【完結】フェンリルと勇者と魔王と王子

turarin

文字の大きさ
10 / 43

討伐の旅(宿屋の夜1)

しおりを挟む
眠れない。今日は命の危機だった。恐怖で身体も頭も凍ったみたいだった。そう言えば、なんでエクスカリバー出てこないんだよ!
『そちが我の事を全く思い出さないからじゃ。せめて、剣で矢を叩き落とすとか、真っ二つにしてやろうとか、思えないもんかのう。』
「すまん。」

アオに助けられた。ぎゅっとされて…包みこまれて。おっきい人だった。胸板厚かったなあ…枯れ草の匂いした。頭とか撫でてくれて嬉しかった。青灰色の目が、目だけでにこっとすると、かっわいいんだ。あんなにかっこいいのに。

ん?!なんだと?俺はどうしてしまったんだ。きっと命の危機でテンションがおかしいんだな。寝よう。早く寝よう。


寒い夜だったんだ。何か、すごく寒くて壁が冷たくてさ、そしたら隣に、もふもふっとしてあったかいやつが………ん~、鼻先が冷たい。おい、舐めるなよ。ユキか、ユキだな。お前、死んじゃったんじゃないのかよ。あったかいなあ…ぎゅーっと抱きついて、ユキの首の下に顔を埋めて眠る。幸せな夢だな、これ。


「なんだ?ユキとは。俺はアオなんだが。」

一目見て分かった。
こいつの魔力は俺と同じ青だ。ということは、間違いなく俺の番だ。匂いもそうだ。運命の番に会えるだなんて、何という幸運だ!会えないやつのほうが圧倒的に多いというのに。
人間だよな……俺はフェンリルだが、いいのか。いいよな、理屈ではない。あまりにも可愛い過ぎる。折れてしまいそうに、細い首、腰、手足、御様子うかがいみたいにくりくりするオニキスの瞳、真っ直ぐな黒い髪は絹糸みたいにサラサラ。触りたくて仕方がない。勿論、触るに決まっている。ちょっと構うと、顔だけではなく、耳や首まですぐ真っ赤になる。笑うと、ちっちゃい顔に大きなエクボ…オレンジのちっちゃい口。可愛い…
なのに、こいつは勇者だ。とてつもなく強いのもすぐ分かった。さっきは、かたまっていたがな。今度からは大丈夫だろう。そんなヤワなヤツではない。子どもの様な姿なのに、修羅場をくぐってきたようなオーラを放っている。

誰だ?こいつを狙ったのは?俺があの時傍にいなければ、もしかしたらこいつは……怒りと恐れで身体が強張る。青い冷たい炎がアオから静かに沸き上がる。許さない。

魔王と闘うのか…厳しいな。俺なら何とか互角か。でもソラと闘いたくはない。
様子見だ。ソラは理由もなく闘いをしかけるヤツではないしな。人間も困ったもんだ。魔王にいちゃもんをつけるとかどうかしている。
魔王がソラでなかったらとっくに滅ぼされている。実際、魔王軍のやつらも怒っているようだし、やみくもに攻撃してくるかもしれんな。

愛しい………俺の番、アキラ。
俺のことを好きになってくれ。
「お休み、アキラ。大好きだ。」
ペロリ、つい、あちこちなめちゃうアオ。

「うーん、ユキ、よしよし。」
またまたぎゅっと抱きつくアキラ。

俺はユキではない!
アキラ、おまえにはいつか必ず思い知らせてやろう。
色々我慢のアオであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息の僕とツレない従者の、愛しい世界の歩き方

ばつ森⚡️8/22新刊
BL
【だって、だって、ずぎだっだんだよおおおおおお】 公爵令息のエマニュエルは、異世界から現れた『神子』であるマシロと恋仲になった第一王子・アルフレッドから『婚約破棄』を言い渡されてしまった。冷酷に伝えられた沙汰は、まさかの『身ぐるみはがれて国外追放』!?「今の今まで貴族だった僕が、一人で生きて行かれるわけがない!」だけど、エマニュエルには、頼りになる従者・ケイトがいて、二人の国外追放生活がはじまる。二人の旅は楽しく、おだやかで、順調に見えたけど、背後には、再び、神子たちの手がせまっていた。 「してみてもいいですか、――『恋人の好き』」 世界を旅する二人の恋。そして驚愕の結末へ!!! 【謎多き従者×憎めない悪役】 4/16 続編『リスティアーナ女王国編』完結しました。 原題:転んだ悪役令息の僕と、走る従者の冒険のはなし

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

転生執事は氷の公爵令息の心を溶かしたい【短編】

堀川渓
BL
事故で命を落とし、目覚めたそこはーー生前遊んでいた女性向け恋愛ゲームの世界!? しかも最推し・“氷の公爵令息”セルジュの執事・レナートとして転生していてーー!! 短編/全10話予定

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

異世界転移した先は陰間茶屋でした

四季織
BL
気が付いたら、見たこともない部屋にいた。そこは和洋折衷の異世界で、俺を拾ってくれたのは陰間茶屋のオーナーだった。以来、俺は陰間として働いている。全くお客がつかない人気のない陰間だけど。 ※「異世界に来た俺の話」と同じ世界です。 ※謎解き要素はありません。 ※ミステリー小説のネタバレのようなものがありますので、ご注意ください。

処理中です...