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再構築って何ですか7(アーチャー編)
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虚ろな気持ちで領都に戻ったアーチャーであったが、もっと虚ろなのはキャリーの方だった。
何事も無かったように戻ってきた夫。
貴族として口にするのは憚られるが、白蛇の乾燥粉末まで使って、やりまくって帰ってきた夫である。見ているだけで、腸が煮えくり返る。
黙ってはいられなかった。
「白蛇の乾燥粉末、買ってらっしゃったわよね。大量の由良の花粉も。何に使われたのかしら。」
「…………知らない。勘違いかな。」
汗が流れた。罪悪感があった。溺れていたから。心も移していたから。そしてそれを見抜かれているに違いなかったから。
「フリンさんってどなたかしら。ご存じ?」
「………知らない。」
決して認めてはいけない。認めたら何かが壊れてしまう、それが分かった。
「そう。領地戦、お疲れ様でした。大変な戦い、勝利で治めて頂いて感謝しています。」
離婚だ、不貞だと言っている暇は無かった。
領地の復興に鉱山の採掘、そしてキャリーの夢である、学校や病院の建設。子供達の成長。
夫婦二人で力を合わせて邁進した。前しか見ている暇が無かった。
暫くすると、アーチャーはまた、キャリーが唯一無二だと感じるのだ。彼女の隣は温かい。燃えるような熱は無いけれど、まるで暖かな春の日差しのように、ぽかぽかと微睡みを誘われるような妻だと。
満たされていた。幸せだった。フリンのことはもう、すっかり忘れていた。旅の途中で嵐に巻き込まれたようなものだと思っていた。
夜中に目覚めた妻が、悲しいのか、怒っているのか、泣きたいのか分からないような顔でじっと夫の顔を見つめていることにも気づかずに。
もう、壊れてしまっていることにも気づかずに。
何事も無かったように戻ってきた夫。
貴族として口にするのは憚られるが、白蛇の乾燥粉末まで使って、やりまくって帰ってきた夫である。見ているだけで、腸が煮えくり返る。
黙ってはいられなかった。
「白蛇の乾燥粉末、買ってらっしゃったわよね。大量の由良の花粉も。何に使われたのかしら。」
「…………知らない。勘違いかな。」
汗が流れた。罪悪感があった。溺れていたから。心も移していたから。そしてそれを見抜かれているに違いなかったから。
「フリンさんってどなたかしら。ご存じ?」
「………知らない。」
決して認めてはいけない。認めたら何かが壊れてしまう、それが分かった。
「そう。領地戦、お疲れ様でした。大変な戦い、勝利で治めて頂いて感謝しています。」
離婚だ、不貞だと言っている暇は無かった。
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夫婦二人で力を合わせて邁進した。前しか見ている暇が無かった。
暫くすると、アーチャーはまた、キャリーが唯一無二だと感じるのだ。彼女の隣は温かい。燃えるような熱は無いけれど、まるで暖かな春の日差しのように、ぽかぽかと微睡みを誘われるような妻だと。
満たされていた。幸せだった。フリンのことはもう、すっかり忘れていた。旅の途中で嵐に巻き込まれたようなものだと思っていた。
夜中に目覚めた妻が、悲しいのか、怒っているのか、泣きたいのか分からないような顔でじっと夫の顔を見つめていることにも気づかずに。
もう、壊れてしまっていることにも気づかずに。
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