元兵士その後

ラッキーヒル・オン・イノシシ

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別視点 あるオーガ(元ゴブリン)と、ある人物

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「ふぅ」と一息つくと、俺は抱きかかえていた女を脇に下ろして余韻に浸っていた。
 その前に抱いていた女と併せて、左右に女を侍らすように寝床に横になる。
 女たちは涙を流しながら何やらつぶやいているが、俺はそんなことを気にせずに両手が手持無沙汰なので女の体を撫でまわしてその身体の柔らかさを楽しんでいた。
 そういえば今まで色々あったなと、俺はを振り返ってみた。


 俺は地球生まれの人間だ。
 ちょっとした事故に巻き込まれて死んでしまったが、次に俺が気づいたのは光の奔流が流れる空間であった。

 そこで俺に話しかけてくる声があった。
『――さん、聞こえていますか?』
 女のような感じがするが、その相手の姿は見ることが出来ない。
「あ? 何だって?」
『――さん、私の声が聞こえていますか?』
「聞こえてるけどよ、人の名前を呼んでるつもりか? 俺の名前は――だ!……あれ?」
 俺は自分の名前を声を大にして言ったつもりだった。だが俺の口から自分の名前が出ることはなく、俺は動揺が隠すことは出来なかった。

『――さん。申し訳ありませんが、あなたの名前や付き合いのあった人の記憶は思い出せないようにさせていただきました』
「なんだと!?」
『あなた自身がお亡くなりになったことは覚えていますね? ですが、あなたには別の世界に転生できる機会が与えられることとなりました』
「へぇ、なんかマンガとかで最近よく見る展開だな? それが関係あるのか?」
『あなたの知識を持ち込むことは出来ますが、あなたの前の人生の記憶を持ち込むのは『容量』が足りなくて……。少し『最適化』をする必要があるのです』
「ふん? よく分かんねぇけど、少なくとも頭真っ白で異世界に行くことは無いって訳か。ま、仕方ねぇな」
 死んだっていうのに、『俺として』続けて人生をまた生きることが出来るんだ。悪い気はしなかった。

『それと『人種』にも転生することは出来ません』
「? それじゃあ俺は何に転生するんだ?……まさか虫とかじゃねぇだろうな?」
『いいえ、あなた転生先はです』
「ゴブリン!? ゲームとかじゃ雑魚じゃねーか!」
『正確にはゴブリンに孕まされた女性の子供として転生します。世界の理を潜り抜けて転生する方法はしかありません』

 いわゆる『裏技』ってヤツか? そういや今言った事を考えると――
「――俺はゴブリンになるしかないんだな? そしてゴブリンとして生きろと?」
『申し訳ありません……。ですが魔物は『進化』をすることが出来ます! そして転生したあなたにスキルとして『進化加速』を与えましょう!』
「なんだその『進化加速』ってヤツは? 猿から一気に人になれるのか?」
 なんだっけか? 進化論とかいう言葉だよな、進化って。
『魔物は存在自体が魔素という元素で構成されています。『進化』をすると魔素が変化して上位の魔物に変わることが出来るのです。そして物と言われていますが、あなたの生き方次第では魔人に――』

「それよりもゴブリンってヤツは?」

 俺の発現に、それまで止まらなかったマシンガントークが止まった。
 何か気づかれちゃいけないことに俺が気づいちまったのかコレ?
『――ゴブリンの生態として、他種族の女性を孕ませることができます』
 だがすぐに気を取り直したのか俺の質問に答えてくれた。
 若干声が硬い気もするが……、もしかしてスマホみたいに俺の質問に答えてくれるAIみたいなモノなのか?
「そうか。そういやゴブリンって人間よりも強いのか?」
『基本ゴブリンは人間よりも小柄です』
「小柄って……。相手に勝てるのかどうか分かんねぇよな、ソレ? つうか、身体がデカい奴の方が強いんじゃねぇの?」
『ならばスキル『詳細鑑定』を授けましょう。これは強さを数値化できるスキルとなります』
 強さを数字にって、本当にゲームっぽくなってきたな。
 俺は女が凌辱されるゲームとか好きなんだよな。話の途中で気づいたが今の俺に体はなかったけど、それでも頭の中の妄想に下半身に血が集まるような気がしてきたぜ。

