御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

文字の大きさ
21 / 61
死んだ先が異世界で

手伝い お使い 戦場で

しおりを挟む


side チコ


お兄ちゃんに言われ、よく分からない女の子を持ちながら飛んでいく。
時折、顔の怖いおじちゃん達がこっちを見つめてくる。
怖いけど、お兄ちゃんのお使いをきちんとするためだもんね、頑張らなきゃ!
怖がりながらも真っ直ぐ飛んでいった。

「「カティナ!!」」
奥から必死な形相の男の人と泣きながら走る女の人、二人の人間が此方へと近づいてくる。

あの人たちに渡せばいいのかな?
よく分からず地面へと下ろした。

二人はカティナと呼ばれた少女を拾い上げる。
お付きの人が状態を確認する。
体はボロボロだが、命には別状がなかったことを知り深いため息を吐いていた。
んー…届けたしもういっちゃってもいいのかな??
ふわりと宙に浮き上がると、お兄ちゃんの所に戻ろうとする。
だか、そうはいかなかった。此方に気づいた男の人が話しかけてきた。
「誠に申し訳ない。私はこの街の領主をしているグラッド ウェルドという者だ。先程は娘の命を助けて頂き誠に感謝している」

このひと、さっきのカティナちゃんのおとーさんなんだ。
「大丈夫…だよ…。私は…お兄ちゃんのお願いを…聞いただけだから…」
「そうか、お兄ちゃんっていうのは今あの狼と戦っている狐面の方なのか?」
「うん…お兄ちゃん…とっても優しいの…」
にゃん吉ちゃんと一緒に撫で撫でしてくれたお兄ちゃん。あったかい手に撫で撫でされてとても心地よかったの…。

「そうか、ならば早く彼の方に応援を出さなければいけないな」
グラッドは支援すべく支持を飛ばそうとする。
大変…!
急いで袖を握り支援をやめさせる。

「なんで止めるんだ、急いで助けないといけないだろ」
動きを止められたからか、グラッドはチコを軽く睨む。
「ひっ…」このおじちゃん怖い人だ。チコの中で確定した。

そんな中、「スパンッ」とグラッドの頭を叩く者がいた。

「貴方、こんな女の子を睨みつけるなんて何を考えているのかしら?」
そこには般若が立っていた。
「だが…」
「言い訳する前にこの子に謝りなさい」
「あ…ああ、すまなかった」

怖いおじちゃんを一蹴…このおねーちゃんカッコいい…!此方も確定したようだ。

「ごめんなさいね、私はこの人の妻のカリナですわ」
「私はチコなの…」
「チコちゃんよろしくね。それでなんでお兄ちゃんへの支援を止めたのかしら」
お兄ちゃんからの伝言しっかり伝えるの!
「お兄ちゃんが…狼と一人で戦いたいから…誰も来させないようにって言ってた…」

話を聞いた二人はとても驚いていた。遠目からでもわかる、誰が見てもあの狼は一人で敵対してはダメなものだと。

「でもお兄ちゃん危ないんじゃないかしら?」
「問題ないの…!お兄ちゃんは…せんとーきょーってのだから大丈夫って…にゃーちゃんが言ってたの…」
「それは…大丈夫じゃないと思うわよ…」
にゃーちゃんが大丈夫って言ってたから大丈夫なの。
チコはにゃん吉を信じきっていた。

「危険すぎる!今すぐに応援を出すべきだ!」
未だに粘ろうとするグラッド。
このおじちゃんしつこい…
「むー…言うことを聞かない時に…お兄ちゃんからの伝言があるの…」
チコは最終手段をとった。


「お兄ちゃんは…今回に限りオトギの名にかけて…あの狼はどうにかする…っていってた…」
「「なっ!?」」
それだけ言い切るとふわりと飛び上がり、もう用はないとばかりに紡のところへと戻っていった。



――――――――――――――――――

side コア



戦場のど真ん中。狼と狐面が対峙する中、その近くに命懸けの戦場には似つかわしくない、可愛らしい少年がそこに居た。

その少年は、大きな鎌を片手に戦場を駆け回っていた。
鎌を振るたびに首が飛び、赤い血が吹き出る。
今まで冒険者が苦労して倒していたモンスターがチリのように片付けられていった。

