御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

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閑話

閑話 破滅の序章がギルドへと

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side 冒険者ギルドマスター カレナ



此処は冒険者ギルドの2階、ギルドマスターの執務室である。
ゴタゴタと色々な調度品などが置かれた実に騒々しい部屋である。
机に一人座り前を見据える女性は、今数人の冒険者達に囲まれていた。

「さあて、詳しいことを聞かせてもらおうじゃないか」
一体何の用があるというんだ。いきなり執務室に来たかと思えばズカズカと大人数で入ってきて。
「いきなりやってきて唐突だな。私に何か聞きたいことでもあるのか?」
どうせまたしょうもないことを言いにきたに違いない。早くあしらって終わらせよう。
カレナは軽く考えていた。

「ああ、とても聞きたいね」
冒険者達はかなりいきり立っており焦っているようである。
「今回の戦いでの話だ、俺たちはこのギルドのため命をかけて戦っていた」
ああ、冒険者達はよく戦ってくれていた。その為にこの街は守られたじゃないか。

「そうだな、それで?」
「俺たちが配備されたのは東門だったんだよ。
激戦の最中、突如現れた化け物みたいな狼。そして…狐面を被り顔を隠した男が現れたはずだ」
「…」
「当然ながら、俺たちはこの町を守る為、その狼へと戦いを挑もうとした。
そうだ、しただけだったんだよ。ある一人の子供に止められてな」
カレナの脳裏に浮かぶ二人の子供。城門の上で紡を連れて行こうとした際に、カレナのメインウエポンであるドラゴン素材の弓を苦もなく破壊し、こちらに気づかれぬままに現れた二人、コアとチコの事であった。

「その子供に言われたんだよ。狼と戦っている狐面は兄ちゃんだって。
そして、一人で戦いたいから言っちゃダメだってな。
あの狼を一人で倒すのは無理だと思った俺たちは直ぐに冒険者として、独断行動は認められないと注意したんだよ」

当然の処置だ。冒険者ならば周りと合わせることもしなければならない。独断行動は周りとの軋轢を生む行為であり冒険者としてしてはならない行為だ。
それがあの少年では無ければ…

「そしたらな、その子供がおじちゃん達は冒険者なの?と、聞いてきたんだよ。
当然ながらギルドカードを全員見せ、そうだと返した。
すると少年は笑顔で驚くことを言ったんだよ。
一体何かわかるか?」
「…何と?」
「よかった。お兄ちゃんは冒険者ギルドと敵対しているたら、だそうだ」
ちっ…やはりあの二人の子供の片割れだったか。

「わかるか?あの化け物を一人で倒し、戦場へと光線を放っていった一団とここのギルドは敵対しているとの事だよ」
話す男の手は震え、後ろにいる冒険者達は俯いている。

「まさか、ギルドと敵対などと信じられなかった俺は、その子供に聞いたんだよ。それは本当か?って。
すると兄ちゃんがギルドマスターに確認したからと答えていたよ」
…そうか、敵対した事が一般冒険者にも広がってしまったようだな。

「俺たちが知りたいのは一体何故敵対したんだ?
そして、一体あいつらは何者なんだ?」
敵対した理由は言えない…独断であんな化け物を狩る奴に敵対したなど責任問題だ。
それに、あの一団の事は私もわからない。
どうしたものか…

「あの一団については、ギルドでもまだよくわかってはいない。今、接触を試みているところだ。
そして、敵対理由なのだが…今は詳しくは言えない」
「そうか、結果として何も言えないってのがギルドの方針なんだな」
「そうだ」
「理解した、その上で俺たちはこのギルドを辞めさせてもらう」
そこに居た全員が机へとギルドカードを乗せる。

「正気か?」
ギルドを辞めるということはそんな簡単なものではないはずだ。
「正気だよ。俺たちはもう、冒険者ギルドは信じられなくなった。
あんな一団と敵対したなんてギルドにもういることはできない」
それだけを残し部屋から去ろうとする。

「いいのか?こんなことで辞めてしまっても」
せめてもの抵抗か、カレナは繋ぎとめようとする。

すると、リーダーらしき男が振り返り…
「俺たちはな、その子供に言われたんだよ。
狼の元へといくのを諦めた際に笑顔で、『そっかー!よかった。おじちゃん達の首を刎ねずに済んで』ってな…
あの一団は俺たちの命を狩ることに対し何の迷いもない。気に入らなければ殺すことをためらわないだろうな。
あの笑顔を見た時から俺たちはギルドを辞めると決めている。
俺たち全員があの笑顔が脳裏に張り付いて消えないんだよ。
わかるか?夢にあの笑顔が映る恐怖が…
もう無理だ俺たちは辞める。
止めても無駄だ」
「っ…」
決意を決めた顔でそう言い残し去っていく男。
カレナはそれを止めることもできずにただ呆然と出て行く背中を眺めるだけだった。


ここからギルドと紡の関係のねじれにより冒険者ギルドはどんどんと落ちて行く。
それはなんの因果か、災厄の方向へと進んで行く。
これはその序章であり、プロローグであった。
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