『それではあと一つスキルを授けます。転生者には3つのスキルを与えることになっておりますので』
「ふ~ん? あとどんなスキルがあるんだ?」
 そういった俺の意識にスマホの検索バーみたいなものが浮かんできた。ここにキーワードを入れれば調べられるのか? ん~、それじゃあ……
「……。このスキルを貰えるか?」
『これは……。わかりました、それでは最後のスキルを授けましょう』
 俺の選んだスキルが俺に入って来ると同時に、俺自身の意識が消えていく。


 そして俺はゴブリンとして誕生した。
 ゴブリンは成長が早いのか、1ヵ月しないくらいで大体同じくらいになった。
 そして自分で詳細鑑定スキルを自分に使ってみて気づいた。

 ゴブリン 1/5年
 力    3
 硬さ   1
 速さ   1
 器用さ  2
 知力  10
 魔力   1

「グギャ!?(寿命5年かよ!?)」
 あまりに短い人生にびっくりしたものの、俺は何か助かる方法が無いかと他のゴブリン達を片っ端から調べていった。すると、

 ホブゴブリン 1/10年
 力   10
 硬さ   5
 速さ   3
 器用さ  3
 知力   1
 魔力   1


「グギャア、ギャギャギャ(ホブゴブリン? こいつが『進化』したゴブリンか! それで1年目ってことは『進化』すれば寿命はリセットされるってことじゃねぇのか?)」
 ちなみに声を出すと全て「グギャア」とかになる。考え事をすると自然と声が出ちまうんだよなぁ。

 その後俺はイノシシだの狼だのを殺しまくって初進化を果たした。

 ホブゴブリン 1/10年
 力   10
 硬さ   5
 速さ   5
 器用さ  5
 知力  10
 魔力   1

 ついでに進化した俺にも集落の『孕み袋』を使う権利が与えられた。どうも進化したヤツが孕ませると、子供の時点で進化したゴブリンが生まれる事が多くなるようだ。
 最初に使った『孕み袋』はもはや反応が薄かったが、その後調されてきた『孕み袋』は新鮮な反応を返してきて、だいぶ興奮してハッスルしたな。

 その後も獲物をぶっ殺しては数回『進化』を繰り返すと、俺はゴブリンと言えないほどに大きな体を手に入れることが出来た。

 オーガ 1/30年
 力   50
 硬さ  43
 速さ  38
 器用さ 20
 知力  15
 魔力   1

 ここまで『進化』する過程で同期(同じ時期に生まれたヤツら)はほとんど死んじまったし、集落が人間に襲われて焼き討ちされたので、俺は気付けば1人(1匹か?)で森をフラフラとうろついていた。
 このオーガって魔物は強いんだが、その分以上に腹が減る。
 例えるならパワーがあるけど燃費の悪い車みたいなモンだな。

「グアァ(腹減ったなぁ)」とトボトボと歩いていると、目の前からが歩いてくるのが見えた。
 俺は口を閉じ垂れてくる唾を拭いながら、その獲物の動きを木に隠れながら観察した。
 豚のような顔をしたデカイ体を持った魔物だ。
 スキル詳細鑑定で調べる。

 オーク 1/10年
 力   15
 硬さ  20
 速さ  10
 器用さ  5
 知力   2
 魔力   1

 数字で知ることのできる相手の強さから、俺はこのオークという魔物を圧倒できることを確信した。
 だが、ここで襲うことはしない。
 ゴブリンだって集落を作っていたのだ。このオークも何匹か集まって生活している可能性が高い。コイツを尾行すれば更に多くの肉の塊が手に入る結果が得られるかもしれない。

 正直ゴブリンだとから、あの大きさの肉の塊が集まってくれていると俺の腹も空かなくて済むんだがな。

 そうして俺はオークの後をつけて、無事にオークの集落を発見することに成功した。
 とりあえず一番ガタイがいいオークの頭を粉砕すると、ほかのオーク共は俺の配下となることを了承したようだ。
 詳細鑑定で調べた生態から、家畜だろうがなんだろうが牝が居ればオーク達は繁殖するらしいので、俺は群れのリーダーとしてオーク達を引き連れて手近な人間の村を襲い、家畜や女を根こそぎ奪って、他の男とか要らない人間も連れ帰って食料とした。
 比較的綺麗な顔をした女以外はオークに与え、俺はその女達で久しぶりに楽しむこととした。全員、俺が村の男達を頭から食うところを見せてやったおかげか、自ら進んで、あるいは無抵抗にその身体を楽しむことが出来た。

