姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

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「ポール、具合はどう?」
 白いカーテン越しの明るい日差しに、ユリア姉様の金色の髪の毛が反射して、とても綺麗だ。ぼーっとした頭で、僕は考える。僕も姉様みたいに、綺麗で、元気で、賢くて、優しかったらいいのになあ…

「ポール?」
 姉様がじれったそうにもう一回言う。
「ごめん、ごめん、聞こえてたよ。姉様があんまり綺麗だから、ぼうっとしちゃったの。」

「ふふふ、なに言ってるのよ。嬉しいけどね。具合はどうなの?熱は下がったみたいだけど。」
「うん、大丈夫。食欲も出てきたしさ。」
「良かった。」

 ユリア姉様と僕は1歳違い。期待されて産んだ一人目が、女の子だった母上は、すぐ次の子を身ごもった。そして待望の嫡男、僕、ポールが生まれた。これで後継は安心と、侯爵家あげてのお祭り騒ぎになったそうだ。

  ただ、残念な事に、僕はすぐに熱を出すし、お腹を壊す。その上長引いて、なかなか良くならない。勉強も剣術も、ちょっと頑張ると、なぜだか体調が悪くなってしまうのだ。だから、たった1歳違いなのに、姉様には少しも追いつけない。姉様は、すごく綺麗で、明るくて、剣も勉強も、すごく頑張ってるのに、そんな顔全然しない。僕は姉様が大好き。

  それでも、僕の努力は徐々に実を結び、身体もしっかりして来て、背も漸く姉様を越えた頃、姉様は学園に入学した。全寮制である。我が家はすっかり火が消えたようになった。
 
そんなある日、姉様が久しぶりに帰ってきた。馬車が着いた気配がしたので、僕は屋敷から飛び出して迎えに出た。すると、驚いたことに、先に馬車からおりて、手を差し出して姉さんをエスコートする男性が居た。

僕より、背も肩幅もずっと大きい、がっちりしているけど、スラッとしている、そんな黒髪の男性だった。姉様の手をとって、赤紫色の瞳を細めて笑いかける。その綺麗な横顔に見惚れた。

えっ?なんだろう?一瞬何が起きたのかわからなかった。なんだか胸がきゅうんとして、どきどきして、頬が火照った感じがした。
どうしよう。また、具合悪くなりそう!
焦った。馬車から降りた姉様と男性にご挨拶して、すぐ部屋に戻ろう。

「姉様、お帰りなさい!」
「ああ、ポール久しぶり。会いたかったわ。」
姉様はいつものようにぎゅっと抱きしめてくれる。温かくて嬉しい。
「あ、あの、僕はユリア姉様の弟ポールです。」

「こんにちは。急におじゃまして申し訳ないね。俺はレジェンド公爵家二男のマークだ。君の姉上とはクラスが同じでね、ペアでやる週末課題が出たものだから、君の父上のご厚意に甘えておじゃましているんだ。一つ、よろしく頼むよ。」
マークは僕の目をしっかりと見ながら言った。そして赤紫の瞳をきゅっと細めて、にっこりと笑った。

両親を交えて食事をし、食後2人は客間に資料を広げて、話し合いながらノートに纏めていた。マークのペンを持つ手は大きくて、ゴツゴツしていて、僕とは全然違った。何だか触ってみたくなって、慌てて目を逸らした。

きっとマークは姉様と同じ位賢くて、何でもできるんだろう。2人で一緒にいる姿がとても自然だ。そう思うと、胸の中がもやもやした。姉様みたいに優しくない自分が嫌になる。

翌日、2人は学園に帰って行った。
「寂しいわ。ポールも早く入学してね。待ってるわ。」
姉様のハグは温かい。
「俺とユリアは、生徒会に入る予定だ。来年ポールも入学したら、生徒会に入れよ。そしたら一緒に活動できるぜ。だから、勉強頑張れよ。」
そう言ってマークは僕の頭をゴシゴシ撫でた。「はい。生徒会に入れるように、頑張ります!」
嬉しかった。僕にも目標ができた。



  
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