような姿勢となったリン目掛けて、アンデッドナイトが突進してくる。
 相手との距離を確認しながら行ったその行動は、ちょうどアンデッドナイトと接触する直前のタイミングだった。そうするとどうなるか――

「どっせい!」

 気合の声と共にアーツなどは使っていないが、その全身の力を使って、アンデッドナイトの体をわずかに浮かせることに成功する。
 突進の勢いのまま、自分の体が浮いたアンデッドナイトがリンを越えて通路へとダイブした。
 全身鎧を着ていたその身体は容易に起き上がることが出来ず、上半身をわずかに起こしかけたところで背後からその首目掛けてリンの剣が突き込まれる。

「かっこいいよライ」
「そっちもキレイに決まってるぞリン」

 お互いを褒めあう2人の間を、一本の槍が抜けていく。

「油断しないでよ。お父さん、お母さん」

 そこにはライの攻撃で致命傷を与えていたと思っていたアンデッドナイトが、死力を振り絞って剣を振り上げた姿勢のまま、その顔面へと槍を突きたてられた姿があった。

 それを成したポーラの若干呆れを含んだ声に2人は若干肩身を縮めると、気を取り直して通路の警戒へと移行していった。



「我がいっちば~ん!」
「ならば、にばんいきま~す!」
「競争では無いはずなのですが……」

 ワクワクといった表情でアンデッドナイトに躍りかかるロウキ。それに続くリルも表情こそ普通ではあるが、見えている尻尾は身体の動き以上に振られている。
 イリアはやや2人から距離を置きつつ追従していくと、戦闘を始めた2人に巻き込まれないような位置取りで止まった。

 アンデッドナイト達も巧みに盾と剣を使うが、さすがというか、人とは違う動きに翻弄されて、終始劣勢で追い込まれていくアンデッドナイト達。

 その時イリアの視界の端で動くものがあった。通路の壁、その上部の一部がスライドしている。イリアはそちらへと近寄ると、全身ではなく上半身だけを覗かせてボウガンを構えるアンデッドナイトの姿があった。

 通路の上から下までを使った隠し扉ではなく、狙撃スペースだけ開いた今回の仕掛けをまさか見破られるとは思っていなかったアンデッドナイトの声に出ない驚きのようなものを感じつつ、イリアがジャーキーを口に含みながら右手を大きく引く。

「オーバーロード。『とうきぱんち』!」

 腹から「ギュオオオ!」と音を鳴らしながら、闘気オーラを纏った拳を驚き顔のアンデッドナイトに叩き込むイリア。
 頭を吹き飛ばされて、胴体が持っていたボウガンごと地面にゴシャリと落ちる。

 それを見届けると頬張っていたジャーキーを嚥下しつつ、更にもう一枚取り出した。

 振り返れば片腕や片足を無くしてロウキ達に追い込まれているアンデッドナイトの姿が見える。

 やはりこちらの事には気付いていなかったようだ。とイリアは周囲の警戒は自分がしなければと気持ちを改めていた。



『ヤルナ、チイサキケンシヨ!』
「へ、まだまだ手の内は見せてねーぞ?」

 上位アンデッドナイトに双剣で攻撃したファーニは、その攻撃が予想通り受け止められると(そこで倒せてしまったなら儲けものだったが)、火の加速ファイアブースターの勢いを使って相手を更に奥へと押し返していた。

 上位アンデッドナイトについてきていたアンデッドナイト達はその戦いに加わろうと後ろを振り返るも、それはウェンディとマロンによって防がれてしまった。

 無視できない威力の攻撃を受けたアンデッドナイト達はウェンディとマロンに向きなおる。

 1対1が3か所出来た状態だ。

 上位アンデッドナイトと向かい合って打ち合うファーニは、その剣戟に時折、火の加速を交えて攻撃速度に緩急をつける。しかし上位アンデッドナイトもその隙をつくように、盾で攻撃をいなして剣でファーニを攻撃していた。

 双剣での攻撃が盾によって弾き飛ばされる。

「へへ、強いねあんた」
 ダンとはまた違った相手。しかも本気で命を奪いに来ている相手に(ちなみにダンの訓練でも死にそうな目にあったことは何度もあるが)、ファーニの戦闘における勘が研ぎ澄まされていく。

 思わず浮かんだ笑みを浮かべるファーニに対して、上位アンデッドナイトが改める様に盾と剣を構えた。

『ナルホド。タシカニキコウハ、ヌスットデハナサソウダ……。ダガ、王ノ元へ素直ニ行カセル訳ニハ、イカン』

 そう言った上位アンデッドナイトは剣を上段に構える。

『コレハ、王ト、アル男カラ下賜サレシ技。受ケルガイイ、我ガ『エンジン』ヲ!』

 そういった上位アンデッドナイトの剣に炎が纏わりついていく。

「おう、やっとやる気になったって事だな。こっちも更に上げていくぜ!」

 ファーニも火の加速の調子を確かめる様に、剣の峰から炎を吹き上げさせる。


 仕切り直しは上位アンデッドナイトの炎を纏った剣が振り下ろされる。ファーニも双剣から火を噴き出し真っ向から打ち合った。

『我ガ『エンジン』ハ、全テヲ焼キ切ル!』

 剣に纏わりつく炎がその勢いを増す。その熱量に危機感を感じたファーニが後ろへと逃げた。

「やっべぇ熱だな、その剣。だけどあたしにも譲れねぇモンがあるんだ! ここで引いたら『』みたいなすげぇ剣士に成れねぇ。だからあたしはアンタを倒すよ!」

 ファーニの双剣に火の加速が纏わっていく。いや、それはもはや火の加速とは別の魔法だ。

『我ガ『エンジン』ヲ真似タ!?』
「そっちがすげぇ熱を出すなら、こっちだって同じくらいの火を出せばいい! 名付けるなら『炎の刃ホノオノヤイバ』。フレイムエッジだ!」

 ファーニに双剣を突き付けられた上位アンデッドナイトは、盾と剣を下へと向けるとファーニへと向き直った。

『我ガ名ハ、エンブレイス。キコウノ名ハ?』
「ファーニだ。次で決めるぜ?」
『望ムトコロダ』

 お互いに構えるファーニと上位アンデッドナイト――エンブレイス。


 開始の切っ掛けはウェンディがアンデッドナイトを撲殺した音で始まった。


「おらぁぁぁぁぁ!」
 ファーニの双剣から炎が噴出すると、それを後ろに向けて推進力として前に撃ち出される。

『コイ! ヌオオオオオオオ!』
 迎え撃つ姿勢のエンブレイスの剣に纏わりつく炎がこの戦い一番の勢いを見せた。

 そして交差する2人。

 キーン! と甲高い音をたてて、エンブレイスの剣が根元から断ち切られる。

『キコウノ、勝チダ』

 そう言ったエンブレイスの腰から上が滑り落ちる。

「……で勝ち。って言われてもなぁ」

 ファーニは自身の双剣を見ながら、納得いかない顔をしていた。
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