 朝起きては女を抱き、腹が減ったら肉を食うという生活を送っていると、腹が大きく目立ってきた女達から「アギャー!」と俺の子供が生まれてきた。
 女の腹をブチ破って。
 当然、全員痛みやら出血やらでその後女達は死んだ。
 5人で5匹。
 生まれてきたのは全員オーガだったが、これでは増えるのに時間が掛かる。おまけに生まれた子供たちも俺と同じように大食漢になると考えると、オーク達の数もそれなりに居なければが上回ってしまうかもしれない。
「グアァ(何とも悩ましいもんだぜ)」

 とりあえず当分はオーガを増やすのは控えるかと考えて何日か過ぎた。俺的には数カ月過ぎたようにも思えた。
「グァア!(あ~! ヤリてぇよぉ!)」
 まあ元ゴブリンだからか俺の性欲は高めだったのだろうと自分で納得して、俺はオーク達を引き連れて森を探索し始めた。
 最悪、狼とか魔物でも『穴』として使えるかとかヤバイ妄想を始めていると、そのが目の前に現れた。
 人間のようだが、その頭部にが生えている。『コスプレか?』なんて考えたが、そもそも魔物である俺が居るような世界だ。獣人とかいうヤツだろう。
 なにより村娘達よりも大柄な体をもったが3人!
 俺はオーク達に指差しで指示しながら3人を一気に捉えようとしたが、その内の1人に逃げられてしまった。とりあえず2人は腹をぶん殴って抵抗する気力を無くさせると、その2人を担いで集落へと引き返した。



「グォ……(あ~、あの逃げた1人のはどんなもんだったんだろ……)」
 俺は囲炉裏のような火に照らされた小屋の中でボケーっと想像していた。
 ちなみにオーク達の繁殖で数が増えたことに伴って、俺はオーク達の集落を大幅に広げて改造をした。あいつら泥で出来たカマクラみたいな巣に住んでて効率が悪かったから、俺自ら手作りで小屋を作ってやったのだ。
 そんなことも思い出していると、何やら小屋の外でドタバタと大勢が動く気配があった。

「ゴアァ?(あいつら、また『繁殖小屋』で盛ってんのかよ?)」
 たまにオーク達は俺の作った『繁殖小屋』で盛るのだ。まあその後オークの数が増えるから、俺としては歓迎する事態なのだが。
 月とかなんか周期でもあるのか俺が想像していると、小屋の入り口にしている草のカーテンが開けられる。
「グアァ!(勝手に入ってくんな!)」
 言葉は通じていないがいつもこれで追い返すことが出来ていたので、俺は強い口調で入ってきたヤツに対して唸り声を上げる。
 だが入ってきたのはオーク共ではなかった。

「――これは当たりですね」
 人間だった。
 見た感じパッとしないモブ顔だ。そして男。
 俺の興味は一気に失せた。ただ念のため鑑定する。

 ダン 人間 Lv1
 力    1
 硬さ   1
 速さ   1
 器用さ  1
 知力   1
 魔力   1
 ※保有スキル なし

 笑っちまうほどのカスだった。
「グラァ(一度だけ言ってやる。見逃してやるから俺の目の前から消えろ)」
 ま、人間の言葉をしゃべれる訳じゃないから無意味なんだけどねw

「ダンさん? オーガは居ましたか?」
 そのモブ顔の後ろから顔を覗かせたのは女! しかもスゲー美人だ!!
 耳が尖がってるってことはエルフってヤツか!?
 ニギィと俺の口角が自然と上がるのが分かった。
「ガァァ!(その女をよこせ!)」
 俺は左右の女どもを突き飛ばすと、モブ顔目掛けて手を伸ばしながら吠えた。これだけで普通の男達は失禁したヤツもいたっけなと思い出しながら相手の反応を見る。

 キンッ

 何か金属がぶつかったような音が聞こえた。音は目の前の男から聞こえた気がする。
 ブルっちまって武器でも落としたか? と思ったが、目の前の男は入ってきた時と特に変わらない表情で俺の方を見ている。オイオイ、立ったまま気絶してるんじゃないだろうな?

