御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

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死んだ先が異世界で

一人で 観戦 戦場を

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時間は少し遡る…


「おおー!なかなか壮観じゃねえか!」
東の城壁の上にその声が響き渡っていた。
そこには、城壁の上に座り、膝に乗せた子猫を撫でている少年が戦場を眺めていた。

「それにしても、この街をばあちゃんが守っていたなんてな…」
城壁の上、少年は一人呟く。
まさかの事実により、紡は方針の変更を行っていた。
今回、紡はもともと、この戦いに関わらないように決めていた。誰が死んでもどうでもいいと切り捨てるつもりだった。

まぁ、ばあちゃんの思い出を守るためだしな…
ばあちゃんのお気に入りの宿屋という事で、紡は【守護者の休息】を守ると決め、フォルを現在宿屋の警備において来ていた。

避難する予定もなくなり暇になった紡は東の城壁へと戦場観戦へと来ていた。

ぶつかり合う冒険者とモンスターが命がけの戦いを繰り広げ、指揮された騎士達が街に通すまいと行く手を阻む。
敵の隙を見つけ後方から魔法を飛ばし牽制をかける魔法士。
至る所で行われる激戦にワクワクさせながら観戦を行なう。

それにしても、思ったよりも冒険者達が強くないよな…
あれくらいの敵ならすぐ倒せるだろうに…
下で苦戦している冒険者を眺めながら思う。

思ったよりも戦いの参考にはならないかもしれないな…
思っていたより、期待はずれだった為に紡はため息を吐いた。

「あーあ、強い奴いないかなぁー」

「私が相手になってやろうか?」

後ろから声が掛けられる。
振り向くと、そこにいたのは冒険者ギルドマスターのカレナ フィードがそこにいた。

「ん?ああ、冒険者ギルドのマスター様がこんな時に何の用ですか?」
嫌味のように問いかける。
「いやなに、私の担当する西門がひと段落したから、応援でこちらに向かっていたんだがな。城壁の上に不審者が見えた為に寄ったわけだ」

めんどくさいなこいつ。早く行かないかな。
「それはそれはお疲れ様です。俺は此処で観戦してるだけなので気にせず行ってもらっていいですよ」
邪魔とばかりに戦場へと促す。

「なんだ?お前は戦わないのか?」
「俺は足手纏いになるからな、此処で見てるんだ」
紡は作ったような言い訳で返す。

「何を言っている。Dランクを瞬殺できるんだ。それなりに戦力となるだろう。この街のため一緒に行くぞ」

あーあ…やっぱり誘って来やがったよ。めんどくさいなぁ…
もう隠す気もなく面倒な顔で答える。
「めんどくさいので断る」

ストレートな物言いにカレナの顔が引きつる。
俺は我関せずにゃん吉を撫で続けている。

「それは現状を把握した上で言っているのか?」
「現在モンスターの襲撃を受けており、生きるか死ぬかの戦いが繰り広げられていると理解した上で言っている」
いい加減相手するのが面倒になって来たため正直に言ってやった。

「それなら冒険者ギルドマスターとしてお前に戦闘への参加を指示する」
寝言は寝て言え、そんなの従うわけがないだろ。
「はあ?アホか。俺はもう冒険者ギルドからは抜けている。現在は魔法士ギルド所属だ。なんであんたの命令なんか聞かなきゃいけないんだよ」
「だったら冒険者ギルドから魔法士ギルドへとお前の参加を要請する」
そうか、まぁそれなら通るだろう。ただし…
「俺はFランクだ。強制依頼は適用されない。残念だったな」
俺には適用されないがな。

カレナは拳を握りしめこちらを睨みつけている。
既にカレナに対しオブラートに包むことすらやめた俺は、再度にゃん吉を撫でながら観戦を続ける。

おっ!冒険者が吹っ飛ばされた。よく飛ぶなぁ…
観戦しながらそんなことを考えていると…

「いいから戦いなさい!」
カレナがこちらに弓を構えていた。
何トチ狂ってんだよこの女…
「それはどういうつもりだ?」
「怪我したくなければ貴方も直ぐに戦場へと向かえ」
あーあ…ついに脅して来やがった…
「以前言ったよな。敵対するかはお前ら次第だと。これは明確な敵対行為だが正気か?」
俺は最終確認をする。

「貴方のような者はこうでもしなきゃ動かないだろう」
まぁ、その通りなんだがな。だが、これで敵対確定だ。


「コア、武器を破壊しろ。チコ、まだ殺すなよ」

紡がぼそりと呟くと急に変化が訪れる。
いつのまにか伸ばした腕に少年が座っていた。
不気味なことに手に重さはなく、少年は顔の半分を白い仮面で覆っている。
その少年が弓矢に触ると、急にカレナが弾いている弓矢がボロボロに砕け散る。
さらにはカレナの肩に小さな少女が座っており、手に握った巨大な鎌を首元に当て微笑んでいる。
彼女も顔半分を白い仮面で覆っており、同様に肩には一切の重さがない。
一瞬にして逆転した状況に固まる。

紡は面倒くさそうな顔で続ける。
「これ以上しつこくするんなら俺も方法を改めるぞ」
「わ…悪かった…もう強制はしない」
引きつった顔で絞り出すように声を出す。

「ありがとな、もういいぞ」
すると、少年と少女はふわりと消えた。

危ないなあ…事前に召喚しといてよかったよ。
少しホッとしながら二人を見送る。
固まっているカレナを無視し、再度戦場を観戦し始める。

ん?なんか遠くから逃げて来る男がいるな。なかなか重傷のようだな、片腕ちぎれてるし…
あ!他の冒険者に連れてかれたな。

戦場を野球観戦のような感覚で眺めていると、急に空気が変わる。
戦場に一匹の狼が現れる。
おお!あいつなかなか戦いごたえがありそうだな…
その狼は今日見てきた魔物の中で唯一紡が戦いたいと思えた魔物だった。
無意識に紡はその狼へと鑑定を行なっていた。

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