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最終話
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アーチャーはキャリーを愛していた。それも、とっても。キャリーはアーチャーの唯一無二だった。いや、今も。
ただ、キャリーはもう耐えられなかった。
アーチャーのことは大好きだった。地味で真面目な自分に幸せをくれた。領地を豊かにするのを手伝ってくれた。たくさん愛を告げてくれた。かわいい子供達も産まれた。
時々、他所で浮気をしているのも知っていた。でも、いつもちゃんと帰ってきた。
だってキャリーがアーチャーの唯一無二だったから。
本当にそうなのだろうか。
あのときは違ったよね。
病める時も健やかなる時も…って誓ったけど、嘘だった。
アーチャーとあっさり夜を過ごす度、白蛇の乾燥粉末を思い出さずにいられない。そして、由良の花粉は夫婦では使わない。
あんなにたくさん買って………
何年経っても思い出さずにいられない。この惨めさ、情けなさ、哀しさ、そして憎しみ。
まるで領地戦の頃と変わらない気持ちが燃え上がる。眠れない。これってPTSDのフラッシュバックじゃない?って思いつつ、え?それ何?って思うおかしな彼女であった。
実は、アーチャーも、もう年なのであっさりは仕方ないかなぁと思われるのだが、そんなことにキャリーの考えが及ぶはずが無い。
このままでは、一生、フリンさんと自分を比べ続けて苦しむしかない。キャリーだけ辛くて、アーチャーは幸せそうなのだ。
分かった。
不倫夫は捨ててしまえばいいのだ。
物理的も、心理的にも。
「アーチャー、離婚しましょう。あなたがフリンさんと逢瀬を重ねていることを知った時、そう、白蛇の乾燥粉末まで使って熱烈に。
私はどこか壊れてしまいました。毎日、毎日、辛くて仕方がありません…」
「え?!
何を言ってるんだ。誤解だよ。
それにずっと前の話でしょ。
俺は君しか愛していないよ。会った時からずっと…」
それは嘘でした。否定する気にもなりません。そしてずっと前から、ずっと苦しいんです。
キャリーの幸せは、もうアーチャーと共には無い。共にあるのは、むしろ苦しみと不幸そのもの。
号泣するアーチャーだったが、結局彼は屋敷を出て、領地の騎士団長として過ごしている。キャリーの事が大好き過ぎて、言うことを聞くしか無かった。考え無しの彼だが、何だか自分のせいだということは分かったらしい。
領主の座も、もう息子に引き継ぎ、キャリーは悠々自適。時々孫たちとも遊びながら、本を読んだり、庭弄りをしたり、普通のおばあちゃんとして暮らしている。
たまにアーチャーがお茶に訪れるが、もう彼女の心を揺らす事はない。近くの他人になったから。アーチャーは毎回、なぜか泣きながら帰っていくが、自業自得と言えよう。
ただ、キャリーはもう耐えられなかった。
アーチャーのことは大好きだった。地味で真面目な自分に幸せをくれた。領地を豊かにするのを手伝ってくれた。たくさん愛を告げてくれた。かわいい子供達も産まれた。
時々、他所で浮気をしているのも知っていた。でも、いつもちゃんと帰ってきた。
だってキャリーがアーチャーの唯一無二だったから。
本当にそうなのだろうか。
あのときは違ったよね。
病める時も健やかなる時も…って誓ったけど、嘘だった。
アーチャーとあっさり夜を過ごす度、白蛇の乾燥粉末を思い出さずにいられない。そして、由良の花粉は夫婦では使わない。
あんなにたくさん買って………
何年経っても思い出さずにいられない。この惨めさ、情けなさ、哀しさ、そして憎しみ。
まるで領地戦の頃と変わらない気持ちが燃え上がる。眠れない。これってPTSDのフラッシュバックじゃない?って思いつつ、え?それ何?って思うおかしな彼女であった。
実は、アーチャーも、もう年なのであっさりは仕方ないかなぁと思われるのだが、そんなことにキャリーの考えが及ぶはずが無い。
このままでは、一生、フリンさんと自分を比べ続けて苦しむしかない。キャリーだけ辛くて、アーチャーは幸せそうなのだ。
分かった。
不倫夫は捨ててしまえばいいのだ。
物理的も、心理的にも。
「アーチャー、離婚しましょう。あなたがフリンさんと逢瀬を重ねていることを知った時、そう、白蛇の乾燥粉末まで使って熱烈に。
私はどこか壊れてしまいました。毎日、毎日、辛くて仕方がありません…」
「え?!
何を言ってるんだ。誤解だよ。
それにずっと前の話でしょ。
俺は君しか愛していないよ。会った時からずっと…」
それは嘘でした。否定する気にもなりません。そしてずっと前から、ずっと苦しいんです。
キャリーの幸せは、もうアーチャーと共には無い。共にあるのは、むしろ苦しみと不幸そのもの。
号泣するアーチャーだったが、結局彼は屋敷を出て、領地の騎士団長として過ごしている。キャリーの事が大好き過ぎて、言うことを聞くしか無かった。考え無しの彼だが、何だか自分のせいだということは分かったらしい。
領主の座も、もう息子に引き継ぎ、キャリーは悠々自適。時々孫たちとも遊びながら、本を読んだり、庭弄りをしたり、普通のおばあちゃんとして暮らしている。
たまにアーチャーがお茶に訪れるが、もう彼女の心を揺らす事はない。近くの他人になったから。アーチャーは毎回、なぜか泣きながら帰っていくが、自業自得と言えよう。
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うーん?
なんか中途半端にブツ切りで終わった印象。
カス元夫、罪悪感があって誤魔化していた割には誤解だの昔の事だの、何言ってんだ?だし何となく自分が悪い程度の認識しかないのが不思議、認知症でも出てる?
主人公がしっかりカス元夫をなじってカスが自分が長い間妻を苦しめていた事を自覚させてほしかった。
苦しんで熟年離婚を切り出した割にお茶する神経もよくわからん、長年苦しめてきた元凶のツラなんざ見たくもないと思うもんでは?
名無しさん。様
感想ありがとうございます。
このクズ夫は、中身が大人になりきれてなくて、共感性が著しく低くて、いくら言われても妻の辛さが認識できない男、っていう感じで考えました。
子供の頃の母親との関係が薄いせいもあって、心の安定をどうしても女性に求めがち。フリンも母の面影あったし。中身が子供なんですよね。結局、離婚原因も、何となくしかわからないから、平気で大好きな元妻に会いに行っちゃいます。
元妻はもうすっかり割り切ってるから、昔の知り合いみたいな感じで、まあ、孫や息子一家もいるわけだから、お茶にも付き合うんです。
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