「ふむ。のかな?」

 キンッ

 再び聞こえる音。
「ガアァ!(訳わかんねぇことしてんじゃねぇよっ!)」
 俺は立てていた片膝に力を入れ――
「グア?(あれ?)」
 入れられずに前へとつんのめった。とっさに前へと突き出していた手をつこうとして――

 

「グアアアアアア!?(ぐああああああ!?)」

 キンッ

 俺の目の前で切られた肩を押さえようとしていた腕が床に落ちていくのが見える。
 もはや俺はパニックだ。顔しか動かすことのできない俺に影が落ちてくる。
 俺は影を作った相手を見上げた。

 ダン 人間 Lv鑑定不可能
 力    99(鑑定上限に達しています)
 硬さ   99(鑑定上限に達しています)
 速さ   99(鑑定上限に達しています)
 器用さ  99(鑑定上限に達しています)
 知力   50
 魔力   99(鑑定上限に達しています)
 ※保有スキル 武術 Lv鑑定不可能
        闘気操作 Lv鑑定不可能
        鍛冶魔法 Lv鑑定不可能
        感知 Lv鑑定不可能
        ・
        ・
        ・

「ガアアア!!(チートかよ!!)」

 キンッ

 再び聞こえた音。
 鍔なりの音だと気づいた時には、俺の視界は頭の位置から転がり落ちていた。



『持っててよかった奥の手スキル! 『魂交換ソウル・シャッフル』!』
 俺は魂だけの存在になった時に使える、転生特典3つ目のスキルを発動させた。
 発動条件は『俺が殺された時』で、スキル効果は『俺を殺した相手の魂と自分の魂を入れ替える』だ。
『チートなその体、俺が有意義に使ってやるぜ!』
 俺は先程のエルフが仲間から突然犯されて泣き叫ぶのを想像しながら、スキルの効果を待った。

【スキル『魂交換』の対象が同一ステージに居ないため、スキル『魂交換』は発動出来ません】

『は!?』
 オイオイ、ここに来てそりゃねぇだろ? あの謎の存在、俺に嘘をつきやがったのか!?
『――いやいや、そりゃトーゼンだろ?』
『!? 誰だ?』
 もはや魂だけとなった俺に話しかけてくる奴がいる。
『そのダンって人間はなのさ。って俺も失敗した1人なんだけどな』
 そう言ってくる相手は割と近くに居る様だ。

『つっても俺の時は転生担当の女神直々に手引きして、それでも失敗したって経緯だけども』
『転生って、お前も地球から来た奴なのか!?』
 俺意外の転生者に初めて会った。まあ魂なので相手の顔が見えたわけではないんだが。
『ああ。俺は『勇者』として転生されるでな? んで1から子供の体を鍛えるんじゃなくて、既に出来てる肉体に『俺』をインストールするって方法だったんだが……』
『だが? だがどうしたんだ?』
『ばれないように加減したとはいえ、女神の作った落雷にんだよ』
『は? 落雷に耐えた?』
 それって人間か?

『他の神にバレないようにギリギリまで威力は落としたらしいんだが……。まあ人間だとは思えんわな。そんなサポートがあっても失敗した俺が居て、与えられたスキルでお前さんが『ダンの乗っ取り』に成功するとは――ありえんだろ?』
『んなが居てたまるか!』
 そう叫んだ俺という輪郭が崩れていく感覚。いや、感じがしてきた。

『ま、無難に生きていればまだ生き残れたかもしれないが、その分? あ、魔物生って言うのか?』
 何か言い返したいが、もはや俺と言う人格すら捉えようがなくなってきた。
『とりあえず成仏してくれ。――って、ヤバイ! あんまり会話してると俺まで疑われ始めたっぽいな! さっさと引っ込むか』



 集落をほぼ制圧してダンと合流出来た仲間が、ダンが何かを見ているかのような視線を送っていることに気づいて声を掛ける。
「? どうかしたんですかダンさん?」
「ん~?……気のせい、かなぁ?」
 ダンもいまいち把握しきれない気配のようなものに首を傾げていた。
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