「はやく終わらせて、兄ちゃんのとこに戻らなきゃ!」
言いつけを守る為にどんどんと首を飛ばしていった。
その為か、周りで体からシャワーの様に血の雨が吹き出す。周囲に降り注ぐ血の雨の中で戦う仮面を付けた男の子。其処だけ、猟奇的な光景をしていた。


数十分後には、結構な数を刈り取り終わっていた。仲間が次々に首を刎ねられていく恐怖からか、コアのいる所は空白地帯となっていた。

よし!早く兄ちゃんのとこに戻ろー!
言いつけを守った事を褒めてもらう為、コアは紡の元に戻ろうとする。

その時…
「俺たちもあの狼を討伐に向かうぞ!」
兄ちゃんの邪魔をする一団を見つけた。
遠くでは楽しそうに死闘を繰り広げている兄ちゃん。とても笑顔で戦ってる…
ダメ!あんな楽しそうなとこを邪魔させない!

コアはその集団へと飛んでいく。
「兄ちゃんの邪魔しちゃダメ!」
牽制のために地面へと鎌を振り下ろした。

「「「危なっ!」」」
急な攻撃に一団がギョッとした顔で固まっている。
ふう…よかった。
「兄ちゃんの邪魔しないようにね!」
コアはそれだけを言い立ち去ろうとする。

「待て小僧。此方に攻撃しておいてそれはないんじゃないか?」
うー…めんどくさい…早くにいちゃんのとこ行きたいのに。
「知らないよー。僕は兄ちゃんの戦闘の邪魔を誰にもさせないようにしてるだけだもん」
少しふてくされながら答える。

「その兄ちゃんってのは、彼処で戦ってる狐面のことだろ?俺たちはそれを助けに行こうとしてるんだがな」
「ダメ!誰にも邪魔させるなって約束なんだ!」
せっかく楽しそうに戦ってるの邪魔しちゃダメだし…
それにこの人達通したら多分犬死するだけだと思うしねー。

「はぁ…あの狐面も冒険者だろ?そんな独断は認められない。俺たちも冒険者として戦わせてもらう」
あれ??もしかして…

「おじちゃん達冒険者なの?」
「ああ、俺たちは冒険者だ」
おじちゃん達はカードを見せながら答える。

そっか…おじちゃん達は冒険者だったんだ。それならよかった…

「だったらよかったー!兄ちゃんは冒険者ギルドってとこと敵対してるから」
「「「「は?」」」」
まさかの返答に冒険者の一団は呆ける。

このおじちゃん達が行かないように色々考えてたけど、良かったー!冒険者なら敵じゃんか!
コアはおじちゃん達へと鎌を向ける。

「ちょっと待て待て待て!敵対!?あんな化け物みたいな狼と一人で渡り合ってる奴とギルドは敵対してるのか!?」

「うん!兄ちゃんがギルドマスターって人に確認してたもん!」

冒険者集団から「マジか…」という幾つもの驚愕が上がる。

「それで、おじちゃん達どうするの?あの、ギルドマスターって人と違って優しそうだから此処で引き返すなら僕はなにもしないよー?」
鎌をギラリと輝かせながら問いかける。

「わかった引かせてもらう。此処で消耗した上であの化け物狼と戦おうとは思えないしな」

「そっかー!よかった。おじちゃん達の首を刎ねずに済んで」
言いながら満面の笑みを浮かべる少年に冒険者集団はとてつもない恐怖を感じた。

よかったよかったー。これで完了だねー。あ、そうだ!

「おじちゃん達、僕これから兄ちゃんのとこに行くから、此処に誰も来ないように皆んなに言ってもらえない?」
「わかった…言っておく…」
うんうん!完璧だねー!

それじゃ、兄ちゃんのとこに向かおっかな!
「おじちゃん達よろしくねー!じゃあバイバイ!」

手を振りながら去って行くコア。それに律儀に手を振り返す冒険者達。その顔は引きつった笑顔をしており、コアが視界から消えるまでずっと手を振り続けていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

処理中です...